それでも太陽は赤く染まる!第15回「姉の宿命!」
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第15回 「姉の宿命!」

 

ほとんど、対した食事も取らずに、母に怒鳴られて食欲も失せてしまったひとし。

部屋に入ると1日にたまった疲れがどっと押し寄せ横になるやいなや、すぐに意識が遠くなった。

しばらくの間、死んだように寝息をもらしていたひとしだったが、

不意にお腹の上にぼすっと何かを置かれたような重みにウッと苦しくなって目が覚めてしまう。

暗闇のひとしの部屋に誰かが入ってきたらしく、意識的に起き上がると「ごめん、起こした・・・。」と聞き覚えのある声が・・・。

どうやら遅くに帰ってきた姉の美穂(みほ、19)のようだった。

風呂あがりのシャンプーの暖かい香りの湯気の風がなびいてくる。

 

ひとしは「うん・・・。(+_+)」と寝ぼけまなこの声で蛍光灯の紐に手を伸ばそうとしたとき・・・。

 

美穂

「待って、今着替えてるから・・・\(◎Д◎)/!」

 

美穂がすかさずに蛍光灯の紐を取り上げた。

3LDkの中で一番広いこの8畳の部屋は、実はひとしだけでなく姉との共同部屋だったのだ。

 

ひとし、目をこすりぼーっとあくびをしながら・・・。

 

ひとし

「なんか、やけに遅いじゃん。デイサービスって日帰りだから残業はないんでしょう?(ノД`)・゜・。」

 

姉の美穂は去年の春から老人福祉施設の(デイサービスセンター泉)という所に勤めていた。

生まれてからすぐ風邪で高熱を患った原因で、てんかん持ちになってしまった美穂は時々意識障害の痙攣と悲鳴のような雄叫びの声を上げる事があって、なんとか頑張って私立の高校を出たものの、持病を持つ姉をなかなか受け入れてくれる職場が少なく、ようやく地元の区役所の顔見知りの方の紹介で、まだ完全な職員ではないのだが仮の訳あり職員という条件付きの様子見でパートとして働く事になった。

 

本当は看護か保育士の道へ進みたいという強い希望があったみたいだけど、発作で迷惑かけるかもしれないからと専門学校へは自ら断念したみたいだ。母と同じように強がりの負けず嫌いな所がある姉は高卒後、一時は精神的に沈んだり寝込んだりしながら月日が流れたりもした事があったが、今、姉がちゃんとこうして職場に問題もなく通ってくれるようになった事が両親やひとしの心を安心させていた。

 

ようやく寝間着のスカートとセーターに着替えた美穂が蛍光灯の紐をひっぱるとひとしは電気のフラッシュのまぶしさに一瞬目をすぼめる。

 

美穂、落ち着いた冷静な声で・・・。

 

美穂

「今日は、新入社員たちの歓迎会よ、若手の専門卒の職員が何名か入ってきたから、あたしもせっかくだから出席しろって、所長がね・・・!(-_-)」

 

ひとし、少し興味深そうに・・・。

 

ひとし

「お酒のんだの?まだ19なのに・・・\(◎o◎)/!」

 

美穂、ひとしのお腹の上にほうり投げた手提げかばんをすかさずつかみ取ると、手前の勉強机の椅子にゆっくりと腰をおろして・・・。

 

美穂

「ううん。20歳ってごまかして飲もうかともおもったけど、てんかんの薬飲んでるし、まんがいち副作用とか出たらみんなに迷惑かけると思ったからやめた!てか、あんたあたしのソファーの上で勝手に寝ないでよ。いつも寝てる時上に這い上がって来るから、うっとおしくってあたしが蹴落としてるけど・・・!(-_-)」

 

ひとし、美穂のその言葉にむすっとして・・・。

 

ひとし

「ひっどいなあ〜、僕が寝ぼけて知らないからって・・・。!(`〜´)」

 

美穂、悪気もなくクールな表情のままかばんを床に置いて・・・。

 

美穂

「最近あんた寝相悪いわよ、ストレスため込んでない!時々うなされたりもしてるから、こっちが寝不足になるわ!( ̄д ̄)」

 

ひとし

「えっ!僕声出してるの?全然覚えてない。\(◎o◎)/!」

 

美穂、マイペースに耳までかかる程度のショートのしけった黒髪をくしでとぎながら・・・。

 

美穂

「たまにね・・・!まっ、あたしはいざとなったら耳栓あるからいいけど・・・!(-_-)」

 

