【閑話休題・6】 |
[とある名無しのガイドブック]
世界を巡る際に見たこと、聞いたことを簡潔にまとめていこう。
個人的な見解ばかりになるだろうが、ただのメモでしかないのだからこんなものだと思う。
では、出掛けようか。
【人種】
・黒目ヒト族
俗にいうオレカ目の人種。黒地に翠眼。何かしらに影響を受けている場合は紅眼に変わるようだ。
人口割合は多い。
髪色は多種多様。
・白目ヒト族
目の配色がこちらと同じ人種。人口割合は黒目ヒト族と比べると少ない。
瞳の色も多様。黒・翠・紅・蒼・金等。
髪色は多種多様。
・ケモヒト族
外見ケモノ寄りの人種。俗にいう獣人。
動物的な身体特徴があるが、ヒトと同じように活動する。
手足がヒト寄り・ケモノ寄りと差異があるが、道具を使用する場合も不便はない様子。
立場的に差別はなく、地位のある場所への勤務も可能。そもそも王国のトップがケモヒトだった。
黒目ヒト→オールマイティ
白目ヒト→若干能力に偏りあり
ケモヒト→なにかしらに特化
という形になっているように見える。
これら全て「ヒト」であり、外見・人種による身分の差はない。
この他にも天使や悪魔、ロボや精霊など様々なモノが存在している。
立ち位置等は要観察。
広い世界に多彩な種族がいるのは間違いない。しかし、この種族だから偉いというものはほとんどないようだ。
【耳】
ヒトは丸型が大半。ヒトだが聖魔要素持ちはやや尖耳。しかしその自覚のない者も多いようだ。
悪魔などは長めの尖耳が多い。
南大陸に耳長が生息。エルフというらしい。
悪魔との差異は、横に耳長か縦に耳長かというところか
どうやら種族的特徴は耳に出やすいようだ。その個体が何に特化しているかの判断はしやすい。
耳の形というものは、成長しても変わらない部位として有名だが、こちらもそうなのだろうか。
【肌の色】
天使やヒトに多いのは白・黄・褐色。
ケモは多様。
悪魔は青が多いが、外見含め多様に渡る。
精霊はその属性に沿うらしい。
【言語】
言語は世界共通、文字はアルファベット・アラビア数字・ローマ数字・ひらがなカタカナ漢字に近い形をしていた。
こちらが読めるものと、読めないほど崩れているものの差が大きい。読めないもののほうが新しい?だろうか。
声はこちら側にそう聞こえるのか翻訳されてるのか不明だが、彼らの言葉は聞き取り可能。皆々よく喋る。
【病気・怪我】
あり。
風邪・火傷はあるらしい。沈黙などの体の異常を病気に分類するかは不明。
包帯、絆創膏の概念あり。
医者はQQ式が該当するらしい。処置を施している場面を見た。
また、回復薬(エリクサー等)の概念はあるようだ。しかしあまり出回っておらず、何かしらイベントがある際に使用されるらしい。
というのも、体力・体の異常を回復する能力を持つものがいるせいだろう。
薬や医局を使用するよりは、回復の能力を持つものに頼ることが多いらしい。
どれだけ回復するかはその個体依存となるが、ある程度回復範囲が共通であるため完全に個体依存というわけではない模様。
応急処置(基本能力)+アルファ(個体の努力値)と考えるのが妥当か。
具合が悪ければすぐ病院、という考えはほぼなく、具合が悪ければとりあえず回復能力持ちに相談、という行動をとっている。
薬があまり出回っていないせいだろうか。
しかし薬が簡単に手に入る場所ならば、回復役の負担を減らすため薬の使用を優先するようだ。
また、回復能力の持つものが少ない場所では、野生の回復草(やくそう)を使用するらしい。
野生のものだからか回復量も大したことなく、持ってるといざという時安心程度のシロモノのようだが。
それを人工的に生産した質の良いものが秘伝のやくそうとよばれ、それらを加工したものがエリクサーとなるらしい。
【生活習慣】
排泄行為が存在するならば、獣人を考慮するとトイレ等の形が変わると思われる(しっぽがあるので洋式にすると邪魔になるため)
というかデフォルト鎧姿なら脱衣が大変そうだがどうなっているのだろうか。
モンスターはトイレに行きません世界か?
そうなると各種器官が無くなる気もするが。
ひん剥いてみたいが、流石に殺されそうだ。
風呂の有無は不明。
そもそも風呂に入る必要があるのか不明。
水をかぶる→服の裾を絞り顔を振れば全身乾く、の某夢の国仕様なら入浴で脱衣する必要はないが。
地域によっては気候的土地柄的に温泉等ありそうではある
食事の回数、時間は不明。しかし晩餐や食べ物はあり、またディナーという言葉も存在する。
食べ物として、素材を加工する文化もある。
パスタ系や甘味系を見た。美味そうかは言及しない。
その時に気付いたが、スライムは食えるらしい。他にも食用モンスターがありそうだ。
竜を食おうとしていた者も見掛けたが、食えるのだろうか。
竜の鱗や肌の質感を見る限り、一応肉として食えるだろうが処置は大変そうに思える。
そもそも食べたら竜騎士団に殺されそうだが。
食事文化としてナイフ・フォークの存在があり、皿などもある。
酒・ツマミの文化もあり、酒に関してはこちらの宗教神話現実の隔てなく存在し、妙に種類が多い。
飲酒禁止年齢があるかは不明。
喫煙は見なかったな。あるのだろうか。
【通貨】
一応ある、と思う。
通貨単位は「ゴールド」であり、記号としては「G」を使用する。
表記方法としては数字の後に記号をつけるタイプとなる。
つまり「500G」という表記。
この貨幣単位はどの大陸でも変わらず、世界共通貨幣となっていた。
少し海を越えたら貨幣単位が変わることもあるというのに、離れた土地でも貨幣単位が変わらないというのは面白い。
各大陸同士で頻繁に交易をしているのだろうか。
価値を判断出来る品物が少ないためよくわからないが、「やくそう=10G」となる。
これを基準として考えればよいだろう。
そこら辺に生えている草が10G。
つまり「やくそう=10G」ではなく「10G=やくそう」。10Gは野草1個分の価値があると考えるとレートがわかりやすいだろう。
闇のチケットというコロシアム参加券があるが、闘士と闘うための挑戦料と考えればよいか。
挑戦料、野草30個分。
そこら辺に生えているとは言ってもただの草ではなく、回復可能なシロモノであるためかなり特殊な草だ。
採取にも手間がかかることを考えると妥当だとは思う。
