命一家12話〜まったり
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命一家12話

 

【命】

 

 私の娘、みきが今可愛いことをしている。不機嫌そうな表情を浮かべながら

両頬をぷくーっと膨らませているのだ。まるでエサを頬袋いっぱいにした

ハムスターのように。

 

 ぷにぷに

 

「んーんー!!」

「何を怒ってるの?」

 

「だって…」

 

 今日はいつも遊んでる子たちは両親と旅行に出かけていて、萌黄や瞳魅さんも

急な仕事が入って留守にしていた。マナカちゃんは学校行き始めてからは

慣れない人間関係に疲れて寝ちゃっていて私とみきだけお留守番をしている形に

なっている。

 

「どこか遊びにいきたーい!」

「そうね〜」

 

 こんなに声を大きくしてねだるのって珍しい。それだけ知らない間にみきのこと

構っていなかったかもしれないと思い、私は反省した。

 

「じゃあ、どこか遊びにいく?」

 

 私は俯き気味のみきの顔を覗き込みながら聞くと。

 

「いいの!?」

 

 目を輝かせながら私の言葉に食いついてきて、私は笑顔を浮かべて答えた。

 

「今日はみきの行きたいところに連れていってあげる」

 

「じゃあね、じゃあね〜」

 

 言いながらみきは考える仕草をしながら首を傾げる。

その姿を見ながら私は可愛いなぁと思っていると突然みきが予想を上回ることを

言ってきた。

 

「ねぇ、ママ。いつだか忘れたけど前みたいに空高いとこでジャンプしながら

お散歩しない」

「え?」

 

 あれはみきが赤ん坊の時に泣き止まないからそういうことをした覚えはあるけど。

みきはそのことを覚えていたということだろうか。

 

「空のお散歩」

「空は歩けないよ〜。…ジャンプならできるけど」

 

 まぁ、たまにはいいか。わざわざ空を見ながら歩いている人なんていないだろうし。

連休続きの今は旅行に行ってる家族も多いだろうし。

 

「…わかった。ただ、今日は特別だからね」

「ありがとう、命ママ〜!」

 

 着替えと水筒やお弁当をまとめて家を出ると。辺りに人がいないのを確認してから

私はみきを抱えて軽く飛んで屋根の上に乗る。青空が広がり空気が澄んでいて気持ちいい。

 

「すごーい!きれーい!」

 

 抱えられているみきは高い所にも動じずに嬉しそうにはしゃいでいた。

普段とは違う景色を見て興奮しているのだろう。

 

「喜ぶのはいいけど、あまり動かないでね。危ないから」

「うん!」

 

 赤ん坊の頃はすごく怖がっていたのに、そのことはすっかり忘れているように

喜んでいる。私もその場にずっと留まらずに足場になりそうな場所にポンポン跳び乗って

進んでいく。

 

「わぁ、風が気持ちいい」

 

 徐々に速度を上げて木々に跳び移ったりして時折動物たちと目を合わせたりしながら

跳んでいるといつもお世話になっている病院兼、研究室の場所を通り過ぎると

外の掃除をしていた助手さんと目が合って私とみきが小さく手を振ってすぐに

その場から去った。勢いがついていたのと足場が小さいからわざわざ止まると

危ないからだ。

 

 今目指しているのは昔私が住んでいた場所。自然に囲まれて綺麗な花や昆虫に

小動物に囲まれる夢のような秘密の場所があった。

 

 ずっと一人だった時の私にとってお父さんとその場所が貴重な癒しの場所だったから。

 

トンッ

 

 思い出しているうちに目的の場所について一息吐いた。さすがにこの距離を

ずっと跳ねるのは疲れる。力を抑えてその場に座り込むとみきは嬉しそうに周りを

見ていた。すると私たちの気配に気付いたのか野兎の子供がぴょこっと顔を出して

私の匂いを嗅ぎながら擦り寄ってくる。

 

「あ〜、ママいいなぁ〜」

 

 そう言ってみきが近寄ると小さな兎は警戒して私とみきとの距離を少し空ける。

すると逃げられたみきはショックを受けていた。

 

「なんで〜」

「みきが元気良すぎるから怖いんじゃない?」

 

