SAO〜帰還者の回想録〜 第12想 鎚と棒を形作る時
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SAO〜帰還者の回想録〜 第12想 鎚と棒を形作る時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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刻Side

 

大切な人を亡くす、いまボクが抱えているこの気持ちがそれに似たものなんだ。

 

ボクはこれまで身近な大切な人を亡くしたことはない。

両親も両親の祖父母も元気だし、あるとすれがあまり会う機会の無い親戚が亡くなった時だと思う。

だけどSAOで多くの人が死ぬのを見たし、当て嵌めるとすれば((木綿季|ユウキ))が亡くなったことがある意味一番身近な人の死だったと思う。

 

けど、前にも一度似た思いはしてる。

それはSAOの最後で((和人さん|キリトさん))が((茅場晶彦|ヒースクリフ))と相討ちになった時で、今回の喪失感のようなものはあの時と同じだ。

その二度の和人さんが死ぬかもしれなかったっていう事実だけでボクは打ちのめされた。

 

でも、明日奈さんは違った。

辛そうで、悲しそうで、だけど色んな感情をボク達には見えないところで吐き出したみたいだった。

だからかもしれない、彼女は誰よりも最初に心を立て直して和人さんの無事を信じきった。

本当に明日奈さんは強くなったと思う、それはきっと和人さんと同じくらいに。

 

それに昨日の和人さんのお見舞いに行った志郎さんと景一さんの姿も印象に残ってる。

二人とも晴れやかな表情を浮かべてた。

聞いてみたら抱え込んでいたものを話しただけと言われた、志郎さんは里香さんと、景一さんは詩乃さんと話をしたって。

確かに志郎さんも景一さんも和人さんと烈弥君に勝るとも劣らない闇を抱えてた、まぁ四人ともいまではそれも鳴りを潜めたけど。

 

ともかく、志郎さんも景一さんも『オーシャン・タートル』にきて話をしたから重荷を下ろせたらしい。

みんなほどじゃないけど、もしかしたらボクにも何か訪れるかもしれない。

何かが変わるのか、それとも心にある小さな重りが軽くなるのか、どうなるのかは解らないけど。

 

 

 

お見舞いにやってきたこのウミガメの中で見た和人さんの様子。

そこで改めて志郎さんと景一さんが彼女さん達に話をしようと思ったのか、分かった気がした。

後悔はしたくないから、ただそれだけなんだ。

まぁ、だからと言っていきなりスグと話しをしてみようと思っても、何をどう話したらいいのか解らない。

 

それにここに来るまでの間の彼女の様子も気になった、いつもと違う不安そうな表情が頭を((過|よ))ぎる。

烈弥君が別の場所に行って、珪子ちゃんも彼を追うように移動して、明日奈さんは許可を得て室内で和人さんの傍に居る。

そしてスグは少し一人になりたいって言って何処かに行って、ボクは彼女が心配で探していたところ、見つけた。

 

「スグ」

「あ、刻くん…」

 

ベンチに顔を俯かせながら座っていた彼女の名前を呼んだらボクの方を向いたけど、その表情は色々な感情が混ざったような感じだ。

スグにこんな表情をさせていたくないと思って彼女を抱き締める。

 

「大丈夫、ボクが居る」

「刻、くん……あた、し…」

 

ボクが抱き締めたからか、スグは体を震わせてしがみついてきた。

 

「あたし、明日奈さんやお母さんみたいに、振舞えないよ…」

 

それは仕方がないと思う。

明日奈さんもいまこそ普通に見えるけど、彼女自身が最初は酷い有り様だったけどお母さんのお陰で持ち直せたと言ってた。

それに和人さんと一緒に色々なことを経験したことで明日奈さんは心が強くなったし、

翠さんも最初はパニックになっていたけど持ち直して仕事に打ち込む事で気を逸らしつつ、母親としての矜持で心の状態を保っていた。

 

