英雄伝説〜光と闇の軌跡〜エレボニアカオスルート |
12月10日、同日:8:00―――
〜パンダグリュエル・パーティーホール〜
「………貴方達が”特務部隊”の指揮下に入る事を決めた事は昨日の時点でレン皇女殿下より知らされている。改めて貴方達を俺達”特務部隊”の”仲間”として、歓迎する。」
「メンフィル・エレボニア戦争ではお互いが剣を交える事もありましたが、幸いにも戦争は”和解”という形で終結しました。事情は違えど、エレボニアの内戦を終結させたいという思いは私達”特務部隊”も、貴方達”Z組”も同じだと思っています。これからは仲間として、よろしくお願いします。」
「ま、”昨日の友は今日の敵”って諺もあるんだから、その逆もあってもおかしくないだろう?和解条約の件もあるが、基本俺達は”上官命令”でお前達に理不尽な命令をするつもりはないから、お互い気楽に行こうぜ。」
翌朝アリサ達と対面したリィン、ステラ、フォルデは”特務部隊”を代表して”特務部隊”の意志を伝え
「お気遣い、ありがとうございます。」
「その……これからよろしくお願いします、リィン特務准将閣下、ステラ特務大佐、フォルデ特務大佐。」
リィン達の言葉に対してZ組の委員長と副委員長であるエマとマキアスがZ組を代表して返事をした。
「ハハ………フォルデ先輩のようになってくれとは言わないけど、もっと気楽な態度で接してくれて構わないんだけどな……」
「確か皆さんは私やリィンさんと同年代との事ですから、呼び捨てで呼んでくれても構わないですよ?」
「そ、その……さすがにリィン特務准将達を呼び捨てで呼ぶのは難しいと思います。曲がりなりにも、Z組のみんなやわたし達は”士官学生”―――”軍人の見習い”ですから……」
「まあ、一部自分達が士官学生という自覚がない連中もいるがな。」
「同感だ……」
「何で、そこでわたし達を見るの?」
「そうだ、そうだ〜!」
苦笑しながら答えたリィンとステラの指摘に対してトワが謙遜した様子で答え、マキアスはユーシスの指摘に頷いた後ユーシスと共にフィーとミリアムに視線を向け、視線を向けられた二人はそれぞれジト目になったり、反論したりしてその場にいる多くの者達を脱力させた。
「ミリアムちゃんは”情報局”―――既に軍に所属している身なのですから、いい加減目上の人達に対する言葉遣いを直してください……」
「フィーもそうだけど、ミリアムも少しはあの娘を見習って、もう少し丁寧な言葉遣いを憶えなさいよね……」
クレア大尉と共に呆れた表情でミリアムとフィーに指摘したサラはアルティナに視線を向け
「何故、そこで私を例えに出すのか理解不能です。」
視線を向けられたアルティナはジト目で答え、アルティナの答えを聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいた。
「フッ、まあ”白兎(ホワイトラビット)”はともかく、仮にも他国の皇女であるレン皇女に乱暴な言葉遣いで話しかける”紫電(エクレール)”の下にいた”西風の妖精(シルフィード)”に丁寧な言葉遣いを憶えろと言うのは無理がある話だと思うがな。」
「うふふ、確かにサラ様の過去を考えれば、レーヴェ様の仰る通り、サラ様自身が丁寧な言葉遣いをできないのですから、サラ様に保護されたフィー様が丁寧な言葉遣いを憶えるのは厳しいですわね♪」
「ああん!?喧嘩ならいつでも買うわよ!?それとやっぱりあんた達、裏で繋がっているんじゃないの!?」
静かな笑みを浮かべてサラに視線を向けて呟いたレーヴェの言葉にシャロンは微笑みながら同意し、二人の言葉を聞いたサラは二人を睨みつけ、その様子を見た多くの者達は再び冷や汗をかいた。
「教え子達が”特務部隊”の指揮下に入る事に決めたんだから、”教官”のお前が特務部隊とZ組の関係を乱すような事をして、どうすんだよ……」
「ハア………元猟兵や”鉄血の子供達(アイアンブリード)”は普通に生徒として接する事ができるのに、あたし達みたいに直接やりあった事がある訳でもない”剣帝”や、同じ学生寮で生活を共にしていたラインフォルトグループ会長のメイドに対してはあからさまな態度で接するとか、理解できないわ……」
