恋姫英雄譚 鎮魂の修羅26の4
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拠点・季衣・流琉

 

 

 

 

 

ドンドンドンドン

 

辺りに響き渡る太鼓の音

 

現在、陳留の街中では華琳主催の料理大会が開催されていた

 

麗春が華琳に話を持ち掛け、面白そうである事と同時に黄巾党の後処理の気分転換を兼ねて開催する事となった

 

司会「さあさあさあさあ、抜き打ちで始まりました陳留料理大会!!!」

 

そこには、麗羽の武闘大会で司会を務めた眼鏡の女の子がいた

 

どうやら、司会の仕事をしながら国中を渡り歩いているようだ

 

司会「今大会は、各選手にお題に従った料理を作って頂き、審査員の方々に食べ比べて頂き一番と思った料理に一票を投じ一番票を獲得した選手が勝者となります!!!審査員は、この御仁の方々だ!!!」

 

華琳「どうも、審査員の曹孟徳よ」

 

季衣「楽しみだな〜、どんな料理が出て来るんだろ〜♪」

 

秋蘭「うむ、お手並みを見せてもらおう」

 

梨晏「やっほ〜、皆頑張ってね〜♪」

 

桂花「華琳様に不精巧なものを出したら、その場で死罪なんだから!」

 

凪「お題は、辛いものがいいかな」

 

司会「美食家で大変有名な陳留刺史、曹操孟徳様!怪力大食漢、曹孟徳親衛隊、許?!曹操様を影ながら支える縁の下の力持ち、夏候淵妙才!冀州武闘大会で大立ち周りを演じた江東の勇者、太史慈!お前大丈夫か!?曹操様至上主義万歳、ドM軍師、荀ケ!この陳留の治安を守る警邏隊隊長であると同時にこの国一と言っても差し支えない辛党、楽進文献!この曲者揃いの審査員に立ち向かう勇者達は、この御三方だ〜〜!!!」

 

流琉「どど、どうも、典韋です!////////」

 

麗春「司馬仲達だ、我が膳に掛ける想い、しかと見てもらいたい」

 

一刀「幽州宰相、北郷一刀です」

 

「「「「「おおおおおおおおおおおおおお〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」」」」」

 

この紹介に、観客達は大層な賑わいを見せる、特に一刀の名声は国中に知れ渡っている為、婦女子の盛り上がりが一層際立つ

 

司会「審査員許?と同じ親衛隊の一員、典韋!しかし、その料理の腕前は、曹操様もお認めになられるほど、帝の専任料理人として召し抱えられてもおかしくない!もう一人は、その典韋も認める腕を持つと言う司馬懿仲達!司馬八達の次女であるが故に下に六人の妹を抱え、その世話に奔走していた彼女の腕前は専業主婦も頭が上がらない!さらにさらにさらに、私は喜びに打ち震えています!!かつて冀州の武闘大会で素手で華雄選手と太史慈選手二人を手玉に取った、天の御遣い北郷一刀様!!!典韋選手と司馬懿選手も無類の腕を誇る事は確実ですが、この両者には決して無い天の知識を有している、一体どんな料理が出て来るのか全く想像出来ません!!!」

 

一刀「やあ、お仕事お疲れ様、いつもありがとね」

 

司会「お、おおおおお〜〜〜!!!!??覚えていて下さったんですね!!!!おまけにそのような労いの言葉をかけて下さるなんて、私、感激し過ぎて前が見えなく・・・・・・・・・・」

 

司会の子は、その場で仰向けに倒れてしまった

 

春蘭「おい北郷、貴様大丈夫なんだろうな!!?変なものを華琳様に出したら、即刻打ち首だからな!!」

 

沙和「ワクワクするの〜、一体どんな料理が出て来るのか全く分からないの〜♪」

 

真桜「同感やで、今後の発明に生かせるかもしれんしな〜♪」

 

燈「うふふふ、是非今後の参考にしたいですわね♪」

 

喜雨「正直、私も興味はある、天の料理には」

 

華雄「料理の事は分からんが、これもある意味戦場だな」

 

観客の中には、華琳の護衛の任に付く者や、客の抑止に務める者、あくまで観戦に興じる者などが居た

 

司会「おほん!失礼いたしました・・・・・今回のお題目は、主催者でいらっしゃる曹操様より出されます!!」

 

華琳「今大会最初のお題目は、甘味物よ」

 