ひとし、ちょっとむきになって声を荒げて・・・。

 

ひとし

「ちょっと、そうゆう問題!何か悩んでないとか聞くもんでしょふつう。可愛い弟がうなされてるなら、なおさらさあ〜。!\(`〇´)/」

 

美穂

「ちょっと、大きな声出さないで。何時だと思ってるのよ!(?Д?)お母さんたちが起きるでしょ!何が、かわいい弟よ。自分で言うな!あんたの悩みなんてだいたい想像がつくわよ!勉強もしないで赤点のテストどこに隠そうか失敗してお母さんに見つかってしかられるわのオンパレードでしょ!バカみたい。そんなの原因は全部あんたにあるわけであたしがどうのこうの言う問題じゃないわ!(`〜´)」

 

部屋の隅にある、掛け時計はいつの間にかコチコチと音を立てすでに深夜の0時をまわっていた。

 

ひとし、図星をつかれてか、ちょっと開き直って・・・。

 

ひとし

「冷たいな、お姉ちゃんなんか働きだしてから本当冷たくなった気がする・・・。!\(`〇´)/」

 

美穂、ひとしの言葉に初めて反抗するように冷ややかな視線を向けて・・・。

 

美穂

「お気楽なあんたと違って必死だからね、こっちは毎日!( ̄д ̄)デイサービスは日帰りでスケジュールがきっちりと決められてるから、利用者だけでなく家族とのトラブルも多いの。利用者の中には施設の些細な出来事でもストレートに帰ってから家族に報告したりするらしいから・・・。住み込みの生活の特養老人施設より気配りが大変なの。挙句の果てに虫の居所が悪い時には職員同士の衝突も激しくって本当、毎日が戦争よ。あんたも働きだしたらわかるわよ。今あんたがどんなけ小さな事で悩んでるかって・・・。」

 

ひとし、一瞬言葉を失いそうになったが負け時と言い返す・・・。

 

ひとし

「うるさいな!いきなり仕事の話しなんかしないでよ!\(`〇´)/そんなんだったら飲み会に行ったって楽しくなんかないじゃないか。愚痴こぼすくらいなら行かなきゃよかったんだよ。」

 

美穂

「だから大人の付き合いだってば!それに今年の社員は女の子が多かったから話しとしては結構盛り上がったかな。みんな、そんな人見知りもしないよくしゃべる子ばかりだったし、すぐになじめると思う。まあ、女性の世界だから油断は出来ないけどね。所長は人手不足だったから喜んで酔っていたけど・・・。あたしは持病を持ってるし、それにまだパートの身だしね。正直どうなるか不安だわ!(-_-)」

 

ひとし、たんたんとしゃべり続ける美穂のそんな急な下がり気味なテンションに何かを思い出したように・・・。

 

ひとし

「彼氏さんとは・・・。しゃべったのあれから!(゜o゜)」

 

美穂は去年の秋ごろから、同じ施設で働く5才くらい年上の先輩とけっこう話しも合っていい雰囲気のように盛り上がっていたとひとしに聞かされていたけど、クリスマスの時にその彼の前で、しばらく落ち着いていたはずのてんかんの起こってしまって、白目を向いてひどい痙攣を見せられてびっくりして逃げるようにひいてしまったらしい。しかも美穂を寒い夜の公園のベンチに置き去りにして・・・。

 

美穂はしばらく押し黙って一瞬表情にくもりが走ったように思われたがすぐにいつもの冷静な口調に戻って・・・。

 

美穂

「その話しはいいわよ。飲み会でもうとっくに新しい社員の子に夢中だったわよ。本当、男ってすぐに開き直りがはやいんだから・・・。嫌になるわまったく・・・。(-_-)」

 

ひとし、ますます声のトーンが下がり気味になった美穂を同情するように・・・。

 

ひとし

「なんで〜、あやまってきたんでしょう。お姉ちゃんに・・・。その人のせいで危なく肺炎にもなりかかったんだし・・・。風邪こじらせて死にかけたりもしたんじゃないか!めっちゃショックだよそんなの。!\(`〇´)/」

 

美穂、ひとしに何を言われても表情を崩さずに・・・。

 

美穂

「いいったら。あたしがてんかんの事をきちんとあいつに伝えていなかったのが悪いんだし、てか言えないわよ普通。気に入った人だったらなおさら・・・。けど、どのみち知られちゃう事だから、早くてよかったわよ。おかげで傷もそんなに深まらずにすんだし。本当、時間をかけるほど深くなるからね、底なし沼みたいに。(-_-)」

