真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 41 |
……少し“怒り”についての話をしよう。
怒りは視野を狭くする。よく言われることだが、本当にただそれだけなのだろうか? 否だ。視野を狭くする、それは逆に言えば“極限の集中”なのだ。目の前の事しか見えなくなるということは、対象以外の情報をカットし、それだけ見るということ。それを集中と言わずしてなんと言う?
しかし、怒りの集中はコントロールをするのが難しい。一度爆発してしまえば収まるまで他の情報が入ってこない。かと言って、爆発させなければ逆に集中できない。だが、もし、その集中を自在にコントロールできればどうなる?
答えは単純、“強力な力”に変わるのだ。怒りの力は大きい故にコントロールが難しいだけなのだ。コントロールさえできてしまえば圧倒的な集中力を怒りの感情を感じただけで発揮できるようになる。
また、怒りにはもう一つ効果がある。人間は自分の筋肉で体を壊さないよう、常に脳に枷を掛けている。しかし、その枷は大声を出す、などで一部だけではあるが簡単に外れるのだ。分かりやすい外れ方としては“火事場の馬鹿力”がある。
つまり、怒りを手中に収めれば極限の集中と火事場の馬鹿力の二つを手に入れることになるのだ。現に、今の玄輝は人の波を風のようにぶつからずにすり抜け、時間がかかると感じた瞬間に屋根へと飛び乗り、そのまま駆けだすという荒業を平然と行え、呂布にすら引けは取らない。
しかし、それを手入れるために彼は“己”を削ってしまった。その削ったところに怒りを入れてしまった。だからこそ彼は自分をこう形容しているのだ。人の形をした復讐と。
走ること1分半、俺は城の眼前へとたどり着いていた。城は門が閉じられ、不気味なほど静寂に包まれていた。
「……」
俺は門を押して中に入ろうとするが、閂がかけられているようで、びくともしなかった。
「ちっ、面倒くせぇ」
固く締められた門の閂があるところに、掌底の形へ変えた手のひらをほんの少しだけ浮かせて合わせる。
「ふっ!」
そして、一息と共にその手のひらを押し付けると、鈍い衝撃音と共に木が折れる音が響き渡る。
閂が折れたのを感覚で感じ取った後は全力で蹴っ飛ばして閂を完全に破壊すると同時に門を開く。
「……ふん」
案の定、城内に人の気配は微塵も感じられなかった。
(とりあえず、玉座を目指すか)
この城の一番重要な場所だ。何かしら情報がつかめる可能性が高い。
(にしても……)
なんの気配も感じないのは、気味が悪いなんてもんじゃない。せめて獣の気配でもあればまだマシなんだが。
「……ん?」
いや、今それらしいものがした。気のせいに思えるほど小さいものだが、確かにした。その方向へ走り出す。
走ること数分、何かを追いかけている白装束の一団を見つけた。何を追いかけているか知らんが……。
(殺すっ!)
その集団との距離をさらに加速して距離を詰めながら暗器を投げつける。
「っ!?」
暗器は白装束の頭へ吸い込まれるように突き刺さり、一瞬怯んだ残りのやつらを10秒と立たずにすべて斬り伏せた。
「さてと」
俺はさっきまでしていた獣の気配を追う。さっきのやつらも恐らくこの気配の主を追っていたのだろう。ならば、何かしら関係があるはずだ。救出対象と。
(鬼が出るか蛇が出るか……)
と、警戒しながらその気配を追う。
幸い、気配の方はそこまで動いて無い。追手が消えたことに不審がっているのだろうか。
「……あるいは」
こっちが来るのを待っているか。
「まぁ、見つければ分かることだ」
そして俺がたどり着いたのは、城に住む人間が住む区画の一部屋だった。その中からごそごそと物音がしている。
「…………」
その扉をゆっくりと、ゆっくりとあけていく。そして、扉が開いた先にいたのは……。
「わぅ?」
「……は?」
犬がいた。しかも、割と平成の世で見るような。
(この犬、コーギー、だっけか? これ、中国の、犬だったか?)
い、いや、確かイギリスの方の犬じゃなかったか、あれ?
(……い、いや。今はそれどころじゃない)
頭を全力で振って改めて犬を見る。どうやら、何かの布に隠れようとしていたらしく、大量の布の中から頭だけを出している状態だ。
「あ〜、っと、ほれ、こっち来い」
とりあえず、手招きをしてみるが。
「……わう?」
首を傾げられた。
「……ちっ」
ここで下手な時間はかけられん。俺は懐から干し肉を取り出してそれを上下に振る。
「ほれ、うまいぞ。食いたいだろ?」
「…………」
目線は肉を追ってはいるが、出てきそうにない。
(仕方ねぇ、近づくか)
上下に振りながらじりじりと近づいていく。犬の方も視線は肉の方に集中している。
(この調子なら、っ!)