「ま、まあまあ。サラ先輩は2年目の件でお二人とは”色々”あったとの事ですから、少しくらいは多めに見てあげた方がいいんじゃないですか?」
呆れた表情で指摘するトヴァルとシェラザードの言葉を聞いたアネラスは苦笑しながらサラを庇う発言を口にし
「”仮にも”とは失礼ね〜。レンは本物のお姫様なのに。」
「もう、レーヴェったら……」
「レーヴェさんもわざわざ挑発するような事を言わないでくださいよ……」
「シャロンも悪乗りして教官を挑発するような事を言わないでよ……」
「くふっ♪今までの行いが悪かったから、そうやって喧嘩が売られるのも当然だね♪」
レンは頬を膨らませて反論し、プリネは呆れた表情で溜息を吐き、ツーヤとアリサはそれぞれ疲れた表情で指摘し、エヴリーヌは口元に笑みを浮かべてレーヴェを見つめて指摘した。
「ハッハッハッ、早速馴染んでいるようで何よりじゃないか♪」
「はい。ふふっ、わたくしも皆さんを見習って、リィンさん達との仲を深めないといけませんわね。」
(アルフィン皇女……さり気なくお兄様に対して、アピールをしていますわね………)
(ええ………この調子だと、アルフィン皇女が兄様によって落とされて”本気”になるのも時間の問題でしょうね……」
一方その様子を見守っていたオリヴァルト皇子は声を上げて笑い、オリヴァルト皇子の言葉に頷いたアルフィン皇女はリィンを見つめて微笑み、アルフィン皇女の様子を見たセレーネは苦笑しながらエリゼに小声で囁き、囁かれたエリゼは疲れた表情で答えた後ジト目でリィンを見つめた。
「う”っ。………え、え〜と……話を戻すけどステラの言っていた通り、俺達の事は気軽な呼び方で呼んでくれて構わない。第一俺とステラ、それにフォルデ先輩は今回の件を終えたら、メンフィル軍を退役する事になっている事になっているから、今ここにいる時点でもそれぞれが所属していたメンフィル軍の部隊から退役しているも同然だしな。」
アルフィン皇女とエリゼの視線を受けたリィンは唸り声を上げた後無理矢理話を戻し
「へ………」
「何故今回の件を終えたら、リィン特務准将達はメンフィル軍から退役する事になっているのでしょうか?」
リィンの説明を聞いたエリオットは呆けた声を出し、ジョルジュは戸惑いの表情で訊ねた。
「皆さんもご存知のように、メンフィル・エレボニア戦争の件で手柄をあげて将来メンフィル貴族の一員として、それぞれの領土を治める事になるリィン達は貴族や領主としての教育を受ける必要がある為、エレボニアの内戦終結後はメンフィル軍を退役し、それぞれの”今後”に向けての教育を受ける事になっているのです。」
「平民出身であるフォルデは当然として、領主の仕事とは縁が無かったステラや御父上の時とは比べ物にならない程広大な領土を治める事になるリィンには貴族のマナー等の教育は当然として、領主としての教育もする必要がありますので。」
「事情は理解しました。―――しかしその件を聞いて、一つ気になる事が出て来たのですが……」
「父上?今の話のどこに気になる事があるのでしょうか?」
セシリアとサフィナの説明を聞いた後呟いたアルゼイド子爵の言葉を聞いたラウラは首を傾げて不思議そうな表情でアルゼイド子爵を見つめて訊ねた。
「今の話からすると、恐らくメンフィル帝国はリィン特務准将殿達が領主の能力が十分にあると判断した際、彼らにそれぞれが治める事になる領地を任せる事になると思うが……そうなると、現在の”シュバルツァー家”の当主であるシュバルツァー卿が引退を迫られる事だ。」
「あ…………」
「確かにご子息であるリィン特務准将がシュバルツァー家の後を継げば、シュバルツァー男爵閣下は引退する事になりますね……」
アルゼイド子爵の推測を聞いたアルフィン皇女は辛そうな表情になり、クレア大尉はリィンを気にしながら答えた。
「ハハ……元々父さんは他の貴族達と違って、身分にも拘っていないせいか、シュバルツァー家の当主の座にもそれ程拘っていませんからその心配は無用です。」
「むしろ兄様が父様の跡を継げば、父様は趣味である山での狩りに没頭できる上気楽な隠居生活を送れる事になりますから、リウイ陛下が先程セシリア様達が仰った件を父様に説明し、父様を説得しようとした際、『是非息子を1日でも早くシュバルツァー家の跡を継げるような教育をお願いします』と仰っていたとの事です。」