司会「出ました〜〜!!女性なら三日に一度は口にしたい一品、日々の疲れを忘れさせてくれる至宝の時間、それを極限まで味あわせてくれる料理人は果たして誰なのか!!?」

 

季衣「わ〜〜い、丁度甘い物が欲しかったんだ〜〜♪」

 

秋蘭「最近甘味物は食べていなかったからな、楽しみだ」

 

梨晏「私も甘い物には目が無いからね、半端なものじゃ満足できないよ♪」

 

桂花「華琳様のお眼鏡に敵ったものじゃなければ、絶対に食べないんだから!」

 

凪「残念です、辛い物の方が良かったのに」

 

司会「では、お題目も決まったところで、早速調理に移って頂こうと思います、制限時間は半刻!!始めて下さい!!」

 

食材は、事前に選手の後ろに用意されており、開始の合図と同時に各々は其々の料理に必要な食材を片っ端から抜き取っていく

 

1時間と言う限られた時間で審査員6人分の菓子を作らなければならない為、其々がすかさず作業に打ち込む

 

司会「各々似た様な食材を手にしております、牛乳、卵、小麦粉、かたくり粉、どうやら似た様なものが出来上がる予感がします!!」

 

華琳「ふむ、全く同じものと言うのも味気ないわね」

 

桂花「ちょっと、一つでも被ったら承知しないんだから!!」

 

秋蘭「同じ物の食べ比べというのも面白そうではあるがな♪」

 

司会「典韋選手と司馬懿選手は混ぜ合わせた食材を薄く伸ばし始めました、どうやらこの両者は似た様なものを作るようです!!」

 

季衣「あ、なんとなく出来上がるものが分かるよ♪」

 

梨晏「ふぅ〜〜ん、あの二人は一般的なものを出してくるみたいだね」

 

凪「あれだと、饅頭かお団子に間違いなさそうですね」

 

流琉「(私が作るのは胡麻団子、皆さん美味しいと言ってくれればいいな)」

 

麗春「(ふっふっふ、司馬家に伝わる秘伝の包子、後で一刀にも食べてもらわねば♪)」

 

二人の傍らでは、既に小豆が鍋で煮られているので、どんなものが出てくるかこの会場に居る者全員が想像できた

 

司会「どうやらこの両者は、伝統的なお菓子で勝負をしてくるようです!!そしてそしてそして、今大会大注目の北郷一刀様!!!いったいどんなお菓子を作るのか、っておおお〜〜〜〜っと!!!??」

 

華琳「え!?どういう事なの!?」

 

季衣「すっごぉ〜〜〜い、兄ちゃん・・・・・」

 

秋蘭「・・・・・器用なものだ」

 

なんとそこには、左手でフライパンを操り生地の様なものを空中に放り投げ、右手で器の中の白い物体を箸で高速で掻き混ぜている一刀が居た

 

梨晏「ああ、あれね・・・・・一刀って両利きだから、あれくらいは出来ちゃうよ♪」

 

桂花「両利きですって!!?」

 

凪「凄い、一刀様♪」キラキラキラキラ

 

 

 

春蘭「ううむ、あればかりは私にはできないな」

 

沙和「すっごいの〜〜、沙和もあんなことが出来るようになりたいの〜♪」

 

真桜「あないなこと、両手に筆持って右と左で同時に違う字書くようなもんやで」

 

華雄「実際出来るぞ、北郷は」

 

燈「本当ですか!?ますます素敵な殿方みたいですね?////////」

 

喜雨「確かに凄いけど、それよりも・・・・・」

 

そう、問題は一刀が何を作っているかである

 

 

 

流琉「(え、兄様、一体何を作っているんですか!?)」

 

麗春「(おいおい、全く予測が付かないぞ!)」

 

ついつい一刀の手に目が行ってしまう二人

 

調理工程を見ても一体どんな菓子が出来上がるのか全く想像も付かない

 

出来れば今作っている料理を放り出してじっくり観察したいところであるが、選手として競う立場にある以上手を休める事は出来ない

 

そして一刀は、数枚の生地を作り終え、白い物体が入った器を傍らに置き次の作業に移る

 

ここでも、両利きの利が冴える、左手に団扇を持ち今作った生地を扇ぎ、幾つか取って来た果物を左肘で固定し、右手の包丁で素早く薄くスライスしだした

 

華琳「・・・・・まさに芸術的ともいえる手際ね」

 

季衣「凄い凄い、兄ちゃ〜〜〜ん♪」

 