「元気いいのはいいことだよ〜!」

 

 その通りだけど、知らない野生動物からしたら怖いのかもしれない。

私が手を伸ばして近寄ってきた子兎を優しく抱えてみきに渡す。

 

「優しく抱っこしてみて」

「う、うん…」

 

 言われた通りに優しく抱えて、そっと顔を近づけてもふもふを感じているみき。

そのみきに対して安心しきっている子兎の様子が可愛すぎてジッと見ていた。

 

 辺りも静かでしばらく呆けていると、手入れしてなくて花や草が枯れていたり

汚くなってる部分だけ軽く手を加えると昔見ていた場所のように綺麗になった。

 

 少し汗をかいて手入れをしている内にみきの周りには小動物に囲まれて幸せそうな

顔をしていた。

 

「ママ〜、可愛い子いっぱい〜」

「よかったね」

 

 みきの笑顔に釣られて私も笑顔で返してから、みきの傍に近寄った。

久しぶりに人との関係から離れた場所でピクニックに行ってる気分でいて

いつの間にか昼になっていたから花に囲まれた場所でお弁当を広げて自然を満喫した。

 

 虫がそれなりに好きなみきは食事の後、昆虫観察を始めて一緒にみきに付き合っている

といつの間にか空が赤みを差してきて時計を見るとすっかりいい時間になっていた。

 

「そろそろ帰ろうか」

「えぇ〜。もうそんな時間?」

 

「みんな帰ってきそうだし、マナカちゃんも心配するだろうから」

「は〜い。みんな、ばいばい〜」

 

 みきの言葉に小動物たちが集まってきて見送ってくれるような眼差しを向けてくれた。

今日は娘と動物たちに癒された一日になって私も嬉しかった。

 

「ねぇ、ママ」

「ん?」

 

「お菓子作って萌黄ママたちにあげたい。いつもお仕事がんばってるから」

「うん、そうだね」

 

 みきの手を握って私は頷いた。何かあるかもと財布を持ってきてよかった。

急いで買って帰ればそれくらいの時間は取れそうだったから、人目のつかない場所までは

力を使って全力で駆けた。

 その間、みきはまるでジェットコースターみたいってはしゃいでいたから

私もしっかりとみきを抱えて走り続けた。

 

 住宅が見えるころには私も普段通りの姿に戻して二人で手を繋ぎながら近くの

スーパーによって必要な材料を買っていく。そして家に戻ると私達のお菓子作りを

気になって見ていたマナカちゃんも加わり3人でお喋りしながら作る。

 

 そういう時間もまた自然の中にいた時と違う楽しさがあった。

出来上がった頃にちょうど萌黄たちが帰ってきて疲れた体に手作りクッキーと

紅茶をいただくと。

 

「くぅ〜、沁みる〜〜〜」

「うん、美味いね。特に可愛い子3人で作ったとなるとなおさら」

 

「二人ともオヤジくさ〜い」

 

 萌黄と瞳魅さんの反応にマナカちゃんが冷たい眼差しを向けながら言い放った。

その間に私は夜のごはんの準備に取り掛かった。

 

 みきはというと、すっかり疲れきって帰ってきた二人の間に挟まって眠っていた。

その幸せそうな寝顔に仕事で疲れた萌黄と瞳魅さんも喜んでいた。

 

「命ちゃん、今日おでかけしてきたんだって?」

「はい。昔私が遊んでいた場所で」

 

「へぇ、今度その場所にみんなで遊びにいこうよ。まぁ、時間ができたらだけど」

 

 萌黄との話の後に瞳魅さんがみきの頬をぷにぷに突きながらそう言うと

私もみんなで行けたら楽しそうだなと想像した。

 

「そうですね。今度はみんなで行きたいです」

 

 そんな私の顔を見て一瞬驚く3人。その後、釣られたように笑みを浮かべて

約束をした。また楽しみが一つ増えて今日という日が幸せづくしの一日になって

連れ出してくれたみきに感謝をした私なのだった。

 

続。

 

説明
ヤマもオチも意味もない。あるのはほのぼのと癒しだけです(*´∇`*)今回はそんな二人の母娘のお話♪
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オリジナル 命一家 ほのぼの 母娘 ピクニック 

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