真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 44
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 上から降ってきた声に視線を上げれば、屋根の上を走る筋肉ダルマがいた。

 

「お前は!」

「お久しぶりねぇん! 元気してたぁん?」

「小野小町!? どうしてお前がここにいる!?」

 

 そこにいたのは、俺をこの世界に連れてきた張本人だった。

 

「ちょっと待ってねぇん、っと」

 

 そう言って奴は屋根から飛び降りて、並走をし始める。

 

「ひっ!」

「きゃうん!?」

 

 俺の腕に抱えられている少女とセキトは悲鳴を上げるが、幸いだったのは奴とは反対側に抱えられていたことだろうか。

 

「で、さっきの質問の答えだけどぉん」

「ええい、普通に話せねぇのか! お前は!」

「んもぅ、辛辣ねぇん。でも、無理だからこのままで話すわよぉん」

 

 くそ、一回聞くごとに背筋に悪寒が走って聞きたくないんだが……。

 

「私がいるのはあいつらを追ってきたからよぉん」

「なっ! お前も奴らを!?」

「ええ。奴らの親玉に用があるのよぉん」

「奴らの親玉? ということは!」

 

 その正体を、目的を知っているのか、と問いかけようとしたところでそれは聞こうとしていた本人にさえぎられた。

 

「言っておくけど、私も奴らの目的や親玉の正体は知らないわよん。ただ、やっていることを止めさせるために追っているのよぉん」

「やっていること?」

「……まぁ、虐殺ってところねぇん」

「っ! じゃあ、奴らは他の世界でも……!」

「ええ、あなたの世界と同じようなことをしてるのよぉん。で、私やその仲間は親玉を追ってるのよぉ。全然しっぽがつかめないけど」

「そうか……」

 

 ところどころぼかしている気はするが、嘘は言ってない。それに俺以上に白装束に詳しいようだ。

 

(なら、ここで聞いておくべきか)

 

 あの言葉について、聞いてみるか。そう思った俺は「シン」について聞いてみることにした。

 

「なぁ、シンって何のことかわかるか?」

「っ!? どうしてそれを!?」

「ど、どうした?」

 

 思わぬ反応が返ってきて思わずたじろぐ。だが、小野小町は何か納得したような表情に変わる。

 

「なるほどねぇん。それが奴らの目的なら色々と納得いくわねぇ」

「おい、どういうことだ! 教えろ!」

「……ごめんなさいねぇ。こればかりはそう易々は教えられないのよぉん。でも、ひとつだけ言えることがあるわ」

「一つだけ?」

「奴らはこの世界を破壊するわ。でも、それすら踏み台なのよぉん。だから、白装束には極力“近づかない”ようにしなさい」

「なっ!」

 

 こいつ!

 

「……俺が何のためにここにいるかは、大体察してるよな?」

「…………」

「それを知っていてなお近づくなと? 目の前に奴らがいるのに?」

「……その時じゃないってだけよぉん」

「はっ! そいつはお前の時だろう? 俺には関係ない」

 

 そう言って俺は速度を上げる。

 

「待ちなさい!」

「お前から聞けることは聞いた。あとはこちらで勝手にやらせてもらう。門も見えてきたことだしな」

 

 目の前に俺が開けた門が見える。しかし、そこには予想通りというべきか、さっきまで俺たちを追っていたはずの白装束の一団が待ち構えていた。

 

「小野小町!」

 

 奴の名を叫んで少女と犬を全力で放り投げる。

 

「ふひゃぁ!」

「わぅう!?」

「ちょ!」

 

 空を飛んだ少女と犬を小野小町は慌てて受け止める。それをちらりと確認した俺は白の一団へ突っ込んでいく。

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「あぁああああああああああああああああ!」

 

 叫びながら手あたり次第にその命を奪い去るが、心斬では手が足りない。俺は釘十手を左手で抜き、その速度を加速させる。

 

「っ!」

「ぐっ、がぁ!」

 

 背中を斬られたが鎖帷子がそれを防ぎ、俺はすぐさま斬ったやつをただの肉塊へと変化させる。

 

「おらぁ!」

 

 目の前で剣を振り下ろそうとした奴の腕をつかみ、力任せに投げ飛ばして地面に叩きつける。

 

「ぅ!」

 

 うめき声だけ聞いて仕留めてないことを確認した瞬間にその首めがけて全力で足を振り下ろす。骨を砕く感触が足に伝わり、確実に殺したのを感じ取り、次の白装束の体へ刃を突き刺し、縦半分に切り裂く。

 

「しゃらぁ!」

 

