ろくろ首
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 毎晩ろくろ首になるので困り果てていたところ友人からろくろ首にならないようなおまじないのネックレスを買ってきたよと言われ、それを付けて寝るようにしたらろくろ首にならないで朝までぐっすり眠ることができて大変気持ちよく朝を迎えられたのでそれから毎日ネックレスをして寝ていたが、一週間も経つうちにどうにも気持ちが晴れず、日に日にうっぷんが溜まっていくような気持になってきて、さて、何が原因だろうと思ったけれどもおそらくろくろ首になれないことが原因じゃないのかなと思う。

「たぶん首に凝りが溜まるんだよ」

「そんなもんかなあ」

 友人にネックレスを返しながら言うと友人は首をかしげる。ろくろ首にならない友人には当然何のことだか分からず、説得力もないみたいだ。

 それでその晩は久しぶりにネックレスをしないで寝て、ろくろ首になってみたけれども、とても快適で過ごしやすく、首の凝りもみんななくなって良い。それで窓から顔を出してグーっと伸びて、友人の家まで行って頭突きで友人の窓を叩くと、「お化けじゃん」と友人が言い、窓を閉められ、「おれだよおれ」と言っても開けてくれないのでショックで傷つく。

 翌日に友人が来てまた「お化けじゃん」と言い、「ろくろ首はお化けではなく、体質であって、断じてお化けではない、千葉県に多い」と主張するも、聞き入れられず、ろくろ首を解消しないことにはもう絶交だと言う。

 それで毎日ネックレスをして過ごした。寝苦しい夜に首から伸びて表面積を増やして涼を求めるような寝相ももう取ることもできなくて、夏はいたずらに夜中に目が覚めてしまい、そのたびにろくろ首になりたいなあと思うものの長年の友人から絶交されてはたまらないからろくろ首になることを控える。明け方、日暮しの鳴き始めたころに部屋の中で目を覚ましてしまってもう眠れないなと思うとろくろ首になれないことが悲しくて仕方がなく、パジャマの袖でそっと涙をぬぐう。

 ある日、友人に会ってそんなことをポツリと告げると、「そんなにろくろ首になりたいんだったらなってもいいよ」と言われ、私は勢いいさんでその夜からネックレスを付けずに眠り、友人の家まで伸びていき、窓を叩いて友人を起こすと、友人は迷惑そうな顔で窓を開けて「夜だから、迷惑だから」と言って窓を閉めた。それでもろくろ首になったのが楽しくて仕方がないので、何度も友人の家の窓に頭突きをしていると、とうとう窓ガラスが割れてしまって、友人が本気で怒って私を追いかけてきたので、私はろくろ首のまま逃げていくと、いつの間にか朝になっていて、たぶんこうやって夜の間に自由に動き回って遊んでいるのがろくろ首の楽しいところで面目躍如なのだろうなあと思って寝不足な感はあるけれども充実した毎日を過ごせているような気がした。友人からは絶交された。

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オリジナル小説です
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