恋姫†夢想×三極姫 〜選ばれし英雄達〜 『黄巾の乱編 完成版』
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 この世界は混沌に渦巻いていた。

 飢饉、略奪、横領など。

 弱き人間はその犠牲になって、力ある者にいいように扱われ、人が人を喰らいつく醜い時代だった。

 

『蒼天すでに死す 黄天まさに立つべし 歳はこう甲子にありて 天下大吉ならん』

 

 そんな弱き人間達はこれを流布した人間『張角』という者に同調した。

 張角と同じ服装の黄色い服と頭巾を着て、この世界を納める王に戦争を仕掛けた。

 

 この戦争は全土に広がり、今まで影に埋もれていた各地の諸侯達にも火が灯って、功績を残し次にこの世界を納める王となることを望ませる。

 だが、誰しもがその望みを叶えることは出来ない。

 

 数多の犠牲を払い、絆と強運が備わった人間以外は。

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                       前章 『銀河と北郷』

 

 黄色い頭巾を被った人間、通称『黄巾』の戦は全土へと広まったことにより『穴』が生まれた。

 その穴とは指揮系統である。

 

 最初の決起した頃は、張角の指揮や腐敗した国の情勢のために、連戦連勝だった。

 だが、巨大化した組織は各部隊の隊長達が独自の判断によって行動し、守るべき人々を傷つけたり、村を壊滅か略奪して、私有地化にしてしまう。

 

 この行動により黄巾達に同調していた人々は絶望し離反、国が募集する義勇軍に加担して反撃へと移行した。

 その一人『銀河』という男も義勇軍に参加していた。

 

「俺は子供の頃から、戦場に出入りし、生き倒れた連中から武器や甲武を奪い売りさばいて生きてきた」

 

「そして、いつしか剣技を覚え、自身の力のみで生きてきた」

 

 ちなみに銀河というこの男の生き方は珍しくもない。誰もがしているような時代でもあり、『それしか』彼には生きる道がなかった。

 

「戦は徐々にこっちの義勇軍が傾いてきた。しかし・・・」

 

 銀河は確信していた。

 この戦の先には新たなる戦が待っていることに。

 

 ここまで拡大した黄巾との戦。

 そして、それをすぐに鎮圧出来ない国やこれを後押しにのし上がろうとする諸侯達。

 

 そんな戦がまだ、延々と続くことに自身は何が出来るのだろうか、と。

 

「いや、今は生き残ることだけを考えよう」

 

 自分はこれからもこうして、生きていくしかない。

 銀河はそう割り切りって、一人眺めていた荒野を後に自身の義勇軍陣地へと戻るよう足を向けた。

 

「・・っ!」

 

 激しい強風が銀河を襲った。

 

「な、なんだ!?」

 

 さっきまで風一つなかった荒野は、砂塵舞う大地へと変わり全体を暗くする。

 

「く、くそ、前が・・・っ!」

 

 砂塵により目も開けていられない状態の中、声が聞こえた。

 

「選ばれた人形よ。お前はこの世界をどうしたい?」

 

「誰だ!?」

 

「答えろ、お前はこの世界をどうしたい?」

 

 銀河の返答に応える気はなく、謎の声は同じ質問をしてきた。

 

「お、俺は・・・」

 

 銀河は自身の過去を思い返す。

 

 物心についた時には身内も頼れる者もなく、生きていくために血に染めた人生。

 殺戮と飢饉や餓死、自分と同じ人々をどうすることも出来ずに眺めるだけの日々。

 助けたいと願ったこともあった。でも、自分は『自分』を助けることしか出来なかった。

 

「俺は・・・俺は・・・」

 

「答えろ!!」

 

 砂塵から聞こえる声の怒声に後押しするように銀河は答えた。

 

「この世界に希望が欲しい! 人々が笑顔で暮らせられる、そんな希望を!!」

 

 瞬間、左右に舞っていた砂塵は上空へと移動した。

 

「・・・いいだろう、その望みの種をくれてやる」

 

 その答えと共に砂塵は止んだ。

 

「・・・一体、さっきのは?」

 

