北郷一刀と新たな英雄が紡ぐ外史 21話 |
「華琳ちゃんー!おっまたせー!」
「あら、思ってたより早かったじゃない。孫策とぶつかってると聞いたから、もう少し時間がかかると思っていたのだけれど」
「華琳ちゃんが派遣してくれた春蘭ちゃんと秋蘭ちゃんと…美羽ちゃんの力が大きかったかも?でもでも〜一番は私の口上が効いたと思うんだよね!」
えっへん!と腰に手を当て豊満な胸を張る劉備。曹操はそんな彼女の胸と自分自身の胸を見比べ、なぜこうも違うのかとイライラしながらも、そのイラつきを抑えて劉備に言葉を返す
「そ、そう。それで、その”無駄”に”豊満”な胸を張ってる理由は解ったけれども!そこまで胸を張る必要はないんじゃないかしら!というか、いい加減その姿勢を辞めなさい!解っててやってるでしょ!」
怒りを抑えるどころか、逆に着火してしまった…
普段は君主として冷静沈着な面が強い彼女だが、劉備と居るとそんな面は影を潜め、年相応の女の子としての面が顔が姿を現す。
”王とは孤独である”
曹操が最も頼りにする存在は夏候惇・夏侯淵の名が挙がるが、彼女たちは”従者”であり”友”として並び立つ事は出来ない。そんな彼女が唯一、素の自分をさらけ出す事が出来る存在が劉備だ
彼女は味方になると、すぐさま曹操に抱き着き頬擦りをするなど、予想外の行動を見せた。
自分からするのは得意だが、される事に慣れていなかった曹操は人目をはばからず逃走。そんな逃げた曹操を追う劉備と、曹操に長く仕えていた諸将に衝撃を与える奇想天外な事件を起こしたりする劉備は、不要な存在かと問われれば全員が否と答えるだろう。
『劉備の天使爛漫さは人を自然と引き付けその場に笑顔をもたらす』
人心を掴むのは為政者にとっては必要不可欠かつ困難な事案で悩みの種だろう。
民を従わせるには力による「恐怖」他を圧倒する器で治める「畏怖」などがあるが、彼女の場合は人と人の和を紡ぐ”人徳”
武芸・学問・文化面などで圧倒的な才覚を兼ね備えている曹操に勝る唯一無二の才能
「秋蘭ちゃん?どうかしたの?」
「いや…なんでもない。気にしないでくれ」
愛すべき主君とが友とはしゃいでいる姿に目を細めていると、それに気が付いた劉備が夏侯淵に問いかけるが、夏侯淵は何でもないと返す。
自らも主君と話したいという気持ちはあるが、友との語らいを邪魔する無粋な真似はしない。
個性が強い曹操陣営において、唯一”暴走”しない性格の持ち主であり、曹操軍の良心とまで言われている存在だ
「そういえば、なんで華琳ちゃんはここに居るの?出陣前は『公孫?なんて私の敵じゃないわね、難攻不落・絶対無敵・七転八倒とか言われてる虎牢関なんてすぐ陥落させて見せるわ!』とかって意気込んでたのに」
「うぐ…桃香、あなた、解ってて言ってるでしょ!」
「えぇ〜、なんの事かなー?あんだけ『朱里と雛里は留守を頼むわね』って高々に言ってた事なんて覚えてないよ?」
「そう、桃香は死にたいのね…ならば、お望み通りにやってあげるわよ!痛い思いしないように一瞬でやってあげるわ!」
「きゃー!華琳ちゃんが怒った〜!」
華琳様は変わられた
以前の華琳様なら友を必要としなかっただろう
そんな華琳様が友と楽しそうにはしゃいでいる…一家臣として・・・幼馴染として桃香にはいずれ礼を言わないといけないな
「秋蘭さん、そろそろお姉様と桃香さんと落ち着かせませんか。このままでは、いつまで経っても話が進みませんし、私が朱里さんと雛里さんを愛でる時間が減ってしまいます」
二人のじゃれ合いが続く中、痺れを切らした曹洪が夏侯淵に話しかける
確かに軍議を進めたい気持ちもある夏侯淵は、主君と劉備を落ち着かせる事には同意しつつも、終わらせたい目的に思わず苦笑い
「華琳様、桃香、そろそろ軍議を進めましょう。こうしてる間にも、公孫?は更に防備を固めてしまいます」
夏侯淵の一声で正気に戻った曹操は、『コホン』と一呼吸置くが、一連のやり取りを見られていた事の恥ずかしさが出て来たのか、頬が若干赤くなっているのを、誰とは言わないが数人は見逃さない
「栄華、来たばかりの朱里や雛里……桃香に状況を教えなさい」
「現在我らは虎牢関から少し離れ、見通しの良いこの場所に布陣しています。公孫?幕下には周囲の地形を知り尽くした賢者が控えています。その為、予想外の道からの奇襲、銅鑼が鳴り響き後退を余儀なくされていますわ」