でもスグは、まだ普通の女の子だ。

確かに師匠から剣道の指導を少し受けているし、全国レベルの実力もあるけど、それでもボク達の中で一番普通の女の子だと言える。

里香さんと珪子ちゃん、雫さんと奏さんのようにSAOを経験したわけじゃないし、詩乃さんみたいに大きな影を抱えたわけじゃない。

 

あの時はまだ勢いで持ち直せたかもしれないけど、いまは一度落ち着いてしまったからだと思う。

きっと不安な気持ちが全部溢れてきちゃったんだ。

 

「いいよ。ボクがいるから、泣いて」

「うっ……ふっ、うぅ…」

 

こういう時はちゃんと泣かせてあげた方がいい。

和人さんが運ばれた日も泣いていたけど、だからって泣くのを我慢しないといけないわけじゃないから。

 

途中で休憩しに来た明日奈さんと会って驚かれたけど、事情を話したら納得して飲み物を持ってきてくれてボクに任せてくれた。

そして一通り泣いたことでスグは少し落ち着いたみたい。

 

「少しは落ち着けた?」

「うん…。ごめんね、刻くん……あたし、自分のことばかりで…」

「気にしないでいいよ。それに仕方がないことだし」

 

むしろいまのスグの状態が普通なのかもしれない。正直、ボクの感性も普通じゃないし。

とりあえず、明日奈さんが持ってきてくれたお茶を一緒に飲んで、ボクも一先ず落ち着くことにした。

 

「スグ、無理にみんなみたいに振舞わなくていいよ。スグは、直葉は直葉なんだからさ」

「刻くん……うん、あたしはあたしだもんね。ありがとう、少し楽になったよ」

 

彼女には彼女らしく居てほしい、だから無理に取り繕わないでほしい。

 

「お兄ちゃん、大丈夫だよね…?」

「絶対は無い、だけど和人さんならきっと大丈夫っすよ。

 ボク達に出来るのは信じて待つこと、その上で自分が出来ることを確りやることっす」

「ふふ、いつもの刻くんだね」

「あはは、ボクも結構気を張ってたってことっす」

 

いまスグと話したお陰でボク自身も大分落ち着けたからなぁ。

口調が((あっち|・・・))になっちゃってたのはそれだけ余裕が無かったってこと、ボクも精神修行を頑張らないとね。

 

「そういえばだけど、刻くんは大丈夫? 気を張ってたなら、色々と考えてたんじゃ…」

「あ〜、ちょっとっすけどね。実は……」

 

ボクはスグに志郎さんと景一さんのことを話した。

このオーシャン・タートルに来て、二人がそれぞれ里香さんと詩乃さんと話して色々と吹っ切れていたことを。

 

「……と、まぁそういうわけで、スグさえ良かったら話せたらなと思ってたっす」

「そうなんだ……うん、良いよ。

 あたしも気分転換になると思うし、刻くんと一緒に居た時のことも、そうじゃない時のことも話してみたいかな」

「決まりっすね、じゃあ話すとするっすか」

「うん」

 

みんなみたいに大きな転機があったわけじゃないかもしれないボクとスグ、いつも一緒で何処か似ているボク達自身の話をしよう。

 

刻Side Out

 

 

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No Side

 

改めて言うことでもないかもしれないが、月乃刻はクォーターである。

クォーターであるということ自体はこのご時世で珍し過ぎるということはない。

父方の祖父が日本人で祖母がイタリア人、その息子でハーフである父親と日本人の母親の間に生まれたのが刻である。

父親は祖父の血が色濃く出たのか顔筋こそ欧州の人のそれだが髪と瞳は黒色だったが、

隔世遺伝……俗に言う先祖返りなのか刻の髪と瞳は祖母と同じ薄めの金髪と紅色の瞳だ。

 

こちらも改めて言うことではないが、桐ヶ谷直葉は義兄にして従兄である和人の義妹で従妹だ。

直葉が生まれたのは和人が桐ヶ谷夫妻に引き取られてからしばらくしてからのことである。

 