 先ほどの現象に疑問が残る中、銀河の目の前に人が寝ていることに気が付いた。

 

「・・・人?」

 

 ゆっくりと近づき、その人間を観察して見る。

 人間は自分と同じくらいの年頃の男であり、見たこともない真っ白な服を着ていた。

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

 男は気持ちよさそうな寝息をたてている。

 銀河は先ほどの謎の声が言った言葉を思い返した。

 

『望みの種をくれてやる』

 

 望みの種。

 銀河が望んだ希望に満ちた世界を叶えてくれる種。

 

「この男が種だって・・・?」

 

 確かにこれまでの流れで考えれば、この男こそが銀河が望みを叶えてくれる人間となる。

 しかし、これを鵜呑みにしていいのかどうか悩んでいた。

 こんな時代である。嘘や狂言などいくらでも飛び交っている。

 

「・・・どちらにしても、コイツをこのままにすることは出来ない、か」

 

 銀河はこの男を連れて帰ることにするのだった。

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 黄巾賊を各地で打ち破る義勇軍の中で、特に活躍している部隊がいくつかある。

 

 曹操、孫権の親である孫堅、劉備。

 

 のちに魏、呉、蜀を建国して世界をまとめる英雄達。

 ただし、それは未来の話であり、今の三人はまだまだ他者にののしられる時代を送っていた。

 この銀河もいずれはその三国のうちどれかに属するが彼も同じ状態であり、今は謎の声に願い導きのままに、そこで出会った謎の男を保護している状態だ。

 

「俺は北郷一刀。聖フランチェスカ学園の学生だ」

 

「聖フラン・・・チェスカがく・・・えん?」

 

 表向きは義勇軍の参加者として、連れてきたこの北郷一刀と名乗る男はどうやら異国の人間。

 彼が語る出来事はとても信じがたく夢物語のような話ばかりだったからだ。

 しかし、そんな異国の人間である北郷もある一言で変わる。

 

「三国志・・・」

 

「ん?」

 

「いや、この世界って俺が知っている歴史と似た感じなんだなーって」

 

 似ていると言われるこの世界。

 もし、それが本当なら北郷は知っていることになる。

 この世界の『行く末』を。

 

「なぁ、教えてくれ北郷。お前の知る歴史を」

 

 銀河のその質問に、北郷は困った顔をしてしまった。

 

「いや、銀河から聞いた話では全部が全部、俺の知っている歴史ではないし、それに・・・」

 

 どうやら北郷は話すことに意味を考えている。

 答えを知り過ぎた先を恐れているのか、信憑性を疑っているのか。

 

「・・・」

 

 銀河自身もまだ、半ば彼を信頼はしていない。

 あんな出会いで会ったのだから、何かしらの悪意があるのは間違いない。

 それはあの砂塵の声の主か北郷なのかは分からないが。

 

「わかった、今はいいよ。でも、いつかは話してくれよ?」

 

「ああ、わかった約束するよ」

 

 だから今は保留として、次にするべきことに行動を移す。黄巾賊を討伐することに。

 だが、銀河は自身の置かれている状況を見せるために、北郷を前線に近づけてしまったことに後悔した。

 

 戦場立った北郷は役立たずだった。

 生きるか死ぬかわからぬ状態の中で、北郷は衰弱していた。

 理由は簡単。

 北郷は『戦争』を知らない。

 

「おい、北郷! おい!!」

 

「はぁ、はぁ・・・はぁ!!」

 

 北郷のこともあり、後方に下がっていた銀河だったが黄巾賊の攻勢は凄まじく、とうとう銀河の所にも押し寄せてしまっていた。

 

「義勇軍など恐れに足りず!」

 

「我らに天あり!!」

 

 黄巾賊は勢いのままに、次々と義勇軍の兵を倒していく。

 

「はぁ、はぁ・・・」

 

「北郷・・・!」

 

 銀河は今の北郷の状態を知っている。いや、誰しもがきっと戦場に行けば味わう。

 『死』と『殺戮』の恐怖だ。

 だから初めてである北郷には荷が重かった。

 

「うぉぉぉぉ!!」

 

 ガキンと剣と剣を交じり合う。

 そして、次の振りには相手の体を斬り捨てる。

 