秋蘭「うぅむ、本当に器用な奴だ」

 

桂花「何よあれ、これは料理大会であって雑技大会じゃないのよ」

 

梨晏「何言ってるの、これもこういう大会の見所の一つじゃん♪」

 

凪「・・・・・・・・・・」キラキラキラキラ

 

流琉「・・・・・はっ!?いけないいけない、集中しないと!////////」

 

麗春「おっと、すっかり見惚れてしまっていたな///////」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

司会「終了です!!!各自手を止めて下さい!!!」

 

そして、制限時間がやってくる

 

流琉「ふぅ、何とか間に合いました・・・・・」

 

麗春「かなりギリギリだったな・・・・・それにしても、一刀の奴・・・・・」

 

一刀「んぅ〜〜・・・・・良い香りだなぁ♪」

 

目をやると、そこにはお茶を淹れながら優雅に過ごす一刀の姿があった

 

流琉「兄様、もう出来てしまったんですか?」

 

一刀の作った菓子は容器の中に入っていて確認する事は出来ない

 

しかし、調理工程を見ても何かとんでもないものであるのは確かである

 

司会「では早速審査と参りましょう、誰から審査をするのを決めるのは、もちろんこの人!!」

 

華琳「では、最初は司馬懿からにしましょう」

 

麗春「おお、我が司馬家に伝わる秘伝の包子をご堪能あれ♪」

 

華琳「・・・・・中々の味ね」

 

季衣「わぁ〜〜、麗春様の包子、美味しぃ〜〜♪」

 

秋蘭「うむ、美味だ」

 

桂花「料理の腕だけは認めるわよ」

 

梨晏「うぅ〜〜ん、幸せな気持ちになるなぁ〜〜♪」

 

凪「甘い物も、悪くはありませんね」

 

其々が包子を頬張り、味を堪能していく

 

華琳「ふむ、中の餡にとろみがあるわね」

 

秋蘭「はい、これは餡の中に何か特殊なものを入れているか、調理法が違っているかのどちらかですね」

 

凪「まるで麻婆のような触感があります♪」

 

麗春「よくぞ気付いてくれた!それこそが我が司馬家に伝わる秘伝の調理法である!もちろん秘伝だから秘密ではあるがな!」

 

司会「さあ、あっという間に平らげてしまった審査員の方々!!司馬家秘伝の味、私も堪能してみたいです!!」

 

華琳「では次に行きましょう、次は典韋よ」

 

流琉「は、はい、どうぞお召し上がりください!////////」

 

季衣「わ〜〜い、流琉の得意な胡麻団子〜〜、いっただっきま〜〜す♪」

 

秋蘭「うむ、見事な胡麻団子だ♪」

 

梨晏「モチモチしてて、歯ごたえ抜群だね〜♪」

 

桂花「はむはむ・・・・・うん、胡麻の食感と餡の甘さが絶妙ね」

 

凪「はい、流琉様のお菓子は、どれも美味しいです♪」

 

華琳「ふむ、司馬懿の包子と典韋の胡麻団子、どちらも甲乙付け難いわね♪」

 

司会「こちらもあっという間に平らげてしまった審査員の方々、その見事な食べっぷりは否が応でも美味しいと想像出来てしまう!!が、しっか〜〜〜し、このお方を忘れてはいけません、天の御遣い北郷一刀様!!!容器の中に入れてしまってその全貌は分かりませんが、調理工程を見る限り未だ嘗て無いお菓子であるのは明白!!!いったいどんなお菓子が飛び出すのかドキドキものです!!!」

 

華琳「では一刀、天の菓子の手並みを見せてもらうわよ」

 

一刀「天の菓子って言うのは大袈裟だけど、まぁ似た様なものだからいいか、俺が出すのは・・・・・こちらです」

 

そして、両手で優しく容器を持ち上げ、その全貌が明かされる

 

司会「おおおおおお〜〜〜!!!??まさしく前代未聞なものが出てきました!!!一体どういうお菓子なのでしょうか!!!?」

 

出て来たのは、数種類の果物が散りばめられた純白の綺麗な円形に整えられた物体だった

 

 

 

春蘭「な、何なのだあれは!!?」

 

沙和「わぁ〜〜〜綺麗なのぉ〜〜〜♪」

 

真桜「あかん、ウチも食べとうなってきた」

 

燈「まあまあまあまあ、是非ご相伴に与りたいものね♪」

 

喜雨「・・・・・(ごくり)」

 