刻と直葉の二人は景一と詩乃に次ぐ年月の幼馴染の関係から恋人同士へと想いを昇華させている。

そんな二人の関係は両者が幼稚園に入園してから始まった。

 

「かみ、キラキラしてきれいだね!」

「おばあちゃんといっしょっす!」

 

直葉の女の子らしい興味で刻に話しかけ、彼もまた祖母から受け継いだ自慢の髪と瞳を褒められたことが嬉しかった。

だから、というわけではないがそれが以降も話しをするきっかけになったことは間違いない。

家の距離もそれほど離れてはおらず、間をおかずに直葉が刻と和人を合わせたこともあって、より友人としての仲を深めることになった。

刻は直葉とよく遊ぶが一つ年上である和人を兄と慕い、彼とも遊ぶようになっていた。

 

 

 

二人は幼稚園を卒園し、小学校に入学した。

入学から一ヶ月が経った頃、刻はクラスメイトである一人の少年に話しかけた。

彼こそが親友となり、後に古流武術『神霆流』の同門となる神城烈弥だ。

 

刻はいつも一人でいる烈弥のことが気に掛かり、同時にその独特な力の無い眼から体調が悪いのではないかと思った。

だが実際には体調が悪いわけではなく、色々と事情を抱えているということを知る。

ともあれ、それが話すきっかけになり友人を経て親友の間柄になるのはまだ先のこと…。

 

 

 

刻達が小学校に入学してから二ヶ月が経とうとする五月末頃のこと。

刻は家にやってきた直葉に泣き付かれる事態に陥った。

 

「スグ、どうしたっす?」

「刻、君……あたし、お兄ちゃんに、酷いこと、言っちゃったよぉ…」

「和人兄ちゃんに…?」

「う、ん……あの、ね…」

 

直葉はなんとか泣いてしまうことを抑えながら、事情を説明した。

和人が剣道をやめると言ったこと、その和人が祖父と口論の末に剣道で試合をしたこと、

和人のあまりの強さとそこで見た“((覇気|なにか))”の片鱗のこと、それを見て和人に“鬼”と言ってしまったこと、

その時に和人が悲しそうな表情をしていたことを。

 

話し終えた直葉はまた泣きだしてしまい、刻は幼いながらに彼女を必死に慰めて宥めた。

 

「どうし、よう……お兄ちゃんに、((嫌|や))な思い、させちゃったぁ…。お兄ちゃん、許して、くれない、かも…」

「和人兄ちゃん優しいっす。謝ったら許してくれるっす。絶対大丈夫っす」

 

二人の様子を見ていた刻の母が電話して直葉と和人の母である翠を呼んでいたため、

最終的に直葉が泣き疲れて眠ってしまった頃に迎えに来た。

その翠も少しだけ参った様な表情をしていることに刻も刻の母も気付いたが、

その意味……和人が直接の子供でないことを知るのはしばらく後の話だった。

 

その後、直葉は和人に謝ることは出来たがこれ以降、二人の間に少しばかりの溝が出来てしまった。

一方の刻も直葉だけでなく和人のことも気に掛けていた、兄と慕う少年が落ち込んでいる姿を見たから余計である。

刻はマイペースだが気配りのできる子だ。

 

「和人兄ちゃん、大丈夫っすか?」

「……っ、刻か。うん、俺は大丈夫だよ」

「和人兄ちゃん…」

「大丈夫、だから…」

 

そこで刻は和人が“兄”と呼ばれることに反応して表情に翳りが出たことに気付いた。

直葉が言ってしまった言葉を引き摺っていることにも刻は気付いてしまった。

 

「名前の呼び方、変えた方がいいっすね。今日からは和人さんって呼ぶっす」

「と、刻…」

 

その言葉に和人は動揺するが刻は安心させるように言葉を続ける。

 