「アハハ……わたくし達とお兄様の婚約を知った際も、『婚約もしたのだから、一日でも早く私の跡を継げるようにそろそろメンフィル軍から退役して、本格的にシュバルツァー家の跡を継げる勉強や活動に専念して欲しい』とお兄様に仰っていましたから、シュバルツァー卿はご自身が引退する事に積極的に乗り気なんです。」
リィンとエリゼ、セレーネはそれぞれ苦笑しながら説明し、3人の説明を聞いたアリサ達は冷や汗をかいた。
「ふふっ、シュバルツァー卿が羨ましいな。私もシュバルツァー卿を見習って”アルゼイド家”や”アルゼイド流”の師範を一日でも早くラウラに継がせる事を検討すべきかもしれないな。そうすれば、前々から興味があった遊撃士に就く事もできるのだからな。」
「ち、父上……こんな時に戯れのお言葉を口にするのは止めてください……」
「フッ、むしろ俺は本気で言っていると思うがな。」
「そ、そう言えば以前の特別実習でラウラさんが子爵閣下がギルドに所属したいみたいなお話をされていましたね……」
「ああ。レグラムでの特別実習の時に言っていたな。」
アルゼイド子爵が呟いた言葉を聞いて呆れた表情をしているラウラにユーシスはからかいの表情で指摘し、エマとガイウスはそれぞれ苦笑していた。
「ハハ、子爵閣下にはまだまだ現役でいてもらわないとエレボニアも困るけど、子爵閣下が遊撃士に転向すれば、自ら支部を撤退させる程エレボニアとの関係が険悪化した遊撃士協会との関係を回復させるきっかけにもなるからエレボニアとしては複雑だね。」
「もう、お兄様ったら……」
「というか、カシウスさんクラスの子爵閣下が遊撃士になったら、遊撃士協会は滅茶苦茶歓迎するでしょうね……」
「そうね……格にしても、実力にしてもカシウス先生と並ぶ”光の剣匠”が遊撃士になるのだから、恐らく最初からA級正遊撃士待遇……いえ、S級正遊撃士待遇で迎えるでしょうね。」
オリヴァルト皇子が呟いた言葉を聞いたアルフィン皇女は呆れ、アネラスとシェラザードは苦笑していた。
「ハハ……色々話が逸れたけど、そう言う訳だから俺達の事はもっと気軽に接してもらって構わない。その方がお互いに遠慮がなくなって、連携もしやすくなると思うしな。」
「………一理あるね。」
「ま、そっちがそれでいいんだったらボク達も遠慮しなくてよさそうだね〜。という訳でよろしくね、アーちゃん♪」
リィンの言葉にフィーが同意している中ミリアムは無邪気な笑顔を浮かべてアルティナを見つめ
「……その”アーちゃん”とはまさか私の事を示しているのですか?」
見つめられたアルティナは不思議そうな表情で首を傾げてミリアムに訊ねた。
「うん!アルティナだから、”アーちゃん”。いい呼び方でしょう?」
「それのどこがいい呼び方なのか、理解不能です。」
そしてミリアムの答えを聞いたアルティナはジト目で答え、その様子を見守っていた多くの者達は冷や汗をかいた。
「というかその娘やその娘の傀儡の呼び方といい、アガートラムの呼び方といい、全部名前の一文字で呼んでいるだけじゃないか……」
「フン、前々から疑問に思っていたが、このガキは士官学院に来るまでどのような教育を受けたのだろうな?」
マキアスは呆れた表情で呟き、ユーシスは鼻を鳴らした後ジト目でクレア大尉に視線を向け
「そ、その………言い訳をするつもりではありませんが、ミリアムちゃんはレクターさんの影響を一番濃く受けているかと思います……私もミリアムちゃんの教育に関わりましたが、所属が同じレクターさんがミリアムちゃんの教育に一番関わっていましたので……」
「なるほどね……確かにミリアムはあの掴み所のない情報局の大尉―――いえ、通商会議の件で降格したから少尉と似ている所がいくつかあるわね……」
困った表情で答えたクレア大尉の説明を聞いたサラは疲れた表情で溜息を吐いた。
「………ねえ。リィン、だったかしら?アンタに一つ聞きたい事があるんだけど。」
「俺に?何を聞きたいんだ?」
セリーヌに問いかけられたリィンは不思議そうな表情で首を傾げて訊ね返した。
「バリアハートでの戦いの時、アンタは3人の女達を呼び出したけど、あの女達って、何者なのかしら?それにアタシ達をバリアハートの郊外へと転移させた女も多分、あの時呼び出した女達同様、アンタの使い魔か何かのでしょう?あの女はアンタの事を”ご主人様”って言っていたし。」