【居住】
居住場所としては、各大陸の気候・文化に合わせた建物が存在する。
しかし各大陸に共通の造りを持つ建物が存在し、住居の文化レベルに差異はない。
また同時に、上記の事柄から「文明を共有するためのルート」が存在していることとなる。
同じような造りのものが、離れた土地に存在しているからだ。
「同じ形の家の造り方」が各所に広まっている=各大陸で文化は共有=情報を伝える文化が存在する。
流石に砂地に他大陸と似たような建物は建てられないようだ。
砂地で見掛けたのはテントタイプなので、砂漠では移動可能(作成と破壊が容易)な家に住んでいる可能性が高い。
住処を変更するというよりは、敵の目を眩ますため、という側面が強く感じた。
【文化】
音楽、楽器あり。
文学、書物あり。
石加工、宝石あり。
用途・加工法・成分不明の古代物あり。
宗教、不明。神を名乗るものがそこら中にいた。
結婚という行為を行うかは不明だが、夫婦・親子の関係はあるようだ。
詳しくはわからないが、恐らく夫婦の営みにより子を成す模様。
また兄弟関係があることから、産む子の数に制限はないらしい。
先ほど種族や外見は多様だと記したが、夫婦となる際これらに影響されることはないらしい。
外見が同じタイプの種族とでしかくっつけないということはなく、全く違う種族だろうと夫婦関係を構築できるようだ。
子供は両親の特徴を受け継いだり、全く受け継がなかったり、いい塩梅に混ざったりと、特に定まってはいない。
外見も種族も異なる夫婦から産まれる子供は、どうなるか完全にランダムである模様。
それでも似通う部分は出るらしく、資質や得意なことなどは受け継がれやすい。
闘うことの多いこの世界では「親が子に技のコツを教える」ことは日常茶飯事であるようだ。
親子仲が良いならば、それは喜ばしい。
他には各大陸によって気候が違うせいか、文化・思想に若干の差異あるように思う。
但しそこまで大幅なものではなく、気候により生活様式が変わるため多少の差異が出る程度。
そのため大陸間での大きな争いはない。
普通、文化の差異や思想の差異で争いが勃発するものだが、(各大陸内はともかく)大陸間ではほぼ発生していない。
己のナワバリを増やすため他大陸に侵攻する、己の文化を蔓延させるため侵攻する、といった侵略行為は大陸間では行われていない。
どうやら大陸間の関係は安定しているようだ。そもそも各大陸を自由に行き来できる時点で戦争レベルの軋轢はないか。
自大陸の騒ぎが優先されており、他大陸に干渉する余裕がないのかもしれないが。
そんな中でも、次に記す「火大陸」の「王国」は世界規模で知られている。
かなりの影響力を持った場所であるらしい。
他大陸干渉を微力ながら行ってはいるのだろうか。
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【火大陸】
世界の南側に位置する。
王国周辺は気候が安定、湿度が高く温暖。緑もあり、やや小さいが集落がある森もある。
城?城下町周辺はがっつり鎧を着込んでも大丈夫で、肌を露出させても問題ない程度の過ごしやすい気候。
煉獄周辺は火山の影響か昼夜問わず暑い。耐性のある生き物か、対策をとらねば行動が制限される。
緑は全く無く、炭化した木のような何かがポツポツ生えている程度。
川の代わりに溶岩が流れる。
メソタニア周辺は比較的乾燥気味。
そのため風通しの良い布製の衣服、もしくは露出の多いものが好まれる。
乾燥していて暑さはあるようだが、風通りは良いらしい。
【王国】
城は大陸のシンボルのように建っており、大勢が生活できるほど広い。客人も受け入れられるほど。
城の住人は住み込みで働く場合と通勤する場合があるようだ。
平和だった時期は住み込み兵で充分回せるほどだったが、現状は外部(主に城下町)から協力者を得ているらしい。
【王】
女性。
王国の城にいる女王なのだが、行動力のある性格なのか自ら軍を率いて飛び出したり、問題解決のため堂々と敵に立ち向かっていた。
幼いころからお転婆だったらしく、世話係が軽く匙を投げたらしい。
元気なのはその頃からか。
また煉獄には煉獄の皇が、メソタニアにはメソタニアの王がいるらしい。
両者とも国内がまだ落ち着いていないせいか、あまり情報は聞けなかった。
【見習い兵】
見習い兵は城の雰囲気・仕事に慣れるためほぼ全員住み込みで生活していた。
1人部屋もしくは2人部屋で過ごしているが、基本的に見習い部屋は狭い。
見習い2人部屋が大人1人部屋と同程度の広さ。
狭い部屋というものは居心地が悪く、そのため引き篭もりを防止することができるのだがそういった意図があるのだろうか。
現に見習いたちは大体外に出て行き、部屋に篭る時間が短かった。
執務を執り行う大人の場合は、執務室+やや狭めの自室が割り当てられる。
部屋サイズは
見習い部屋<見習い2人部屋<大人部屋<執務部屋
偉くなればなるほど広くなるらしい。
見習いとて外出は自由。しかし門限あり、夜まで。
(魔王出没後・修正)外出は城下町までなら自由だが、門限あり、夕方まで。城下町より外に出る場合は許可が必要。
(魔王討伐後・修正)外出は自由。しかし門限あり、夕方まで。他大陸に行く場合は許可が必要。
見習いはのびのび育てる方針(それにより、固有技や特徴を出させる模様)であるため、午前中は座学・午後に実技。
学習計画により一日中座学の場合や一日中実技の場合、校外実習などあり。
午前に実技・午後に座学というパターンはほぼ行われないらしい。
午前で力尽き、午後眠る見習いが多発したためのようだ。
基本的に3時ごろには終了しその後見習いは自由時間となる。
終了を告げられるや否や、風のような速さで遊びに出る見習いもいれば、残って自主練に励む見習いもいた。
大半が外に走っていったが、ここら辺はどの世界も変わらないらしい。遊びにかける子供の情熱は目を見張るものがある。元気だった。
見習い育成には騎士たちがあたり、各々の得意分野を教えたり基本武術の監督を行う。
座学はある程度のベテラン、もしくは知識に自信のある者が担当。属性関係を主に叩き込むため魔術師が担当することが多いようだ。
見習いの時点である程度の所属が決まる。徐々にその所属隊特化の訓練が増えるため、隊変更はほぼ無い。