華雄「ううむ、私も是非に食してみたい」

 

 

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

季衣「うわぁ、あんなの見た事ないよぉ〜〜・・・・・」

 

秋蘭「・・・・・なんと」

 

梨晏「うわぁ〜〜〜お、まるで宝石みたいだね♪」

 

桂花「・・・・・綺麗なのは認めるけど、見た目だけじゃないでしょうね」

 

凪「・・・・・・・・・・」キラキラキラキラ

 

これまで見た事の無い代物に、一同は目ん玉を皿のようにしていた

 

一刀「こちらが、皆様が天の菓子と称している、ショートケーキでございます」

 

流琉「しょ、と・・・・・けーき?・・・・・」

 

麗春「おいおいおいおい、斬新過ぎすだろう!?」

 

それは、選手として舞台に立つこの二人も同様だった

 

一刀「では、食べやすいよう切り分けます」

 

そして、一刀は腰の兼元を抜きショートケーキにあてがう

 

秋蘭「なぜ、腰の物を使うのだ?」

 

一刀「包丁だと、潰れてしまって形が崩れてしまいますから、切れ味の良いこちらの方が形を崩さずに済みますので」

 

桂花「どうでもいいけど、さっきから何よその口調は、気持ち悪いわね」

 

一刀「これが、天の接客作法です、お気になさらず」

 

要するに執事であるが、説明するのは面倒なのでスルーさせてもらう

 

そして、兼元を三回入れてきっちり六等分とする

 

開かれた切り口からは、きつね色に焼かれた物体とその間に挟まった白い物体とその中に埋められた薄くカットされた果物が合わせて三層見えており、見ているだけでも好奇心を掻き立てる

 

それらを小皿に移し、審査員に一皿ずつ配っていった

 

ちなみに、傍らにはレンゲが添えられている、今の大陸にはスプーンやフォークなどのカトラリーは存在しないのでこれで我慢するしかなかった

 

一刀「どうぞ、お召し上がりください」

 

そして、勿体ないと思いながらも恐る恐るレンゲで形を崩し口に運ぶ一同

 

華琳「・・・・・こ、これは!!?//////」

 

季衣「うわぁ〜〜、フワフワだよぉ〜〜♪///////」

 

秋蘭「うむ、美味だ♪///////」

 

梨晏「うぅ〜〜む、ほっぺたが落ちそうだよぉ〜〜〜♪///////」

 

桂花「もぐもぐもぐもぐ・・・・・/////////」

 

凪「はぁ〜〜〜・・・・・辛いもの以外で幸せを感じる事があるなんて♪///////」

 

これまで味わった事の無い食感に審査員達は夢中になって口に運ぶ

 

季衣「兄ちゃん、無くなっちゃったよ!もっと無いの!?」

 

一刀「申し訳ありません、今皆様が食したもので全てです」

 

これは、一般的にはあまり知られていない事だが、実はショートケーキは日本が発祥なのである

 

よく、こういったものは欧米から輸入されたものと思われがちであるが、欧米でショートケーキの事を話しても、「何それ?」と言われるだけで、販売もされておらず殆んど認知されていないのだ

 

そして、あっという間に審査員全てが完食してしまった

 

美味しさの余り口に運ぶのがこれまでの料理より圧倒的に早かった

 

一刀「口直しに茉莉花茶をどうぞ」

 

そう、一刀が余った時間で淹れていたお茶は、茉莉花茶(ジャスミン茶)だった

 

本来ジャスミン茶は中華などの油くどい物を食べた後に飲むものだが、中国でもこういったスイーツは食後に食べるのでありであろう

 

本当はショートケーキには紅茶かコーヒーが一番合うのだが、今の時代の中国にはそんな飲み物は無いのでこれで我慢するしかなかった

 

これを丁寧に、一碗ずつ入れていき、審査員に配っていった

 

華琳「・・・・・ふぅ、後味は最高ね」

 

季衣「はぁ〜〜、すっきりしたぁ〜〜♪」

 

秋蘭「うむ、甘味物ばかりだと胃が靠れるからな」

 

梨晏「ここが一刀の良い所だね〜♪」

 

桂花「気がきくじゃない、全身精液男にしては」

 

凪「ありがとうございます、一刀様♪」

 

一刀「喜んで頂けて何よりです」

 

そして、全ての食器を片付けて、一刀は元の調理場に戻っていった

 

