友人じゃなくて、恋人じゃなくて。
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アイツは、何の予告もなく訪れることがある。

まったく、迷惑この上ない行動だ。

 

特に、今日みたいな日には―――――。

 

 

 

 

何となく。

本当に何となく、女が抱きたくなった。

たまにある。こういう日が。

最近は忘れていたんだが、今日はとにかく無性に抱きたかった。

 

時刻は夜中の3時。

今からパブやバーに行けば女の1人や2人つかまるか。

そう考えて、俺は1人着替え始めた。

 

それから、3時間後。

思いのほか時間がかかったが、ちょうどいい女を見つけた。

一晩だけでの関係で、後腐れしなさそうな奴。

声をかけると、相手も同じような目的があったらしく、すぐ話に乗ってきた。

後は、家に連れてくるだけだった。

 

「そこのドア開けたらシャワールームだから。使って。」

 

「分かったわ、アーサー。」

 

相手に教えてあるのは名前だけで俺が国だということは教えていない。教えるつもりはないし、教える必要もない。俺が知っているのも相手の名前だけだ。

 

時刻は6時30分。

普段ならば今頃起き始めてその日の仕事の準備をし始める時間だが、今日はオフだ。

けれど、こんな朝から女を抱くだなんて、正直自分でもどうかと思う。どこぞの猿じゃあるまいし。

が、抱きたいのは抱きたいのだから仕方がない。

 

ふと紅茶を飲もうと思い立って紅茶の準備をしようとキッチンに立った。

やかんに水を入れて、火にかける。

 

女を抱くのは久しぶりだ。一体いつ振りだろう。

半年…いや、1年……や、もっと……?

ヤバイ。思い出せねぇ。

最近はフランスとばっかだったからな。

 

沸かしたお湯に茶葉を入れる。

 

フランスと最後にシたのは…1ヶ月前か。

おいおい。男とシた回数の方が女より多いんじゃないか!?

 

自分でも少し焦る。

 

ま、まぁいい。今日はあの女を抱くわけだし。

時計を見れば、紅茶を作っている間にかなり時間は経ったらしく、もうすぐ7時だ。

 

あと2、3分すれば紅茶ができる。彼女もシャワールームから出てくるだろう。

と、そう思ったときだった。

 

 

ガチャッ

 

 

ドアが開く音がして、彼女が上がったようだった。

ヤバイな。急いで飲まなくちゃ。

そう思ってティーカップをだそうと後ろを向いた時。

 

「ボンジュール♪イギリス!」

 

え。

 

驚いた。聞こえた声は明らかに男のモノだったし、俺は女に国だということを教えていない。ていうかフランス語?

急いで振り返れば。

 

「………………なんで、お前が…………………」

 

そこにいたのはフランスだった。

 

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おいおいおい。冗談じゃねぇぞ。

 

「なんでここにいるんだ!?」

 

「え?あ、いやぁ……」

 

かなり大きな声で怒鳴ったせいか、少したじろいだ様子のフランス。

が、すぐに話し始めた。

 

「いや、暇だったからさ。朝早くに来てお前のこと驚かそうと思ったんだけど。お前オフだろ?だから遅くまで寝てるんじゃないかと思ったんだけど。本当は8時に来るつもりだっんだけど時差忘れてて思いのほか早い時間に……」

 

フランスの弁明が止まって、驚いたような顔をする。

理由はすぐに分かった。

フランスの視線の先には、シャワールームから上がってきた彼女がいた。

 

「…あ、なんだ。」

 

こちらが何かを言う前にフランスが口を開いた。

 

「先客?」

 

そして、女に笑いかける。

あ、無理矢理笑ってる。

意味もないのに気が付いた。

 

「お嬢さん、綺麗だね。」

 

「……おい。」

 

「アーサーにはもったいないくらいだ。…どう?お兄さんとデートしない?」

 

「あ、えっと…」

 

女がもったいぶる振りをする。

何だか気分が悪くなった。

 

「はは、なんてな。邪魔して悪かったよ。仲良くな?」

 

ウィンクのおまけまでして奴は振り返ってドアを開けて出て行った。

 

バカか。あれがウィンク?