 釘十手で首を叩き折り、その先端を突き刺し、武器を砕いてからその脳天を穿つ。死骸を蹴飛ばし、怯んだ別の奴を死骸ごと両断したところで白装束の一団は消え去っていた。あとに残っているのは肉塊のみ。

 

「……っ! はぁ! はぁ! はぁ!」

 

 周囲に敵がいないことを確認してから、全力で空気を体に取り入れる。

 

「……終わったようね」

「はぁ、はぁ……」

 

 俺は息も絶え絶えに釘十手を腰に差し、空いた手を小野小町に向ける。

 

「悪かったな。そいつら、こっちに……」

「その血まみれの手で女の子を抱くの?」

「ハッ! それが、どうした? この手は最初から……」

「そういう意味じゃないわよ。今、血みどろになってる手で抱くのかって聞いてるのよ」

 

 そう言われて手を見ると、確かにこの手で抱くのはいささかまずい気もする。

 

「……チッ、なら、そいつらを地面に降ろしてくれ」

「……ずいぶんと横暴になったわね」

「……さっきから普通の口調で話しているの気が付いてるか、アンタ?」

「っ!」

 

 やはりか。

 

 

「無理して変な口調で、はぁ、喋ることもないだろうに。とりあえず、あとは依頼人のところまで行くだけだ。外で白装束が暴れてないってんなら特段危険はないだろうさ」

 

 何せ、奴らは全員切り伏せた。城からは追手はこない。

 

「……甘いわよぉん」

「だからやめろっての、その口調」

「そいつら、何度でも蘇るのよぉん」

「……なんだと?」

「……少しだけ話してあげるわぁん。あなた、式神って聞いたことある?」

「式神、あの陰陽師が使うやつか?」

 

 闇に堕ちた陰陽師とは何度か戦ったことがある。その時に奴らがよく使っていたのが式神だ。

 

 確か、師匠が言っていたのは……

 

「位の低い神を依り代に憑依させるってやつだったよな? まさか、こいつら……」

「そうよぉん。こいつらは式神。故に依り代さえあればいくらでも蘇るわぁん」

「そう言うことか」

 

 これで死体が残らなかった理由が説明できる。なにせ、人を斬ってなかったのだ。生き物でない以上は肉も血も残るわけがない。

 

 おそらく、俺が感じていた感覚は幻術の類だろう。あるいは、頭が勘違いを起こしていたか。

 

「つまり、こいつらも認識から外れた瞬間に依り代に戻るってことか」

 

 で、こいつらを召還した奴のところへ戻って、再び体を得て戻ってくるってわけか。

 

「ここで私が見とくからあなたはその依頼人とやらのところへ行きなさぁい」

「……そうか」

 

 その返事を聞いた小野小町は少女と犬を下ろして、俺のところへ行くようにその背中をやさしく押す。

 

「あ、あの」

「ん? なぁに?」

「ありがとうございました……」

 

 少女はぺこりと小野小町に頭を下げる。

 

「あなたがいなかったら、私たちは……」

「それは違うわよぉん。私がいなくてもあなたは脱出できていたわぁん」

「でも……」

 

 確かに、あいつがいなかったら脱出はもっと困難なものになっていたと思う。それに、あの時俺は焦っていた。

 

「小野小町!」

 

 俺は血だまりの中からその名を呼ぶ。

 

「……感謝する!」

「……そう、あなたが礼を言うのであれば、この少女の言う通りだということにするわぁん」

 

 その時のあいつの表情は、確かに慈愛に見たものだった。まぁ、筋肉ダルマなのが残念過ぎるのだが。

 

「さぁ、行きなさい。あなたを待ってる子がいるわよぉん」

「はい!」

 

 再び頭を下げて少女がこちらへ駆け寄る。

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 その時だった。

 

「っ! わぅ!」

「きゃあ!」

 

セキトがいきなり少女の腕の中で暴れて飛び出し、

 

「ぎゃうん!」

 

 体を矢で貫かれたのは。

 

「……はっ!」

 

 矢の飛んできた方を見上げると、そこには白装束が弓を構えていた。そしてすかさず矢をつがえようとしていた。

 

 俺はすぐに血だまりの中から拾った剣を全力で投げつける。

 

「っ!」

 

 剣は白装束の右肩に突き刺さり、その反動で白装束はその場所から落ちていった。

 

「セキトぉ!」

 

 少女はすぐに犬に駆け寄り、その体を抱き上げる。

 

「セキト! しっかりしてぇ!」

「わぅぅ……」

 

 俺もすぐにその場に駆け寄り、犬の体を見る。

 

 矢はちょうど体の中心を斜めに突き刺さっていた。犬の体がわからない以上、なんとも言えないが……

 

(くそ、犬を見る医者なんざ、この時代にいるはずがない……!)