「気にしちゃだめっすよ。和人さんだって辛い思いしたのに、もっと辛い思いさせたくないっす」

「ごめんな…」

「いいっすよ。それに呼び方が変わっても和人さんはボクの((お兄さん分|兄貴分))っす。それは絶対に変わらないっす!」

「ありがと、刻。ちょっと楽になった」

「えへへ、どういたしましてっす!」

 

この言葉に間違いなく和人は少しでも救われ、気が楽になっていた。

あとは直葉と和人の思いが時間次第で決まることになる。

なお、刻はこれ以降意識して“和人さん”と呼んだためか呼び方が戻らなくなってしまったのは蛇足である…。

 

 

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そこから一年と三ヶ月ほどが過ぎ、刻と直葉が小学二年生になり夏休みを過ごし終わった後の頃。

刻は進級して再びクラスメイトになった烈弥がいつもの静かさに加えて暗さと落ち込みを持っていることに気付いた。

 

「神城君、なんか落ち込んでないっすか?」

「あ、月乃君……ちょっとね…」

「相談、出来ないことっすか?」

「えっとぉ、じゃあいいかな?武道をね、始めたいと思って色んなところを訪ねたんだけど、どこも断られちゃって…」

「なんで…?」

 

刻の問いかけに烈弥は答えた。

 

事情があって強くなりたい為に力を求めていること、その理由もあってか何処も受け入れは難しいこと、

一緒に住んでいる祖父母からも反対されていることもありあまり強く申し出ることができないことを。

 

聞き終えた刻は内容の複雑さに混乱気味になるも話しを続けた。

 

「なんか難しいっすけど、強くなりたいんすよね? ボクも一緒に考えるっす」

「ありがとう、月乃君」

 

刻の言葉に烈弥は一緒に考えてくれる友人の有難味を覚えた。

その日の放課後である集団下校時、刻は直葉と共に烈弥を和人達に会わせることになった。

この時、刻は和人達がスポーツじゃない剣道や剣をやっていることを思い出し、和人達に相談することになった。

 

結果、八雲が関東に訪れる日に烈弥とその祖父母が会うことが決まった。

 

 

 

烈弥が八雲と会って彼が神霆流預かりになることが決まった日、志郎と景一を家まで送り届けられた後で刻も八雲に弟子入りを懇願した。

 

「お願いしまっす! ボクも弟子にしてください!」

「ふむ、一先ず場所を変えましょうか……和人、道場を借りても良いですか?」

「大丈夫です」

 

刻の願いに八雲は無碍に断ることはなく、かといって外で聞くわけにはいかないと判断し、和人の家の道場を借りることにした。

道場に訪れると八雲は正座し、その正面に刻も正座して彼の右斜め後ろに和人も正座して話しを聞く形になる。

 

「それでは、理由を聞いてもいいですか?」

「は、はいっす! ボク、烈弥君の友達だけど、何も知らないっす。でも、これから知ったり、一緒に見ることは出来るっす。

 烈弥君だけじゃなくて和人さんも志郎さんも景一さんの見てるものも見てみたいっす!

 スグとだって、一緒に強くなってみたいっす!」

「刻…」

 

八雲の威圧を受けつつも自分の思いの丈を言いきった刻。

そんな彼に和人は凄いと思い、同時に自分や直葉達のことももっと見てみたいと言ってくれたことを嬉しく思った。

 

「みんなと一緒に在る為に、みんなをもっと知る為に、ですか……ふふ、その思いも中々ですね。

 解りました、素質もやる気も十分ですし、月乃刻君……貴方を歓迎します」

「あ、ありがとうございます!」

「た・だ・し!」

「は、はい…」

 

歓迎ムードの八雲だったが威圧を無くしたと思えば笑顔のまま区切り、刻は不安に思う。

後ろの和人は笑いを堪えているが、その意味とは…。

 

「ご家族への説得は頑張ってくださいね」

「……そうっす! 忘れてたっす! 解りましたっす!」

「あはは、慌ただしいですね」

 

手伝いはしても説得の本命はあくまでも刻自身、和人は自分も経験した道故に笑っていたわけだ。

 

