ポケモンDPt 時空神風伝 13 |
ミルとユンゲラーの宝物
「あ、クウヤくん」
「ヒカリ!」
クロガネシティに戻ってきたクウヤはそこで、ヒカリと再会した。
「久しぶりねクウヤくん、旅の方は順調?」
「ああ、みろよこの通りだぜ!」
クウヤはバッジケースをあけて、そこに飾られている二つのジムバッジをヒカリに見せた。
彼のバッジをみたヒカリは素直に感心する。
「うわぁ、もう2個なの、順調じゃない!」
「まーまだあと6個あつめなきゃいけねぇけどさ。
確かに今は順調だぜ」
「いいなぁ、私ポケモンバトルっていまいち苦手だから、そういうのが得意な人がうらやましいわ」
「得意な人って・・・コウキとかジュンのこと?」
彼の口からでた二人の少年の名前を、ヒカリはうなずくことで肯定した。
彼女の話によれば、コウキもジュンも互いにポケモントレーナーとして道中で何度もポケモンバトルをしてはジムを突破したりなど、ポケモンリーグ制覇のために切磋琢磨しているとのこと。
当のヒカリは、色んなところを旅してまわってポケモンのことを調べているようだ。
「へぇー、そうだったのか!
それにしても、ヒカリはこんなところで何やってたんだ?」
「あ、それはね!」
クウヤの言葉でヒカリは本来の目的を思い出し、図鑑を開いてクウヤにあるポケモンの姿を見せた。
「この子を探しているのよ」
「このポケモンは?」
「フカマルっていうポケモンでね、発見例が少ないのよ」
「へぇ」
大きな口に小さいからだのポケモンに、クウヤは興味を持った。
「この先の迷いの洞窟って場所で目撃例があったみたいだから、私も実際にフカマルをみてみようと思ったの!」
「そうだったのかぁ」
「あ、そうだ、クウヤくんも見ていきましょうよフカマル!」
「え!?」
こうして、クウヤもヒカリと一緒に迷いの洞窟に向かいフカマルを探すことになったのだった。
クロガネシティとサイクリングロードの間にその迷いの洞窟は存在した。
中に入ってみると本当に暗くて、自分がどこにいるのかわからなくなるほどだったため、クウヤはトームを出してあたりを照らし、ヒカリもピッピを出してフラッシュを使わせた。
「へぇ、ロトムなんて珍しいポケモン持ってたのね」
「ああ、森の洋館で出会ったら気に入られちゃってさ。
こいつもおれのことを気に入ってくれたしちょうどいいから一緒にいこうって思ったんだ」
な、とクウヤがトームに話しかけると、トームは笑って返す。
瞬間、二人はなにかにぶつかって驚く。
「きゃ!」
「なに!?」
「うわぁ、トレーナーさんでした!」
「え?」
彼らの前に現れたのは、ピンク色の長い髪をツインテールにまとめた、自分たちより小柄な女の子だった。
女の子の側にはこの子のポケモンであろう、ユンゲラーがいた。
さっき自分達がぶつかったのは、このユンゲラーのようだ。
「えと、私はヒカリで彼はクウヤくんよ、あなたは?」
「あたしミルっていいます!
この子はあたしのユンゲラーです」
「そう、ミルちゃんね。
ミルちゃんはここでなにをしていたの?」
ヒカリはミルと視線を合わせて話しかける。
「実はここで、落とし物しちゃったんです」
「落とし物?」
「じゃあ、ここに一回はいったことあるのか?」
クウヤの問いにミルはうなずく。
「前にここで友達と肝試しをしたとき、あまりにも暗くて怖くて、途中で逃げ帰っちゃったんですけど・・・実はそのとき、大切なものを落としちゃったんです。
あたし、みんなに探すの手伝ってってお願いしたんですけど、みんなはあんなところ怖くてもう行きたくないって言って手伝ってくれなくて・・・。」
ミルの脳裏によみがえるのは、一緒に肝試しに行った友達の言葉。
そんな大事なものを落としたあんたが悪い、
自分たちには関係ない、
そんな大事なら一人で探しにいけ、
冷たい言葉を浴びせられながらも、怖いという気持ちを持ちながらも、ミルは気持ちを持ち直して今日ここに大切なものを探しにきた。
「だから、あたし、このユンゲラーと一緒に探しにきたんです」
「そうだったの」
「落としたものって、そんなに大切なものだったんだな」
「はい」
クウヤはミルの顔を見てにっこりと笑う。
「よし、じゃあ、おれが捜し物を手伝ってやるよ」
「え、いいんですか?」
「ああ、全然大丈夫だぜ!」
そういいクウヤはヒカリの方を向いた。
「わりぃヒカリ、フカマル探しは今は諦めるよ。
おれはミルを助けてやりたいから・・・」
「いいえ、私もいくわ。
私もミルちゃんを放っておけないもの。」
ヒカリも、ミルに協力する体制を示す。
「・・・本当にいいんですか?