司会「さあ、全ての料理が食された所で審査に入ります!!審査方法は簡単です、より美味しいと思った料理の番号の札を一斉に上げて頂きより多くの番号が上がった選手が勝者となります!!一番が典韋選手、二番が司馬懿選手、三番が北郷一刀様!!一体誰が今大会最初の栄冠を勝ち取るのでしょうか!!?では、一斉に札を上げて下さい、どうぞ!!!」

 

そして、当然の如くと言った所か、一斉に3番の札が上げられる

 

司会「おおおおお〜〜〜〜!!!満場一致で北郷一刀様の優勝が決まりました〜〜〜!!!やはりこのお方はとんでもないお人です、これだけの曲者揃いの舌を唸らせる敏腕、まさに天が我々に与えて下さった御遣い様です!!!」

 

華琳「典韋と司馬懿の菓子も申し分ない味だったわ、100点満点と言っても過言ではない・・・・・しかし、世の中には200点、1000点、下手をしたら1億点の料理が存在する、見た目の美しさ、甘美さ、独創性、そして食べ終わった後の気遣い、文句の付けようがないものだったわ」

 

季衣「ごめんね流琉、麗春様〜、僕どう考えても兄ちゃんが一番にしか思えないよ〜」

 

秋蘭「それは正しいぞ季衣、いかに公正な判断を下せるかと言うのも将には必要な事だ」

 

桂花「本当は絶対、ぜ〜〜〜〜〜ったいに認めたくないけど、華琳様がお認めになられるなら仕方ないじゃない///////」

 

梨晏「素直じゃないね〜、心の底から美味しいと思ったくせに〜♪」

 

凪「同感です♪」

 

流琉「兄様!!!是非そのしょーとけーきというものの作り方を教えて下さい!!!」

 

麗春「私も頼む、我が司馬家の新たな秘伝として後世に残したい!!!」

 

もはや勝敗などどうでもいいのか、料理人の感性を刺激された二人が一斉に教えを乞う

 

春蘭「北郷、私にも食べさせろ!!!」

 

沙和「沙和も食べたいの〜♪♪」

 

真桜「ウチも食わせて〜な〜〜♪♪」

 

燈「私も御相伴に与りたいものです♪」

 

喜雨「わ、私も食べたい・・・・・//////」

 

華雄「太史慈だけ狡いぞ、私の分も作れ、北郷!!!」

 

一刀「おいおい、分かったから待ってくれって!!」

 

流琉と麗春だけでなく、元々料理には人一倍煩い華琳と秋蘭までもが加わり、この四人に教えながら再び調理を開始する

 

本来、ショートケーキを作るには、準備・計量で20分、生地作りで10〜15分、焼きに30〜40、冷ますのに最低1時間

 

本当はここで、スポンジを一晩置いた方がいいのだが、すぐにデコレーションするなら、フルーツをカットしシロップを作ったり、スポンジをスライスしたり生クリームの泡立てで30分、デコレーションして完成させるのに20分

 

スポンジを冷ましている間にデコレーションの準備をするとしても、手馴れてる人が手早く作っても、合計2時間半くらいは掛かってしまう事になる

 

初心者なら、準備などに手間取るものなので、余裕を持つなら倍の時間は見た方がいい

 

しかし、実は一刀はショートケーキを作るのはこれが初めてではなく、この世界に来る前に数回作った事があり、この世界に来てからも足りない材料の代わりになるものを既にいくつか見つけ出していて、白蓮達に何回か味見をしてもらってこちらの舌に合うよう改良を重ねていたのだ

 

準備は、既に必要なものはあったので必要はなく、計量は頭の中に入っていて目計りで十分だったので必要ない

 

スポンジを作る為の生地作りは、どう足掻こうと必要なので10分ほどの時間を掛けたが、今回一刀がスポンジ代わりに使ったのは、なんとホットケーキだった

 

しかも一般家庭で作られているどら焼きの様な形のものではなく、きっちり円形に形の整えられたふっくらした物だった

 

これは、この大陸にはまだオーブンが無かったため、という如何ともし難い理由があったからなのだが

 

このホットケーキにもちょっとした工夫がある、デコレーションする時に重みで潰れないよう下の方は堅めに焼いてあるのだ

 

その間にもう片方の手でホイップクリームを作っていたので、ここでも時間短縮に成功していた

 

ホットケーキを団扇で扇ぎ冷ましつつ、デコレーションする為の果物をカット

 

シロップは、作らなくても十分美味しいので省いた

 

デコレーションに10分弱をかけて完了

 

