消毒液を飲んでしまったので助けて欲しい君
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 消毒液を飲んでしまったので助けてほしいというような電話が来て、僕はまたいつものやつかと思って放っておいたのだけれどもその後も電話が何度もかかってくるので仕方なく、アンチ消毒液液を持って君の家へ行った。

 君は衝動的に消毒液を飲んでしまってはそのあとで助けを求める電話を僕にしてくるので、正直辟易しているのだけれども、君は消毒液を飲んで胃の中を消毒しないとダメなんだと言い、その理由として塩分に含まれているマイクロプラスチックの毒素を抜くためには消毒液しかないのだと言い、それで毎日マウスウォッシュの蓋の一杯分ぐらいの消毒液を飲むことにしているらしいのだけれども、気分が乗ってしまった時は蓋の一杯ぐらいでは収まらず、二杯も三杯も飲んでしまって、そういうとき君は怖くなって僕に電話をして助けてアンチ消毒液液を持ってきてと言うのだった。

 僕が持ってるアンチ消毒液液は本当はただのリンゴ酢なのだけれども、君はこれを飲むと安心して眠ることができるというので、僕はやむなくこれを買って家に常備して、骨董市で買った昔の茶色い瓶を煮沸消毒した瓶に詰めて持っていくと、君は安心して解毒ができると言って喜ぶのだ。

 けれども、君だって本当はこのアンチ消毒液液がただのリンゴ酢だってことには気づいていて(この間茶色い瓶にリンゴ酢を詰め替えているところを見られてしまったのだ)、それでもあえてそう言わないのは、きっとそんなものでも君の健康を保とうとする一連の神話群には必要な悪事であって、だから僕がリンゴ酢を詰め替えているところはきっと見て見ぬふりをされてしまったのに違いない。

 それで今日も君の家へ行くと君は待ってましたとばかりに僕の手からリンゴ酢を奪ってごくごくとうまそうに飲み、これで体内のマイクロプラスチックも全部分解されたよと言ってうれしそうに微笑む。

 僕は君の家に置いてある消毒液を本当は全部持って帰って隠してやりたいけれどもそうすると君は発狂して近所のマツモトキヨシでメチルアルコールをたくさん買ってきてしまうから、僕は前回の反省からもうそういうことはしないことにしているのだった。

 その日は夕方に夕焼けがきれいで赤と紫と青色の雲の層がはっきりと分かれて空を覆っており、僕が夕焼けがきれいだねえと言うとアルコールで酔っ払ってきた君はティッシュペーパーをむしゃむしゃと食べ、うまい、いつまでも食える、などと言って楽しそうに僕の口にもティッシュペーパーをひたすら詰め込んでくる。

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