G×S!夕陽が紡ぐ世界 〜一話目〜 |
ある日、少年と少女は出会った。
偶然だったのか?必然だったのか?それは誰にも分からない。
ただ、分かるのはそれは二人にとって幸せな出会いだった事。
しかし、出会いがあれば別離もある。
誰も望まない悲しき別離だった。
しかし、別離は新たなる出会いをもたらす。
運命だったのか?宿命だったのか?
それは誰にも分からない……
第一話
「また会おう、三人の想い」
楓視点〜
何時も見ていた夢、此処では無い別の世界で生きている“タダくん”の夢。
一方通行だけど夢の中でだけ彼に会えていた。
でも数日前からその夢も見れなくなっていた、あの闘いの後から。
全世界を巻き込んだ「魔王」と人間達との闘い、スパイとして敵の中に潜り込まされたタダくんは魔王の娘である三姉妹の内の一人、ルシオラさんと恋に落ちた。
最初は凄く嫉妬したけど二人の恋は本物だった。
ほんの少しの、ほんの細やかで幸せな日々。
どもそんなありふれた日常はあっけなく終わりを告げた。
闘いの中で生まれた恋、闘いの中で育まれた恋、そして闘いの中に消え去った恋。
彼の心の中にはどれ程の傷が刻まれたのだろう?見る事しか出来なかった私には分からない。
私の名前は「芙蓉楓」
今私は思い出の場所に立っている、タダくんと初めて出会った場所、そしてタダくんが消えてしまった場所。
タダくん、彼の名前は「浜菊忠夫」でも、“向こう”での名前は「横島忠夫」。私の初恋の人。
そう、彼はこの世界には居ない。遠く離れた別の世界に彼は居る。
私だけが知っている私だけの秘密。
―好きだった、ただその男の子が好きだった。
大好きだった。
優しかった、本当に優しかった。
誰よりも優しかった。
あの男の子も好きだったし、あの女の子も好きだった。
でもその男の子が一番好きだった。
あの声が好きで、あの笑顔が好きで。
そして手をつないだ時の温もりがとても好きだった。
お父さんはいなくて、お母さんもいなかった。
なのにとても強かった。
皆と遊んで、皆と笑った。
彼の事なら何でも信じれた。
そう……、だからあの優しい嘘さえも……、信じた。
信じてしまった……。
好きだった…、ただその男の子が好きだった…。
大好きだった…。
だからこそ大嫌いになってしまった…。
何度も叩いた…。
階段の上から突き飛ばした…。
その額に消える事の無い傷を付けた…。
お父さんも、二人の友達も、辛そうな顔をしてたけど何も言わなかった…。
ある日、魔族の一人が騒ぎを起こした…。
その日からその男の子がいなくなった…。
お父さんも、二人の友達も、皆泣いた…。
”私”は泣かなかった…。
”私”は泣いていたけど、”私”は泣けなかった…。
そしてちょっとだけ大人になったある日、”私”は真実にたどり着いた。
”私”は泣いた、泣けなかった分だけ思いっきり。
好きだから嫌いになった。
嫌いだけど好きだった。
そう、やっぱりどうしようもない位大好き。
そして思いっきり泣いた後、”私達”は笑う事にした。
その為に吐いてくれた嘘だから。
その優しい嘘で”私達”は今、此処に居るのだから。
笑おう、私は私らしく。
―高校生になったある日から私は夢を見るようになった。
彼の、タダくんの夢を……。
タダくんは生きていた、別の世界でタダくんは生きていてくれた。
タダくんは元気そうに笑っていて、友達も沢山いた。
でもちょっと?エッチになっていた。
大事な((女|ひと))もいるようで胸がチクッとした。
そしてタダくんはだんだんと大変な戦いに巻き込まれて行き、彼はそんな中でドンドン強くなっていった。
大切な仲間も増えて行き、そして始まった『魔神大戦』
敵に連れさらわれ、再度スパイとして潜り込まされた。
そんな中で出会った彼女、彼が初めて心から愛した((女|ひと))。
《蛍の少女・ルシオラ》
((彼女|ルシオラ))を守る為に((本物の魔王|アシュタロス))に立ち向かうタダくん。
((彼女|ルシオラ))を守る為にその身を盾にしたタダくん。
タダくんを守る為に命を捧げた((彼女|ルシオラ))。
そして突きつけられた残酷な選択、彼女か世界かの二者択一。
彼女の想いを守る為に世界を選んだタダくん。
《俺に女の子を好きになる資格なんか無かった…。なのにあいつはそんな俺なんかの為に……》
《うわあぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!》
―傷ついたタダくんの心が流す涙と叫び。
なんで私はあそこに居られないんだろう。
慰めてあげたい、一緒に泣いてあげたい。
それでも彼は立ち上がり、そして再び笑う。
タダくんがタダくんである為に。
それが彼女との約束だから。
―会いたい、タダくんに会いたいな。
夢じゃなく現実の世界で、そして一緒に笑いたい。
だから信じる、信じよう、きっとまた会えると。
そんな風に思いを馳せていると後ろから私を呼ぶ声が聞こえて来た。
「楓」
「楓ちゃん」
「稟くん…桜ちゃん」
私を呼ぶ声に振り向いてみると其処に居たのは幼馴染で大事な友達。
「土見稟」くんと「八重桜」ちゃん。
二人もまたタダくんの大事な友達、二人もタダくんが何時か帰って来ると信じてくれている。
「また此処に居たんだな」
「うん…ごめんね稟くん、心配かけて」
「構わないさ、俺も時々一人で此処に来るしな」
稟視点〜
俺の一番の、掛け替えのない親友『浜菊忠夫』