「そ、そう言えば……」
「よく見るとバリアハートでオレ達が直接戦った女性達は”特務部隊”の中にはいないな。」
「そうですわね……バリアハートの件も考えると彼女達もリィン様率いる小隊に所属していると思われますから、”特務部隊”に所属していてもおかしくありませんね。」
「恐らくエステルのようにリィン自身の魔力に同調してこの場にいないだけど、多分リィンの身体の中にいると思うぜ。」
「ええっ!?か、身体の中にいるって……!」
「!まさか………リィンさんは使い魔である女性達とはご自身の霊力(マナ)との一体化による契約をしているのでしょうか?」
セリーヌの質問内容を聞いてかつての出来事を思い出したエリオットは目を丸くし、ガイウスとシャロンはリィン達を見回し、トヴァルの推測を聞いたアリサが驚いている中ある事に気づいたエマは信じられない表情でリィンを見つめて問いかけた。
「え、え〜と、君は確かエマ、だったか?君の言う通り、一人だけ違うけど、契約方法は大体それであっているよ。」
「うふふ、リィンお兄さん。ちょうど良い機会だから、ベルフェゴールお姉さん達の事も紹介したら?今後の戦いでも必ずベルフェゴールお姉さん達も加わるだろうし、それに………――――ベルフェゴールお姉さん達もみんな、リィンお兄さんの”婚約者”なんだから、アルフィン皇女とも顔合わせをした方がいいでしょう♪」
「え”。」
「こ、”婚約者”って……!」
「そう言えばリィン……君には皇女殿下以外に6人の婚約者がいて、その内の二人がエリゼ君とセレーネ君で、残りの4人については僕達は教えてもらっていなかったね。」
自分に対するレンの提案を聞いたリィンが表情を引き攣らせている中トワは驚き、ジョルジュは苦笑しながらエリゼとセレーネに視線を向けた後リィンに視線を向けた。
「う”っ………レン皇女殿下、本当に紹介した方がいいでしょうか?一人……いえ、二人程紹介したら、この場に混乱が起きると思われる人物もいるのですが………」
(うふふ、その混乱が起きる人物って、誰の事でしょうね♪)
(ふふふ、少なくても一人は十中八九貴女の事ではないですか?)
(ベルフェゴール様の場合、普段の衣装が大胆すぎる事に加えて、彼らがベルフェゴール様の種族である”睡魔族”を知れば、確実に混乱が起こりますものね……)
(そして残りの一人は私の事でしょうね……”女神”が一人の”人”を寵愛し、力を貸しているなんて普通に考えたら信じられない出来事だものね……)
一方リィンは唸り声を上げた後疲れた表情でレンに訊ね、その様子を見守っていたベルフェゴールはからかいの表情になり、静かな笑みを浮かべているリザイラのベルフェゴールに対する指摘に続くようにメサイアは疲れた表情で呟き、アイドスは苦笑していた。
「こ、混乱が起きるって、どういう人物だ……?」
「一人は私達が戦った女性でしょうね。」
「あ〜、あの”チジョ”か〜。確かにあの時の下着同然の姿のままで現れたら、混乱が起きるかもしれないね〜。」
「ミ、ミリアムちゃん。」
リィンのレンへの問いかけを聞いたマキアスは困惑し、ジト目で呟いたアリサの言葉を聞いてベルフェゴールの事を思い出して呟いたミリアムの言葉を聞いたクレア大尉は冷や汗をかいた。
「や〜ね、混乱なんて昨日の説明の時に散々起こったのだから、”今更”じゃない♪」
そして笑顔で答えたレンの答えを聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「ハア……混乱が起きた大部分は貴女のせいだと思われるのですが?」
「その意見に同意します。昨夜レン様がわたし達の事を彼らに紹介した事によって、その場に混乱が起きた”前例”もありますので。」
「ア、アルティナさん。」
「フフ、ですがレン皇女殿下が仰っている事も一理ありますね。」
サフィナは呆れた表情で溜息を吐いてレンに指摘し、サフィナの指摘に同意したアルティナの答えを聞いたセレーネは冷や汗をかき、セシリアは苦笑しながら答えた。
