ポケモンDPt 時空神風伝 09
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第9話 ハクタイの森の洋館

 

ハクタイシティを目指してハクタイの森を進むクウヤだったが、その森は思ったより距離があり気づけば時間もかなり遅くなっていた。

 

「もう夜だったのかよ、どーりで暗くなってると思ったぜ」

 

このハクタイの森は木々が生い茂り昼間でも結構暗めであるため、クウヤは日が沈んでいることに気づかなかった。 さっきだって、クウヤはポケッチをみて今の時間を知ったのだ。 改めて森をよく見ると、ホーホーやドクケイルをはじめとする夜行性のポケモンがいる。

 

「どっかで野宿でもすっかぁ・・・えーっと、ちょうどいい場所は」

 

クウヤは周囲を観察して、なんとか野宿ができそうな場所を探した。 今まで野宿は何度もしてきたので慣れている。 つまり、彼は野宿になろうとも気にしない。 元からそういう性格だったからというのもあるが。

 

「なんだあそこ?」

 

そんなときクウヤが森の奥に発見したのは、一件の屋敷だった。 その大きさからここにはかなりの金持ちが住んでいるのがわかる。 だがその屋敷は全体的に古びており蔦が生い茂っていて、窓も割れていて、明かりもいっさいついていない・・・人の気配もない。

 

「・・・なんだってん、だ・・・?」

 

その不気味な風貌に少し身震いしたクウヤは早くそこから離れようとした。 だがそのとき、彼の鼻にぽつん、と水がついた。

 

「っげ、雨!」

 

雨が降り出したので雨宿りの場所を探すクウヤは、無意識のうちに、その古い屋敷に入っていった。

 

「・・・あ、やべぇどうしよ、入っちゃった!」

 

そのことに気づいたのは、屋敷の大広間に入ったときだった。

 

「えーと、すんませーん、誰かいませんかー!?」

 

誰もいないとは思うが、クウヤはとにかく誰かいないか確認したくて大声で叫ぶ。 だが、返事はなくクウヤの声が屋敷全体にむなしく響きわたるだけだった。

 

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「・・・ここにいるしかねぇ、か・・・」

 

しばらくどうするべきか迷っていたクウヤだったが、外は雨が降っているので出られなくなっていたので、仕方なくそこで一晩過ごすことにした。

もしも、この屋敷の持ち主にあったら面倒くさいことになるかもしれないと思ったがどうしようもないのだ。

 

「もし家の人がでたら謝ってワケをはなすしかねぇか・・・いるかどーかもわかんねーけど」

 

クウヤはモンスターボールからヒーコとズーバを出した。

 

「モウ?」

「ズバ」

「おまえら、今日はここで泊まりだぜ」

 

とりあえず食事は途中でとっていたきのみがあるから大丈夫だ。 調理はできないがきのみなら生かあるいはある程度火炙りすればだいたい食べれる。

 

「さて、ねられそーな場所は・・・」

 

とっておいたきのみを食べた後でヒーコの尾の炎を利用し屋敷内を探索する。 今彼らが探しているのは、どこか眠れそうな場所だ。

 

「・・・!?」

 

この部屋に入ったとたん背筋がぞくっとした。 周囲を警戒する彼とポケモンたちだったが、そこは紫色の奇妙な壁画が飾られているだけでなにもない。

 

「なんだよ、誰かいるなら出てこい!」

 

クウヤは必死に叫んだが、返事はいっさいない。

 

「・・・もしかして、ゴーストポケモンでもいるんじゃねぇのか?」

 

その可能性もありえる。

とにもかくにも、今は別の部屋を調べようと思いクウヤはその部屋を出ていった。 紫の壁画に赤い二つの光が現れたことに気づかずに・・・。

 

「ゴーストポケモンならなんとかできるかもしれねぇけど、本物の幽霊ならどーすりゃいいんだ?」

「モウモウ?」

 

幽霊の存在に対し怖がっている様子のクウヤに疑問を抱き、怖いのかとちょっかいをかけるヒーコ。 それに対しクウヤはいっさいの疑いもなく返事をかえす。

 

「だって幽霊がでたらさ、パンチとかキックとかきかねぇじゃん! そんなもん、どうやって追い払ったりすればいいんだよ!?」

「モウ!」

「ズババ!」

 

クウヤの考え方に対し2匹はそっちかよ、とツッコミを入れるような言動をとる。

 

「・・・あれ、もしかして、おれ変なこといった?」

「・・・」

「・・・」

「おーい?」

 

少年の言葉に2匹はあきれてなにも言えなくなり、がっくりとうなだれる。 そんな2匹に対し首を傾げたクウヤはふと、妙な音に気がついた。

 

「なんだ?」

 

その音がする部屋に入るクウヤとアーチとズーバ。 だが彼らが入った部屋にはやはり誰もおらず、古ぼけているだけで、ほかの部屋と変化らしい変化はない。

 

「え・・・なんで・・・」

 

ただ一つの違和感、テレビがついていることをのぞいては。

 

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「なんでテレビが?」

 

クウヤがテレビにふれた瞬間。

 

「トートットトトトトト!!」

「うわぁぁぁっ!?」

 

突然放電し、クウヤは驚いて少し電撃を浴びた。 それを目撃した2匹のポケモンは戦闘態勢に入りテレビをみる。

 

「なにかいる、ポケモンか!?」

 

クウヤは迷わずテレビに向かってポケモン図鑑を向けた。

 

「ロトム?」

 

図鑑に表示された名前をクウヤは口に出す。 でんきとゴーストタイプを併せ持ち、体が電気でできているというポケモンだ。

 

「ゴーストタイプだっていうなら、こんなオンボロ屋敷にいてもおかしくねぇけど、でもなんでここにロトムが? しかもテレビの中に・・・」

 