「ぎゃぁ!!」

 

 しかし、これは乗り越えてもらわないといけない試練だと銀河は思っていた。

 これが自分が今いる世界。

 今、目の前に起きていることであり、自身が置かれている状況なんだと。

 

「もらったぁ!!」

 

「!!」

 

 黄巾賊の一人が北郷に向かって行く、この惨劇に北郷は絶望して動けない。

 

「北郷―――!!」

 

 呼ぶ声は戦の叫びにかき消されて聞こえない。

 もうダメだ、と思った瞬間。

 

「ぎゃぁ!!」

 

 叫んだのは敵の声。

 敵は倒れ、北郷を庇うように刀を振るう。

 

「あれは・・・」

 

 それは義勇軍として何度か見たことがある人物。

 両肩に鬼の鎧を装着し、額に宝石を埋め込んだ白銀の女性。銀河自身も何度も助けられ、己がいつか武において到達したいと願う人間。

 

「呂布・・・奉先・・・」

 

 武の覇王と言われる呂布奉先だった。

 

「義母上・・・大丈夫?」

 

 すぐにその呂布の横に紅髪をした女性が現れた。

 彼女は北郷をチラッと見るが、すぐに呂布へと視野に戻す。

 

「行くぞ呂玲綺、遅れるな」

 

「・・・うん」

 

 二人の合図と共に、そこは一気に呂布達の独断戦場化になるのだった。

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                      中章 『出会い』

 

 呂布は、先の戦での勝利を報告するために、自身の総大将である董卓の軍へと向かっていた。

 助けられた銀河と北郷も生き残った義勇軍と共に董卓軍へと一緒に向う。

 その道中で、暁人という青年と出会い、同じ同世代ということで意気投合し、三人はチームとして行動していた。

 

「董卓・・・か」

 

 ある日の食事時に、ぽつりと北郷はつぶやいた。

 

「董卓がどうかしたのか?」

 

 銀河は少し歯切れの悪そうな北郷に質問した。

 暁人は、黙って会話を聞いている。

 

「いや、董卓って名前は実はあまり好印象を持っていないんだよ」

 

「へぇ・・・それは興味あるな」

 

 銀河は董卓のことを何も知らない。

 少なくともこの時代に生きている銀河や暁人にとっては、董卓とは無名の武将という認識であった。

 

「でも、あくまでも俺が好印象を持てないということだけだから、気にしなくていいよ」

 

 北郷は明らかに作り笑顔を見せつつ、自身の食事を終えてその場をでる。

 残された二人はそんな北郷の行動に少し不安を抱いた。

 

 特に銀河は、あんな出会い方をしてしまっているため、彼は夢を叶えてくれる可能性を持つ人間だと信じている部分があり、その一つ一つの発言は、貴重な『お告げ』と思い込んでいた。

 

「・・・気になるね」

 

「暁人もか・・・」

 

 暁人は北郷と銀河の出会いの詳細は知らない。

 彼にとっての気になるは仲間としての『気になる』だ。

 

「・・・暁人」

 

「何かな、銀河?」

 

 だから、銀河が『気になる』という理由を言うのは少しためらってしまう。

 

「これから話をすることは他言無用で、お願い出来るかな?」

 

 しかし、初めて『仲間』と認識として接する人間であり、何よりも『秘密』をいつまでも一人で抱え込むことは銀河には出来なかった。

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 一方で、北郷は自身が持つ『三国志歴史』について銀河に話すかどうか悩んでいた。

 話すことで、銀河がどんな行動をとるのかと不安だったからだ。

 

 人は未来を知ってしまうとどうしても『得』になる行動を起こしてしまう。

 この北郷も然り、あの戦い以来、歴史を知っている彼にとっては、呂布は最強の武将と知っているので、生きていくという生存本能において、常に呂布の傍にいろと囁いていた。

 

 だが、それも限界が近い。

 呂布が董卓と合流するいうことは、もうすぐ次の『戦い』が始まるという予兆。

 北郷は次の選択を余儀なくされていた。

 

「・・・貴様、一人か?」

 

「えっ?」

 