また、見習い訓練は外部にも解放しているため、王国の騎士や魔術師見習いの他にも外部の子供が混ざることもあった。
外部の子供を混ぜる理由として「情報収集」「周囲の戦力確認」「友好度の底上げ」があげられるだろう。
子供のもつ情報、状態は甘く見れない。子供にとっては些細なものだが、そこから重要な情報を導き出すことが可能だからだ。
例に出すなら「最近戦士のお父さんの帰りが遅い、疲れていて怪我もしている」程度でも「他国が軍事訓練に力を入れ出したのではないか」と読み取れる。
情報のきっかけは些細なことから引っ張り出せる。
またその国の子供を見れば、その国の状態がある程度測れる。
大まかに言えば、ツヤツヤしているならば「子供にも栄養が行き渡るくらいは豊か」、やつれていたならば「子供に満足に栄養が行き渡っていない、国そのものが弱っている」等
友好度の底上げは言葉通り。また「所属隊の子供以外にも門戸を開いてます」アピールになる。
門戸を広げると敵の進入が容易になるが、同時に情報が非常に多く入ってくる。
また同時に「他処の戦力監視」も可能になるため、広げたほうがメリットが高いのだろう。
【騎士】
王国騎士は近衛・歩兵・重装兵・竜騎士の隊で分類されている。
城だけでなく、各大陸に散らばり各所で勤務している模様。特に機動力の高い竜騎士隊、汎用性の高い歩兵は各地にいるらしい。
文明の流れがあると先ほど記述したが、運び屋は彼らかもしれない。
・近衛兵
主な仕事は王族の護衛。王国の城でのみ働いている。が、女王がそこそこ外に出るタイプであるため、護衛のため近衛も割と外に出ていた。
元気な女王だ。
魔王襲撃時により一時近衛が崩壊した際は女王の護衛に一般兵士が付いていたが、落ち着いた今では近衛が付くようになったらしい。
しかし近衛の中に元一般兵上がりがいるらしく「やられる前にやる」気質が強いせいか、稀に無断でどっか行く模様。元気な近衛兵だ。
・歩兵
片手に武器を、片手に盾を持つことが多い。
武器の形状、盾の形状は自由。
王国推奨は白騎士のスタイルとなるが、魔王襲撃により変化し実戦で動ければ何でも良いスタイルとなった。
また一番危険な場所での戦闘を強いられるため、功績を認められた場合は基本的に装備や装飾をド派手にされる。
数多の戦闘を経て、生き残ったことが一番の功績となるようだ。
功績を認められたらしい騎士がひとりいたが「んな派手なもん着れるか」と派手な鎧を拒否している場面を目撃した。
結果、地味目な真っ黒い鎧を手渡されていたから、要望はある程度通るらしい。
・重装兵
王国の壁役。
そのため大きな盾を所持することが義務となる。
とはいえ守るだけではなく、盾とは別に武器を所持したり、盾そのものを使い戦闘に参加する場合も多い。
ガタイの良い重装騎士を見掛けたが、見目のゴツさとは反して中身は穏やかな人柄をしていた。
各所に壁役として出撃するせいか、コミュニケーション能力が高いようだ。
まあ「護るなら殴ったほうが早い」と言わんばかりにメイスや盾を振り回していたが。
・竜騎士
上記3隊が城を居住地としているのに対し、竜騎士隊は相棒の竜の側にいるためか、城の敷地内にある特殊棟で生活している。
竜騎士棟は竜小屋の側に併設されており、他3隊とは生活リズムが異なる模様。
地位の高い竜騎士は事務処理のため城の中にも部屋を持つが、基本的に竜中心であるらしい。ほぼ部屋にはいなかった。
他の竜騎士も同様に、基本的に城の中にはおらず敷地内の森や広場、街の外などの広い場所で竜と戯れているようだ。
機動性が高いという特徴があるためか、竜騎士は他国に派遣されることが多く、有事の際はそこから救援に移ることがあるらしい。
魔王襲撃時は竜たちが飛び交っていたが、救援に来た他大陸の竜騎士たちだったのだろうか。
どの竜騎士も駆け付け一杯といったノリで竜の話を振ってくるため混乱したが、彼らにとって最優先は竜、特に己の相棒なのだと言う。
放っておくと延々と惚気話をされるから気を付けろと、竜騎士の友人だと名乗った騎士に忠告された。
【魔術師】
最高位は宮廷魔術師。彼らが王国での魔術儀式全てを執り行っていた。
彼らのおかげなのか、王国騎士には召喚の魔法を行使できる者が多い。
薬草園の管理もしているらしく、イベントで使用される効果の高く薬草やエリクサーなどの即効性回復薬は魔術師が管理している。
余っていたのか快く譲渡してくれた。
【城下町】
人通りが多く、多種多様な人種が生活している。商店も多く、世界で一番栄えている場所に思える。
また、多様な人種が住んでいるためか情報の行き来も多い。
腕の立つものも多く居住しており、王国騎士に依頼するまでもない案件には彼らが動いているようだ。
依頼をこなし日銭を稼いでいるらしい。
彼らはかなり自由に動いており、王国の人間とも分け隔て無く接している。
どうやら他の大陸から訪れ、定住する者も多いらしい。
王国ではあまり見ない服装の、パッと見完全に忍者を見掛けた。
その忍者は街に馴染んでいるらしく、街中を歩いていてもおかしな顔をされていない。楽しそうだ。
他にも他大陸出身らしい外見の者をよく見る。
問題が起きることもなく穏やかに生活しているため、人種や大陸間での差別や嫌悪などは全くないのだろう。
【緑の森】
火大陸の一部。
そこまで大きくないが、一種族が固まって居住できるくらいの広さはある。
ここに住む種族は耳が横向きに長い種族(エルフ)であり、基本的に森から出ることはないらしい。
一生涯で海を見たことのない個体も存在するようだ。
珍しく外に出る個体を確認したが、好奇心が強く、外のものに対し友好的だった。
多少オドオドしているようにも見受けられたが、何かあったのだろうか。
聞くところによると、彼らの種族は「仮面」を守り神のように扱っているらしい。
宗教的な思想を持っているようだ。仮面は御神体のようなものだろうか。
それを問うと彼の挙動が更に不審なものとなる。…何かあったのだろうか
【煉獄】
一時期動きが控えられていたが、ここ最近大きく動くようになったらしい。
今後要観察。
気候としては暑いというか熱いという域であるため、歩き回るには対策が必要。
また似たような地形が広がっているため、迷わないよう注意。