このショートケーキ作成にかかった時間は、なんと50分

 

残りの時間は、茉莉花茶を淹れながら余裕を持って過ごす事が出来た

 

そして、一同のご期待に応え、一刀はショートケーキ3セットを作り上げたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

季衣「はぁ〜〜〜、美味しかったぁ〜〜♪♪」

 

流琉「本当に美味しかったです、ありがとうございます兄様、調理法を教えて頂いただけでなく、ご馳走になっちゃって♪」

 

一刀「いいや、喜んでもらえて何よりだ」

 

現在、一刀は季衣と流琉と共に街の散策をしていた

 

麗春も共に行くと言っていたが、今大会最初の言いだしっぺであったため、華琳に後片付けを命じられ否応なく諦めた

 

季衣「それにしても、兄ちゃんって凄いね、あんなに美味しいものをあんな簡単に作れちゃうなんて♪」

 

流琉「はい、とても尊敬します♪」

 

一刀「いや、あれはあれで結構高くついたりするんだよな、これが」

 

季衣「え、そうなの?」

 

一刀「ああ、材料もありきたりのものをなるべく選んでいるつもりなんだけど、それも今は結構高価だからな」

 

今の時代の中国では、ショートケーキ1つを作るのもかなりの贅沢なのだ

 

かつての日本の様に大量生産するだけの技術があればなんてことはないが、そのようなものがあれば誰も飢えずに済んでいるのだ

 

ここは華琳が統治する陳留だから、物流も他と比べれば盛んで相応の材料が手に入ったからこそ作る事が出来たのだ

 

一刀「俺の目標は、この大陸の皆が飢えずに済むようにする事だ、その為には農や養豚養鶏、あとは牛の飼育にも力を入れないとな」

 

既に幽州ではその為の研究が着手され始めている

 

しかし、農業はいいのだが、養豚養鶏、牛を育てる為にはそれ相応の牧草地が必要になってくる

 

残念ながら幽州にはそのような、いい具合に動物達を飼育出来る土地はなかなかないのだ

 

そこで一刀が目を付けたのは、万里の長城より北に居を構える烏丸をはじめとした鮮卑と匈奴などの異民族だった

 

彼らが住んでいる土地は広大な面積を誇る平野で、これらの動物を飼育出来る牧草地には困る事が無い

 

漢帝国とこれらの異民族は犬猿の中で、だからこそ万里の長城などと言うベルリンの壁が築かれてしまっているのだが、もうすでに出来上がってしまっているのでは仕方ない、交易所として利用する以外にないだろう

 

厳密に言えば、今もなお建築中で完成したのが明の時代と言われているが

 

彼らに養豚養鶏、牛の飼育の技術を伝え、それらをこちらが買い取り、必要なものを提供する市場を作り出す

 

元々遊牧民族なので、今までやって来た事にいくつかの捻りを加えるだけで上手くやれるだろう

 

こうして相互利益を生み出し、お互いに必要な存在となっていけば今後彼らと中国はいがみ合う事は無くなる

 

その為にも、急いで動物育成の研究を推し進め彼らにも分かるマニュアルを作らなければならない

 

季衣「凄いよ兄ちゃん、皆がお腹一杯になれば争いなんて起らないよ♪」

 

流琉「はい、とても素晴らしい事です♪」

 

一刀「その為には、なんとしても漢王朝を正し、華琳に覇道なんて人殺しの道を歩ませてはならないんだ」

 

季衣「・・・・・・・・・・」

 

流琉「・・・・・・・・・・」

 

一刀「ん、どうした?」

 

季衣「ねぇ兄ちゃん・・・・・華琳様のやろうとしている事って、そんなに間違っているのかな?」

 

流琉「はい、華琳様だって皆の事を考えているのは同じだと思いますけど・・・・・」

 

一刀「間違っているに決まっているさ、戦場と言うこの世の地獄を生み出し数えきれないほどの多くの人々を殺し路頭に迷わせ、田畑を壊し飢え死にさせる、そんな事をする大人が正しいと思うのか?」

 

季衣「それは・・・・・その通りだけどさ・・・・・」

 

流琉「でも、それは全ての大人に言える事だと思いますよ、華琳様だけのせいじゃないはずです」

 

一刀「そうだ、人はふとしたきっかけで、傷付ける側にも傷付けられる側にもなってしまう、そうならない為にはお互いの事を思いやる必要があるんだ・・・・・だけど、それをしようとしない人間が多過ぎるんだ、みんな自分達の利しか求めないから、多くの子供達が泣く事になるんだ」

