ポケモンDPt 時空神風伝 14 |
テンガン山での遭遇
クロガネシティのクロガネジム。
「本当によかったのかな」
そのジムの奥にある部屋で外の景色を眺めながら、青年・・・ヒョウタはつぶやいた。
窓にうつっているのは、シンオウ地方でも、ほかの地方でも有名な大きい山。
「クウヤくんなら大丈夫だと思って、あっちのコースを進めてしまったけど」
久しぶりにあった少年は、自分を打ち破ったときよりさらに力を付けていた。
あのときのジム戦に出していた2匹も進化していて、バッジも2個になり、トレーナーとして一歩成長していた。
元々素質がありホウエンで旅した経験もあるといっても、まだまだ弱冠13歳の少年だ。
しかも、シンオウ地方で一からトレーナーをやり直し新しいメンバーで旅をしているという話も聞いた。
いくら経験があってポケモンも成長しているとはいえ、迷いやすく野生のポケモンも多いテンガン山に向かわせたるのはどうなのだろうか、とヒョウタは思い詰めていた。
「・・・電話?」
そんな彼の思考を遮ったのは一本の電話だった。
「もしもし・・・ああ、父さんか。」
電話の相手は父親だった。
何のようだと聞くと、父はヒョウタもよく知っている名前を出した。
『先日、ゲンが俺のところにきたんだ』
「ゲンさんが?」
「ああ、また鋼鉄島で修行をするのだと。
あと最近、気になるトレーナーがいるんだとゲンは話していたからな、そのトレーナーと再会したときのために鍛えることにしたそうだ」
気になっているトレーナーときいて、ヒョウタはクウヤのことを思い出し、自分の勧めは間違いでないことと、過小評価していたことに気づき思い詰めた表情をやめた。
「気になっているポケモントレーナーか、それなら僕も最近出会ったよ」
ヒョウタはくすり、と笑った。
「そのうち、そっちにも来るかもしれないから・・・覚悟してください、父さん。
いや、ミオシティのジムリーダー、トウガンさん」
クロガネシティでヒョウタと再会し、テンガン山をこえてヨスガシティへいくルートを進められたクウヤ。
「ここがテンガン山・・・いろんなところで話を聞いたことはあるけど、ホンモノをみるのは初めてだぜ・・・。
近くでみると、ホントにでっけぇや」
目の前にそびえ立つ高山に、クウヤは感嘆の声を上げ、ヒョウタの話を思い出す。
「ヒョウタさんはこのルートを進めてはくれたけど、気を付けてくれって言ってたよな。」
大きな山の洞窟に入って、それを抜けようとするのだ、危険がないことなんてない。
だが、危険に対する不安など彼にはない・・・むしろ、ここからの展開に期待を膨らませわくわくさせている。
「この山を越えれば次のジムがあるヨスガシティ!
だったら立ち止まらずに進むのみだぜ!」
というかけ声をあげてテンガン山の洞窟にはいっていく。
中はやや暗かったが、ヒーコの尾の火が灯火として照らしてくれてるので迷う心配はなかった。
「やっぱ洞窟だし、野生ポケモンたくさんいるよな・・・?
よし、ここはみんなを出そう!」
と、クウヤはズーバとトームもボールからだした。
これでなにがあっても大丈夫だと、クウヤが安心して先へ進もうとしたとき、誰かとぶつかった。
「わわ、ごめん、大丈夫!?」
「・・・」
「え、えーと、もしかして、どっか怪我したのか?」
「・・・いや、私は大丈夫だ。」
のぞき込むクウヤにそういい、自分の無事を伝える。
色素の薄い水色の短髪に、血色の悪い肌、どこか生気の抜けた三角眼。
年齢がわかりづらい男性だった。
「・・・えーと、誰?」
「人に名前を聞くときは、自分から名乗るのが礼儀ではないのかね」
「あ、ごめん。」
表情を変えずに言うのがやや不気味さをそそってきたが、この男性が言うことも正しいので短く謝り、自分の名前を名乗った。
「おれの名前はクウヤ、旅をしているポケモントレーナーだよ」
「ポケモントレーナーか・・・私はアカギだ」
「アカギさん?」
アカギ、と名乗った男の顔をのぞいてクウヤは首を傾げる。
「アカギさんも、ポケモントレーナーなのか?」
「そうではない、護身用としてポケモンをつれているだけだ」
といって、一個のモンスターボールを見せた。
「クウヤくん、といったか」
「あ、うん」
「君はどこからどこへ向かっているのだね?」
「ああ、クロガネシティからヨスガシティだよ!
この道を通ればヨスガにいけるって聞いたからさ!」
「奇遇だな、私も、ヨスガシティの方に向かうつもりだったのだよ」
「へぇーそうなんだ。」
アカギはクウヤをみて、口角をわずかにあげる。
「道は同じだ、私も君に同行しても大丈夫かね?
テンガン山を抜けるところまででかまわん」
「え、なんで?」
「イヤかね」
「いや、おれは全然大丈夫だよ。
じゃあ、いこーかアカギさん」
「うむ」
ということで、クウヤのテンガン山越えにアカギも同行することになった。
「ゴルバ!」
「うん、こっちなんだな?」
クウヤはこの道の地図は持っていない、なんの予備知識もない。
だがヒーコやトームの明かりとズーバの超音波を頼りに先へ先へ進むことができる。
「ゴルバ、ゴルバ」
「こっちに道があるって?
