マイ「艦これ」「みほ3ん」EX回:第4話<策略とお祭り広場> |
「私が寛代の代わりに病人の振りをする」
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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)
EX回:第4話(改2)<策略とお祭り広場>
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ブルネイ泊地の港湾部を順調に進む内火艇。
気温は高いし日差しも強い。だが、やはりここは南国だ。湿気は少なくて過ごし易そうだと私は思った。
「司令」
いきなり隣に技術参謀が座った。
(マズい、小言でも言われるのか?)
思わず緊張した。
しかも彼女は周りを伺うようにして若干、身を寄せて来たので驚いた。
「まさか、あの……『南国式のご挨拶』ですか?」
どぎまぎしながら思わせぶりな台詞を言う私。
「なに誤解してんの? バカ!」
やや抑え気味ながら素っ頓狂な声を出した彼女は私の脇腹を小突く。
「痛ッ……失礼しました!」
思わず私も声を潜めた。
(あはは……相手は曲がりなりにも軍令部の参謀だぞ)
私は内心、苦笑した。
彼女は艦娘ながら参謀だ。とても冗談の通用する相手ではない。そもそも並みの『女性』では無いのだ。
多少は手加減してくれたようだったが……それでも一瞬、私は自分の呼吸が止まるほど痛かった。
(イタタ……最近、運動不足だからな)
そんな私の悶絶をよそに彼女は小声で話を続ける。
「あの寛代に偵察させるのは無理だ。それに、ここの様子は普通じゃないだろう?」
「はい」
……やはり彼女も察していたか。
船内に居る他のブルネイの艦娘たちを警戒しながら参謀は言う。
「私が寛代の代わりに病人の振りをする。良いな?」
(案の定、仕切ってきたか)
立場上、技術屋の血が騒いでるんじゃないか? とも思ったが上官でもあるし無駄な抵抗はすまい。
「では、お願いします」
「フッ、任せな」
得意そうな笑みを浮かべた彼女。艦娘とはいえ本部の参謀だ。男勝りだな。
私は彼女と反対側に座っていた祥高さんに声をかける。
「祥高さん、寛代に命令を」
「はい」
当然、私たちのやり取りを聞いていた彼女は直ぐに頷いた。秘書艦は普段は物静かだ。つい反対側に座っている参謀と比べてしまうな。
「あ?」
……ふと殺気を感じた。
船の舳先(へさき)を見ると、そこから海面を覗き込んでいた金剛が恨めしそうに振り返っている。
唇をかんで……何で、お前がそんな顔してンだよ?
(別にイチャついているわけじゃないからな。だいたい、お前は色恋関連の感度が高過ぎだよ)
その鬼瓦のような表情に具合が悪いと思ったのだろう。比叡が近づく。
「お姉さま……」
金剛の背中を静かに撫でている。
「ああ、美しい姉妹愛ではないか!」
私はワザとらしく彼女たち姉妹に声をかけた。その一言で船内に漂っていた緊迫した空気が薄れた。何人かの艦娘は微笑んでいた。
祥高さんは寛代に命令変更を伝えに行くのかな? と思っていたら彼女は、その場で考え込むような仕草をしている。すると、ちょっと間があって前の幌の下に座っていた寛代が首だけ振り返るようにして軽く頷いた。
(……あ、そうか)
寛代は通信に特化した艦娘だ。そして秘書艦である祥高さんも司令部だけが使う特殊な緊急周波数を持っている。当然ブルネイの艦娘たちには通じない。改めて艦娘は便利だなと思った。
すると黙って腕組をしていた技術参謀も頷いている。
(なるほど、彼女も同じ周波数を持っているのか……本部の参謀だから当然か)
「あーあ。こんなリゾートみたいなところで演習するよりゴロゴロしたいわあぁ」
龍田さんの声。彼女は船べりから青い海面を片手で撫でている。時おり雫を垂らした手を上げて、きらきらと光る雫を見つめている。
相変わらずマイペースな龍田さんだが……ふと私には彼女はブルネイの艦娘たちが今の極秘のやり取りに気付かないよう意図的に注意を逸らしたのかな? ……とも感じるのだった。
彼女は軽巡で駆逐艦の作戦指揮を執ることもある立場だ。特殊な周波数を持っている可能性は十分にある。
その一方で赤城さんは、まだ煎餅みたいなのボリボリ真顔で食べている。
(それは美保から持ってきたのか?)
つい、どうでもイイことを考えてしまう。
(やれやれ)
この落差と言うか艦娘たちの個性の強さは独特だ。最近は慣れたが美保へ着任した当初は、この雰囲気で妙に疲れたことを思い出した。
私が物欲しそうに見えたのだろう。赤城さんは急に私の方へ袋を突き出して言った。
「ひれい(司令)も食べまふ?」
「いや、良い」
私は苦笑して手を振った。
「うふ」
不思議な笑顔を見せて、再びブルネイの埠頭に向き直る彼女。
最近、赤城さんって、ちょっと性格が変わったような気がするが……今まで猫かぶってたのだろうか?