「あの………リィンさん。できれば、先程話に上がった残りの婚約者の方達とも会わせて頂けないでしょうか?わたくしも、リィンさんの新たな婚約者としてエリゼさんとセレーネさんを除いた残りの婚約者の方達にもご挨拶をしておきたいですし……」
「うっ…………わかりました………だったら、序列順に呼んでいきます。――――メサイア!」
アルフィン皇女の嘆願を聞いたリィンは唸り声を上げた後ベルフェゴール達を紹介する事を決め、まず最初にメサイアを召喚した。
「ふええっ!?お、女の人がいきなり……!」
「あ……っ!」
「オレ達がバリアハートで戦った時の……」
メサイアの登場の仕方にトワが驚いている中メサイアの容姿を見てかつての戦いを思い出したエリオットは声を上げ、ガイウスは静かな表情で呟いた。
「ふふっ、バリアハートで名乗る事はありませんでしたから、改めて名乗らせて頂きますわ。私の名前はメサイア。偉大なるメルキア帝国の中興の祖―――”簒奪王”ヴァイスハイト・フィズ・メルキアーナ皇帝とその妾、亡国アンナローツェ王国女王―――”アンナローツェの聖女”マルギレッタ・シリオスの娘、メサイア・シリオスと申します。リィン様には御恩があり、その関係で使い魔契約を結び、後にリィン様と一生を共にする事を決め、リィン様の将来の伴侶の一人になりました。ちなみに私のリィン様の妻の序列は3位ですので、以後お見知りおきを。」
「貴女が………ご挨拶が遅れました。エレボニア皇帝ユーゲント三世とその妻プリシラの娘、アルフィン・ライゼ・アルノールと申します。メンフィル・エレボニア戦争を”和解”という形で終結させる為にわたくしも、リィンさんの伴侶の末端に加わる事になりましたので、以後お見知りおきをお願いします。
メサイアの自己紹介を聞いたアルフィン皇女は目を丸くした後メサイアに会釈をし
「ええっ!?こ、皇帝と女王の娘って事は……!」
「目の前の女性は”メルキア”という国の皇女殿下という事になりますね……」
「うむ……それも”中興の祖”と称えられる程の皇帝と”聖女”の称号を持つ女王の血を引いているのだから、アルフィン皇女殿下達をも遥かに超える”尊き血”だ……」
「……しかし気になる事があるな。自己紹介では母君の事を”アンナローツェ”という国を”亡国”―――既に亡びた国の女王である事や”妾”と仰っていた事もそうだが……それ程の人物を”妾”ならば、”正妃”は一体どんな人物なのか、個人的に気になるな。」
メサイアが皇女である事を知ったアリサは驚き、エマは信じられない表情をし、ラウラとユーシスは真剣な表情でメサイアを見つめていた。
「メルキア皇帝―――それも”ヴァイスハイト”だって……?まさか君はヴァイスの……」
「シェ、シェラ先輩……!もしかしてあの女性が……!」
「間違いなく、ヴァイスさんの娘でしょうね。和解交渉の時に”メサイア”という名前の女性がヴァイスさんの娘である事をシルヴァン皇帝達も言っていたし。」
一方オリヴァルト皇子は驚きの表情でメサイアを見つめ、信じられない表情をしているアネラスの言葉にシェラザードは真剣な表情で頷いてメサイアを見つめた。
「オリヴァルト殿下はメサイア皇女殿下の父君とお知り合いなのですか?」
「しかもアネラス達まで知っているようだけど……一体どこで知り合ったのよ?」
オリヴァルト皇子達の反応が気になったアルゼイド子爵とサラはそれぞれオリヴァルト皇子達に訊ねた。
「”影の国事件”の事は以前にも少し話したと思うが………その時にシェラ君やアネラス君、そして当時メルキア帝国軍の”千騎長”という軍位に就いていたヴァイスと彼の副官であるリセルさんも巻き込まれて、共に力を合わせて”影の国”から脱出したのさ。」
「ちなみにヴァイスさんは”庶子”の為帝位継承権とは縁が無い存在との事でしたが、”影の国”から帰還後戦争による活躍によって”元帥”に昇進し、更に当時起こった私達の世界に存在する”メルキア帝国”の内乱を治めた事に加えて、内乱状態であったメルキア帝国の隙をついてメルキア帝国を占領しようとしていた周辺諸国を逆に占領して自国の領土と化し、最後には皇帝に即位したとの事です。」
「かのドライケルス大帝をも超える凄まじい存在だな……」
「ああ……という事は恐らくメサイア皇女殿下の母君の祖国もその皇帝によって、占領され、ヴァイスハイト皇帝は政略結婚という形で母君を娶ったのだろうな……」