よっしゃ、了解!」
ズーバと会話しつつ道を確認しあうクウヤの様子を、アカギは黙ってみていて、彼の後をただついて行った。
「・・・」
クウヤは違和感に気がついていた。
この道を進んでいる間、会話をしているのはズーバを始めとする自分のポケモンたちとだけだ。
アカギとは、会話らしい会話ができていない。
もっとも、相手は自分に話しかける気配がないせいだというものもあるが。
「うわぁ!?」
なにかが飛んできて、クウヤは驚き一歩下がる。
トームのまとう電気でその場所を照らすと、そこには比較的大きめのポケモンが2体。
「な、なんだこいつー!?」
その2匹のポケモンの存在に驚くクウヤにたいし、アカギは冷静にポケモンの名前を言う。
「ジバコイルに、ダイノーズ」
「へっ!?」
「このテンガン山の影響で進化したポケモンだ。
すみかを荒らされたと勘違いしているかもしれんな」
「そんな、おれ達ただ通り過ぎようとしただけなのに!」
そんな彼らの様子などお構いなしに、ダイノーズはチビノーズを放って攻撃してくる。
「ズーバ、はがねのつばさで打ち返せ!」
チビノーズをはがねのつばさではじき返すズーバ。
ジバコイルの電撃も、トームが防ぐ。
「・・・」
アカギがモンスターボールからポケモンを出し、このポケモンを一掃しようとしていたときだった。
「そうだぁーーーーっ!
アカギさん、こっち、急いで!」
「むっ!?」
クウヤは大声でそう叫ぶとアカギの腕を引っ張り、横穴に飛び込むとヒーコに技を命じる。
「ヒーコ、いわくだき!」
いわくだきで壁を破壊させる。
直後にマッハパンチを加えたりなどして、何度もいわくだきで岩の壁を壊していく。
背後からまだ追ってくるダイノーズとジバコイルに気づいても、クウヤは取り乱すことなく、残った2匹に技の指示を出す。
「トームはフラッシュでダイノーズの目をくらませろ!
ズーバはちょうおんぱでジバコイルを混乱させてくれ!」
直接攻撃をすることなく相手の動きを封じる。
相手が自分たちを見失ったちょうどそのとき、ヒーコは岩の壁を破壊し尽くし、大穴をあける。
そこからは、太陽の日差しが指していた。
「やったぜ!」
「・・・」
「さぁアカギさん、あいつらが気づく前に、早くでようよ」
「ふむ、そうだな」
クウヤはアカギをつれて、テンガン山からでた。
「ふぃー、ようやく外にでられたぜー!」
テンガン山を抜け、クウヤは外の空気を吸って背伸びをした。
そこで看板を発見し確認して、ヨスガ方面に抜けたことを知るとクウヤはラッキーと言って笑う。
「クウヤくん、ひとつ尋ねてもよろしいかな?」
「ん、なに?」
「さっきはジバコイルとダイノーズに直接攻撃せず、ただ洞窟を抜けることだけを考えていたな」
「うん」
アカギは洞窟での道中のクウヤの行動が気になっていた。
途中でクウヤのポケモン以外のポケモンに、遭遇らしい遭遇はしていない。
明かりで照らされた範囲の隅を見れば、イシツブテやゴローン、ズバットなどの洞窟に生息することの多いポケモンは発見できたが、襲ってくる野生ポケモンは見られなかった。
「それまでも、野生のポケモンが一切出なかったな」
「それは、野生のポケモンが襲ってこないようにしていたに決まってんじゃん」
「なに?」
「ズーバのちょうおんぱだよ。
あれで野生ポケモンが少ないところを探し出して、その道に進んでたんだ。
そうすりゃあさ、道のポケモンにむやみやたらと攻撃せずに済んだし楽に道もぬけらるし、
こいつらも道案内以上に疲れることもなかったしな。
それに、おれもあんたも無事にぬけられただろ?」
クウヤは自分のポケモン達を見て白い歯を見せにっと笑って見せた。
「野生のポケモンとの戦いは簡単な鍛錬にもなるだろう、やらないのか」
「んー、強くはなりたいけどさぁ、無茶苦茶に野生ポケモンと戦っていくっていうのは、なんかなーって思っちゃったんだよ。
あいつらも普通にそこにいるだけだし、戦って襲ってこなけりゃおれも攻撃はしないよ。
あいつらが戦いたいって襲ってきたりしたらそりゃ、抵抗もすっけどな・・・あはは!」
やっぱ難しい話は苦手だ、とクウヤは頭を掻く。
その様子をみて、アカギは黙ったまま彼に背を向ける。
「ありゃ、おれの話バカっぽかったかな?」
「そうではない、興味深い話を聞けた。」
「?」
クウヤは自分の話がそこまで興味を持つ内容なのか、と疑問を持つがそれを尋ねる前にアカギは歩き出す。
「では、私はここで失礼するよ、目的地も近いからな。
君の協力で無事ここを抜けられた、感謝する」
「あ、ども?」
アカギはそのまま、クウヤの前から去って行った。
「・・・なんだったんだ、あの人?」
その後ろ姿をみて、クウヤは首を傾げたのだった。
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