全然らしくないんだよ!?

 

「彼はだぁれ?友人?」

 

女が甘ったれた声で聞いてくる。

 

「……違う。」

 

「あら、じゃあどんな関係?」

 

どんな?

アイツとは、顔を合わせれば憎まれ口を叩き合う仲で、いつも何かしら喧嘩してて、一時期は1世紀近く殴り合いを続けてて。

毎回本気で相手を消そうと殴りあう。でも、最後は必ず握手をしているんだ。

あぁ、そういえば結婚を申し込まれたこともあったか。

 

すぐに返答ができなかった俺に対して、女は訝しげに聞いてきた。

 

「まさか、恋人じゃないわよね?」

 

そんな質問に、何をバカなことを、という呆れと、なぜたかだか3時間前に知り合った輩にそこまで詮索されなきゃいけないんだ、という怒りと苛立ちで何も言えなかった。

 

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それから約2時間後。

俺はだんだんと目覚めて機能し始めた街を歩いていた。

 

女はあの後追い出した。

かなり怒っていたし、紳士としてあるまじき行為だが、ヤる気が失せてしまったんだから仕方がない。

で、その一番の根本の人物を捜そうと、カフェを回っていた。

 

まさか、フランス本土に帰ったわけじゃないよな。

多分、明日の朝まではいるつもりだったんだろうし、今日の飛行機は取っていないだろう。

取っていたとしても夜の便のはずだ。

きっとロンドンのここら辺でフラフラしているだろう。

 

捜し始めて4件目のカフェ。

以前、フランスを連れてきたことがある。

ドアを開けて中に入って見渡すと、カウンターの席にかつてはあこがれた綺麗な長髪があるのを見つけた。

近づいてきたウェイターを断って、後ろから奴に近づいていった。

良く見ると、煙がたっているのに気が付いた。

この、野郎タバコなんて吸ってやがるな。

……仕方ねぇな。

 

「おい。」

 

声をかけると、奴はゆっくり後ろを振り向いた。俺の姿を見ると、途端に驚いたような顔をした。

 

「な、なんでいるんだよ!?」

 

「うっせ、お前こそ何タバコなんて吸ってるんだよ。」

 

フランスがバツの悪そうな顔をする。

 

「……別に。久しぶりに吸おうかと思っただけだ。」

 

そう言って手に握っているティーカップを飲み干した。紅茶だろうか。

 

「こんなとこで不味い紅茶煽ってねぇで俺んち来いよ。」

 

「……てめぇ、あの美人はどうしたんだよ。」

 

「は?別に美人て程でもなかっただろ。つーか、お前のせいでヤる気なくしたんだよ。」

 

嘘だ。本当は。

 

「だから、代償払え。」

 

でも、実は俺と同じくらいプライドの高いコイツには、このくらい言わないと誘いに乗ってこない。

同情だなんてそんな生ぬるいものじゃないけれど、お人好しなコイツは同情だと勘違いしてしまう。

 

「今日ぐらいはその薔薇を素直に受け取ってやるよ。」

 

フランスは驚いたような顔をする。

バカか。お前はいつもプライベートで俺のところへ来る時には、必ず国花の一つである薔薇を携えて来るくせに。

 

「どうする?フランシス?」

 

そう、挑発するように問いかければ。

 

「……受けて立とうじゃないか、アーサー……いや、」

 

 

 

「女王様?」

 

 

 

俺の手を取って不敵に笑うフランス。

そう、コイツにはこんな笑顔が似合ってる。

 

「楽しみにしてるぜ?」

 

 

友人じゃなくて、恋人でもないコイツ。

俺達をつなげる関係ってなんだろうか。

 

 

まだまだ、今日は始まったばかり――――――…………

 

 

説明
初めて投稿します。
フラアサになります。駄文ですのでご注意を。
国名・人名どちらも使っています。
不味いようでしたら一言言っていただきたいです。
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