こんな場所でも子供は元気らしく、身の丈以上の大剣を担いで走り回っている子を見つけた。
それを怒鳴りながら追いかける魔術師も見掛けたが、よく走れるなと感心したものだ。どちらも元気だった。
目に入った城を訪ねたが、そこの住人に睨まれてしまった。突然の訪問はやはり失礼だったか。申し訳ないことをした。
鏡のような騎士のような青年に送ってもらったが、道中延々と己の話をされた。
青年に礼を言い城下町に戻る途中、ハンターを生業としているらしき男女と出会った。
大男と小柄な女性だったのだが、煉獄からの帰りだと話したら妙に心配される。
どうやら煉獄は観光に行くような場所ではないらしい。
そういえばこのふたりは揃いの腕輪を身に付けている。パートナーのあかしだろうか。
仲が良さそうで微笑ましい。
仕事のパートナーだとは思うが、揃いの腕輪か。もしや夫婦なのだろうか。
それはそれで微笑ましい。
【メソタニア】
砂漠ほどではないがやや乾燥気味の気候。しかし、風は心地よい。
男女共にヒラヒラした服装をしている。流石に武人はかっちり着込んでいたが。
己を老いぼれと卑下する老将に出会ったが、老人とは思えないほどのキレのある動きをしていた。
どこらへんが老いぼれだったのだろうか。些か疑問に思う。
この国の王族は天使の血をひいているらしく、他の者と比べると身体能力が若干高い。
とはいえ外見はヒトとほとんど変わらない。翼なども見当たらなかった。
身体能力が高いからといって驕ったりせず、近隣国とは穏やかな関係を築いているようだ。
(狂王出撃時・修正)身体能力の高さを生かし他国に侵略を開始した。ただこの行為は指揮者の独断であったらしく、止めようとする者も同時に出現している。
今後どうなるのか、要観察。
【地下聖堂】
ふらりと歩き回っていたら王国近くに地下への入り口を見掛けた。
扉に手を掛けようとしたら呼び止められ「割符」の提示を求められる。持っていないと伝えたら追い払われた。
形は聖堂のようだったが、普通の人は入れないらしい。
■■■■■■■■■■
南の大陸から船に乗り半日ほど揺られていると、北の大陸、つまりは水大陸に到着した。
移動方法は様々であり、半日もかからず到着する術は存在している。
船旅中、上空を竜が飛び去って行った。竜での移動も行なわれているらしい。
ただ、一般的には船の移動が主のようだ。
【水大陸】
世界の北側に位置する。
海を重視しているのか他の場所と比べると海周辺は妙に活気があった。この辺りの海は俗称として「魔海」と呼ばれるらしい。
全体的に気候は過ごしやすく、涼しい。ただ湿度が高いせいか、その気候に合った生き物が集中していた。
この場所は少し前までは雪と氷に囲まれた極寒の地であったらしい。
今では雪も溶け、肌寒い地域はごく狭い範囲で残っているだけだった。
この極寒地域には雪の民と呼ばれる者たちが生活している。
【国】
他大陸の国とも友好関係を結ぶ大きな国がある。武術・魔術の区別なく両方ともに力を入れているらしく、王も槍の達人であるようだ。
善政を敷いているのか街の人々の顔が明るい。
(魔王襲撃後・修正)魔王により国王が死亡。王子も行方不明。国は全て破壊され被害が非常に大きい。事実上の滅亡である。
(魔王撃破後・修正)行方不明だった王子が帰って来た。滅びた国を再建するつもりのようだ。今後要観察。
【王】
現状不在。
今後の候補としては国を立て直そうとしている王子だろうか。
とはいえ、細々とした集落では長がいるようだが、全体的に規律を好む者が多いのか、バラけていても大陸全体は落ち着いている。トップが不在でもある程度は回るらしい。
【神殿】
あまり良い噂を聞かない。
過去、魔皇によって占拠され魔皇の拠点となり、その後、魔王によって占拠され魔王の拠点となっていたらしい。
忌まわしい場所という扱いをされていた。
神殿を見に行くつもりだったが「あそこは近寄ると襲われるから行くな」とほぼ全員から注意されたため断念。
魔皇に占拠され魔王に占拠された場所は、今も誰かに占拠されているらしい。
【神秘の森】
この地に昔からある、深い森。深いおかげなのか、日光に弱い者が城を構えて住み着いているらしい。
城の場所は死神について行けばわかると言われたが、それは死ねということだろうか。
この森は昔天使が降臨した場所らしく、そのため神秘の森と名がついたようだ。
確かにこの大陸の近くの空には神殿が浮かんでいた。そこから来たのだろう。
【天空神殿】
厳密には水大陸ではないと思うが、一番近いため記しておく。
空に浮かぶ神殿で、地面に当たる部分は雲で構成されていた。白塗りの綺麗な神殿。
多数の天使が住まう場所らしいが、家というより事務所に近いらしい。
流石に中には入れないが、数回天使がふよふよと地上に舞い降りる姿を目撃した。
見守るというよりは介入するため地上に近い場所に拠点を置いてあるようだ。
天使が降りて来た一番古い記録は約3000年前。西の大陸に降りたらしい。
何か目的があって向かったのだろうか。西の大陸に行けば何かわかるかもしれない。
【海】
どの大陸も海に囲まれているが、特に海上を重視しているのはこの大陸だった。
昔は海賊がいたと聞いた。他大陸に先立って海の支配権を握っていたようだ。
大陸内に大きな湖があり、他大陸に比べ水に慣れていたからかもしれない。
その海賊も今は居らず、過去の産物と成り果てている。大きな海賊団が瓦解したのが原因だとされているようだ。
その海賊団の生き残りは、現在では武装商船団として各大陸を回っているらしい。
武装商船団は元海賊として生活していたせいか海上に強く、航海技術も高いため安定して品物の行き来が可能となった。
迷惑がられていた海賊が、今やなくてはならないものと変化したようだ。
この根回しをしたのが雪の民である。
当時海賊たちの被害を被った雪の民だが、航海技術は認めていたらしく、大きな海賊団が瓦解した際路頭に迷った海賊たちに話をつけ、協力関係を結んだのだという。
「色々滅茶滅茶になったから、潰すより協力したほうが良いと思った」とは雪の民の長の言葉だが、当時かなりの騒動があったにも関わらず大陸が早々に復興したのは、彼の発想と雪の民の尽力と真っ当な思考の元海賊の協力があったからなのかもしれない。
【雪の民】
