真・恋姫無双「三国放浪記」第三話『戦場見学・初心編』 |
俺がこの世界に来てから一月ぐらいがたった。といってもずっとあの村にいたわけじゃない。ある程度路銀が貯まったら移動して、また路銀を稼いで、ある程度貯まったら・・・っていうのを何回か繰り返して、今はそこそこ大きめな町にきている。
もちろんその合間合間に俺の鍛錬も継続されている。実はあの後、俺がこっちの文字が読めないことが判明して、色々と四苦八苦したが、学校の漢文の知識と程立ちゃんや戯志才、あと徐庶に教えてもらってなんとか読み書きが出来るようになった。漢文なんて使う機会ないと思ってたけど・・・ナイスだ!学校教育!
最近、やっと軍略や内政の基本的な所を習いだしたところだ。難しいんだけど、教師側が優秀なおかげなのか、なかなか面白いんで、なんとかついていけてる。
ちなみに路銀稼ぎを始めた少し後に、三人(程立ちゃんを除く)から、さん付けしなくてもいい、と言われたから今は呼び捨てにしてる。
真名はまだ預けてもらえていない。べ、別にへこんでなんかないんだからね!!・・・はあ・・・。
昼間は路銀稼ぎに追われていることが多い。今は料理屋の手伝いをやってる。最近なんか料理がうまくなった気がするんだが・・・。
ちなみに程立ちゃんと戯志才もここで働いている。趙雲と徐庶は時々盗賊退治をしたりしている・・・らしい。
武の方はどうしたって?昼間空いているときに時々趙雲が稽古をつけてくれるけど(趙雲は普段働いているのだろうか?)、武の鍛錬のメインは夜に行われてる。それも毎日。別にいかがわしいことをするためじゃない。・・・ホントダヨ。
なぜ夜なのかというのを徐庶にきいてみたら・・・
「私は日光が嫌いなんだ。」
と言われた。普段フードをかぶっているのもその理由かららしい。
そして、今は夜―――丁度鍛錬が始まるところだ。
徐庶の銀色の長髪が風でなびく。その光景はいつ見ても綺麗だ。でも口には出さない。前に口に出したら即行意識を刈られた。
真紅の瞳がこっちを向く。手には刃を潰した訓練用の剣。
そして鍛錬が始まる―――
「さあ、いくぞ、奔放!」
「北郷だ!」
・・・なぜかこの掛け合いが手合わせの開始の合図になっている。
ガキンッ
最初は徐庶が手加減をして俺と同じくらいの強さにして、しばらくの間、互いに打ち合う。
「そろそろ・・・」
そしてそれに慣れてきたら徐々に速く、強くなってくる。
「くっ、はぁっ!」
それになんとかついていく。しばらくすると徐庶はさらにギアをあげる。最初のころはこの辺りで死んでいた。
「くっ・・・。」
しばらくすると、もう防ぐので精一杯になってくる。それでもまだまだギアはあがる。
「―――ふっ!」
「っ!!」
ガキンッ
強烈な一撃をなんとか防ぐ。・・・が、その衝撃で身体が後ろにすべる。そこに―――
「まだ甘いッ!!」
徐庶の跳び蹴りが飛んでくる。だが、踏ん張っているせいで避ける体勢が整ってない。なら―――
「くぅっ!!」
スカッ
「!」
蹴りが来る前になんとか地面に転がり蹴りを避ける。無様?なんとでもいえ。そしてなんとか体勢を整えようとしたとき―――
ブウンッ
さらに回し蹴りが飛んできた。避けないと―――
ドカッ
「―――」
目の前が暗くなる。意識が飛ぶ。そして―――
「はっ。」
目が覚めると、宿の自分の部屋のベッドの上で朝を迎えていた。
そしてこれは俺の中である種の習慣になっていた。
名前はいまだにちゃんと呼ばれたことは無いけど、これでも徐庶とは仲良くなってきている。最初の方なんかは鍛錬のあと完全な放置だったからな。何もかけずに、どこにも運ばずに、朝まで放置。目が覚めたとき、泣けてきたね。
「・・・とりあえず着替えるか。」
痛む身体を無視して起きて、着替えを終わると、
「起きているかな、北郷?」
ちょうど趙雲が部屋に来た。
「うん、起きてるよ。どうかしたの?」
「なに、そろそろ何か食べにいかぬか、と誘いに来たのだがな。」
「わかった、今行くよ。徐庶たちは?」
「すでに起きて待っているぞ。」
「じゃあ急がないとね。」
・・・そんなこんなで飯屋。
「あ、そういえばお兄さんに言いたいことがあったんですー。」
?急になんだろ?