その時、タンスから何かが飛び出してきた。それをうまく受け流し、床に叩きつけてその首を斬ろうとしたとき、白装束でないことに気が付いた。
「あう!」
なぜなら、そこにいたのが年端もいかない少女だったからだ。
「……もしや」
こいつが救出対象か? と思ったところで肝心なことを聞いてないことを思い出した。
(くそ、特長聞くのを忘れてた)
まぁ、城から出てないことと、タンスの中からこちらを攻撃してきたところを見ればそうだとは思うが。
「おい」
俺はさっきの姿勢のまま少女に問いかける。
「お前、緑の髪をした娘を知っているか? 眼鏡をかけていて、やたらきつそうな口調で話す娘だ」
「っ!」
今の反応を見る限り当たりか。
「俺はそいつにお前を助けるように依頼された者だ」
「……証拠は、なんですか?」
「ない。だが、少なくても白装束の仲間ではないことぐらいは分かるだろ」
奴らは、おそらく仲間内の人間でしか話さない。斬られても、拷問されても悲鳴を上げないところから、かなり徹底されているはずだ。
つまり、ここで会話しているということはそれだけで奴らとは別の勢力だということは明確なはずだ。
「……だとしても、あなたの言っていることが本当かどうかの証拠にはなりません」
「そりゃごもっとも。だからお前がどうするか決めろ」
「私が?」
「ここで延々と白装束から逃げまわって、何かに捧げられるか、曲がりなりにもお前を助けに来たといっている人間に着いていくか」
「え?」
と、そこで思わぬ反応が返ってきた。
「ど、どうして私が捧げられるって知っているんですか?」
「さっき言った娘がそう言っていた」
「…………詠ちゃん、よかった」
そう言って目の前にいる少女は涙を浮かべる。これだけでも二人の関係性は大体わかるが、今はどうでもいい。
「……感動しているところ悪いが、さっさと決めろ」
「……あなたの言う、娘は無事なんですよね?」
「ああ。なか、」
そこまで言って頭を振る。
「腕の立つ奴が一緒にいる。まず大丈夫だ」
「……わかりました。あなたに着いていきます」
彼女の意思を確認したところで、先に俺が立ち上がり、少女に手を貸して立たせる。そこで初めて少女の全身を見た。
よくよく見ればかなり豪勢な格好をしている。まぁ、足の部分やら、袖が破れているのだが、それは逃げるためにそうしたのだろう。
「あの、この子も一緒に」
と、そう言って彼女はさっき肉で釣ろうとした犬を抱きかかえた。
「……アンタの犬か?」
「違いますけど、その、大切な人の、大切な家族なんです。だから……」
まぁ、正直余計なモンが増えるのは好ましくないが……。
(あの娘が、人質が逃げ出したとか言ってたよな?)
まぁ、本人はそこのところは“言っていいのか”と言っていたから、多分この犬の事だろう。だとすれば、それを犬質(?)を取られた人間にも話を聞ける可能性がある。
「いいだろう。だが、決して離すなよ」
「はい。おとなしくしててね赤兎(せきと)」
「バウっ!」
まるで分っているかのように吠えたのを確認してから俺は扉へ手をかける。
「じゃあ、行くぞ。遅れるな」
「は、はい」
そして、俺は一気に扉の外へ躍り出た。
だが、この時は思いもしなかった。この救出作戦が思った以上に困難なものになるということに。
はいどうも、おはこんばんにちわ。作者の風猫です。
皆さん、革命やってますか?
私はFGOの福袋ガチャで爆死しました。
どうでもいい? まぁ、そうですよね。
さて、いよいよ明日は7月最後の日ですね。
夏本番ということよりも「……あれ、今年が終わるまであと4か月?」なんて思ってしまう作者ですが、皆さんは夏を満喫していますか?
この夏が皆さんにとって良いものになるよう祈っています。
では、また次回。
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真・恋姫†無双の蜀√のお話です。 オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話なので、大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。 大筋は同じですけど、オリジナルの話もありますよ?(´・ω・) |
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コメント | ||
果たして本当に玄輝が目的なのでしょうか……? そんなこんなで待て次回! という事で一つ。(風猫) あーそういえば無印は北郷をおびき寄せるために董卓を利用したんですね。白装束の目的が玄輝君になっているとしたら… 革命購入したので時間作って何とかプレイしたい所存…ついでにブラウザゲーもやろうかな…w(はこざき(仮)) |
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