「ア、アハハ………えっと、私のメルキア皇家での籍は既に亡くなっている事になっている為、今の私はメルキア皇女ではありませんから、私の事を皇女扱いする必要はありませんわよ?」
オリヴァルト皇子とプリネの説明を聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいている中ラウラとユーシスは真剣な表情で呟いてメサイアを見つめ、ユーシスの推測が微妙に間違っている事を知っていたメサイアは苦笑した後気を取り直して説明を続けた。
「へ………『皇家での籍は既に亡くなっている事になっている』って……」
「失礼を承知で訊ねさせて頂きますが、メサイア皇女殿下がメルキア皇家の籍では死者扱いされる事になってしまった原因は政争の関係でしょうか?」
メサイアの説明を聞いたエリオットは呆け、アルゼイド子爵は重々しい様子を纏ってメサイアに訊ねた。
「え、えっと……まあ、”色々あった”事は事実ですので、その辺の事情はお察し下さい。」
「……了解しました。メサイア皇女殿下にとってお辛い出来事を思い出すような事を訊ねてしまい、誠に申し訳ございませんでした。」
(うふふ、説明するのが面倒だから誤魔化したわね♪)
(ふふふ、まあ妥当な判断かと。)
(メサイアの場合、事情が色々と”特殊”だものね……)
自分の事情は色々と”特殊”な為苦笑しながら答えを誤魔化したメサイアの答えを聞いたアルゼイド子爵はメサイアの内心に気づかず、謝罪をし、その様子を見守っていたベルフェゴールはからかいの表情になり、リザイラは静かな笑みを浮かべ、アイドスは苦笑していた。
「フフ、私は特に気にしておりませんので、どうかお気になさらないで下さい。それに生まれ変わったお父様やお母様とも再び出会う事ができ、再びお父様達の”娘”として認知して頂きましたから、私はそれだけで十分ですわ。」
「う、”生まれ変わったお父様とお母様”……?」
「うふふ、メサイアお姉さんの言っている事は”転生”の事よ。」
メサイアの答えを聞いたトワが戸惑っている様子を見たレンは意味ありげな笑みを浮かべて答えた。
「”転生”ですって!?」
「信じられない………本当に”転生”が存在していたなんて……!」
「二人は”転生”がどういうものなのか、知っているのか?」
レンの答えを聞いて血相を変えているセリーヌとエマの様子が気になったガイウスは不思議そうな表情で訊ねた。
「……”転生”は、”生あるものが死後に生まれ変わること”でね………例えば人が死ねば、その死んだ人の”魂”が新たな人に”生まれ変わる事”よ。……まあ、”転生”はあくまで”仮説”だから、正直存在しているかどうかも怪しかったんだけど……」
「それと”転生”は”その人物に生まれ変わる訳ではなく、新たな人―――”別人”として生まれ変わる事になりますから”、”復活”―――つまり、一度死んだ人が生き返る訳ではないのですが……」
「―――我々の世界―――”ディル=リフィーナ”では”転生”は実際にありえるのです。」
「とは言っても、生まれ変わる前の人物―――”前世”の記憶まで甦ると言った事は滅多にないのですが、メサイア殿のご両親のような例も”極稀”にはなりますが、あるのです。」
「”ヴァイスハイト”………”転生”……――――!まさか……メサイア皇女殿下の父君の転生した人物は”六銃士”の一人である”黄金の戦王”ヴァイスハイト・ツェリンダーなのですか!?」
セリーヌとエマ、サフィナとセシリアの説明を聞いてある事に気づいたクレア大尉は血相を変えてメサイアに訊ねた。
「ろ、”六銃士”って確か………!」
「―――”西ゼムリア通商会議”にて、エレボニアとカルバード――――オズボーン宰相とロックスミス大統領の暗躍を打ち破って、世間に白日の下に晒した事で御二方に致命的な政治ダメージを与えたクロスベル警察と警備隊、それぞれのトップと上層部を務めている”クロスベルの新たなる英雄”ですわね。」
「まさかここで”六銃士”が出てくるとはな……」
クレア大尉の口から出たある言葉を聞いたアリサは信じられない表情をし、シャロンは静かな表情で呟き、ユーシスは目を細めて呟いた。