「風のことは風と呼んでも構いませんよー、ということですー。」
・・・へっ?
「風!?」
「いいの?」
「ええ、これまで一緒に旅してきて、お兄さんなら真名を預けてもいいと思ったので、いいのですよー。風もお兄さんのことはお兄さんと呼びますのでー。」
・・・それ、今までと変わってない気がするけど、・・・まあいいか。
「・・・ありがとう、程r・・・風。」
そういって俺は風の頭をなでる。
「・・・♪」
風は何も言わないけど、心地よさそうだからもう少しなでておこう。
「確かに風の言う通りかもしれぬな。」
「星まで!?」
「北郷、いや一刀は真名を預けるに値する者だと思う。」
「じゃあ・・・」
「うむ、この趙子龍の真名、そなたに預けよう。我が真名は星。これからもよろしく頼むぞ。」
「ああ、わかったよ、星。(にこっ)」
「う、うむ・・・(/////)」
?星の顔が赤くなった気がするけど、どうしたんだろ?大丈夫かな?
「り、稟はどうなのだ?先ほどからの過剰な反応とは違って、本心ではそう満更でもあるまい。」
「うっ!!」
「どうなんですかー?稟ちゃん?」
「・・・確かに一刀殿は飲み込みもよく、頭も悪くないし、ちゃんと働いてくれますし、・・・」
戯志才が悩んでいる。というか今俺のこと一刀殿って・・・
「あー!もういいです!一刀殿!!あなたに私の真名を預けます!!」
「いいの?なんか投げやりっぽいけど・・・」
「・・・構いません。では・・・」
戯志才は一呼吸おき、いつもの落ち着きを取り戻してから名乗った。
「わかっていたとは思いますが、戯志才というのは偽名で本当の名は郭嘉、真名は稟です。今後ともよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくね、稟。(にこっ)」
「うっ・・・(/////)!い、銀はどうなのですか?一刀殿に真名を預けないのですか?」
「む、話をそらしたな。」
「そらしましたねー。」
?今度は稟の顔が赤く・・・大丈夫かな?
「うーん・・・そうだなぁ・・・。」
徐庶は悩んでいるようだった。
「確かに坂東「北郷だ」はよくやってると思う。飯盒「北郷だ」はちゃんと実力もついてきてるしなぁ。でも何か足りないんだよなぁ、リンボーは。「北郷だ」」
くそ、名前を間違えるたびに突っ込んでるのに何故覚えないんだ?訂正もしないし・・・。しかもなんか俺が前に言ったカタカナ言葉が混じってるのがなんか悔しい。
「ん〜、そうだ。うん、決めた。」
徐庶の中で結論が出たらしい。
「じゃあ、本堂、お前盗賊退治についてこい。」
・・・・・・・・・
「・・・へっ?」
予想外の発言に名前の訂正ができなかった。
「銀!?何を言っているのです!?」
「そうですよー。お兄さんを殺す気ですかー?」
稟と風が徐庶に反論する。が、しかし・・・
「二人とも、ジェイドー「北郷だ」をなめすぎだ。こいつはこの一月、私がいじm・・・もといしごいてきたんだ。それくらいじゃ死なないよ。」
今いじめてきたって言おうとしてなかったか?いや、気のせいだ、そうに決まってる。
「ということでこれ食ったら今日休む事を仕事場に言いに行け。いいな。」
って、今日!?
「わ、わかった。」
「なに、そう緊張せずともいいのだぞ。私もついていくのだからもう少し安心すればよかろう。」
今の言葉を聞いて少し安心した。
「ほら、さっさと食って、さっさと休む事を言ってこい、ランボー「北郷だ!」。」
・・・いったい徐庶はなにを考えているのだろうか?
―――さて、今回は比較的小規模だ。数は50から70、敵拠点も判明している。
そう言われて、俺たちは森の奥深くにある小さな洞窟の前まで来ていた。
「――さて」
さっき一瞬で倒された見張りを連れて森に行った徐庶が一人戻ってきた。
「先ほどここの見張りの二人に訊いてみた所、中にいる人数は67人、外にいっている仲間はいないようで、抜け道もなく、さらに一般人もいないそうだ。」
ちなみに見張り二人は尋問やら拷問やら、色々して樹に縛り付けて放置してあるらしい。
「ふむ、人質を取られるという最悪の状況にはならん様だな。」
「うん、で、基本方針は変わらず、星に大暴れしてもらって、私がそのおこぼれをやる、ってことで。」
ん?ちょっと待ってくれ。
「なあ、俺はなにをすればいいんだ?」
「とりあえず見学しとけばいいよ。あと一段落したら生き残りを縄で縛るのを手伝ってほしい。」
「・・・わかった。」
とりあえず雑用ってことなんだろうか?・・・できれば人が死ぬところを見たくないんだけど・・・。
「それと、これを渡しておく。」
そういって渡されたのは一振りの剣。訓練用の剣と形は同じだが明らかに違うのはこの剣が真剣であるという事だった。
「お前の本来の獲物と形が違うと思うけどないよりはましだろう。もしもの時は―――わかってるな?」
「・・・・・・」
もしもの時、俺は人を殺さなければならない。・・・・・・俺に出来るのだろうか・・・?
