真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 48 |
「じゃあ、後は任せた」
「はい! お疲れ様です!」
詰め所で男たちを引き渡した後、俺は警邏へと戻る。だが、その時ふと思った。
(……俺、いつの間にここまで足跡を残してたんだろうな)
この世界の住人としての足跡、劉備たちとの足跡、将としての足跡、そして、御使いとしての足跡。そんなものを残した気はなかった。でも、気が付けばこんなにも残っていた。
そして、それを思うと今までの足跡がいくつも重なって道のように、いや、
(轍みてぇだな……)
そう思うと、さっきの胸の痛みがぶり返す。その痛みがする場所へ手を当てる。
「…………ああ、多分これは」
多分、ここに残れば感じる痛みではないだろう。仮に、痛むことがあっても、それ以上の癒しがその痛みを和らげてくれるのだろう。
「…………だが」
これは“いらない”ものだ。そもそも、今の俺が持つべき痛みじゃない。
「……夜まで待つのはやめだ」
今すぐ行くべきだ。このままでは、俺は……。
「玄輝殿?」
「っ!」
その声に反射的に振り返れば、
「ど、どうされたのです?」
関羽がいた。
「そうですか。警邏で」
関羽と街中を歩く。彼女にはさっきまでの事を話していて、今ちょうど話し終わったところだった。
「そういえば、関羽はどうして町に? 確か、今日は張飛と兵の訓練だっただろう」
「ええ。そうなのですが、鈴々がそれを忘れて町へ遊びに行ったようなので……」
「ああ、なるほど」
だから俺に“良ければ、ご同行してもよろしいですか?”なんて聞いてきたのか。
「で、目星はあるのか?」
「鈴々の事です。どうせ、遊んでいるか食べているかでしょう」
「となれば、屋台がある方か子供が遊べる広い場所か」
「でしょうね。まったく、将としての責任を持てないのか、あやつは」
眉をハの字にして、ため息を吐く関羽。
「まぁ、本来であればそこらの子供のように遊んでいてもおかしくない年だろ?」
「かもしれませんが、戦場に立っている以上は将なのです。そんなこと……」
「確かにそうかもしれないが、どこかで息抜きしなければ務まりきらんだろう」
「……ずいぶん鈴々にお優しいのですね」
……優しい、か。
「別に、優しいってわけじゃない。心を抑えて生きるのがどれだけしんどいかを知っているってだけだ」
「玄輝殿?」
「心を抑え続ければいつしかそれが当たり前になる。そして、気が付けば自分が何をしたいのかが分からなくなって、そのうち何をすればいいかすらも分からなくなり、今あるものに固執するしかなくなる。最後に残るのは醜い何か」
「それは……」
「……そんなやつを何人も見てきたってだけさ。まぁ、俺の体験も少しはあるが」
そう。心を抑えることは今までずっとやってきた。何度も噴き出しそうになるのを耐えに耐えた。どうしても抑えきれないときは夜の山で何度も叫んだ。手あたり次第に悪党を切り捨てた。
自分を見失いそうで怖かった。復讐を忘れそうになったこともあった。でも、それでもここまで耐えられたのは時々噴き出していたからだと思う。
「……と、変な話になったな。要は大目に見たほうがいいこともあるって話だ」
そう締めくくると、関羽の顔が少し曇る。
「……やはり、私の頭は固いのでしょうか?」
「ん?」
「その、ご主人様にも前に言われたことがあるのです。“愛紗はもう少しだけ肩の力を抜いて、柔らかく考えたほうがいい”と」
なるほどな。北郷ならば言いそうだ。
「まぁ、一理あるな。思考が凝り固まればろくな結果にならん。それに、お前さんは色々と抱え込むことが多いからな」
そう言うと関羽の顔は少し困ったように歪み、その口からはため息が吐き出された。
「……性分とはいえ、やはり直さねばならないようですね」
「それは違う」
俺の言った言葉に関羽は驚きの表情を見せる。そんな彼女へ言葉を続ける。
「その固さは全体をまとめ上げるには必要な要素だ。直す必要なんてない。お前に必要なのは“受け入れること”じゃないか?」
「受け入れる、ですか?」
「ああ。“こんな考えがあるんだ”“これも一つの考え方だ”って一度心の中に入れて、そこで咀嚼してから考える、ってところか。自分の考えを通すべきか、その意見を受け入れた上で新しい考えを提案すべきか、とかな」
「……そう、ですね。言われれば他人の意見を聞かないで行動してしまったことはよくあった気がします」
「まぁ、自分で考えて行動できない奴よりかはマシだと思うがな」
「……ありがとうございます。具体的に言ってくださって。正直、どうすればよいのかとずっと悩んでいましたから」
……関羽の性格からしてそうだろうな。
「最初は難しいかもしれんが、のんびりやっていけばいいだろう」
「……そう、します」
(ん?)
今の声、どうにも寂しそうな感じがしたが……。いったん止まって関羽の顔を見れば、それは下を向いていて表情を見ることはできなかった。
「関羽?」
そう呼びかけると彼女は意を決した表情で口を開いた。
「……玄輝殿、お聞きしたいことがあります」
「ん?」
「……玄輝殿は私が自分の考えを、人の意見を受け入れられるようになるまでここにいてくださいますか?」
はいどうも、おはこんばんにちわ。作者の風猫です。
お久しぶりです! 正直、玄輝の内心を書くのに苦労してます!
どうすればいいのだろうか、どう書き表せばいいのか、ちょっとてこずってますので、もう少し気長に待っていただければと思います……
ですので、次の更新もかなり間隔が空くかもしれませんが、ご容赦いただければと思います……
では、また次回!
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真・恋姫†無双の蜀√のお話です。 オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話なので、大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。 大筋は同じですけど、オリジナルの話もありますよ?(´・ω・) |
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