過去、この大陸が雪と氷に覆われていた時期に大きく活動していた集落の民。今ではそこまで派手に動くことはないらしく、ひっそりと生活しているようだ。
ただ、今でも交易や交流のため他所に出没することがあるらしい。
名の通り寒冷地に適した民族であり、雪や氷を扱うことを得意としている。
集落と称したように民族の人数はそこまで多くないが、結束力が高く集団的まとまりはトップクラスのようだ。
仲良く連れ添っている場面を見掛けた。
比較的穏やかな性格の者が多いが、話を聞くと「全力出して倒れたらそのまま寒さで死ぬから。全力を出すときは死ぬ気の時だけ」とのこと。
寒さの厳しい土地では、激しすぎる性格だと命がいくつあっても足りないようだ。そのため穏やかな者が多いのだろう。
【祠】
大陸の端っこ、つまり海に面した場所にちょこんと祠が置かれている。
何かを封印した跡地だというが、それ以上のことは聞き出せなかった。
今も何かが封印されているのだろうか、それすらわからない。
【スライ村】
深い森の奥、生き物があまり近付かない場所に小さな小さな村があった。
こんな所に村が?と足を踏み入れたのだが、ヒトはいない。
代わりに無数のスライムたちが、ふにふにとぷよぷよと歩き回っていた。
スライムの村なのだろうか。
スライムたちが、大きさや形を問わず動き回っている様は妙に和む。
「きゅ」「ふゅ」「ぴゅ」と様々な鳴き声が静かなこの村の中に響いていた。
そういえば、他の場所にいるスライムたちも群れていることが多い。
群れを作る性質があるのだろうか。
しばらく癒されていたが、帰ることにしよう。静かに暮らしているスライムたちの邪魔をしてはいけない。
そう思い立ち上がると、太陽のような青色のスライムと太陽のような銀色のスライムがふよんと浮かび寄って来て、小さな冊子を渡してくれる。
…パスポートのようだ。
………、また来てよいのだろうか。
……今度来たときは撫でても良いだろうか。
■■■■■■■■■■
水の大陸に別れを告げ、また船に乗った。
船足が進むたび空から雲が消え、青空と照りつける太陽が姿を現していく。
船旅を終え大地に足を下ろした先は、果てなく続く砂原だった。
【土大陸】
世界の西側に位置する。
ほとんどが砂ばかりの砂漠。俗称として「砂縛」と表現されるらしい。
乾燥しており暑い。しかし湿度が低いせいか蒸し暑いとは掛け離れている暑さだ。純粋に暑い。
普通、砂漠で生活する人間はだぼっとした長袖の衣服を好む(湿度がないため直射日光・低音火傷対策、かつ身体を陰にしたほうが涼しい)のだが、ここら辺の者は妙に露出が多い。
大丈夫なのだろうか。
またこの砂漠は夜間、昼間の暑さから一転して凍えるような寒さとなる。
この寒暖差が起きる原因は砂漠の性質だ。
砂漠には木などの遮蔽物がないため、昼間太陽の光が直接降り注ぎ大地を暖める。このため太陽の熱がダイレクトで届き、ただただ温度が上がっていく。
夜間はその逆で、熱が空へと逃げ出すため冷える。
他の場所では遮蔽物があり湿度も高いため、逃げ出す熱が留まり少し温度が下がる程度で済むのだが、砂漠にはその熱を留めるための遮蔽物がない。
そのため、砂漠では熱を留められず、せっかく大地を暖めた熱はそのまま消え去ってしまうのだ。
太陽の恵みを一番享受出来る地であるというのに、それを失うのも一番という厳しい土地。それが砂漠だ。
実に面白いと思わないか?
光を、120%得られる。しかし、光を、120%失う。
恩恵を過剰に貰えて、過剰に奪われる。
そんな土地なのだから。
そんな土地柄だからか、住まう生き物も少ない。見渡しても火大陸や水大陸のように、多くの生き物の姿は見られない。
のだと思ったのだが、どうやら違うらしい。
ヒトが住んでいそうなテントを訪れると紫色の髪の少し気が強そうな女性が出迎えてくれたのだが「みんなあそこに捕まっちゃったの!」と不機嫌そうな声色で、大きなピラミッドを指差された。
ピラミッドと言えば王の墓という印象だったが、どうやらここでは現役の居住区として活動しているらしい。
ああ、何かしらが捕まっているならば居住区というよりは監獄か。
あれだけ大きいならば大勢収監できるだろう。
しかしながら、遠目に見た状態であるがかなり古いもののようだ。
話を聞いたが彼女も詳しくは知らないらしい。
己が産まれた頃にはもうあったとのこと。
気になったが「えっ?死にたいの?」という彼女のひとことで我に返った。
流石に監獄に好き好んで入る気にはなれない。
【ピラミッド】
土大陸で一番目立つ建築物。かなり大きくかなり広い。
大昔から存在しているらしく、劣化なのか多少の破損はあるが問題ないらしい。
魔王軍の拠点兼、監獄。
中は捕まえた者を収監するための檻とコロシアムがあるようだ。
毎日のように歓声と決闘音が外まで響いていた。
砂漠の住人がほとんど収監されているらしい。
捕獲を免れた者が捕まった者たちを助け出そうと動いている。しかし特に何かするでもなく、偶然潜入に成功した輩も早々に逃げ帰っていた。
(一部脱獄後?・修正)コロシアムからの歓声が止んだ時期があった。どうやらこの時に数人が脱獄を成功させたらしい。しかし不気味なことに、脱獄した者を追うような素振りはなく、しばらくしてまた歓声が響き始めた。
【王】
ピラミッドに住み、この地で大きな権威を持つのは魔王と呼ばれるものだ。
件のコロシアムの主催は魔王であるらしく、住人を攫ったのもコロシアムで闘わせるためらしい。
それ以外にも、魔王はあの場所に罪人を収監しているようだ。
数多の生き物を集め捕らえているとは、あのピラミッドは監獄というより魔王のおもちゃ箱のようだなと思った。
監獄から脱獄したという男に話を聞けたが、収監中のことはあまり話したくないようだ。やっと出られたのだから蒸し返すなと言わんばかりの目付きで睨まれた。
申し訳ないことをした。
【朽ちた遺跡】
砂漠で一番目立つ建築物はピラミッドだが、そこら中にちらほらと朽ちた遺跡が点在している。
材質的にピラミッドと同年代のものだと思うが詳しいことは不明。
朽ち果て具合から1000じゃ足りないほどの大昔のものではないかと推測したが、どうだろうか。
【オアシス】
この砂漠で生きるための最重要拠点。適度な範囲で点在していた。