刻は八雲と和人と共に家に帰宅し、一先ず母に八雲と和人に仲介してもらって説明し、

父が仕事から帰宅した時に八雲を交えて再び詳しく話しをした。

和人は勿論、志郎や景一、同学年で一番仲の良い男子である烈弥もやっており、

なにより桐ヶ谷家の剣道場でということもあり直葉の存在もあることを考えて、

月乃夫婦は刻の意思とやる気を尊重して了承することにした。

 

こうして、刻は神霆流入りを果たしたのである。

 

 

 

刻が烈弥と共に神霆流を始めてから二年という時間が近づき始め、刻と直葉と烈弥が小学四年生の七月のこと。

突如として和人の様子が変化し、親しい間柄の者達はそれを察知した、距離を開けられていると。

 

「お兄ちゃん、どうしたのかなぁ。あたし、また何か言っちゃったのかなぁ…」

 

直葉は悩んでいた。彼女にとって和人が距離を開けた接し方をすることや偶にみせる悲しそうな表情。

それが一年生の時に和人に言ってしまった言葉によりできた溝にも似ていて、

その時の出来事は直葉にとってトラウマというほどではないがショックな出来事であったのは確かだ。

その上、愛称のスグと呼ばれていたのに名前で直葉と呼ばれるようになってしまったこともあり、いよいよ困惑も深まってしまう。

 

「和人さん、どうしちゃったんす…」

 

神霆流という仲間内でも和人は距離を開け、

全員がそれに気付いている中でも刻は直葉が悩み困っていることもあって余計に悶々としていた。

元々、志郎と公輝と同様に気遣いをよくする性格もあり、なんとかしたいと思う反面、

和人の様子から簡単に出来ることではないとも思っていた。

 

そして、しばらくした頃に和人の雰囲気が戻り、これまで通りに戻ったことで事態そのものは終息した。

直葉ともいままでと同じように接する和人と嬉しそうにする直葉を見て刻も安心したが、

その日の内に和人から衝撃の事実を明かされた。

 

―――俺は桐ヶ谷家の実の子供じゃない。

 

八雲も交えた場で明かされたその内容で刻はここ数日間の和人の様子が変だったことを理解できた。

そのあまりの内容に驚いたが、刻も含めて皆が和人を心配し、信頼して明かしてくれたことに感謝した。

直葉にはまだ秘密にするように言われ、彼らはそのことを直葉に明かすことはしなかったが、刻は板挟みな思いをするのは別の話。

 

だが、直葉と和人と共に過ごしてきた刻にこそ確かに芽生えた想いがあった。

 

「(スグに気付かれないようにするのは簡単だけど、和人さんはあれで余裕がないと思う。

 なら、ボクが二人の間を上手く調整しないといけないっすね。

 和人さんに余計な負担がいかないように、スグのことをボクがちゃんと見ておくっす。

 和人さんは大切な兄貴分で、スグは大切な((娘|こ))っすからね……………あれ?)」

 

なお、無自覚であった。

 

No Side Out

 

 

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刻Side

 

「いやぁ〜、そういうわけでボクってあの時からスグのこと好きな娘って思い始めてたんっすよね〜……ってあれ、スグ?」

「さ、さすがに、面と向かってそこまで言われると、恥ずかしくて…//////」

 

あ、しまった、つい勢いで言い切っちゃった。

まぁ嘘じゃないし知っておいて欲しいと思ったのはホントだ、うん。

スグは残っていたペットボトルのお茶を飲むことで落ち着いたみたい。

 

「でも、刻くんがそうしてなかったらあたしとお兄ちゃんもっとギクシャクしてたかもしれない。

 だからね、ありがとう、刻くん」

「大切だから、好きでやったことっすけど、どういたしましてっす」

「ちょっと恥ずかしいけどお兄ちゃんにちゃんと家族だよって、兄妹だよって言うよ。

 多分、お兄ちゃんも照れながらだけど喜んでくれると思うし」

「おぉ、なんか珍しく想像し難くないっすね……うん、和人さん喜ぶっすよ」

 

