マイ「艦これ」「みほ2ん」第52話<電気羊の夢>
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「艦娘を機械的なものとしか見て居ないようですからね」

 

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マイ「艦これ」「みほ2ん」

 第52話 <電気羊の夢>(改2.2)

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 世間は、お盆に突入する。

 

 私が指令室前の廊下で海を見ていると青い髪の艦娘が聞こえよがしに呟いた。

「巷(ちまた)は、お盆休みですねぇ……良いな」

 

「わざとらしいな青葉さん」

「えへへ」

……最近では艦娘と自然に、こんな普通の会話が出来るようになった。

 

 中でも青葉さんは特別だ。変に馴れ合っているつもりはないが彼女とは不思議とウマが合う。きっとサイクル(周波数)が近いのだろう。

 

そんな彼女は私の側に来て美保湾を見詰めて言った。

「暑さ寒さも彼岸まで……ですか」

 

「そうあって欲しいな」

こんな対話が私と自然に出来るのが彼女だった。日向と北上を足して2で割った感じだろうか?

 

 こんな状況からも私は艦娘だって普通の人間と何ら変わらないよなと思うのだ。

 

「やはり山陰でも十分に暑いのう」

そう言いながら利根が指令室から出てくる。心なしか彼女のリボンまでダレているようだ。

 

 彼女は私を見つけると言った。

「司令殿、指令室にはエアコンは入らぬか?」

「申請はしているが」

 

「うん、それは必須ですねぇ」

青葉さんも同意する。

 

 そんな会話が艦娘たちと進む。そういえば利根も私とウマが合う子だな。

 

 そのとき私は何気なく「あれ?」と思った。青葉さんと利根そして日向……性格は、それぞれ違うが何か共通点があるような気がしたのだ。

 

 私が難しい顔をしているのを見て利根が言う。

「どうかしたのか?」

「いや別に」

「……そうか」

 

 何かを言いたそうな彼女だったが私の口調から何かを察したように再び指令室へと戻って行った。利根も索敵担当だけあって意外と気が利く子だ。

 

 ……そうか、さっきの三人は皆、外見と内面の落差がある子たちだな。私は腕を組んだ。

 

すると青葉さんが言う。

「敵への緊急出撃は、ほぼ毎日あるから利根さんも大変ですねえ」

「そうだな。だが美保湾から日本海にかけて大規模戦闘は少なくなった」

 

私が言うと彼女は頷いた。

「だいたい山陰って大きな輸送航路もないですから」

 

私は苦笑した。

「ああ……以前は朝鮮と境港を結ぶ航路があったが深海の連中が来てからは、それどころではない」

 

「ここは九州(佐世保)と北陸(舞鶴)の中間ですからねえ」

その発言に感心する私。

 

「青葉さんは地理も良く把握しているな」

「えへへ」

 

私は大山を見詰めながら言った。

「山陰の敵の来襲は、この程度が普通だよな……私の着任直後のゴタゴタは、あの深海棲艦(大井・仮)の執念の賜物だろうと思う」

 

「そうですね」

青葉さんは特に否定しなかった。

 

「あいつ」も本来の任務があるのか分からないが、ここのところ来襲しない。

 

私は確認がてら聞いてみる。

「だいたい舞鶴とか呉などは連日、敵襲があるんだよな」

 

「はい。青葉の聞く限りでは、そこに所属する艦娘たちが連日戦闘に駆り出されてます」

彼女は淡々と答える。

 

「扶桑や金剛は、ここは天国だと言うが……それで良いのかな?」

「……」

青葉さんは黙った。さすがに、これは彼女に聞く質問ではないか。

 

 すると青葉さんは自分から話題を変えてきた。

「あの鎮守府の小型軍用車の始末書が大変だったと伺っています」

 

「ああ。さすが情報通だな」

私は苦笑した。

 

彼女は言う。

「もともと、あの型式は美保には2台しかないんですよね」

 

「知っている。その一台をこの前、水路でぶっ壊したんだ」

そこまで言うと私は青葉さんがニタニタしているのに気づいた。

 

「あのときの通信は録音しておけば良かった……」

「あ、こいつめ!」

私は怒る真似をした。

 

「きゃー、怖い」

おどけた彼女の反応に私は思わずハッとした。

 

「あれ? どうかしましたか?」

上目遣いに私を見る彼女。

 

一瞬静止していた私は言った。

「いや、ホントに艦娘と言えども普段は普通の少女なんだな」

 

「えぇ? 何だと思っていたんですか?」

少し口を尖らせる彼女だったが、ちょっと間を置いてから私に言った。

 

「まぁ、どの司令も提督も青葉たち艦娘を機械的なものとしか見て居ないようですからね、仕方ないです」

少し寂しそうな表情を見せる彼女。

 

「……」

何も答えられない私に彼女は続ける。

 

「いえ、司令を責めているのでは無いですよ」

「あ、ああ」

お互いに苦笑した。

 

 それから青葉さんは、ちょっと整理するように言った。

「日向だって利根だって、それぞれ真面目とか自信家という一面も確かにありますけど」

 

ここで一呼吸置く彼女。

「でも、それが全てじゃないんです。司令は気分を害されるかも知れませんが日向と司令のやり取りを彼女が仮に意図的に無線で流したとしても、それは司令を困らせようとか言う考えは無いんです」

 

「意図的……」

顔をしかめて何かを言いかけた私を静止した彼女は一気に畳みかける。

 

「そもそも決まり事とか通信の機密保持には人一倍うるさいのが日向なんですよ。分かります? この意味」

 

「あ?」

何かを悟った私に青葉さんは『してやったり』という顔をする。

 

「まさか……そんな」

少し狼狽する私に青葉さんはスッと近寄ると、抑えた声で言う。

 

「青葉も艦娘に、こんな変化があり得るのかな? ……って不思議だったんですけど。でも美保で起きつつある事実は受け入れようと思います」

 

「は?」

何のことだ?