ささやかだが綺麗な水と少しの緑、果物が実っている。何か加護でも付いているのか、枯れることはないらしい。
時々見張り番のように謎かけが好きな魔物が陣取っている。
謎かけに答えられなかったらオアシスから追い払われてしまうようだ。
ここを占拠してしまえば支配も楽そうだが、魔王軍はそれをしていない。
不思議に思ったが「あいつら水キライだから、オアシスに近寄るのも嫌なんじゃね?」とケタケタ笑いながら言われた。
おかげでこっちはなんとか生きていけると、大きくて重そうな武器を軽々担ぎながら脱獄を成した青年がまた笑った。
【山】
ゴツゴツした岩ばかりの山。あまり近寄る者はいないらしい。
中腹あたりにこれまた朽ち果てた神殿のような遺跡がある。
…この地にあるものはだいたい朽ち果てているな。歴史を感じる。
行ってみようとその神殿遺跡を目指してみたが、思っていたより遠い。
暑い砂漠を突っ切り、ようやく着いたと思ったら足場の悪い岩山。
つらい。
生き物はほとんど近寄らないといわれたが、しんどくて近寄れないの間違いだと思う。
岩山の麓で休んでいると、小さな動く筒が目の前を通り過ぎた。その後すぐにつばの広い帽子を身に付けた男性が現れる。
彼が動くたびに妙な機械音が鳴った。ああそうか、ロボットならば岩山も平気だろう。羨ましい。
彼に話を聞くと神殿遺跡は完全に壊れていて危ないから行くなと忠告された。ここまで来たのに無駄足だったようだ。どっと疲れが襲ってくる。
これからまた砂漠を突っ切って帰らなくてはならないのかと項垂れたところ、「あそこは大昔に天使と人間が激しく争ったからな…」とぽつりと呟かれた。
今まで見掛けた天使は人間と争うような態度ではなかったため驚いた。
詳しく聞きたかったが、彼は帽子で顔を隠し口を割ろうとしない。
唯一引き出せた単語は「ここは昔、砂漠ではなく、生きた屍体が跋扈する毒沼だったんだよ」だけ。
これにも驚いた。
【毒沼?】
大昔、この砂漠は沼地だったらしい。
そんな面影は全くないため、本当に大昔なのだろう。
まあ、森林地帯が砂漠になった例もある。沼地が砂漠になってもおかしくはない。
またその沼地には動く屍体がウロついていたらしい。今ではほとんど全く見掛けない生物だ。別の大陸にはいるのだろうか。
砂漠にそんな生き物がいたら、瞬時にカラカラに乾いてしまいそうなので、見掛けないのも当然ではあるが。
どんな生物だったのか興味深い。
そういえば、今思えば砂漠に点在した朽ちた遺跡で一番大きいものは聖堂のようだった。
大昔に屍体が動き回っていたならばそれにも納得できる。対抗拠点だったのだろう。
今のところ、過去沼地だったという証拠はどこにもなく、屍体が動き回っていたという証拠もない。
事実か否か判断出来ない状態だ。
この地を探せば何かあるのだろうか。
そういったものがありそうなのはピラミッドだが、怖くて近寄れない。
どこかに何かないだろうか。
■■■■■■■■■■
砂漠からまた船に乗り、半日ほどかけて東へ移動する。途中数個の小島を見掛けた。気が向いたら寄ってみよう。
しかしながら今回の船は微妙に運転が荒い。
若干の吐き気を催しつつ耐えているとようやく大陸に到着した、目の前に広がるのは深い深い森だった。
【風大陸】
世界の東側に位置する。
大陸のほとんどが木々に覆われた森で、風がよく通るのか少しばかり肌寒い。
俗称は「風隠」。風隠の一族というものが住んでいるらしい。
風隠の森と呼ばれる森は深く、覗き込んでも奥まで見通すことが出来ない。環境としては涼しく湿度が高い。また土が肥沃。作物がよく育ちそうだ。
森は深いためどのくらいの住人が生活しているかは不明。
しかし彼らは族長を中心に活動しているようだ、族長がいるくらいは大勢暮らしているのだろう。
また、少し離れた場所に中華風の街並みが見えた。こちらも過ごしやすい気候らしく、住人はイキイキしている。
道場のような建物もあった。武道が盛んなのだろうか。
【風隠の森】
大きな森。
しかしながら人が大勢住んでいるようだ。
広い森の中に集落がぽつぽつと点在しており、街という感じはない。村の集まりといえばよいだろうか。
森の中を歩いていると、たまにぽつんと家が建っているため驚く。
山姥の家かなんかか。
各々かなりマイペースに生活しているようだが、定例会議や何か大きなことがあると各集落の代表が集まり集会が開かれるらしい。
その際、族長が中心となるようだ。
【族長】
文武両道な指導者。天狗のように赤ら顔で鼻が高い。
族長の名を冠する武術流派もあるらしく、弟子も多い。
また息子がふたりいるらしい。
(族長行方不明時・修正)族長が行方不明ののち、魔王となり帰還。族長には封印された跡があり、封印から解かれた時点ですでに魔王だった。
(後継争い勃発後・修正)族長が魔王となり森の族長職の継続が困難となった。ふたりの息子のどちらかに後を継がせようとしたが拗れ、森が荒れ始めた。
(乱入者登場後・修正)後継問題で荒れる森に乱入者が現れる。森を海に沈めようとしており、早急な対応が必要となる。この騒ぎのドサクサに紛れて、族長の長男が後を継いだらしい。
【新族長】
まだ年若い青年。
しかし一応族長となれるように育成されていたのか、先代と比べると拙いものの取りまとめは出来ている。
しかしまだ経験が浅いせいか、多少強引な手段を取ることが多い。
武術はあまり得意ではないらしく、先代の流派は習っていないようだ。代わりに弟のほうが武術流派を受け継いだ模様。
そういえば弟はどこに行ったのだろうか。見掛けない。
【七笑流】
先代族長が編み出した武術。
基本的に剣術を扱っていたようだ。しかし剣の形状に拘りはなく、身体全体をバネのように跳ねさせ柔軟に動き回ることを重視する流派らしい。
居合なども学べるようで、敵の攻撃すら弾き返していた。
矢の雨すら全て弾き返した時は「狂ってる」と感じたものだ。
先代を師匠と呼んで慕っている青年に出会ったが、何かを探しているようだった。
しかし同時に己の剣の道も極めようとしていたため、真面目だが割とマイペースなタイプらしい。
どっちかにすべきでは。
【道場】
七笑流は剣がメインの武術だったが、この地には拳がメインの道場もあるそうだ。
訪ねてみると赤い道着を着た青年に迎えられる。