 

ひとしももうこれ以上美穂に何も言わない方がいいと心に思ったのか落ち着かせようと・・・。

 

ひとし

「もう未練はないって事!いい思い出のアルバムが出来たって・・・!\(・o・)/」

 

そしてゆっくりと姉を気遣うように静かに背を向けて姉のソファーから降りる事もせず寝転ぶと布団に顔をうずめた。

 

が、そのとたん、いきなり今まで冷静な表情で話していたと思っていた美穂が急に逆上したような口調に変わり、興奮した赤い顔で机をどんと叩くと・・・。

 

美穂

「そんなわけないでしょう!(?Д?)女はいつだって本気なんだから!このままじゃ終わらせないわよ!あたしの恋の本番はこれからよ!あたしはそんな簡単な女じゃないって事、あいつにわからせないと。どうせ別れるにしてもね!なんせ一緒に働いてるわけだし、あげくに新社員なんかといちゃいちゃしている所を毎日見せつけられるなんて耐えられない。こんなんじゃストレスが溜まる一方だわ!あんたもそう思うでしょ。違う?!(#?Д?)」

 

姉の美穂が極限に感情が高ぶると何かが弾けたように爆発してしゃべりだす事はひとしは小さい頃から知っていた。でも決して人格の崩壊とかではなく、姉はその事によって暴れたり人に危害を加えたりしないという事もひとしはよく理解をしていた為、あまり動揺する事はなかった・・・。長い姉弟生活、これが姉の純粋な自然の個性であるとわかっていたのだ。

 

がやはり急な変貌でびっくりさせられたのか布団から顔を出さないまま、ひとしは美穂の感情に必死に合わせるように・・・。

 

ひとし

「てんかん発作の持病もちだしね!宿命だね、お姉ちゃんの!(-_-)」

 

つい逆なでするような事を口走ってしまった。だがその言葉に美穂も開きなおったように・・・。

 

美穂

「そうよ、あたしの場合待ってられないのよ。ただでさえ二十歳過ぎたら女はあっという間に底なし沼に沈んで行くってお母さんも言ってるでしょ。こっちからどんどん攻め込まないと損するばかりだわ!(#?Д?)」

 

ひとし

「本当、お姉ちゃんはどこのどんな女の人よりも女らしいと思うよ!ていうか興奮してるとお母さんたち起きるよ・・・。(-_-)」

 

美穂、少し冷静を取り戻したように・・・

 

美穂

「だからこの際だからひとしも、一緒に何か目標を決めなさいよ。!(?▽?)勉強してお母さんを見返すとか、もう中2になるんだから、いい加減、お姉ちゃんからひとり立ちしないと。利用者さんの中でも人生振り返って後悔してるって聞かされる人が沢山いるの。そのたびにみじめなあんたを思い浮かべるように重ねて、ため息が漏れる姉の気持ち、馬鹿だけどあんたにもわかるでしょ。」

 

その言葉に今度はひとしが動揺したように布団から顔をだすと・・・。

 

ひとし

「結局なんでそこに話しが結びつくんだよ。!関係ないじゃんか僕は!Σ(゚Д゚)てか、なんだかんだ言ってお姉ちゃんまだその彼氏の事すごい根に持ってるじゃないか。さっきから聞いてれば、かっこいい言葉ばっかさんざんアルファベットみたいにごたく並べちゃってくれてさ!こっちはいい迷惑だよ本当・・・。」

 

美穂、また少し興奮を高めた張り上げた声で・・・。

 

美穂

「何言ってるのよ!(#?Д?)このままじゃあんたもこの先ずっとお母さんからけなされっぱなしよ。お母さんだけじゃなくてみんなからも!馬鹿で取りえもない人間に世間は氷みたいに冷たいから!アルファベットのABCみたいな順番に人生は上手くいかないのよ!てか、お姉ちゃんに向かって何なの、その言い方は。反抗期は遊んでるお母さんの前だけにしてちょうだい。こっちはあんたのうなり声と金魚のモーター音のせいで寝不足なのよ・・・。」

 

美穂はすかさず開けっ放しだった深夜のベランダのカーテンをシャーっとしめた。そして再びひとしに不満をぶつけるように・・・。

 

