天井裏の幽霊
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 静かな朝。目が覚めると部屋の中には誰もいなくて、みんな海へ行ってしまったんだろうと思う。

 一人でご飯を食べていると、見知った人の幽霊が天井からつーっと出てきて一緒にパンを食べようと言うが、私は幽霊には食べ物をやらない主義なのでパンは一人で食べてしまうと、見知った人の幽霊は恨めしそうな顔をしてまたつーっと天井へ戻る。

 昼頃になって天気が怪しくなってきたので、洗濯物を取り込んでしまおうかなと考えているけれども、そのうちに雨が降り出してどんどん本降りになってきて、海へ行った人たちは大丈夫かなあと思う。近頃は離岸流が発生しやすいというし、その波にさらわれてしまったら泳ぎ疲れて死んでしまうというから、離岸流に掴まったら大変なのだ。私は海へ行った人たちが無事に帰ってこれるといいなと思って仏壇でお経をあげた。

 夕方になって雨があがって夕焼けがきれいに映えて私はなんだか悪い予感がし、こんなにきれいなのはなにかよくないことの前兆ではあるまいかと思う。

 案の定、夜遅くになって、家の前で鴉がずっと鳴いて、私はきっと誰かが死んだのに違いないと思い、家の中でめそめそしていると、最近買った骸骨の掛け軸が床の間の暗がりの中で笑っているように見えて、これはもう明らかに家族の誰かが死んだなと思う。

 布団に横たわって目をつむっていると、家族との思い出が次々に脳裏をよぎり、私は、もっと家族らしいことをしてやればよかったと思って気落ちしていると、天井から幽霊がまたつーっと降りて来て、パンをくれと言って私の肩を揺さぶるので、棚の上に置いたまま黴てしまったパンなら食べても良いと言うと、幽霊はそんなものでもうれしそうにパンくずを散らしながら食べて、黴が生えてたって全然いいんだと言う。

 私はそう、と言い、これからも黴の生えたパンは捨てずに天井裏にいる幽霊にあげようと思った。

 幽霊が気をよくして天井裏の住んでるところに案内しようかというので、私は家族ももう死んでしまったし、そんなら天井裏に住み着く幽霊の仲間になってしまってもいいかなと思って二階へ行って、ロフトの上にある天井板を外して天井裏に入ってしまうと、幽霊はようこそと言って、五輪塔の形をした蝋燭に火を灯して、パーティーをしようと言った。

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オリジナル小説です
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