傷だらけだがにこやかに微笑む師範で、門下生を優しく指導していた。
話を聞くとこの道場は一度潰れてしまい、その後修行を積んだ彼が立て直したらしい。
誇らしげに教えてくれた。
その彼に、何故潰れたかを問うのは無粋か。やめておこう。
【文化】
街を歩くと他の地とは一線を引く文化が根付いていることに気付く。
他の地が洋風だとすれば、この地は亜細亜風と称すればよいだろうか。
大きな森が壁となり、他の地よりも他文化の進入が少なかったのだろうか。それともマイペースなものが多いせいで文化の混入が進まなかったのだろうか。
文化交流が全くないというわけではなく、洋風文化もきちんと存在しているため、外の文化を受け入れ折り合いを付けたり、他文化を自文化に混ぜ合わせるのが得意なのかもしれない。
なんというか、不思議な大陸だ。
【忍びの里】
森と街の中間あたりに、隠れるように佇む小さな集落を見つけた。注視しながら歩かないと見逃してしまうだろう。
興味をそそられ覗き込んでみたが「曲者!」と怒鳴られ苦無を投げつけられた。忍者の住処のようだ。
以前王国でも忍者を見掛けたが、彼の故郷だったのだろうか。
苦無で威嚇され追われたためほうほうの体で逃げ出したが、追い付かれ肩を掴まれた。死を覚悟した。
しかし捕まえに来たわけではないようだ、むしろ逆に追っ手から匿ってもらえた。
助けてくれた男性は戦士のような外見だったが忍者らしい。月の一族だと名乗られた。
こちらがメモを片手にしているのに気付いたらしく、自分も物書きをしていると楽しげに冊子を見せてくれた。
「月風魔伝」というらしい。
この地の忍者はいくつもの派閥に分かれており、ライバルだったり共闘関係にあったりと得意なことも関係性も多様であるようだ。
一応、闇の一族・影の一族・風の一族・月の一族と分かれているらしい。
特に闇の一族と影の一族は似通っているせいか仲があまり良くないという。どこの忍者にも派閥戦争はあるようだ。
風の一族はあの里ではなく風隠の森に住み着いた一族で、風隠の一族御付きのような忍者らしい。
森に入った瞬間捕捉されて監視されるぞと笑顔で言われた怖い。
月の一族はこの3種類とは一線を引き、少しばかり身分が上らしい。ただ人数が少ないせいか形式的なもんだと適当に説明された。
他の一族とは違い、月の一族が隠れることはほぼなく割と堂々と活動しているようだ。
森側に帰るつもりだと伝えれば「鬼神には気を付けろ」と忠告される。
ニライカナイは先祖のいる場所、ここと変わりない。だから悪いところではないが、やり方がなと苦笑交じりに語られた。
こちらにもあの世という考えはあるらしい。
忍者と別れ、ふらふらと歩き回っていると更に不思議な場所に迷い込んだ。
空気が違うというか、ヒトの気配がまるで無い。生き物の気配はするのだが。
そして帰る道が見当たらない。どういうことだ。
妙な空気の見知らぬ土地で途方に暮れていると、ひとりの青年が現れた。
助かったと思わず駆け寄れば厳しい目で睨まれ「出てけ!」と怒鳴られた。
怒鳴るや否や彼は姿を変え、なんとドラゴンの姿となる。見たことのないドラゴンだ。
変化の能力のある者は何人かみたが、全員が「他の誰かに変化する」能力だったはずだ。
彼のような変化は初めて見た。
ヒトがドラゴンに変化したことと、その変化が見たことのないものだったことの両方に驚き固まっていると、今度は大きな鳴き声で威嚇される。
鳴き声に驚き思わず「食べないでください!」と懇願すると、ドラゴンは慌てたようにヒトの姿に変わり「食べねーぞ!?」と憤慨したように言われた。
食べないらしい。
出て行きたいのは山々だが帰り道がわからないということを必死に訴えれば、迷子多くなったなやっぱ結界がほつれてんのかなとブツブツ言いながらも、彼は外まで案内してくれた。
出口らしい場所で道案内の礼を告げるついでに、ここは何だったのかを聞いてみる。
すると「竜の郷、竜人の郷だ。外のヤツは立ち入り禁止なんだぞ?」と苦笑された。
驚いた。
【竜人の郷】
竜、もとい竜人の住処。
ひっそりと暮らしているのか、外部の人間は嫌いなのか、入り込むだけで敵対される。
ただ現在は微妙に穴が空いているのかうっかり迷い込めるようだ。
あまり友好的な場所ではないため、下手に迷い込まないよう注意する必要がある。
【竜人】
竜の郷に住んでいるのは人型の竜人と呼ばれる生き物。
人型といえど外見は様々で、竜に近い形であったり、爬虫類に近かったり、人と変わらなかったりしているらしい。
基本的に彼らは郷から外に出ないようだ。
彼らは外部からの侵入者も外部そのものも良しとしない。
竜人は普段二足歩行のヒトの姿で生活しているが、大技を出す際は竜の姿を取る。そちらのほうがやりやすいらしい。
世代が進むにつれヒトの姿のほうが安定するのか、年若い竜人はほとんどヒトの姿を保っているようだ。
竜変化は簡単に行える者と少し時間がかかる者がいるらしい。
「いちいち変わるのメンドイじゃん?」とヒトの姿のまま刃を振り回していたようだ。
多少威力は落ちるものの、動きは完全に竜だったと、話を聞いてみた竜騎士からうっとりした目で語られた。
戻ってから郷のことを知っていた竜騎士に話を聞いたのだが、いろいろ聞き出す内に彼は「あそこに永住したい」とうっかり発言し、相棒の竜から尻尾ビンタをくらっていた。
ヒトの身体ってあんな簡単に吹き飛ぶもんなんだな。
【ライシーヤ島】
先の竜人の郷の傍に、こじんまりとした島が浮かんでいたらしい。
竜人の郷を護る守護者が住んでいるようだ。まあ、守護者はそこにはあまりいないらしく、竜人の郷の方に行っているみたいだが。
すぐさま郷から出てしまったのを、今更ながらに悔やむ。
■■■■■■■■■■
一応これで全部回ったかなとメモを整理する。
風大陸が一番警戒心が強かったなと思いつつ、ふと北の海を見渡すと山が見えた。
そういえばあの辺りに小島があったなと、船を借り行ってみることにした。
【時空の扉】
降り立った島は岩ばかりの場所、といいたいのだがどうやら違うらしい。
いや、基本的には岩場なのだが、なんといえばいいのか、どうもこの島は時空が不安定らしく、繋がった場所によって姿を変えるようなのだ。
「突っ立ってると連れていかれますよ?」と踊りながら注意された。
