真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 46 |
「少々お話が」
「……ここで話すか?」
「いえ、できれば人目のつかぬところが」
となると、まぁ察しは付く。
「いいだろう」
できる限り視線が向いていない瞬間を狙って、人気が少ない場所へと移動する。
「で? 話ってのはなんだ?」
「……玄輝殿、白装束と何があったのです?」
「……それを聞いてどうする?」
「それを決めるために問うておるのです」
なるほどな。
「だとしたら話す理由はない。それが返答だ」
「……つまり、どのようになろうが構わないと?」
「そういうことだ」
「ふむ、そういう事ならば」
そう言って趙雲は槍を俺に突き出す。それを紙一重で躱す。まぁ、趙雲も仕留めるつもりの一撃ではないが、これの意味するところは……
「さっさと出ていけ、ってところか?」
「いかにも。黒の御遣いである玄輝殿は信用できますが、今の玄輝殿は信用できませぬ」
私情を一切抜いた、冷ややかな声色だった。しかし、彼女の言うことはもっとも。であれば言うことは一つ。
「……そりゃそうだ」
肩をすくめながら、それを肯定する言葉を返す。が、彼女は一瞬だけ悲しげな表情を見せ、呟くように言葉をこぼす。
「それに、愛紗には……」
ん?
「どうしてそこで関羽が出てくる?」
「……それを話す道理はありませぬな」
俺の問いにさっきまでの声色に戻して答えた彼女。答える気はさらさらないようだ。
「……それもそうだな」
それだけ返して俺は背を向ける。
「どこへ?」
「劉備たちに話を通してくる。ここで離れさせてもらうとな」
「……幽州にすら戻らぬおつもりで?」
「いや。色々と引継ぎはあるだろう。その後だな」
まぁ、引継ぎは手紙程度でいいだろう。そこまで複雑なことをしていたわけでもない。
「……でしたら、その話は幽州に戻った時にされよ」
「その指示に従う理由が俺にはないんだが?」
「今は戦が終わった直後。疲労しているときに聞きたい話ではないでしょう。まぁ、それすらどうでもよいとおっしゃるのであれば話は別ですが」
「……いいだろう」
俺はそれだけ返すと完全に背を向ける。だが、その背へ趙雲はさっきまでの声色とは違う、悲しみと、悔しさが入り混じった声で言葉を投げかける。
「あなたの言う真名を預かれない“問題”はこれだったのですか?」
「……そうだ。こんな奴に、呼ばれたくはないだろう。真名は」
それだけ返して俺はその場を離れた。
その後、袁紹と袁術とは話が付き、最後の一波乱は幕を閉じた。こうして、董卓を巡る戦いは終わった。
しかし、俺は長い長い間始められなかった戦いをようやく始められることに心の中で打ち震えていた。
(待ってろ。白装束の頭。てめぇの首は俺がもらう!)
〜???〜
白装束の一人が、一人の男の前でかしずく。
「主様(ぬしさま)」
主様と呼ばれた男は椅子に座ったまま右手を軽く振って口を開く。
「ああ、よい。おおよそ把握しておる。董卓に逃げられたのであろう?」
「面目次第もございませぬ」
「良いと言っておる。しかし、よもや我らの事を覚えられる存在が守護者以外にいようとは思わなんだ」
そう言って、主様と呼ばれた男は顎に手を当てて思案する。
(しかし、これは星詠みの時が来たというのか? いや、あの世界は完全に破壊した。一片も残さずに)
だが、と男は続ける。
(そういう存在がいる以上、我に何かしらの落ち度があったという事。仕留め損ねた存在がおったという事だろう。なればやることは一つ)
男は椅子から立ち上がり、白装束へ指示を飛ばす。
「まず、その御剣玄輝とやらを見張れ。手出しはせずに逐一情報をこちらに流し、時が来るまでは手出しをするな」
「御意に」
「うむ。それと、守護者の女、男か? まぁ、どちらでもよいが、そやつの情報も集めよ」
「主様、それは主様のお力では難しいかと思われます」
「わかっておるわ。比重は守護者の情報収集に重きを置け。御剣とやらのはそこまで手を回さんでよい。目下の障害は守護者だ」
「御意に」
そう返した白装束はまるで影に溶けるようにして消え去る。消えたのを見届けた男はけだるげに座って、ため息交じりで言葉をこぼす。
「さて、路傍の小石が増えおったわ……」
はいどうも、おはこんばんにちわ。作者の風猫です。
やっと董卓編終わったぁ! 長かった……
でも、これで物語は終わらないんですよね…… まだまだ完結までの道は長そうです。
では、こんなところでまた次回。
誤字脱字等がありましたら、コメントを頂ければと思います。
説明 | ||
真・恋姫†無双の蜀√のお話です。 オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話なので、大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。 大筋は同じですけど、オリジナルの話もありますよ?(´・ω・) |
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コメント | ||
ん〜、そこまで危機は迫ってなかったりします。そも、彼らは路傍の小石程度のものですからね、彼らからすれば。(風猫) 更新お疲れ様です〜 ぬぬ、本陣にずっといて出番のなかった雪華ちゃんに何やら危機のご様子。玄輝1人で抜けられたら今の蜀軍で守りきるのは難しそう…(はこざき(仮)) |
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