(でも、ざっくばらんな赤城さんの方が良いけどね)
改めて後ろのほうを振り返ると静かな艦娘……夕張さんも居たな。黙って本を読んでいるから全然、分からなかった。
よく見ると違和感……
「あれ? メガネかけているのか?」
そんな私の台詞に気付いた彼女は顔を上げた。
「最近、視力が落ちましたよ」
「そりゃ、ご愁傷様」
……てか、彼女の場合、職務に加えて凝り性だからな。
「開発も、ほどほどにね」
「ハァイ」
……軽いな。まぁ良い。これが『彼女』だ。
船べりでは金剛だけでなく夕立も完全にダウンしている。せっかくの金髪が……オイオイ青い海面に流し素麺(そうめん)みたいに流れているぞ!
私は立ち上がると彼女に近づく。流れる水面(みなも)と金髪素麺のコントラストが綺麗だなぁ。
「ぼいぽい……」
弱々しく顔を上げる夕立。
「まるで南国の貞子だな」
「貞子って誰? 彼女?」
「いや……」
説明し難いな。
元気な艦娘……日向や祥高さんたちは機内でも、ずっと起きていたけど物静かだった。
(大人しい艦娘たちの方が環境の変化に強いのかな?)
そんなことを思っていたら、意外な反応があった。
「ブイ!」
振り返りながらサインを作る青葉さん。
(あ、こいつは例外か)
しかも性懲りもなく隠しカメラで港湾部を撮り続けている。
(……おいおい、そんな格好をしたら五月雨にバレるって!)
案の定、運転台に居る五月雨は少し不思議そうな顔をしてチラチラこちらを見ている。
(焦るなあ)
青葉さん……五月雨に注意されても諦めない根性はさすがプロだ。
ほどなくして内火艇はブルネイ泊地の桟橋に到着した。
そこから少し離れた場所……岸壁から見える小高い丘のような場所には屋台や櫓(やぐら)が立ち並んでいる。既に、お祭りは始まっているようだ。
「お祭り……か」
私は呟いた。
「そのようですね」
祥高さんも応える。
艦娘だけでなく現地の人もかなり出歩いている。今日はイベントで基地施設の主要部分を外部の一般の人たちにも開放しているようだ。
美保のように埋立地でセコセコやるのとは違う。この敷地の広さとカラッとした気候。
「良いなあ、ここでは何でも出来そうだ」
思わず本音が漏れる。
内火艇はエンジン出力を落としながら接岸する。
岸で待機していた他のブルネイの艦娘たちがロープを取り船体を引き寄せながらテキパキと固定作業を進める。
ブルネイのスタッフの艦娘……ほとんど量産型だろう。
「たくさん居るな」
運転台から、どこかと交信していた五月雨。彼女は船体のエンジンが止まったのを確認しながら桟橋の艦娘に近寄って何か伝達していた。
何度か頷いた彼女は私たちに向き直ると改めて笑顔になって案内をする。
「皆さん、ようこそブルネイへ! 足元に気をつけて、どうぞ……」
「ありがとう」
それを受けて美保のメンバーたちも上陸を始める。
改めて埠頭や広場の様子を見る。
屋台に人ごみ……チラホラと艦娘の姿も見える。
そして現地ブルネイの憲兵さん……ブルネイ軍ではなく帝国陸軍の連中の姿も確認した。私服でも、ちゃんと分かるぞ。
「ここなら、もうオッケーですよね?」
青葉さんは五月雨に半ば強引に確認をしている。
「……あ、はい」
ちょっと目を丸くしたような彼女。
その返事を待つ間もなく青葉さんは本来のカメラを取り出して直ぐに、あちこち連写し始める。
「イベントですよ。被写体だらけですねぇ」
その様子に圧倒されつつも改めて無線で通信をしている五月雨。
直ぐに彼女は私に向き直って言った。
「私たちの提督が皆様と直ぐに、お会いになるそうです。数分で参りますので……申し訳ありませんが、ここで、しばらくお待ちください」
「ああ」
私はハンケチで汗を拭いながら応えた。
直ぐに彼女は寛代を見る。
「病気の方は私が衛生隊までご案内致しますので、こちらへどうぞ」
すると技術参謀がワザとらしく表情を歪めて言った。
「この子は調子が戻ったらしい。スマンが私がちょっと……」
意表をつく展開に、驚いたような五月雨。
私は取り成す。
「手間をかけるが……頼む」
「は……はい」
五月雨は慌てたように私たちに敬礼をした。技術参謀の階級章を見れば、彼女がかなりの上官だと言うことくらいは五月雨も分かるだろう。
「では……こちらに、お願いします」
「ああ……」
わざとらしく病人の振りをする技術参謀。意味ありげに私と祥高さんにウインクをした彼女は五月雨の後を軽やかに付いて行った。
(おいおい参謀様、それじゃヤバイって……もっと病人らしく歩いて下さいよ)
それを見ていた夕張さんも腰に手を当てて呆れたように言った。
「あれで病人? 笑っちゃうわね」
「本当ねぇ」
いつの間に来ていた龍田さんも同意する。