あ、なんとなく隠れて嬉し泣きとかしそうな気もするっすね。

それで明日奈さんに甘える図が浮かびそうっす。

 

とかなんとか考えていたらスグがボクの手をギュッと握ってきた。

 

「あとですね………あたしも、刻くんのこと大好き、ですよ///」

「う、うわっ、ちょっ、それ、ヤバいっす//////」

 

照れながら、上目遣いで、でも微笑んで、その台詞は破壊力がヤバい。

あぁもう、我慢するのも大変なのになぁ。

 

「「んっ…//////」」

 

自然と顔を近づけてキスするのにそう時間は掛からなくて、でも長いと絶対我慢が出来なくなるから重ねるだけものもの。

 

「刻くん、お兄ちゃんのところに行こ///!」

「了解っす!」

 

スグに促されて一緒に和人さんの眠っている部屋に向かう。

 

彼女と話せてよかった。

色々と思い出せることもあって、スグの思いも晴らせることができて、スッキリすることができたのはホントだ。

これからもきっとこういうことはあるだろうけど、スグと一緒に解決していけばいい。

 

STLの部屋の前には明日奈さんが居て、反対側からは烈弥君と珪子ちゃんが向かってきてる。

明日奈さんのところでボク達は落ちあって、ガラスを隔てた先の和人さんが居るはずの場所を見る。

 

―――和人さん、ボクもスグもみんなも待ってるっす。みんなで一緒に待ってるっすよ。

 

刻Side Out

 

 

To be continued……

 

 

-6ページ-

 

 

 

あとがき

 

だいぶ遅れてしまう形になってしまいましたが今回も無事に最新話が完成しました……あぁ、疲れたw

さて、今回は刻と少しだけ直葉の話という感じでしたがある意味でこれまでのキャラに比べて大変でした。

刻というキャラに深すぎる事情が無い分、この時にこう動いていたくらいの話しか書けませんでした…。

 

とはいえ、これで過去回想の折り返し地点は終了です。

次回は公輝&雫、次は奏+遼太郎(クライン)、その次が九葉+時井家、な感じになっていく予定です。

 

もう少し、もう少しで視点を和人に返してあげられますよ…!

過去回想が終わったらキリト視点でSAOでのVR過去回想、時系列で言うプログレッシブ編になる予定です。

もうしばらくの辛抱ですので是非お待ちいただければと思います。

 

それではまた次回で……サラダバー!

 

 

 

 

説明
刻もまた思いを溜めこんでいた
そんな彼が見た直葉の姿は…
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コメント
夜月様へ 誤字報告ありがとうございます(本郷 刃)
合わせるって会わせるの方じゃないですか(複数)?…それとも意図的ですか?(夜月)
グルメ96様へ 刻「え、いや、その……言えないっす…///」 直葉「/////////」(本郷 刃)
ゼウス「そういえば、刻くん聞きたいことあるのだが....初めて直葉の生胸を見たときの感想を聞かせてくれ(真顔)」主「お前は何を言っている。と言うか真顔で言うのやめい。」 (グルメ96)
lightcloss様へ まったくもってその通りですw(本郷 刃)
一番ほのぼのしてるきがするのは私だけだろうか・・・(lightcloss)
グルメ96様へ 基本は自然体か本気かで語尾が付くのですが、こういう気を張っていたりする時も無自覚で語尾が抜けます(本郷 刃)
ディーン様へ 改めてバランス保つのが大変だな〜と思いましたねw(本郷 刃)
ゼウス「本当に友達思いだな、100 人友を持つのも良いが彼みたいな友を1人持つのも悪くないよな。」主「語尾が付くときと付かない時があるけど語尾はどこかで覚醒したときに付かなくなったのかな?」 17/07/08 13:13(グルメ96)
刻と直葉の出会いからのなれそめですね、シリアスとラブコメがちょうどよかったです、次回も気長に待っています。(ディーン)
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