「・・・・・・」
俺の手が震えているのを徐庶と星が見逃さなかった。そのことに、俺は気づかなかった。
「・・・では、行くぞ。・・・突入!!」
そして、戦闘は始まった。
「―――はいはいはいはいはいーーッ!!」
「ぐあっ!!」
「へぶぅっ!?」
「げはっ!?」
―――星の繰り出す槍が盗賊達の命を絶っていく。
「ぎゃっ!」
「ぐふっ!」
「こ、このアマ、強ぇ・・・!」
「おとなしくお縄につくのなら、命まではとらんぞ?」
「誰がつくかよ!!てめぇら、全員でかかれぇ!!」
そしてまた、盗賊たちは星に襲い掛かる。
―――星は槍を振るう、まるで舞のように―――。
―――そして、その舞は次々と消し去っていく、命の灯を―――。
「ひぃぃぃ!?にげ、逃げろ・・・!!」
盗賊の一人が洞窟の出口、つまり俺たちの方に向かって逃げてくる。が―――
「ふん。」
「ぐへっ!?」
こっちに来た盗賊の顎に徐庶が掌底を叩き込む。
「まあ、この分だとこちらの負担は少なくて済みそうだ。・・・大丈夫か、王道?」
「・・・・・・北郷だ。」
なんとか名前の訂正をしたけど、あまり大丈夫じゃない。念のために抜いている剣は震えているし、正直今にも吐きそうだ。足元もおぼつかない。
槍を振るう星は美しく見える。けどその度命が消える。
人の命が平等とは思わないけど、人が死んでいく姿を見るのは気分のいいものではない。
どうして徐庶は、俺を連れてきたのだろう・・・
「―――これで終わりだな。」
「そうだな、まず生きてるやつを縄で縛っておこう。おい、ドードー。」
「・・・・・・・」
「・・・まあ、しょうがない、か。ちょっと休んでろ。」
そういって、徐庶は星の方に歩いていって、生存者を縄で縛っていった。・・・情けないな、俺。
その時―――
―――タッ
「「「!?」」」
「どけえぇぇえぇぇぇ!!」
死体の下に潜んでいたのか、賊の一人が出口に向かって走ってくる。その手には短刀、そして出口の前には俺―――
「一刀!!」「北郷!!」
二人ともそれに気づいたが、もう遅かった。
どすッ!!
・・・そして、血が流れ、刃を伝い、ポタンッという音を響かせ、落ちた―――。
あとがき・・・という名の言い訳
こんにちは、こんばんわ、シンジです。いきなりですが、すいません。更新遅くて。色々とゆっくりしていたら遅くなっていました。
あと、前回のあとがきで稟と風を中心に・・・とか書いてあったのにそれすら変更してすいません。一応それには理由があるのです。ですが、今後の話のネタバレになりそうなので言わないでおきます。・・・・・・ホントデスヨ。
今回の真名の許可ラッシュについてなんですが、立て続けにおかしいんじゃね?とか思ったのですが、あの一刀が一月もたってるのに誰とも真名の交換?をしていないのもおかしいなぁ、と思ったので早めに真名を呼ばせるために決行しました。
さて、一刀はどうなったのか、徐庶がなぜ一刀を付き合わせたのか、次回にわかります。これは確実です、はい。バッドエンドもないですよ、・・・まだ。
では、今回はここまでにして、次回も読んでもらえる事を祈りながら次の話を書いていこうと思います。
説明 | ||
どうも、シンジです。 遅くなりましたが第三話をお楽しみください。 |
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コメント | ||
一刀の成長に期待します。(ブックマン) バットエンドなしですか。楽しみです!(キラ・リョウ) 最後も気になるがそれよりも徐庶が何者なのかが気になって仕方ない。(トーヤ) 多分一刀が刺したんだろうね(ヒトヤ) |
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