 

そう、戦争が起きて一番不幸になるのは、季衣や流琉のような無垢な子供達である

 

馬鹿な大人達が巻き起こす下らない意地の張り合いに巻き込まれ、その大人達に影響され同じ事を起こす大人に成長してしまう

 

まさに負のスパイラルとしか言いようがない

 

季衣「でも、大人の人達だって、今の朝廷に散々に振り回されていると思うけど・・・・・」

 

流琉「はい、一概に大人の人達全てが悪いと言う事にはならないんじゃないですか?」

 

一刀「いいや、子供達の笑顔を奪う大人なんて、間違っているに決まっているだろ」

 

季衣「・・・・・そうだよね・・・・・うん、その通りだよ、兄ちゃん♪」

 

流琉「はい、兄様は正しいです、間違っていません♪」

 

盗賊、人攫い、役人の腐敗、官軍の横行

 

これまで、子供達の笑顔を奪う大人ばかりを目の当たりにしてきた二人

 

そんな二人からしてみれば、一刀の言動はとても素晴らしく、眩しく見えた

 

そして、この子達の、この笑顔を守る為にも、必ず漢王朝を正そうと再び心に固く誓う一刀であった

 

しかし

 

秋蘭「北郷、それくらいにしてもらおう」

 

一刀「?・・・・・秋蘭」

 

季衣「あ、秋蘭様」

 

流琉「秋蘭様?」

 

このやり取りに、いきなり秋蘭が割り込む

 

秋蘭「この子達に、歪んだ事を吹き込まないでもらいたい」

 

一刀「歪んだ事だって?俺は真っ当な事を言っているつもりだぞ」

 

秋蘭「その通りだ、北郷の言っている事は真っ直ぐで至極真っ当な事だ・・・・・だが、お前の言っている事は、いずれこの子達を戦場で殺す事に繋がる」

 

一刀「何を言う!?そんな悲劇を起こさせない為に俺は・・・・・」

 

秋蘭「北郷よ、お前の言っている事はただの詭弁でしかないんだ」

 

一刀「詭弁だって!!?」

 

季衣「に、兄ちゃん・・・・・秋蘭様・・・・・」

 

流琉「・・・・・・・・・・」

 

いきなりの険悪な雰囲気に、季衣と流琉は黙り込んでしまった

 

一刀「秋蘭は、季衣や流琉に人殺しの汚名を被せたいのか!!?」

 

秋蘭「それは汚名ではない、名誉であり武功だ」

 

一刀「なにが名誉だ!!なにが武功だ!!それこそ殺戮者が作り出した都合の良い詭弁だ!!」

 

よく、英雄と殺戮者の違いは戦争で大量に人を殺した者か、武装もしていない一般人を大量に殺した者と言われる事があるが、一刀にとってこの両者はまったく同じにしか映らない

 

客観的に見ればそうであろう、仮に闇討ちの暗殺で人を斬った者が人斬りで、正々堂々の決闘で人を斬った者が剣豪であったとしても、それで結果的に人の斬殺死体が出来ていれば結局やっていることは同じこと

 

更に言えば、仮に無抵抗な人間を100万人殺した者が大量殺戮者で、合戦で100万人殺した者が英雄だったとしても、それで結果的に前者と同じだけの死人が出ていたら結局やっている事は同じ事でしかないのだから

 

決闘や合戦と言う名の処刑場である

 

かつてのアウシュヴィッツでユダヤ人を大量に虐殺したヒトラー、天下統一と言う野望の下に領土を拡大する為に敵兵だけでなく一般人を次々と虐殺していった始皇帝、重税による一向一揆で自国の民を一方的に殺した信長、日本各地を空襲し多くの一般人を巻き添えにしたフランクリン・ルーズベルト

 

これ等の人物達がやった事に違いはあるだろうか?