 ガチャりと金属音と共に、北郷を呼ぶ。

 それは呂布であった。

 

「・・・あっ、その」

 

 いきなりの呂布登場に驚く北郷だが、彼女はそんなことを気にせずに空を見上げた。

 

「空はいつも何も変わらない。だが、地は荒れ果て人は人を殺している」

 

「・・・」

 

「お前はこの地を見て、何を感じた? 何をしたい?」

 

 やがて、呂布はまっすぐと北郷を見る。

 その瞳はとても綺麗であり、引き込まれそうな感覚を北郷は感じた。

 

「運命に流されるままも、それも天命だ。だが、お前の心はそう言っているのか?」

 

「・・・俺の心」

 

「心に嘘をつく人間に、天は決して答えはくれない」

 

 呂布はそう言うと、その場を去っていった。

 取り残されるような形となった北郷。

 

「俺は・・・」

 

 自身の手を見つめ、呂布の言葉の意味を考える。

 

『お前の心はどう思っている』

 

 真意を充てられたように言った呂布の言葉は、北郷の心に確かに響いた。

 これから自分はどうするべきなのか、という大きな目的が。

 

「おーい!」

 

 今度は銀河と暁人が北郷を呼ぶ。

 合流すると、二人はさきほどの北郷のつぶやきが、気になって話に来たらしい。

 

「二人共、大事な話がある」

 

 北郷は決める。

 自身の心のゆくままに、従って。

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 次の日。

 銀河、暁人、一刀が隊を無断で抜けた。

 

 つまり脱走だ。

 当然、それらは呂玲綺が呂布に報告される。

 

「捨て置け。雑兵に構っている暇はない」

 

 呂玲綺の報告を終え、出立の準備に出ていくのを確認すると呂布は空を見る。

 

「・・・」

 

 呂布は北郷とは出会ったことがあった。

 いや、出会ったところか一緒に旅をしてきた仲間だった。

 

 ・・・ただ、それは違う『北郷』だ。

 

 実は義母上と名乗っている彼女は、もう一人の『異世界の呂布』であり、その時に北郷とも出会う。

 会った頃は呂布も驚いた。

 二人と呂布は、謎の砂塵よってこの地に流された。

 

 右も左も分からないまま、一緒に過ごしてきたが、三人は仲良くなり、北郷の提案より親子の縁となって異世界の呂布は義母として呂玲綺という名前になると決められた。

 そして、しばらく彷徨っていたところをこの世界の董卓に拾われて今に至る。

 

 だが、現在『その』北郷はいない。

 『異世界の呂布』である呂玲綺も北郷の記憶を失っている。

 彼は死んだ。

 殺されたわけではない。消滅したのだ、呂布の前で。

 

「俺の役目は終わったらしい。すまないけど、恋・・・呂玲綺のことをお願いね」

 

 消滅寸前に北郷は、呂玲綺をこの世界で生きて生けるために、自身の記憶を奪っていき、彼女は北郷のことを何も知らないで過ごしている。

 でも、それは呂玲綺だけの話。

 呂布は記憶の消去はされていないため、彼の記憶は残っている。

 残っているため、他人似の北郷に会った。

 

『運命に流されるままも、それも天命だ。だが、お前の心はそう言っているのか?』

 

 あの時に、後を託す北郷に対して言いたかったこと。

 運命のままに生きてきて、それでよかったのか、と。

 

「・・・しかし、己の命に意味を与えられるのは自分のみ」

 

 決して誰か意思で動くことはない。全ては自身の意思だ。

 仮に『全て』が『与えられた命』だとしても、最後の一歩を決めるのは自身のみ。

 

「・・・ふっ、ふふ」 

 

 呂布は今後の北郷が、どう動くのか少し楽しみを感じつつ、董卓の元へと向かうのであった。

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                     後章 『旅立』

 真っ白な空間。

 その空間に沢山の人達が集まっていた。老人、老婆、青年、少女など年齢層もばらばらだが、どの人達も羽根扇を持っており、彼ら全員が軍師であるということを教えてくれた。

 そんな集団の中、三人だけが羽根扇ではなく、荷物を背負っており、どこかへ旅立つ様子だった。

 三人のうち二人は、小柄で可愛らしい少女。残りの一人は、黒いサングラスをかけて、どこかかっこつけている部分がある青年。

 

