真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 42
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「…………」

 

 壁の影から周辺をうかがう。

 

「……ない」

「探……」

 

 そこにいたのは3人の白装束。何かを話し合っているようで、こちらに気が付きそうにない。

 

(俺一人であれば強行突破してもいいんだが……)

 

 問題は人質だ。

 

「…………」

「わぅ?」

 

 少女の方は見るからに儚そうで、体力があるとは到底思えないし、破れた裾から見える四肢からも普段あまり運動をしてないのがうかがえる。

 

(そうなれば下手に仕留めない、いや、まてよ?)

 

 確か、あいつらの死体は……

 

「…………」

 

 試してみるか。そう思った俺は懐から棒手裏剣型の暗器を抜いて影から飛び出して白装束へ向けて放つ。

 

「っ!?」

 

 そのどれもが頭部へ突き刺さり、命を奪う。しかし、念には念を。俺は死体に近づいてその首をへし折る。

 

「っ!」

 

 後ろで少女が目を背けたのが感じられた。あまりこういうのを見慣れていないらしい。

 

「お前、いいとこのお嬢様なのか?」

「…………」

「だんまりか。別にいいが」

 

 そう言って足元を見れば死体はいつの間にか消えさっていた。

 

「さてと」

 

 俺は近くにあった手ごろな木に登る。

 

「え、え?」

 

 少女はどうすればいいのかわからないのか、おろおろしだす。

 

「……お前、木登りすらしたことないのか?」

「え、えっと、したことはありますけど……」

「なら、さっさと来い。確かめたいことがある」

「な、何をですか?」

「奴らの死体についてだ」

 

 そう言われた少女は首をかしげるが、もう一度せかされ、しぶしぶといった感じで木に登ろうとするのだが、その手に犬がいた。

 

「あの、セキトを」

「ん? ああ」

 

 少女から差し出された犬を木から少しだけ降りて受け取るが、

 

「……わぅぅ」

「…………」

 

 おい、なんだ今の明らか様に残念そうな鳴き声は。と、一瞬思ったが、特段気にしないで再び木の上に登る。

 

「んしょ、んっ」

 

 少女は俺に遅れつつ、どうにか木を登って俺のところまでやってきた。

 

「そ、それで、はぁ、死体ってなんですか?」

「お前、俺が白装束を殺したのは見てたよな?」

「……はい。まだ覚えています」

「よし。じゃあ話を続けるぞ。で、殺されたはずの白装束の死体は見ての通りきれいさっぱりなくなっている。そうなると、その死体はどこに行ったという話になるわけだ」

「……つまり、白装束の死体を仲間が見つけられるのかどうかということですか」

「……ほぉ」

 

 どうやら運動はしてなくても頭はいいらしい。

 

「その通りだ。もしかしたら俺たちだけが見えてないか、あるいは他の何かになっているのか。なんにせよここで理解していない限りは脱出も困難だ」

 

 出会った白装束を片っ端から仕留めていいのか、悪いのか、それを知っているか知っていないかで脱出の難易度は格段に変わる。仕留めていいのであれば難易度は一気に下がる。何せ敵をいくら斬ろうが何しようがバレないのだ。これほど楽な脱出もない。

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 しかし、予想は往々にして裏切られるものだ。ちょうど現れた白装束が、さっきまで死体のあった場所で屈んだからだ。

 

「……だな」

「近く……」

 

 そう言って奴らは2,3何かを話した後に、その場で拾う動作をして立ち去って行った。

 

「ちっ、やはり何かしらの跡が残ってんのか」

 

 何を拾ったかまではさすがに見えなかったが、少なくとも白い紙のような物を拾っていた。つまり、奴らが死ぬとそこに死体代わりの何かがあるということだ。そしてそれは俺たちには見えないということも分かった。

 

「行くぞ。あまりうかうかしてられなさそうだ」

 

 そう言って俺は犬を抱きかかえたまま木から飛び降りた。

 

「あ、あの……!」

「何をしている。飛び降りろ」

「そ、それは……」

 

 ちっ。

 

「え〜と、セキトだったか?」

「ばぅ?」

「……少しだけそこでお座りしてろ。いいな?」

「ばぅ!」

 

 そう返事のように吠えた犬、セキトは俺の手からするりと降りると言われたようにお座りをした。

 

(意外と素直だな……)

 

 そう思いつつ俺は木の上の少女に呼びかける。

 

「俺が受け止めてやるからさっさと降りろ」

「へ、へうぅぅ……」

 

 彼女も余裕がないことは分かっているはずなのだが、決心がつかないようだ。

 

「……はぁ、じゃあ今から3つ数える。それまでに降りれなかったら木を切り倒す」

「え、ええ!?」

「はい、いーち」

 

 数え始めた瞬間、彼女は慌てて周囲を見渡すが、どうしようもない。

 

「にーい」

「う、うぅ!」

 

 それがわかったのか、あきらめが付いたのか、彼女は目をつぶって飛び降りた。

 

「とっ」

 

 その体を受け止め、地面へ降ろす。

 

「行くぞ」

「そ、その……」

「なんだ?」

「……見えましたか?」

「……それは命よりも大事なことか?」

 

 それだけ言うと彼女も黙ってしまった。だが、そんな彼女を慰めるかのようにセキトが足にすり寄る。

 

「くぅーん」

「ありがとね。じゃあ、行こっか」

 

 そう言ってセキトを抱きかかえると俺の方に視線を向ける。

 

「お待たせしました」

「全くだ」

 

 それだけ返すと俺たちは再び城の外を目指して静かに走り出した。

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はい、どうもおはこんばんにちは。作者の風猫です。

 

洛陽脱出が本格的に始まりました。さて、彼らは無事に脱出できるのでしょうか?

 

ということで、まて、次回!

 

……今月に終えられたらいいなぁ、董卓編。(しかし、あまり自信がない作者であった)

説明
真・恋姫†無双の蜀√のお話です。

オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話なので、大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。































大筋は同じですけど、オリジナルの話もありますよ?(´・ω・)
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オリジナルキャラクター 鬼子 蜀√ 真・恋姫†無双 

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