美穂

「もう一つおまけに金魚の水ってくさいのよ、日が当たる日中は藻がはらないようにカーテンを閉めろってお母さんたちにも言われてるでしょう!あんたが好きで飼ってるんだからそれくらいちゃんと責任持ちなさいよ!(#?Д?)」

 

ひとし、少し冷静さを取り戻して姉の嫌味に皮肉っぽく・・・。

 

ひとし

「はいはい。ようするに、転んでもただでは起きないタイプだよね、お姉ちゃんは。!(-_-)その彼氏さんを見返す怒りが原動力だってことはよくわかったから。僕はもうアルファベットの最後のZで人生いつ終了してもいい場所にいて満足だからさ、お姉ちゃんはまだまだこれからの仕事と人生、ゆっくり頑張って!てか疲れてるんだからもう寝かせてよ!(ノД`)・゜・。」

 

美穂、そういって再び布団にもぐろうとしたひとしをいきなりまくり返すように頭をぱちんと強く叩いて・・・。

 

ひとし

「痛い!Σ(☆Д☆)」

 

美穂

「意気地なしが、叩かれて当然よ!その年で疲れたなんて言葉簡単に口にするな!(#?Д?)何が人生の最後でいいよ。そんな事言うなら今すぐそこのベランダから落ちなさいよ!ここは5階だから頭から落ちれば確実に死ねるわよ。脳みそもぐっちゃぐっちゃに飛び散って、もう悩みや不満なんて考える必要もなくなるわきっと!さあどうするのよ、お姉ちゃん手伝うわよ。口だけで死ぬ勇気もないくせに。生意気言うんじゃないの!!(?Д?)」

 

美穂の明らかに無責任過ぎる考えの暴言に、びびって言葉を失いこずかれた頭をさするひとし。予想外に死ね等と言われてゾクリと、全身が冷や汗と恐怖に硬直しているような表情だ。「・・・。」

 

美穂

「あんたも何かやらせなきゃ姉として示しがつかないでしょ。!(#?Д?)あんた男でしょうが。弟でしょ。お姉ちゃんも頑張るんだからあんたも何か挑戦しなさい。!今のままじゃあんたもあたしも一生独りぼっちよ。何か行動を起こさない限り前には進めないのよ、人は・・・。せっかくの人生、ガツンと生きて生きまくりなさいよ!これはあたしの宿命だけじゃなく家族の宿命でもあるんだから・・・。あたしは特に、あんたなんかよりも遥かにでかいハンディー背負ってるんだし。このままじゃ結婚さえできるかさえ怪しいのに・・・。」

 

また再び姉が感情的になりだしそうなのを察してか、ひとしは身をまもるように慌てた様子で・・・。

 

ひとし

「わ、わかったよ。Σ(゚Д゚)とりあえず今年は勉強よりも友達を1人でもつくれるように努力するよ・・・。ああ・・本当、世話が焼ける頭のいかれたお姉ちゃんに関わって、振り回された人達はみんなきっと、間違いなく不幸になるよ。(;´д`)トホホ」

 

その声をまともに聞かれてしまったらしく、再び感情が逆上してしまった美穂に・・・。

美穂

「うるさい!あんたにそんな事言う資格なんかないわ!お気楽なあんたは土曜で明日休みだからいいけど、あたしは仕事があるんだからね!(#?Д?)さっさとベランダからじゃない・・・。ソファーから落ちて寝ろ!」

 

興奮した美穂にソファーから下の床へドゲシッと蹴落とされたひとしは、いつのまにか完全に目が覚めてしまい、ほとんど日中何も食べていなかったお腹の虫も同時に目覚めたように「グウ〜ッ」と初めて返事をした。

 

ひとし

「(僕だって明日の朝、(塾)習字があるのに・・・!本当、今日はとんだ厄日な一日だったな!やだやだ!((>_<))」

 

そして姉が寝静まったこの後、深夜の台所でひとしはたった1人虚しく暗いテーブルの上に置かれたままになっていた冷めた湯豆腐の入った小鍋を・・・静かにポン酢をだしにお椀で平らげた。

説明
塾さぼりの遅帰りで母親と再び大喧嘩をしたひとし。食欲も失せどっと押し寄せた一日の疲れを癒そうと自分の部屋に逃げるように入り横になった。すぐに意識が遠くなったが、それでも、まだひとしの一日は終わらずに仕事帰りで深夜に帰宅した姉に再び起こされて・・・。
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