yurigame!05〜ほたvちな〜 |
Yurigame05 hotaru_v_tinatu
飛行機が無事空港に到着して地面に足をつけた時、私は実感した。
私は日本に帰ってきたんだなと…。まずは約束したあおっちとねねっちと会って
それから…私にはもう一人会いたい人がいてその人がいる場所へ行く予定を入れよう。
【日高ちなつ】
ほたる達が卒業した後、私のやる気は確かにあった。本格的に美術部に部員を
集めて活動はしていた。まぁ…時々は体を動かしに他の部に邪魔しには行ったけど…。
でも活動するたびに青葉とねねっち…そしてほたるの顔を思い出して何だか胸の辺りに
違和感を覚えるんだ。もやもやっていうか、そんな感じの…。
何度も生徒を見送っていたからすぐに切り替えられると思っていたのに私も
まだまだだな…。と部活は生徒に任せて気分転換に校門近くをぶらり歩いていると
外の方で見覚えのある顔が…。
「ほたる!?」
「あ、ちなつ先生」
一瞬また思い出のほたるが見えたのかと思ったがそこには紛れもない本物のほたるが
いた。見た目こそ変わらなかったが留学の影響なのか少し大人びた印象を受けた。
「どうしたのこんなところで」
「帰ってきてから学校のことを思い出して来ちゃいました」
ほたるの笑顔を見ただけなのにここ最近感じられなかった元気が一気に湧き出すような
気持ちになっていた。
「もしかして真っ先に私に会うために?」
「いえ、もうあおっちとねねっちには会いました。ついでに先生にも会いたくて」
「つ、ついで…」
先生と生徒なんてこんなもんだと割り切れても何だか切ない気持ちになる。
「冗談ですよ。ついでじゃなくて先生に会いたくて来ていました。
ただ、生徒じゃないんで中に入れないからどうしたものかと思っていたら先生が来て…」
それは何というか運が良かったというか。それでもこうして会えたことは嬉しいし
もう少し話もしたかったけど時間があまり残されていなかった。
「これからどうするの。私はまだ仕事残ってるけど」
「あ、それなんですけど…。仕事終ったら私に付き合ってくれませんか?」
ドキッ
べ、別に深い意味なんてないだろうに私はほたるのちょっと緊張して赤らんだ顔を
見て、その言葉を聞いたら変に胸がドキドキ鳴っていた。
「あ、ああ。いいよ。特別遅くなるわけじゃないから」
「じゃあ私は近くで時間潰していますね」
終わる予定の時間帯を教えその時間でこの校門前で待ち合わせという形で
ほたるとは一度別れた。久しぶりとはいえ、ただ話をしただけで私の中で何かが
こみ上げてくるような。興奮するような気持ちだった。
その時間に終わるようにがんばらないと…!と気合を入れて私は学校へと戻った。
***
残り一時間…ヤバイ終わる気配がない。
私なりにがんばった結果がこれだよ。一応ほたるの携帯番号は持ってはいるけれど。
私こういうの苦手だからほとんど使ったことないんだよなぁ…。
「はぁ…」
「あの…日高先生?」
「はい!すみません!サボってません!」
「いやそうではなくて…」
よく見ると声をかけてきたのは同じ教師の物腰が柔らかい雰囲気を出している
先生だった。
「私でもできる作業があれば手伝いますよ」
「あ、いや…でも…」
「大事な用事でもあるのではないですか。そわそわしてますし」
少し笑いながら言うその先生に私は顔を赤くしながら無言で頷いた。
「彼氏ですか?」
「ふぁ!?そんなんじゃないですよ!久しぶりに会う元教え子との約束が」
「あぁ…星川さんですか」
「な、なぜ…」
生徒がたくさんいる中でピンポイントにその名前を出されてびっくりしてると
先生はくすくす笑いながら言った。
「だって日高先生。星川さんと一緒にいるとすごく生き生きしていたから」
「あ、あはは…」
「本当に…恋人といるような眼差しですよ」
「そ、そんなことは…」
「別に…私はそれはそれで素敵だとは思いますけどね。さ、おしゃべりはここまでにして
さっさと手を動かしましょう。時間がなくなりますよ」
「そうですね」
そうか、周りから見たら私はそう見えたのか…。意識していなかったけど…。
いや、意識しないようにしていたんだ。意識するとほたるへの気持ちが止まらなく
なりそうだったから…。
先生のおかげで時間ギリギリに終わり私が校門まで走っていくとほたるはスマホ片手に
笑みを浮かべながら待っていたように見える。辺りはもう暗くなり始めていた。
「ほたる〜、お待たせ〜」
「あっ、早かったですね」
「ハァ…ハァ…、遅れる前提でいたのかよ…」
「あはは…」
ちょっと困った顔をした後、すぐいつもの笑顔で私の手を握ってくるほたる。
「じゃあ、デートしましょうか」
「デ!?」
「遊びに付き合ってくれるんでしょう?」