「・・・よいか、くれぐれも粗相がないようにするのじゃぞ?」

 

 黒いサングラスをかけた青年に、一人の老人が話かける。

 青年は帽子を被りなおしつつ、少しほほ笑む。

 

「大丈夫さ。二人は何があっても守り通すさ」

 

 クールに決め顔を見せる青年だが、その様子に溜息を老人はしていた。

 

「はぁ・・・なんでそこで『二人』になるのじゃ。己もそして世界も含めと言わないと、この旅立ちに意味などないじゃろ?」

 

「うっぐ・・・」

 

 青年は図星をつかれたのか冷や汗をかいてしまう。

 

「まぁまぁ、彼もちゃんと役割を果たして活躍してくれますよ」

 

 そこへ今度は若い女性が話に入ってきた。

 青年はその女性を見るなり、少し照れつつもびしっと背筋を伸ばす。

 

「大丈夫です。ちゃんとしっかり世界を守っていきます!」

 

 老人はやれやれと再び溜息をつくのだった。

 一方の小柄の少女達は、緊張した表情をしながら旅立ち時を待っていた。

 

「何も心配することはありませんよ。今までの教えを思い出し、時には己の勘を信じて行動すれば、ちゃんと結果はでます」

 

「「は、はいでしゅ!!」」

 

 二人はそう返事を言いつつも、アワワやハワワと緊張の色は隠せない様子だった。

 しかし、そんな二人対して誰も不安そうな顔などせず笑顔で返してくれた。

 

「・・・では、行きましょうか二人共」

 

 青年が二人に話かける。

 二人は一度深呼吸をした後、笑顔で答えた。

 

「はい!!」

 

 そして、三人は消える。瞬間移動したかのように。

 見送った彼らも、それぞれに一礼すると消えていき、最後に女性と老人だけが残った。

 

「希望は旅立ちました。我らの役目も終わりのようですね」

 

「我が弟子が選ばれたことに、多少の不安もありますがこれも運命なんでしょう・・・」

 

「大丈夫ですよ。他の『徐庶』殿とも引けを取らぬほどの才覚です、何も心配はありません」

 

「・・・あやつは他の徐庶殿と違い、過剰なほどの幼女が好きが少し不安なのです」

 

「それも含めて大丈夫ですよ。彼がもし誤った道を歩いたとしても必ず『孔明』と『?統』さんが止めてくれますから」

 

 老人はその励ましに笑顔で答え、消えていった。

 一人になった女性。

 

「では、後のことよろしくお願いしますね、暁人さん」

 

 そうつぶやくと、女性も消えた。

 そして・・・。

 

「・・・」

 

 暁人は目を覚ますのだった。

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 暁人には生まれた時からある能力があった。

 自分が寝ている時のみ、これから起こる未来を夢で見れるというものだ。

 この能力は彼には制御することは出来ない。だから、いつの未来なのかどんな時に起きる出来事なのかは不明であった。

 しかも、時には自分の知らない場所や人物達の出来事も含まれており、それらをただ黙って見るしかないことも多くある。

 この能力は『悪い未来』しか予言しない。しかも、彼にその能力を制御することも回避することは出来なかった。

 

 いや、能力自体は制御することは出来ないが、回避そのものは可能といえば可能のはず。彼の言葉を信じて、その反対の行動をすればいいだけのこと。

 しかし、誰が初対面の人間の言葉に耳を傾けるだろうか。ましてや自身を滅ぶ未来を言う人間に。

 

 結果、彼はそれらをただ黙って見るしかない運命に流されてしまっていた・・・今までは。

 

「北郷一刀・・・」

 

 義勇軍の中にいた一兵士しかない彼と歩む夢を見ていた。

 暁人自身もにわかに信じられないことだった。

 夢の通りならば彼は、この世界を救う救世主という意味。しかし、この男が本当に救世主となるのだろうか。

 だが、暁人は知っている。自身の夢は現実になることに。何度も何度も否定したけど、結局は現実になってしまった。だったら、その先にあるあの光景を信じても問題ない、と。

 