最近は月単位で別の場所に繋がりますねと言われ、同時に「なんであんな辺鄙な場所に繋がるのかわからないんですがね」とつまらなそうに笑われる。
最近狂ってるのかかなりマイナーなところに繋がってしまうらしい。
最近つまらないからとっとと閉じてほしいという踊り子(男)の言葉に見送られ島を後にした。
ついでに踊り子(男)の後ろでぼんやり睨みつけてくる幽霊がずっといたのだが、自分は霊感に目覚めたのだろうか。
怖かった。
船を借りたついでだと他の小島を回ることにする。
いくつあったか忘れたが、ふらふらしていたら回れるだろう。
【ロック鳥の巣】
けたたましい鳴き声と激しい羽音に顔をあげれば、ロック鳥がこちらを睨み付けていた。
辺りを見渡すと巣のようなものがあり、卵と雛が乗っている。
これはマズイと慌ててその場を離れた。卵を産んですぐの生き物の側に寄るべきではない。
聞くところによると、この鳥の羽根は魔女の箒に使われるらしい。
あと雛はめちゃくちゃ可愛らしかった。なんだあのモフモフ最高だと思う。
【水晶の洞窟】
辺りがピカピカしているなと思ったら水晶で出来た洞窟が鎮座していた。
店に水晶で出来たベルが売っていたがここの水晶だろうか。
流石に奥までは入らなかったが、入り口近くでも紫色の輝きは美しく、また空気が澄んでいて心地よかった。
【翠玉の洞窟】
ふらふら漂っているとまた小さな洞窟を発見した。地図を見てもこのような洞窟の記載はない。
中を見てみるとエメラルドがみっちりと生えていた。天然ものなのか傷が多い。
後に聞いてみると滅多に見つけられない場所で幸運の洞窟と呼ばれているらしい。エメラルドの石言葉そのもののような場所だったようだ。
少し削ってくればよかったか。
先の水晶窟とこの翠玉窟にはドラゴンが生息していたらしい。
見てみたかったような、怖いので見掛けなくてよかったような。
きっと洞窟通りに宝石のようなキラキラした竜なのだろう。
【高ボッチ島】
隅っこの方にあった島。
上陸してみたら目の前に大きな柱があった。その上から声が降り注ぎ何事かと驚いたのだが、見上げてみたら顔がある。
生き物?だったようだ。大きな柱だと思ったものはその生物?の足だった。
潰されるのかと恐怖したが、見目に似合わず友好的で「まだニンゲンは喧嘩しとるだか?」と首を傾げられる。
…この世界に「ニンゲン」はいないと思うのだが。
生きているものを表現するために「ヒト」や「人」の単語を使うが、それと同じだろうか。
この世界に生きるものに関してならば「まだ争っている」と言えるが。
そう答えれば「ほうかい…」と悲しそうな声色で落ち込まれた。
その後「つもいせぇ。まだちょんこづいとるかや」と呆れられ、こちらを見て「ごしたいんか?だいじょお?」と心配された。
大丈夫だと答えれば、「ほぉか」と微笑まれる。「だいじょおなら芋が採れるせえ。採りに行くしない?」と問われたがそんな体力はないと辞退させてもらった。
そのままのんびりと話をしたが、そろそろ帰ろうかと立ち上がる。
「けぇるんか?」と首を傾けられたので頷くと、彼は少し寂しそうな表情となった。
なのでまた来ると伝えれば「待ってるでんね」と手を振られ穏やかに見送ってくれる。「気ィつけるだに」と見送りの言葉も貰えた。
いいヒトだ。
…申し訳ない。訳すべきだろうか。
【ジンジャー島】
真ん中辺りに小島があったのだが、島の外にまで聞こえる「ジャハハハハハッ!」という高笑いに危険さを感じ立ち寄るのを躊躇した。
なんだかとても元気なナニカが住んでいるようだ。
あ、なんか自己紹介が聞こえた。
「魔王だゼッ!」とのことなので回避確定となる。
好き好んで魔王を名乗るナニカの前に躍り出る趣味はない。
【ライト彗星】
仰ぐように空を見上げた。
そういえば、かなり前から上空に彗星らしきものが留まっている。
留まる時点で彗星ではないし、流れ星でもないだろう。もしや乗り物だろうか。
得体の知れないものが四六時中浮かんでいるのは不気味だと、見下すナニカに困った顔を向けた。
まああれだけ得体の知れないものなのだから、一部で妙に信仰されそうだなと呆れるに留まる。
関わりたくない。
【竜の巣】
近い内に世界の中心で竜が集うらしい。竜たちがそわそわとしていた。
どうやら今回は同じ気質の竜同士で集まる類の催し物らしく、あまり顔を合わせる機会のない竜たちはその日を楽しみに待っているようだ。
竜騎士たちは「楽しんで来いよ」と己の相棒に土産を持たせていた。
その地の名物やらオススメの食べ物やら、あれもこれもと準備をしている。
…どの竜騎士も着いて行きたそうな顔をしているように見えるが、気のせいだろうか。
自分も行ってみたいが、どうなのだろうか。竜の集まりに乱入するというのは。
楽しげに集まっている場所に乱入したら怒られそうだが、竜たちが一同に会する機会などそうそう無い。
こっそり行けばバレないだろうか。
【ダクラウ島】
【ウロボロ島】
【七色の星】
どこかにあるらしいが、見当たらず。
面白い生き物がいて、面白い場所らしいのだがどうやら自分は会えないようだ。
ダクラウ島にいるのは大きな帝だという。話を聞いて見たかった。
ウロボロ島にいるのは愉快な形の竜と難しい言い回しをする予言者だという。予言者は予言書を所持しているとか。読みたかった。
七色の星は現状空に浮かんでいない。
空の向こうにある場所には流石に行けないか。
空の向こう、空よりも遠い場所。
天よりももっとずっと遠く。
そんな場所に浮かぶものとは、いったいどんなものなのだろうか。
空向こうに行ってみたいものだ。
■■■■■■■■■■
…これで全て回れただろうか。
他にも選ばれたものだけが利用できる島々が、いや島に限らないらしいが、そんな場所があるらしい。
銅鑼を鳴らせだの、ラッパを鳴らせだの、リュートを弾けだの、笛を吹けだの言われたがどうしろというのだ。
チケットがあれば入れるよと言われたが、そのチケットはどこで買うのだろうか。
まだまだ知らないことが多い。
もう少しだけ、ここに居させて貰おう。
蓋が閉まるそのときまで、ただひたすらに、のんびりと。
この世界をこの目で記録したい。
ただそれだけだ。
END
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