「あの人も、とっつき易いのか難しいのか未だによく分からないな」
私も本音が出た。
「参謀なんて、どうせ奇人変人が多いのよ」
龍田さん、それはストレート過ぎる意見だよ。
「この敷地内のどこかで突然、行方不明になったりして」
青葉さんも怖いことを言う。
日向が近寄ってきて言う。
「司令、私たちは本当に遭難者と思われているか?」
「多分……」
私は軽く腕を組んで応える。
赤城さんも不安そうに、こちらを見ているので私は言った。
「あの五月雨も何度も司令部と交信していたようだが、もし仮に疑われていたら直ぐに憲兵が動くだろう」
この言葉に祥高さんも頷く。私は続ける。
「だが監視も付けず、この場で我々に『待機』ということだ。今のところ問題ないだろう」
日向も、ようやく頷いた。
「そうだな」
「でも、ちょっとは遭難者っぽくしたほうが良いでしょうかね?」
カメラ片手に青葉さんがニタニタして言う。
私は応える。
「そこがまだ分からない。違和感は残るとしても最初の予定通り『模擬演習』という羽目になるかも知れない」
「えぇ?」
声を立てたのは比叡。
「あの嵐で大変だった上に直ぐに演習なんて無謀です!」
彼女は、まだ体調の悪そうな金剛を庇っている。
……そういえば金剛と比叡、それに夕立は、いつの間にか近くの簡易テーブルのイスに腰かけていた。
その隣の赤城さんも頷く。
「確かに。出来れば少し休みたいです」
君の場合は食べ過ぎだって。
「やれやれ……」
私は半ば呆れるようにして金剛姉妹と夕立が座っている丸テーブルの隣のテーブルに腰をかけた。
比叡は、相変わらず金剛の背中を擦っている。
「お姉様、しっかり」
「who next over ……」
金剛がテーブルに突っ伏したまま呟く。
「ポッ……」
これは夕立。金髪が爆発して鬼婆のようになっている。
直ぐ側のテーブルでダウンしている金剛と夕立は、このまま様子を見るしかない。
私は他の美保の艦娘たちに通信可能な範囲での一時解散を命じた。ブルネイの司令に挨拶をするとしても最初は私とここに居る艦娘くらいで十分だろう。
「では」
「遠慮なく……」
美保の艦娘たちは直ぐに、それぞれが適当なグループになって祭りの喧騒の中へ散っていった。
周りは屋台が一杯だ。よく見ると明らかに、そこに立って調理したり売り子をしているのは艦娘たちだ。
艦娘の量産化がブルネイで実用化されたと聞いてはいたが、ここにいる艦娘のほとんどが量産型なのだろうか?
(……それにしては皆、調理の手つきが良いな)
「こういう技能って後付けで覚えるのだろうか?」
思わず呟く。
私はつい一昨々日(さきおととい)の境港での、お盆祭りを思い出す。
「お腹が空きましたね」
他の艦娘たちとは違って、何処にも行かず、この場に残った赤城さんがボソッと呟く。もしかして燃料不足か?
「うん、確かに良い匂いだな」
時計を見ると、お腹が空く時間になっていた。
何気なくポケットをまさぐった私はハッとした。
「しまった!」
「?」
その場に居る艦娘たちが不思議そうな顔をする。
「私としたことが……お小遣い持ってきてないじゃないか?」
そういえば会計も兼任している祥高さんは寛代と行ってしまった。ここにはダウンした艦娘二人と比叡に赤城さんだけ。
「残念……」
赤城さんが妙に膨れっ面をする。
「スマン」
頭に手をやる私。
「毎日、司令部に詰めてるとな……金銭感覚が麻痺するんだよ」
言い訳のように呟く私。
「大丈夫です、我慢します」
ちょっと抑えたように言う赤城さん。怖い。
(いや、我慢と言われても……)
妙なプレッシャーを感じながら彼女を見て……膨れた赤城さんも可愛いなと、変なことを思った。
ちょっと意気消沈した私たちは、ぼんやりと景色を眺めるだけだ。
しかし暑い。季節は常夏だろうか? そもそも、ここの通貨って何だろうか? 円(yen)なのか?
あれこれ、取り留めのないことを考える。龍田さんじゃないが、こういう陽気だと本当にゴロゴロして居たくなるよな。
私は帽子を脱いで蒼い空を見上げた。やはり美保湾とは空の青さが違う。雲は湿気をたくさん含んでいそうだ。ああいうのが降り出すと大変だろうな。
少し風が出てきた。椰子の木がサワサワと音を立てていた。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。
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美保の司令たちは違和感を覚えつつも現地に「上陸」した。そこでは盛大な、お祭りが開催されていた。 | ||
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