「暁人? どうかしたの」

 

 彼はきょとんとした表情で暁人の声に反応した。

 

「北郷はこの戦の先に、平和はあると思うか?」

 

 彼は一瞬だけ、考え、そしてこう言った。

 

「あるさ。きっと、みんなが笑える平和が」

 

「!!」

 

 彼のほほ笑みは眩しく、暁人にとって、たったそれだけに対して、傍にいたいと願うように思うのだった。

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 大きな戦争は終わったが、義勇軍の戦いは続いた。

 黄巾賊の残党達の小規模な戦い、その戦いによって傷つけられた民達による反乱など、戦い自体に終わりは見えず、いつも地上は血で塗れていた。

 しかし、義勇軍はそれらを利用し、自身への高みへ上る足枷として戦っていた。

 

「張角が討たれたんだ・・・」

 

「ああ・・・」

 

 そして彼らもまた、後に起こる大規模な戦のために、日々活動をしている。

 三人は張角の死亡の吉報の知らせに、眉を細めた。彼らが喜んでいない理由は知っているから。

 次に何が起こるのかを・・・。

 

「で、この後は洛陽で董卓が暴挙の政治をすると?」

 

 暁人の質問に北郷は頷く。

 

「ああ、たぶんそれで反董卓連合を結成するために、袁紹が呼びかけるはずだ」

 

「問題はその時の俺達の進むべき道だな・・・」

 

 銀河は三本の指をたてて、二人に見せる。

 

「劉備、曹操、孫権・・・いや今は孫堅か。その英雄達の誰についていくべきか・・・」

 

 三人はあの後、北郷から聞かされた歴史を参考に行動。

 やがてくる戦乱を起こす董卓はもとより、のちに滅ぼされる呂布にいるわけにもいかずに脱走した。

 そして、彼ら三人は反董卓連合で活躍する劉備、曹操、孫権達に加担して、平和への道へと尽力しようと考えていた。彼らの活躍は以前から耳に入っており、後押しは北郷の歴史解説が決定打だった。

 

「・・・でも、彼らについて行ったとしても完全な平和にはならないよな?」

 

「まぁ、ね・・・」

 

 しかし、ここであることに気づく。

 彼らについて行けば一時的な平和を取り戻せるが、それはあくまでも一時的に過ぎない。結局は、三人では平定されることはなく、のちの新たな勢力の前に滅ぼされる。

 

 それは三人にとって意味がない。

 少なくとも『答え』がわかった平和ではなく、『未知』となる平和でなければ、すぐに第二、第三の自分達が生まれてしまうのを知っているからだ。

 

「じゃぁ、俺達の誰かが国を平定して平和を目指すか?」

 

 暁人の問いかけに、北郷は沈黙した。

 

「なら、俺が目指すよ」

 

 銀河は挙手を挙げて、立候補する。

 

「・・・銀河、それはつまり彼らの歴史に喧嘩を売るということだぞ?」

 

 北郷の不安そうな表情に、銀河は微笑み言う。

 

「三人じゃ平和にならないなら、他の誰かがやるしかないだろう?」

 

 他者が無理なら自分がする。

 合理的だが、時と場合による。この判断は自分達の理想を他者にも共有されること。

 それを果たすだけの責任が銀河にあるかどうかとなると・・・。

 

「少なくとも、俺が幼少期時代だった頃を誰かに経験させたいとは思わない」

 

 あんな時代はごめんだと銀河は、過去の自分を思い返す。

 それを見る北郷と暁人も納得した。

 ならばと、さっそく銀河が大陸を平和にするという方針で、活動をしようと思ったが・・・。

 

「で、どうしたら大陸を平定なんか出来るんだ?」

 

 ある意味振り出しに戻った。

 

「諸葛亮に聞いてみてはどうかな?」

 

 北郷は三国志において、最強の軍師であった諸葛孔明に助けを求める作戦を提案した。

 

「なるほど、軍師に聞けば解決方法も見つかるか」

 