 

「つまり、あの日向が司令には心を開いている証拠だと思うんです」

「……」

 

彼女は大きな瞳で続ける。

「日向だけじゃありません。他にも何人も……あ、でも誤解しないで下さいね。それって青葉も良く分からない感情ですけど艦娘と人間の感情の交流は対等ではないんです」

 

「えっと……つまりそれは、どういうことかな?」

「はい、私たち艦娘から司令に向ける感情と司令から私たちに来る感情は種類が違う……としか表現出来ません。済みません」

 

難しいな。

「……何となく分かる気はするが」

 

青葉さんは頷く。

「えへへ……その感情って青葉も分かりませんけど……でも司令が来て美保が変わりつつあるのは事実です。それに、あの秘書艦も流れを作っているんですよ?」

「え? まさか?」

 

彼女は舌を出す。

「はい。でもこれは青葉が個人的にそう思うだけなので司令と青葉の間だけのやり取りにするってコトで約束して下さい」

 

……やれやれ、と思った私は「あれ?」と思った。

「その約束したいコトって青葉さんの感情も日向のそれと似ているのかな?」

 

「……はい、恐らく」

珍しく、ちょっと恥ずかしそうな表情をしている彼女。

 

「これは……きっと私たち艦娘が持つ夢なんです。それが今、もしかしたら叶うチャンスを迎えているのかも知れません」

妙に清々しい笑顔を浮かべている青葉さん。

 

「……」

私は、その時ふと思った。

 

この美保鎮守府というのは何か壮大な実験を目論んでいるのではないか?

「青葉……」

 

「はい?」

 私が今考えたことを彼女に聞こうと思ったが止めた。きっと青葉さんの食いつきは良いだろうけど、まだ思いつきの段階だから。

 

「いや、何でもない」

「……」

何か突っ込まれるかと思ったけど彼女は青葉さんは黙っていた。

 

 そもそも私の墓参だって休暇でも何でもなかった。秘書艦である祥高さんの思い付きだったわけだ。

 

その祥高さんといえば、あの秘書艦が何かの鍵を握っているのではないだろうか?

 

 私が悶々としていると青葉さんが聞いてくる。

「司令、ちょっと疲れてません?」

 

「ああ、お盆の件や、この前、中国地方の統括官に絞られたばっかりだからな」

 

私が言うと彼女も苦笑した。

 

 私は統括官の言葉を思い出していた。彼が渋い顔で言う。

「地元のパトロールに提督がわざわざ出向くのは良いとしてだ。解せんのは艦隊が大挙して大破した上に弾薬や砲弾の大量使用だ」

 

「……ああ、そのやり取り! 青葉も聞いてて手に汗握りましたよ」

彼女が喜ぶ。そういう話題には食いつきが良いな。

 

 えっと、確かその後は……

 

一緒に思い出す青葉さん。

「果てに民間施設を軒並み破壊して、とどめは軍用車を一台スクラップかね? これは一体、どういうことなのか? ……あはは」

 

よく覚えているな。

 

……そう先週は呉の地方監察官がやってきて、さんざん油を絞られたばかりだった。

「二度と御免だね」

 

「はぁ」

青葉さんも自分たちにも非があると思っているのだろう。少し頭をかきながら恐縮している。

 

 ただそのとき私は監察官から艦娘の量産化が実用化する話を聞いた。

噂には聞いていたが、ついにその日が来るのか……と思った。

 

「良かったな、これで君も轟沈を気にせずガンガン投入できる」

私の過去の経歴を知っている監察官は怖いことを言う。

 

すると青葉さんが突っ込む。

「司令の舞鶴の件ですか?」

 

「ああ。お前は良く知っているよな」

「はい」

 

 だが艦娘を酷使しない提督も居る。

「え? そうなんですか」

 

「何だ、お前の情報網でもそういう指揮官の話は耳に入らないのか? 例えば私の同期である神戸の提督は、良い奴だぞ」

 

「ああ、そう言えば神戸から来た金剛さんが、かなり褒めてました」

「だろう?」

 

もともと規格品みたいな艦娘たち。

「量産品はコピーかクローンか? なんて呼ぶのだろうか」

「……」

 

 私はふと「レプリカント」を連想した。

 

見ると青葉さんがちょっと引きつっていた。

「……あ、ごめん」

 

 艦娘たちが単なる機械でないのは人間に極めて近い感情を持つこと。誰の発明か過去の遺構なのか、あるいは怨念か因縁か?

 

過去の戦争体験が噴出していると言う説もあるが私には、良く分からん。

 

 その艦娘たちは、ひょっとすると自分の忌まわしい過去を打ち消す為に何かの思い出が欲しいのかも知れない。

 

 北上も夜の海で叫んでたよな。過去は断ち切れと。

 でもそれが本当に私の「墓参」に参加したがる理由なのかな?

 

「……だめだ!」

「ひゃっ!」

驚く青葉さん。

 

「複雑なこと考えると老けそうだ。やめた、やめた!」

「はい、それが良いですよ」

私の言葉に彼女も笑っていた。

 

 

 

 

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※これは「艦これ」の二次創作です。

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サイトも遅々と整備中〜(^_^;)

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PS:「みほ2ん」とは

「美保鎮守府:第二部」の略称です。

 

 

説明
利根や青葉を相手に悶々と考え事をしていた司令だった。
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美保鎮守府 深海棲艦 一提督 ア艦これ みほちん 利根 青葉 悶々 

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