 

 致命傷でなくても、治療をせねば助かる命も助からない。

 

「おい! 小野小町!」

「……私にもどうしようもないわ。それよりも気が付いてる?」

「っ! しまった!」

 

 慌てて後ろを見るが、そこに血だまりはなく、俺の体についていた血も消え去っていた。

 

「……逃げなさい。ここは私が引き受けるわぁん」

「……わかった。おい」

 

 俺は犬に声をかけ続ける少女に声をかけるが、彼女はそれに耳を貸さず、ひたすらその名前を叫び続ける。

 

「セキト! セキト!」

「……おい! 行くぞ!」

「セキトも!」

「置いていけ!」

 

 その声に絶望の表情を見せる少女だが、すぐに固く目を閉じ、首を振ってそれを否定する。

 

「嫌です! 置いていけないです!」

「その犬は何のために矢に刺された! それを考えろ!」

「でも、でもっ!」

 

 こうなったら。

 

 俺は座り込んでいる少女と同じ目線までしゃがむ。

 

「……後で好きなだけ恨まれてやる」

「え?」

 

 そして、目を開いた瞬間に首の側面へ向けて手刀を打ち込む。

 

「あっ……」

 

 少女は糸が切れた人形のように気を失い、その体は前へと倒れ込む。

 

「……セキト」

「わうぅ……」

 

 名前を呼ばれたセキトはこちらへ顔を向ける。

 

「……お前の命、決して無駄にはしない。こいつは必ず安全な場所まで送り届ける」

「……わぅ」

 

 それを聞いて安心したのか、力の無い声で返事のような鳴声を出した。しかし、そこで目をつぶることなくセキトは首に巻いてある赤い布を前足でいじり始める。

 

「取ってほしいのか?」

「わぅ」

「……わかった」

 

 俺はその布をやさしく外すと、それを目の前に持っていく。

 

「これでいいのか?」

「わぅぅ」

 

 しかし、セキトはそれを受取ろうとせずに、顎をこちらへ何度か動かす。

 

「……お前の、家族に届ければいいのか?」

「わぅ」

「そうか。その依頼、確かに承った」

「わぅ!」

 

 それで今度こそ安心したのか、ゆっくりとその瞼を閉じた。

 

「……お前の生き様、確かに見届けた」

 

 小さく呟いてから少女を担ぎ、俺は門へ体を向ける。

 

「……小野小町、後は任せる」

「いいわよぉん」

「あと、セキトを頼む」

「……わかったわよん」

 

 それを聞いて俺は駆け出した。

 

(セキト。俺はお前ほど勇敢で賢い犬は見たことがない。だからこそ、お前の託したものは必ず届ける。必ず!)

 

 それを心の中に刻みながら。

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はいどうも、おはこんばんにちわ。作者の風猫です。

 

本日2回目の更新です。

 

さて、もうすぐで董卓編が終わりそうですが、はてさて、8月中に終えることができるのでしょうか……?

 

まぁ、そこはいいとして。

 

FGOの水着イベントのCMが放送されていますね。今回の水着鯖でほしいのは、ニトクリスとフランですかね……。

 

特にフラン。非常に欲しい。

 

と、こんなところでまた次回といたしましょう。

 

何か誤字脱字等があればコメントに書いていただければと思います。では、また。

 

説明
真・恋姫†無双の蜀√のお話です。

オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話なので、大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。































大筋は同じですけど、オリジナルの話もありますよ?(´・ω・)
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コメント
おお、そちらでしたか。ホントufotableは波に乗ってますよね……(風猫)
ufotableですねー 来た当初は周辺から色々と不安がられていましたが、今は活撃刀剣乱舞が好評みたいで忙しいみたいでなによりですね。何より現知事のバックアップもありますし(笑)(はこざき(仮))
まぁ、Fateは元がそこそこ有名でしたからね…… 自分は原作から入った口です。 アニメ会社というと、ufotableでしょうか? それどもディーンでしょうか? どちらにせようらやましい……(風猫)
セキト…お前も男であったか…事情は月が知ってるから月が言えば恋も納得してくれるだろうか…知らない間にFGO、プレイ人口が偉い事になってますね、近場にFateのアニメ作った会社ありますけど触れた事なくて怒られそうで…w(はこざき(仮))
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オリジナルキャラクター 鬼子 蜀√ 真・恋姫†無双 

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