 二人にとっては、まだこの時期は無名であるはずの軍師だが、北郷の発言に間違いなどないので、この提案に賛同した。

 そして、この提案は次の場所への道しるべともなった。

 

 ・・・荊州である。

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                    終章 『英雄達の心』

 

 彼女が目が覚めた時、一人の男の顔があった。

 その表情は、陰険な顔つきではなく、安堵や安心といった優しい顔だった。

 

「え・・・?」

 

 彼女は驚くしかなかった。

 それは自分が今、置かれている状況のことではない。

 ここの前の記憶のことを思い出しての驚きである。

 

「・・・ある、首」

 

 首を触って確認する。

 首はちゃんと繋がっており、自身が生きていることを彼女にとって実感させる。

 そして、何より。

 

「お姉ちゃん!」

 

「姉さん・・・」

 

 二人の妹達が傍に寄って、涙ぐんだ表情で彼女を見ていたいた。

 

「なんで・・・?」

 

 ゆっくりと体を起こして、彼女は今までの事を思い返す。

 自分が死んだ記憶。

 義勇軍に囲まれて自分は首を処断された。あの衝撃は忘れることは出来ない。

 

「貴方が何かしたの?」

 

 彼女は見知らぬ男に訪ねた。

 

「・・・何かした? いいえ、俺はただ倒れていた君たちを介抱しただけだけだ」

 

「え?」

 

 驚愕した。

 自分は確かに殺され、妹達も死んでいた。

 それが生き返っている。

 

「・・・」

 

 彼女は黙ってしまう。

 男の彼女の様子に心配するが、とりあえず自己紹介をした。

 

「俺の名前は左慈。まだ修行中だが妖術師だ」

 

 差し出された左慈の手を掴み、彼女は立ち上がる。

 

「私は・・・」

 

 自身は張角と名前を言おうとしたが、少し考えてこういった。

 

「私は・・・天和。ただの旅芸人だよ」

 

 左慈はなぜ、彼女に間があったのか少し疑問に思う。

 だけど、それ以上のことを詮索する気は三人にはなく、そのままスルーして会話を進める。

 

「どうして、こんな所に三人共寝ていたの?」

 

「わからない。でも、こうして三人がまた一緒に顔を見れたことがとても嬉しいわ」

 

 天和のほほ笑みに、二人の妹達もにこやかに返した。

 

「それよりも、貴方はこれからどこへ行こうとしているの?」

 

「・・・俺?」

 

 左慈は天和の質問にこう答えた。

 

「洛陽に住んでいるという董卓さんの所へ行くんだよ」

 

「董卓?」

 

「そう、その人はこの世界で一番強い武人なんだ」

 

「武人・・・」

 

 天和は二人の妹達に視線を合した。

 二人はそれに気づき頷く。

 

「そしたら、私達も一緒に連れて行ってくれないかな?」

 

「洛陽へ?」

 

「うん、どうせ行く当てもないから、その旅の付き添いとして・・・」

 

 左慈についていくこと。

 もちろん、彼について行ったところで生き返ったことがわかる保証はない。

 だけど、こうして生き返り出会ったことに何か意味があるはず。

 

「・・・わかった、よろしく」

 

 左慈も別に断る理由もなく、天和達姉妹を洛陽に一緒に行くことにするのだった。

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 この世界に来て、だいぶ暮し慣れ始めた北郷はいくつか理解したことがある。

 もちろん、それは銀河や暁人の教えや環境による自然な覚え。

 

 自身が来た場所は三国志に似た世界。

 土地や出来事などは歴史書に記載されていた通りだったが、人々が着ている服装や一部の文化などは北郷が住んでいた現代に似ており、旧時代というものではなかった。

 でも、鉄砲やミサイルなどの超化学的な兵器は実在してない。戦は弓や石火矢、武器は盾や剣、槍と騎乗で戦っていた。

 

「鉄砲がない時代に来ただけでも本当によかったと思うよ・・・」

 

 正直に、戦争時代に巻き込まれたとしても未知の魔法戦争や戦術兵器戦争などすぐに『死』に直結しそうな世界は北郷も嫌だった。無論、本音といえばこんな世界に来たについては困ってはいる。

 