劉備は自分の名前が呼ばれる時だけ間が空いた事に抗議していたが、曹洪が黙殺して現状を話し始めた事で、口を閉じ傾聴する姿勢を取った。その後も曹洪の説明は続き、自分達が思っていた以上に苦戦を強いられる現状を劉備・諸葛亮・?統は理解する
「なるほど…華琳様の進軍が止められている情報は耳にしていましたが、思った以上に芳しくないですね」
「銅鑼が鳴り響くだけなら無視してしまえばいいのですが、実際に奇襲を受けてしまったとなると…兵士さん達は常に緊張状態となり、気の安らぐ時間が無いのです。問題は誰が指揮を執っているかですが…」
「知恵者については間者を何度も放って調べているのですが・・・」
「すべて拿捕されている…ということですか」
「えぇ…」
情報は軍全体、勢力全体の命に直結している。
情報が早ければ早い程、自軍に優位に繋げる事が出来る。逆に情報が遅ければ、すべてが後手後手に回ってしまう。先の孫策との戦いもそうだ、予め予測をつけ、斥候を何度も放ち、孫策軍の動きを見張っていた。
目の前の公孫?だけに集中していたならば、今頃自分達の命は無かったかもしれない…情報の大切さを知る曹操陣営は、情報入手の手段も豊富だ。
その曹操軍が情報を入手することを封じられているのは....敵対する知者の力が強大な事を物語っている
「唯一....解った事は....動物の耳を模様した帽子を被ってるってことだけです」
「動物の耳帽子....ですか」
「えぇ…しかも、これは城壁からこちらを嘲笑っている者が身に着けていたのがこれという情報しか…」
斥候狩りに合い、情報が遮断されている中で入手する事が出来たのがこれだけなのだ...
しかも、たまたま城壁に居た者の衣服の特徴というだけで、自分達を苦しめている知恵者という保証は全くない。
それを小さな軍師も察したのか、どうするべきかと頭の中で考えを巡らす。そんな時、「あっ」と声を挙げた人物がいた
「動物…耳…帽子……ねぇねぇ、華琳ちゃん。その子って荀ケじゃないかな」
「・・・なんですって」
曹操を含め、その場に居た諸将の視線が劉備へと向けられた。
荀家といえば、戦国時代末期の思想家『荀子』から繁栄を続け、祖父の荀淑は『神君』と称され、荀淑の子も声望高く『八龍』と称される程だ。
そんな名門・荀家の生まれで「王佐の才を持つ」と称されているのが荀ケなのだ
「荀ケの噂なら私も知っているのだけど……なぜ貴方が荀ケの容貌を知っているのかしら」
「えっとね...私の師の盧植先生は顔が広いから、名士と知り合いが多いの。それで、ある時に、荀家からまた1人若き俊英が出て来たのね。って言ってたの」
「桃香さん...そういうのはもっと早く言ってくださいまし。それは皆に伝えておかなければいけない情報ですよ!」
「だって〜〜忘れてたんだもん〜〜〜!思い出したから……いいよ…ね?」
「いいわけないです!」
「栄華、それぐらいにしなさい。いま桃香を責めても話が進まないわ」
まだ言い足りない曹洪であったが、曹操から止められては口を閉じるしかない。不満気な表情の曹洪と一安心といった表情の劉備であった
「しかし…なるほど…確かに荀ケさんが相手ならば、今までのように戦うのは厳しいでしょう」
「私達が水鏡先生の下で学んでいる時にも、度々、荀ケさんの名前はあがっていました。朱里ちゃんの言う通り、厳しいとは思いますが…荀ケさん”1人”には負けられません」
「その意気や良し!明日からは荀ケの采配を徹底的に研究する、各将はそれを念頭に置いて戦いなさい!」
説明 | ||
半年ぶりになっちゃいました! 忘れてますよね? 自分も書かなさ過ぎて色々忘れてます!(主に口調とか口調とか |
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コメント | ||
因みにアフターの武道大会の続きも待ってまーす!!(金傘@だるな) 待ってました?(金傘@だるな) 更新お待ちしておりました!…そして、哀れ曹操軍は七乃さんの嫌がらせに翻弄されるというわけですね。(mokiti1976-2010) 華琳様、残念、他に三国一の腹黒な七乃様が居らしゃっるのです。全然バレテないなんて、やはり袁家(美羽)をたった一人で回していたし、真面目にしてたら能力が馬鹿にできない(聖龍) |
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