トレーナーさん達も、なにか用事があるんじゃあ・・・」
「いいのよミルちゃん。
フカマルだったら、またいつでも探しにこれるしね」
「・・・ありがとうございます!」
「はは、礼は落とし物を見つけたときにしてくれよ」
「はい!」
クウヤの言葉にミルは笑顔で返し、ヒカリもその様子を見てほほえんだ。
二人はミルの落とし物を捜すことに集中していると、洞窟の奥からズバットの大群が襲いかかってきた。
「きゃーっ!」
「慌てるなミル、ポケモンの技でこのズバットを追い払うんだ!」
「は、はい!」
ズバットの大群に驚くミルだったが、クウヤの言葉で冷静さを取り戻しミルはユンゲラーの名前を呼ぶ。
ヒカリも物怖じせずピッピを前線に出す。
「ユンゲラー、サイケこうせん!」
「トーム、でんげきは!」
「ピッピ、めざめるパワー!」
3つの技が炸裂し、ズバットの大群はそこから逃げていった。
そのあともイシツブテやドーミラーの大群が現れることがあったが、なんとかバトルをして追い払ってきた。
「ポケモンの大群が何度も襲いかかってきて、びっくりしちゃいます」
「一人できてたらホントに危なかったわね・・・」
「・・・そうですね・・・無謀だと、あたしも解ってはいたんです。
でも、それでもどうしても、落とし物を捜して見つけたくてきたんです。
ユンゲラーと一緒なら大丈夫だと思ったんですけど、思い上がってました」
「・・・でも、ポケモンと一緒にいこうというのなら、おまえはまだましだぜ」
「クウヤくん?」
クウヤはミルとヒカリに昔の話をした。
「おれも、今よりもっと子供の頃、ポケモンもいないのに野生のポケモンがいる海に潜ったことがあるんだ。
後先なんて考えてなくて、ポケモンがいないことの無謀さも全部忘れてやりたいことのためだけに動いたんだ」
「え、それって危険じゃない!?」
「ああ、だからすぐにおっちゃんのポケモンに引き上げられて怒られた」
当時の自分は無邪気がすぎた、そのために自分を危険にさらしそうにもなった。
それに比べたらちゃんとポケモンの力を頼って、目的のために勇気を振り絞ってこんな暗い洞窟に挑んだミルはしっかりしている・・・とクウヤは思っていた。
「だからさ、お前をちゃんと帰すためにも、おれ達も頑張るから、怯むなよ」
「・・・はい!」
ミルの元気のいい返事を聞いてクウヤは笑いかける。
その様子をヒカリが穏やかに見守っていると、目の前をドーミラーが通り過ぎていった。
「あらドーミラーだわ」
こちらに敵意を向けることなくただ宙に浮かび通り過ぎていくドーミラアー。
むやみに攻撃する必要もないからスルーしようとしたときだった。
「あ、あの巾着は!」
「え?」
「あのドーミラーがぶらさげてる巾着、あれはミルの落とし物です!」
「え、そなの!?」
ミルの言葉を聞いて改めてそのドーミラーをみる。
確かにドーミラーには巾着袋がぶらさがっていた。
「待ってくれドーミラー!」
クウヤがドーミラーを呼び止めると、ドーミラーもそれに気づいてそこにとまり振り返る。
その後、クウヤは必死にドーミラーに説得してなんとか巾着袋を取り戻すことに成功した。
「ふぅぅ・・・うまくいったぜ!
これが、ミルの落とし物なのか?」
「はい、これがあたしの大切なものです!」
クウヤから受け取った巾着袋から出てきたのは、美しい装飾が施された折り畳み式の丸い鏡だった。
「わあ、綺麗な鏡ね」
「うん、外国で働いているパパが、あたしにくれたプレゼントなんです!」
「そうだったの、じゃあ本当に大切にしなきゃね」
「はい!
あたし・・・もう2度と、絶対に、落としたりなくしたりしません、こわすこともしません!
今までよりも、もっともっと大事にします!」
鏡を見て、ミルはにっこりと笑った。
「ありがとう、ヒカリさん、クウヤさん!」
「気をつけてね」
「大事にすると決めたなら、もうなくすなよ!」
「はーい!」
二人は、帰って行くミルとユンゲラーを見送った。
ミルを送り届けた後でクウヤとヒカリはフカマル探しを再開した。
洞窟の奥へ進んだ先には広い空間が広がっており、そこに目的のポケモンが存在していた。
「あの子が本物のフカマルだわ!」
「おぉー、まじで図鑑の姿がそのまま動いてるぜ!」
「やっぱり迷いの洞窟にフカマルは生息していたのね」
穴を掘ったり仲間とじゃれ合ったり岩にかみついて牙を削る、自然のままの野生のフカマルの姿を見るのに夢中になる二人。
「へぇ、フカマルってじめんとドラゴンなんだな」
「そう!
フカマルが進化したらガバイト、それがさらに進化してガブリアスになるのよ」
「ガブリアス!」
ガブリアスというポケモンを知っているクウヤは、その名前を聞いて大きく反応した。
「シロナさんと同じポケモンかぁ・・・」
「え、クウヤくんもしかして、シロナさんに会ったの!?」
「うん、ガブリアスもいたぜ!」
クウヤはシロナと会ったときのことをヒカリに無邪気にはなした。
圧倒的な力と冷静で落ち着いた態度や親しみやすい性格のこと、ポケモントレーナーの秩序を守ろうとする姿勢のこと。
そして、いつかはポケモンバトルをしようという約束をしたこと。
「シロナさんとバトルの約束・・・すごいじゃない!」
「おれさ、いつかチャンピオンとポケモンバトルしてみたい。
勝つとかまけるとかじゃなくて、本気の勝負をしたいんだ。
それで、おれにもできる夢があればいいなとも思ってる。」
夢を持ってポケモンとともに進む友人を思い出しつつ、クウヤはそう語る。
自分の夢を探す姿にヒカリは、自分もそう思いたいと考えた。
「私も、ちゃんとした自分の夢見つけたいなぁ」
「そうだな、おれもちゃんと見つけなきゃ!
そのためにも、この冒険を思いっきり楽しもうぜ」
「ふふ、そうね!」
そんな会話をしてフカマルのデータをあるていど集めたところで洞窟をでる。
「よーし、じゃあな、ヒカリ!」
「またね」
こうしてクウヤはヒカリと別れ、次の町を目指していった。
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