 

ある訳がないだろう

 

秋蘭「それが詭弁だと言っているんだ」

 

一刀「詭弁であってたまるか!!」

 

季衣「止めてよ、兄ちゃん、秋蘭様!」

 

流琉「そうです、二人が喧嘩する所なんて見たくないです!」

 

一刀「・・・・・すまない」

 

二人の声で我に返った、そして気付いた

 

今自分がやっていた事も、結局は馬鹿な意地の張り合いに過ぎない事を

 

一刀「ごめんな、季衣、流琉・・・・・少し頭を冷やしてくる・・・・・」

 

そして、悲壮な面持ちで一刀は一人街に繰り出したのだった

 

秋蘭「・・・・・すまない、見苦しい所を見せてしまった」

 

季衣「秋蘭様・・・・・兄ちゃんの言っている事って、そんなに間違っていますか?」

 

流琉「私も兄様は正しいと思います・・・・・」

 

秋蘭「確かに、北郷の言っている事は正しい・・・・・私は北郷の言った事を詭弁と言ってしまったが、それは本意ではない・・・・・だが、どれだけ正論で真っ当な事であろうと、一度状況がひっくり返ってしまえば、それは詭弁となってしまうのも事実だ」

 

季衣「・・・・・難しいなぁ」

 

流琉「はい、世の中と言うのはよく分かりません・・・・・」

 

秋蘭「今はそれで良い、だがこれから先お前達が大人になった時、私が言った言葉を思い出して欲しい、そして考えるんだ・・・・・お前達なりの答えを」

 

季衣「・・・・・そんな事言われても」

 

流琉「はい、正直想像できません・・・・・」

 

秋蘭「私達に出来る事は、お前達をいずれ来たる戦場から無事に生還させる事、そしてその為に訓練させる事・・・・・これだけなんだ」

 

季衣「・・・・・・・・・・」

 

流琉「・・・・・・・・・・」

 

秋蘭「すまない、そして許してくれ・・・・・お前達に覇道と言う茨の道を押し付ける私達を・・・・・」

 

悲痛そうな面持ちで謝罪の言葉を発しながら、秋蘭は深々と頭を下げた

 

季衣「そんな、頭を上げて下さい、秋蘭様・・・・・」

 

流琉「はい、兄様の言っている事も正しいのは分かりますけど、秋蘭様や華琳様の気持ちも分かっているつもりですから・・・・・」

 

秋蘭「本当に、すまない・・・・・」

 

頭を上げて、季衣と流琉の顔を真っ直ぐに見れない

 

こんなにも若い子供達の人生を台無しにしてしまうかと思うと、胸が苦しくて仕方がない

 

そして、この子達の笑顔を奪う事しか出来ない、戦場に送り出す事しか出来ない、人を殺させる事しか出来ない

 

そんな無力な自分を秋蘭は嘆いていた

説明
沿州拠点・パート4
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コメント
なんとなくですけど、刀が(偶然でも)抜けたりしたらどうなるんだろう…(ガクガクブルブル)(弥生流)
そう言ってもらえると、こちらとしても嬉しいです、こんな幼稚な戯曲ですが、楽しんでいただければ幸いです(Seigou)
最近更新が凄く待ち遠しいです。新しいのが出てると「おっ!?」と思いますね(恋姫大好き)
大好きさんへ、ご指摘ありがとうございます(Seigou)
誤字 季衣「ごめんね琉琉、麗春様〜、僕どう考えても兄ちゃんが一番にしか思えないよ〜」流琉が琉琉になってます(恋姫大好き)
こいつとヴェンデッタのヴァルゼライド総統閣下と対話させてみたい。こいつは、間違いなく総統閣下の英雄譚を全否定するだろうがこいつが弁舌で総統閣下に勝てるとは思えない。逆に、総統閣下に言い負かされると思う。(田中一郎)
一刀の場合、「自分の言った事を誠実に守った為に死んでしまった」事でも起こらない限りは自分もまた結局は他人の考えを踏み潰して自分の考えを押しつけているだけだという事には気付けないでしょう。……ただ、糜姉妹の件で既に種は播かれていますが。(h995)
一刀はここに来た時痛い目にあってるけど逆に火に油注いだんだよなぁ、まああれがあってもなくてもこのやり取りは変わりないだろうけど、それにしたって両方揃って頑固すぎる、どっちももう少し歩み寄れやいい加減(未奈兎)
流石にここまでくると、一刀のほうが痛い目みないとわからないような・・・。(kazo)
ほのぼのしてたのに最後にギスギスしたな^^;(nao)
誤字 季衣「(私が作るのは胡麻団子、皆さん美味しいと言ってくれればいいな)」多分季衣ではなく流琉の台詞かと思います(恋姫大好き)
更新お疲れ様です(恋姫大好き)
だから、どうにか出来る余地がある内に出来る事をやればい良いのに何故『ソレ』が解らないかな〜。 どいつもこいつもよ〜。溜息(劉邦柾棟)
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