「あ…そういう…」
「さて、どこに行きましょうか」
「それじゃあ…」
私なりに考えた場所をいくつか行って遊ぶとほたるはどこに行っても楽しそうに
笑っていた。その笑顔を見るだけで私の胸の中が満ちていくのを感じていた。
そして移動するたびにほたるは私の手を握る、しっかりと。
「あの、ほたる。毎回手を握るの…恥ずかしくない?」
「え、ちなつ先生。こういうの嫌いでした?」
「い、いやいや。むしろ嬉しいけど…!あっ…」
「じゃあ良いじゃないですか」
つい本音が漏れて恥ずかしい気持ちのまま、ほたるに引っ張られる。
休憩がてら近くの喫茶店に入って紅茶とコーヒーを注文する。
「あ、もうそろそろ時間かな…」
「そっか…楽しい時間は過ぎるのが早いな〜…」
「私といて楽しいって思ってくれていたんですね」
「そりゃそうだよ。ほたるとは…部活で一緒になってからずっと楽しかった」
「え…?」
「教えがいもあったし、教えたことすぐ吸収するし。それに…ほたる自体がね。
私は好きなんだなって今更ながら思った」
「えー、なんですかそれ?」
「ほんとだよ。ほたるが卒業してまた日常に戻って…ほたるがいない日をしばらく
過ごしてから気付いた。一緒にいた時間がどれだけ大切だったか」
「遅い」
「え?」
ちょっと不満そうに目を細めて口を尖らせるほたる。
「私はもっと早くから寂しかったです。フランスに留学してホームシックになった時…。
あおっちやねねっちよりも先に先生の顔が浮かびましたから」
「そこは…両親って言っておこうよ」
でもそう言ってもらえて嬉しかったのは確かだった。私たちは離れてお互い寂しく
感じていたのか。
「だから、いつか先生の前で胸を張っていられるように頑張ったんです」
「そっか…」
随分成長したんだな…。私はほたるの強気な表情を見てそう思った。前と違って
自己管理もできてるみたいだし。私の出番はもうないのかもしれない。
あぁ…この時間がずっと続けばいいのに。ここで別れたらまたしばらく会えなくなるかも。
一応だいぶ前に青葉たちとやっていたSNSでまたやりとりをしているみたいだから
私もほたるにその場で色々教わってはいたけど、やっぱり寂しいな…。
そうして十分に休憩をして二人で外に出るとほたるに声をかけられる。
「先生」
「何?」
「もうちょっとこっちに来てください」
手招きするほたるの近づいていくとほたるの手が伸びて私の頬を両手で挟むように
して引き寄せる。
チュッ
一瞬の出来事だった。不意に近づいたほたるの唇が私の唇に重なった。
柔らかくて暖かくて少し湿った感触が生々しくてドキドキする。
「フランスでの挨拶です」
「あ、挨拶って…!?」
「じゃあ、私はこれで。また付き合ってくださいね。ちなつ先生」
「あ、ちょっと…ほたる…!?」
私はいきなりのことで頭の中が真っ白になってる状態でほたるは去っていった。
そして一人残された私はボーッとしたまましばらく一人その場で立っていた。
***
あれから少し経ってからこの間の挨拶のキスのことをねねっちと電話している時に
私が言うとねねっちは笑いながら否定をしてきた。
「えーっ、私たちの場合はほっぺにキスだったよー?」
「えっ!?」
「いくら挨拶でも口にするわけないじゃん」
「え、え…じゃああれは…」
「ちなっち〜?」
ねねっちの何度目かの問いかけに反応した私は忙しいからとそのまま会話を終わらせて
机に突っ伏しながらもやもやしていた。その…つまり口にしたということは…。
そういうことだよね…!?
私がそう考えていたらタイミングよくスマホが鳴りメールが届いていた。
『ちなつ先生、もし大丈夫だったらまた付き合っていただけませんか?』って…。
あぁ、もう!わかったよ、どこまでも付き合ってあげる!この可愛い子悪魔め!
そう来るんだったらもう私もこれからは我慢なんかしないでしっかりほたるのことを
見ていく。と強く思い、了解の返事をした。
送信し終わると私は自分でもわかるほど頬が緩んでいたことに気付いて、思った…。
「もう、ほたるのこと…離さないからな」
ほたるからの文章を見てもう一度机に向かって俯かせてから誰にも聞こえないように
自分の中で確認するように呟いた…。ほたるのこと愛していることに気付いてしまったの
だから…。
お終い。
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前々から書こうと思ってたカプでこの間の放送ですごくいいほたるんを見てモチベ上がったので一気に書き上げました♪少しでも気に入ってもらえたら幸いです=ω= | ||
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