「でも、やっぱり驚いたのは、英雄の人達が女性だったことだなぁ・・・」

 

 自軍も敵軍も大半が女性が多かったこと。大将も女性がほとんどで、男性の偉い武将はあまり見かけなかった。

 北郷の住む世界では、男性と女性の区別がハッキリと別れており戦争も男性が主軸。女性はあまり表舞台に立つようにされていない。しかし、銀河や暁人に訪ねてみるとそういう区別的な差別は多くはなかったらしい。

 ただ、あくまでも多くはなかっただけであり、男性は女性を自身の鬱憤の対象にしていることは変わず、女性の方もそれを武器に生き残り、名を挙げていった。

 

「・・・そういう時代でもあるから、二人ってある意味で童貞終わっているんだよなぁ」

 

 銀河と暁人は十歳のころに女性を抱いた。それはお互いに生き残るための一つとしてだ。

 ・・・が、女性経験でいえば二人は大先輩になる。

 

「俺もどうなるかな?」

 

 北郷は、この先の人生においての女性運を少しだけ考えてしまう。

 女性を抱くのは、お金か命かそれとも愛か。

 

「まぁ、今は目の前に集中しよう」

 

 まずはこの世界で生きていくこと。

 それが、今の北郷の目標だ。

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 銀河は少し不安を抱いていた。

 

 北郷から教えられたこの世界での未来予知話。

 最初の頃は、信じられなかったが名前や出来事に的中したり今後についても予想ありえる話だったため、信じてみようと思っていた。

 むろん、何よりもあの砂塵での出会いが決定的であるが。

 

「・・・劉備、曹操、孫権では国を平和にすることは出来ない」

 

 自身が『王』になる宣言をした決意の理由。

 この三人は一時的に国を安定はさせるが、百年もたたないうちにすぐに滅びてしまう定めらしい。

 そして、三国を統治した国もすぐに内戦が始まって、再び戦乱時代が舞い戻る。

 

「意味ないよ、そんなの・・・」

 

 銀河はきっぱりとその未来を否定した。

 未来を知ったからこそ今回の行動であり、三人を超えるような存在にならなけばいけない。

 

「でも、俺にそれが出来るのか?」

 

 不安は残る。

 三人を差し置いて、自身が統治することが可能なのか。

 三人の一人に、進言して統治するべきなのではないのか。

 

 銀河は決意とは裏腹にとても不安を感じながら、日々を過ごしているのだった。

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黄巾の乱編 『登場人物紹介』

 

★主人公陣営

 

・銀河 :出典『三極姫』

 

姓名不詳の風来坊で、ただ字のみを名乗り、幼き頃から、過酷な人生を歩んだ人間。

 

・北郷一刀 :出典『恋姫夢想』

 

銀河の前に、現れた異世界の未来人。

この世界での現状を目の当たりして、自身での三国志歴史を参考に銀河、暁人と一緒に平和を目指す。

 

・暁人 :出典『三極姫4』

 

元は呂布隊の兵士。

寝ている時に未来の出来事を夢として見れる。同世代ということで銀河や北郷と意気投合して、一緒に歩んでいく。

 

★敵陣営

 

・呂布奉遷 :出典『三極姫2』

 

董卓軍の一軍であり、異世界から来た呂布。

 

・呂玲綺 :出典『恋姫夢想』

 

董卓軍の呂布隊の呂布の補佐役で、呂布の義娘である。

正体は、もう一人の呂布奉遷。

 

・北郷一刀 :出典『恋姫夢想』

 

もう一人の呂布と一緒に現れた北郷一刀。

呂布を残して、消滅する。

 

・張角 :出典『恋姫夢想』

 

黄巾達の首領。

誰かに頼まれて、乱を起こすが失敗して処断される・・・生き返り左慈と一緒に洛陽へ向かう。

 

・左慈 :出典『恋姫夢想』

 

見習いの妖術師。

生き返った張角達と一緒に洛陽へ向かう。

説明
恋姫†夢想×三極姫 〜選ばれし英雄達〜 の黄巾の乱編の完成版です。
今までのを一つにまとめました。

これで、黄巾の乱編の投稿は終了です。
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