マイ「艦これ」「みほ2ん」第37話<暖かい手> |
「オ前ハ、モット暖カイナ」
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マイ「艦これ」「みほ2ん」
第37話 <暖かい手>(改2)
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空襲警報はずっと続いている。
陸軍としても多少疑いは残っても今は、それどころではないのだろう。
やがて少し弱々しい印象の機銃音が断続的に響く。お台場公園に設置してあった、あの小さな機銃を撃っているようだ。
「我々も早く撤退しよう」
そう言いかけて私は思わず静止した。日向がまだ深海棲艦(大井・仮)と手をつないでいたのだ。
彼女もそれに気づいてパッと手を離した。ただ敵である深海棲艦は、さほど嫌そうな顔ではなかった。
日向を見て言った。
「オ前の手、暖カイナ」
『……』
その意外な反応に私と日向は一瞬、戸惑って静止した。だが警報は続いている。
直ぐに日向が私に頭を下げた。
「司令、申し訳ありません! 出過ぎた真似を……」
「個人的には咎(とが)めたくは無いがな」
命令系統としては日向の行動は確かに良くはない。だが今はグズグズして居られない状況だ。
「言い訳は後だ。私たちも退却だ」
「ハッ」
日向は早速、瑞雲から報告を受ける。
「司令、瑞雲からも目視できる距離に敵機を確認!」
私は上空の機体をチラッと確認してから境内の深海棲艦に手を差し伸べて言った。
「もう時間がない。最後のお願いだ、一緒に来てくれ」
「……」
すると『彼女』は無言で手を差し出してきた。私は迷わず彼女の手を握った。
深海棲艦は私の手を、やや強い力で握り返してきた。それから私が軽く手を引くのに合わせて神社の階段から、ゆっくりと立ち上がった。
確かに『彼女』の手はちょっとヒヤっとしていた。そもそも敵に直に触れるのは、これが初めてだ。
私は語りかけた。
「行こうか」
「……」
少し手を引いて後退すると深海棲艦も慎重な足取りで階段を下りた。
だが、やはり少し体調が悪いのだろう。彼女は地面に降りた途端、少しよろめいて声を発した。
「アッ」
……人間の発音とは違うので上手く表現できないがイメージとして、そんな声だった。
反射的に私も慌てて彼女の身体を抱き寄せた(正しくは受け止めた……というべきか)
「……」
彼女の腕や体全体もヒヤッとしていた。やはり『深海』に棲息するのだろうか?
だが正直ちょっと焦った……何しろ私たちを散々手こずらせた相手なのだ。いわば人類共通の『敵』である。
おまけに、この深海棲艦は私のことを『憎い』とまで言っていた。その本人と接しているんだから。
「……戦争とは想像を絶する世界だな」
私が言うと意外な反応が返ってきた。
「モットモダ」
「……」
接するほどに不思議な敵だ。
既に憲兵は居なくなった。日向は先に神社の外に出て周囲を警戒している。そして大丈夫という感じで軽く手を上げて先に軍用車に向かった。
私と深海棲艦も鳥居をくぐって外に出た。そのとき呟くように彼女が言った。
「オ前ハ、モット暖カイナ」
(それは……日向と比べているのか?)
空襲警報は断続的に続き、お台場の機銃の発射音が響きわたっている。岸壁では陸軍が慌しく動き回っているようだ。自走式の高射砲も出てきた。
私たちは、それには構わず軍用車に乗り込んだ。深海棲艦を先に助手席に乗せて私は車のポケットから手錠を取り出した。それが何であるか深海棲艦も直ぐに察したようだ。少し警戒して身を引いた。
私は釈明するように言う。
「悪く思わないでくれ。これは軍の決まりだ。それに陸軍に見つかった場合これが無いと逆に疑われて厄介だからな」
「……」
彼女は今回も意外な反応を見せた。つまり黙って私にされるまま手錠をはめたのだ。私は「済まない」と言いつつ手錠の一方を軍用車の手すりにはめた。
「ガチャッ」という冷たい音。
「……」
相変わらず無表情な『彼女』。
だが不思議なのは神社の中で見せた程の抵抗感が見られないことだ。それは気のせいだろうか? 或いは、もう抵抗するのは観念して諦めているのだろうか?
日向は軍用車の荷台に飛行甲板を固定してから銃座に上がった。それから上空を見上げて瑞雲に『警護しながら鎮守府へ向かうように』との指示を出している。
無線機からは陸軍と美保鎮守府からの無線が入り乱れる。大淀艦隊も必死に回避している状況が断片的に伝わって来た。
「グズグズしていられないな」
「はい……こちらの機銃の準備はOKです」
日向が報告する。
「よし」
私は車を発進させた。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
説明 | ||
日向や司令と深海棲艦は初めて手を触れ合った。だが敵機が来襲する中で彼らも早々に撤収を開始する。 |
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