「はい。ちなみに”六銃士”の一人―――ギュランドロス・ヴァスガンはかつてお父様達―――メルキア帝国最大の敵であった”ユン・ガソル連合国”の国王で、ルイーネ様、エルミナ様、パティルナ様はギュランドロス国王を支える”ユン・ガソル連合国”の”三銃士”として、当時その名を世間に轟かせていましたわ。」
「ハアッ!?」
「ギュランドロスさんが”国王”で、ルイーネさん達がギュランドロスさんを支えていた”三銃士”という存在……」
「おいおいおい……!って事は”六銃士”は過去の人物が”転生”した連中だったのかよ!」
「しかも6人の内、2人が”王”であった人物とは………メサイア皇女殿下の父君の勇名、そしてそんな父君にとっての最大の敵であった国の王が相手であったのだから、オズボーン宰相とロックスミス大統領が”六銃士”に自分達の暗躍を悟り、逆襲する事も容易かったのだろうな……」
「というか何でそんな滅茶苦茶な人達がクロスベルに根を下ろしてオジサン達を嵌めてまでクロスベルを守ろうとしたのか、意味不明だよ〜。」
「それ以前に転生もそうだが、最大の敵同士が手を組むとか、非常識すぎだろ……」
メサイアの説明を聞いたサラは驚きの声を上げ、ガイウスは呆けた表情で呟き、トヴァルは信じられない表情で声を上げ、アルゼイド子爵は真剣な表情で呟き、ミリアムとマキアスは疲れた表情で答えた。
「なるほどね………となるとメンフィルが”教団”の事件で空いたクロスベル警察、警備隊の上層部のポストに”六銃士”を推薦した理由は、ヴァイスさん達ならイリーナ皇妃殿下の故郷であるクロスベルの状況を変えられるからかしら?」
「うふふ、概ね正解だけど、ヴァイスお兄さん達はレン達メンフィルにとっても予想外過ぎる”野望”を考えていて、その”野望”の成就も後少しなのよ?」
(くふっ♪”予想外”だなんて、白々しすぎる嘘だよね♪)
(IBCの防衛戦で、ギュランドロス司令がその場で思いっきり自分達の野望を口にして、あたし達もその場にいましたものね……)
シェラザードの質問に対して小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いたエヴリーヌは不敵な笑みを浮かべ、ツーヤは疲れた表情で小声で呟いた。
「メンフィルにとっても予想外過ぎる”野望”、ですか……」
「しかもその”野望”の成就が後少しって……その”野望”とはどういう内容なのですか?」
レンの言葉が気になったラウラは真剣な表情をし、ジョルジュは不安そうな表情でレンに訊ねた。
「クスクス………それは………――――自分達がクロスベルを支配し、エレボニア、カルバードの二大国に戦争を仕掛けて、二大国を降してゼムリア大陸の国家間の力関係を変える事で時代を変える事―――つまりクロスベルに”覇道”を歩ませる事よ♪」
そしてレンは不敵な笑みを浮かべてオリヴァルト皇子達―――エレボニア帝国にとって驚愕の事実を口にした―――――
ついにアリサ達にベルフェゴール達を紹介する話になりました……が、その前にヴァイス達の事をアリサ達が知る事になりますwwなお、次回のBGMはヴァイス達の話が終わるまで魔導功殻のOP”月女神の詠唱 〜アリア〜”のフルverだと思ってください♪
説明 | ||
第58話 | ||
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コメント | ||
本郷 刃様 一番マシなのでメサイアですものねww 匿名 ホント、誰かさんのせいで善意の言葉もそんな風に聞こえちゃいますね〜(汗)(sorano) リィン達は誠実に接しているのは分かるが、一部の人間(誰とはもう言わないw)のせいで、「”特務部隊”の”仲間”として、歓迎する。」が"手駒にしてやる"、「戦争は”和解”という形で終結しました」が"一応地に這いつくばらせたから良しとする"、「”上官命令”でお前達に理不尽な命令をしない」が"メンフィル側に都合の良い正論を振りかざす"という風にしか聞こえないな〜。(匿名希望) この契約者紹介も楽しみでした、規格外ばかりだからな〜ww(本郷 刃) |
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