もう少し図鑑を読もうとしたとき、部屋に再び放電が広がった。

 

「ぐぁ!」

 

その衝撃でクウヤは図鑑を手放し、下の階に落としてしまった。

 

「やっべ、ポケモン図鑑が!」

 

必死に手を伸ばすが、同時にベキっという音がした。

 

「あ」

 

気づいたときにはすでに遅く、クウヤの足下も同時に崩れて、彼も落ちる。

 

「うわぁぁ!」

「ズバッ」

「モウモウゥ!」

 

クウヤの元にすぐヒーコとズーバが駆けつけ、ズーバは彼の服をくわえて必死に羽ばたき、ヒーコはすぐに彼の真下の床へいきクウヤを受け止める体制に入る。 だがヒーコもズーバも、クウヤを完璧に支えることはできずクウヤはうぎゃ、と変な声を上げて床に崩れる。

 

「いってて」

「ズババ」

「モウ?」

「ああ、お前等のおかげでけがはないぜ、ありがとな」

 

いくら支え切れていなかったといっても彼らのサポートがなかったら、クウヤは重傷を負っていたかもしれない。 なによりも、自分を助けにきてくれたという事実がクウヤには嬉しかった。

 

「あ、そうだ! ポケモン図鑑!」

「ズババ」

 

ポケモン図鑑のことを思い出しそれを探し始めたクウヤの前に、ポケモン図鑑を加えたズーバがでてきた。

 

「あった! もしかして、おまえが見つけたのか?!」

「ズバッ」

「サンキュ、ズーバ!」

 

ポケモン図鑑を見つけてまずは一安心したクウヤだったがすぐにあのロトムのことを思いだし、図鑑を開いて確認する。

 

「いつもちゃんと図鑑をみろって言われちゃってるからな」

 

頭のいい親友のことを思い出しつつロトムのデータを確認するクウヤ。

 

「えとーなになに? ロトムは電化製品に隠れて人々を驚かせている? やっぱ悪戯好きなんじゃねぇか! いくぞ!」

 

兎に角やられっぱなしは気に入らない、ガツンと一言言うか一発かますかしなければと思ったのかクウヤは2匹に呼びかけ、あのテレビのあった部屋に向かおうとする。

 

「モウ!」

「わぁ! 大丈夫かヒーコ?!」

 

そのとき、ヒーコの頭になにかが落ちてきてそれをまともに受けてしまい、ヒーコは頭を抱えていた。 クウヤはすぐヒーコに駆け寄って何が落ちてきたのかを確認する。

 

「本・・・っていうかノートか?」

 

表紙と裏表紙、そして背表紙が硬いタイプのノートだとわかった。

 

「あ・・・」

 

僅かに見えたロトムの名前とイラストが気になり、気づいたときにはクウヤはそれを開いて呼んでいた。

 

「・・・」

 

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しばらくあとで、クウヤはテレビの部屋に戻りロトムと再び対峙する。 クウヤの存在に気づいたロトムは警戒するように放電をするが、クウヤはいっさい物怖じせずテレビを見た。

 

「トートートトトッ!!」

「・・・」

 

クウヤは気づいていた。 下の階で読んだ、ロトムに関係がある日記や記録。 さきほどの攻撃。

 

「トトトトト・・・」

 

戦う体力が少ないのか少しずつ放電を弱めていくロトムにクウヤはそっと歩み寄り、ロトムに話しかける。

 

「ロトム・・・おまえさ、こんなところにずっとずっとひとりぼっちで、さみしかったんだな?」

「!」

「だからおれを攻撃したんだろ、敵だと思ったから。 そんな攻撃的なのも、さみしさをこらえてたんだろ?」

 

下の階で見つけた日記には、日記の持ち主であろう男の子とロトムの思い出がかかれていた。

 

「ホントはお前、人間が好きで、脅かしたかったんだろ、一緒に遊びたいから。 でも人間はいつかいなくなって離れてしまうかもって思ってて・・・でも人間を好きな気持ちもあって、ずっとつらかったよな」

「・・・」

「でもさ、もうこんなのやめなよ・・・。 人間が好きで一緒に遊びたいからいたずらするんだったらまだいいけどさ、放電攻撃はさすがにちょっとヤバイと思うぜ? 下手したら本当に怖がったり大けがだってしちゃうかもしれねーしよ。 逆にみんなおまえのこと本当に怖がって、嫌いになって、友達になんかなってくれるんじゃねぇかっておれは思うぜ。 そんなんじゃあ、おまえずっと独りぼっちのままになっちゃうぞ?」

 

クウヤの説得を聞いたロトムはおとなしくなり、テレビの中からその姿を見せた。

 

「・・・もうむやみに人に放電したり攻撃したりしないなら、おれが友達になってやるよ」

「!」

「放電を食らうのはやっぱきついけどな、あははっ」

 

頬をぽりぽりとかきつつ、クウヤは笑う。

 

「・・トトト!」

「わっ」

 

彼の言葉が相当嬉しかったらしい、ロトムはクウヤの周りを嬉しそうに飛び回った。

 

「もしかしてお前・・・おれのこと、気に入ってくれたのか?」

「トットトト」

「じゃあお前、一緒に来る?」

 

クウヤの言葉に対しロトムは何度もうなずくような動作をとる。

 

「んじゃきーまり! 今日からよろしくな!」

 

と、クウヤはロトムの方を見て笑いウィンクもする。 一緒にいたヒーコとズーバも新しい仲間を歓迎するように笑った。

 

 

説明
前回の更新から一週間たっていたとは…。
ちなみに先週、ポケモン映画を観に行きました、最高でした。
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