何時の間にか引っ込み思案だった楓の傍に居て、何時の間にか俺達の中心に居た。
幼い時に両親を亡くし、孤児院で過ごしていたが俺達にはそんな事は関係無かった。
俺達の誰かが泣いていても、あいつが傍に居るとすぐに笑顔になれた。
そして“あの時”、俺の代わりに忠夫が付いた一つの嘘。
その嘘のおかげで楓は笑顔を取り戻したが代わりに忠夫の笑顔が消えた。
助けたい、助けようと思っている内にこの空き地での爆発事故で忠夫はいなくなってしまった。
だが、俺は信じている。諦めはしない、忠夫とはまた会えると。今度こそ俺が守って見せると。
桜視点〜
「楓ちゃんは此処で忠夫くんに出会ったんだよね」
「うん、あの木の上で泣いていた子猫を助けてくれたんだ」
忠夫くん、子供の頃あまり笑わなかった楓ちゃんを笑顔にしてくれた男の子。
楓ちゃんとはお互いの家でしか遊ばなかったけど忠夫くんと出会ってからは皆で外で遊ぶようになった。
私達は女の子同士だから分かる、楓ちゃんは忠夫くんが好きなんだって。
だって私はあの頃すでに稟くんの事が好きだったから。
…辛かったんだよ忠夫くん。楓ちゃんの為とはいえ忠夫くんだけが犠牲になった事が。
楓ちゃんの笑顔も好きだったけど忠夫くんの笑顔も何だか胸の中がほんわかして好きだったんだよ。
だから私も待ってるね、何時か忠夫くんが帰って来るのを。
三人視点〜
「さてと、プリムラが心配する頃だしそろそろ帰るか」
「そうだね。桜ちゃんも晩ご飯食べて行く?」
「え、いいの?じゃあ、お邪魔しちゃおうかな?」
「ああ、そうしろ。プリムラも喜ぶだろうしな」
「うん。そう言えば稟くん、宿題終わった?」
「宿題?……ああっ、しまったぁーーーーっ!!」
「はあ、稟くんってば…」
「か、楓、いや楓さん?」
「仕方ないですね。ご飯を作る間に写して下さいね」
「あはは、先に家によって宿題持って来るね。私も写させてあげる」
「楓、桜、恩に着る!!」
そして三人は夕陽が照らす空の下歩いて行き、楓は振り返ると紅い夕陽を見つめながら呟く。
「タダくん、私信じてるから、そして待ってるから。だから……」
『また会おうね、タダくん』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その頃、一つの闘いが終わったばかりの異世界では……
「タマモ、大丈夫か!?」
「わ、私は大丈夫だけどヨコシマは?」
「俺は大丈夫だ、心配しないでお前は其処に居ろ!!」
タマモと一緒に夕食の買い出しに出ていた所を俺達は神魔の過激派達に襲われていた。
町はずれの森の中で俺達に遠慮なしの魔力砲が雨の様に降って来る。
「くそうっ!しつこいぞ、いいかげんに諦めたらどうだ!」
「諦めるのは貴様だ!」
ルシオラから受け継いだ魔族因子が原因で俺の体は魔族化を始め、今では神族、魔族、人族それぞれの因子を持つ存在となってしまった。。
神魔どちらの勢力に傾くか解らない俺を神魔の半デタントの過激派が俺を排除しようと襲いかかって来た。
デタントを覆すために反デタント同士が手を組む、まったく悪い冗談だ。
力で押し返すのは簡単だ。
しかし、それをしてしまえばそれこそハルマゲドンの火種になりかねない。
「ヨコシマ!!」
「来るなタマモ!!」
【護】の文珠の結界の中から飛び出そうとするタマモを俺は止める。
「でもこのままじゃ」
「安心しろ、半魔だけじゃなくその狐も一緒に始末してやる」
「先ずは貴様からだ、半魔!!」
ヨコシマに攻撃が集中しそうになった時、私は思わず飛び出した。
「やらせないよ、『狐火!』」
私は狐火を放ったが奴等には大した効果を与えられずに、逆に怒らせただけだった。
「くっ、このクソ狐がーー!!」
その声が合図になったかのように全員の攻撃が私に襲いかかって来た。
「あ、ああ…」
「タマモーーー!!」
ヨコシマはそんな私を守るように抱きしめた。
「そのまま消えてしまえーー!!」
「ダメッ!ヨコシマ、私の事はいいから逃げてぇーー!!」
「くそっ!一か八か」
【転】【移】
「ヨコシマー!!」
「掴まっていろよ、タマモ!!」
ヨコシマが文珠を使い、私達は爆発と同時に光に包まれた。
焼けつくような痛みと共にヨコシマの温もりが体を包む。
そして、足元から地面の感触が消え何処かに落ちて行くような感じがした。
続く
あとがき
(`・ω・)と、言うわけで修正を加えてみましたがどうだったでしょう?
読みやすくなっていれば良いんですけど。
それはそうとこのSHUFFLE!世界での横島の元々の姓、「浜菊」。
花の名前が付くようにと無理やり付けた訳ですが……。
よくよく考えてみると横島の両親は母親が「百合子」父親が「大樹」。
花の名前が付いてる……、何かズルイ。
でもまあ、前にも書きましたが「浜菊」の花言葉は「逆境に立ち向かう」。
横島らしくていいかもネ。
《次回予告》
タダくんが帰って来た。
ボロボロに傷ついて、大事そうに狐を抱いて。
でも私達の事を忘れてるみたい。
思い出して、みんなで遊んだ思い出を。
たとえ、私の事嫌いになってもいいから。
あなたの心の中にいられるなら……
次回・第二話「帰郷・そして夕陽の思い出」
もう一度、あなたとの物語を
説明 | ||
2012/12月14日。加筆修正をしました。 本作はArucadiaにも投稿しています。 |
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