僕の足で走れますように
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「もし、願いが叶うとしたら…何をお願いする?」

 

 

誰かにそう聞かれた。

それが誰なのか、僕はもう思い出せない―――…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よー!」

「あぁ、おはよう晃くん」

 

今日は天気が良い日だ。

暖かい風が宙を舞っている。

まだ桜が少し残っていて、僕らはそれが落ちるのを惜しみながら見送っていった。

 

僕らが教室に入ろうとした時点で、もう既に7人人がいた。

まだクラスに溶け込めてない人もいるし、もう仲良くなって一緒に喋ってる人もいる。

同じ中学校同士で喋ってる人もいた。

 

僕と晃くんは中学校は同じじゃなかった。

ただ、中学校の時に陸上部に入っていて、晃くんも隣の学校の陸上部だったんだ。

話しかけたのは晃くんからだった。

始めの方は、髪の毛は金色だしピアスの穴は開いてるしで僕はビクビクしていた。

でも、話しているウチに、見た目ほど怖い人じゃないと思い始めた。

どっちかっていうと、強気だけど人の事をちゃんと考えてくれる、お兄さんみたいな人だ。

だから、僕が晃くんと打ち解けるのに時間はそう必要じゃなかった。

 

「なぁ今日理科あるよなッ!?」

「うぇッ?あ、うん、一時限目理科だよ、確か…」

「うわッやっちまったぁ!忘れたッ!!」

「ええッ!り、理科の先生教科書忘れるとすっごく怒るよね!?」

「うわーうわー!違うんだぜ!?鞄の上に教科書おいといたんだぜ!?なのに…うわわッ」

 

教室についていた。

鞄の教科書を机に移そうとした時に、鞄に教科書が入っていない事に気付いたんだろう。

 

うちの学校の理科の先生はとても怖い人だった。

一度クラスの人が教科書を忘れた時、始めの10分はその子一人だけ叱られる時間にあてられた事があったからだ。

それ以来教科書を忘れる人はあまり居なくなったけど…。

それでも忘れてしまう人はいる。

今の晃くんみたいに。

 

「ちょい六組に借りに行くわ!!お前もついて来い!」

「え、あッう、うん」

 

六組に同じ中学校だった人がいるらしい。

以前数学の教科書を忘れた時もその人に借りに行っていた記憶がある。

もうあと1分くらいでチャイムが鳴ってしまう。

僕らは走って隣の教室へ走った。

 

「健志ー!」

「なんだよ晃ーまた教科書かよー?」

「理科!」

 

パンッと手を叩いて晃くんは健志くんに教科書を借りに行く。

健志くんは優しそうな人だ。

なんだかんだ言って晃くんに教科書を貸してあげた。

 

 

………。

この学校には僕と同じ中学校の人はいない。

家から遠い距離だから、こっちの方に来る人もいない。

だから、たまに中学校の友達と一緒にいる人を見ると、羨ましくなる時がある。

 

そんな気持ちで晃くんと健志くんを見ていると、どこからか視線を感じた。

それは、扉のすぐ目の前の席に座っている女の子からだった。

長く伸びた髪を後ろの高い所で結んでいる女の子が、僕を見ている。

その子に気付くと、つい目が合ってしまった。

…ただ、本当に僕を見ているのか分からないから、声をかける事が出来なかった。

そもそも初めて見る子だから、…多分もし僕を見ているのだとしても、珍しい子だ、と思っている程度なんだろう。

 

「おー待たせた!教室戻ろうぜ!チャイム鳴っちます!」

 

理科の教科書を借り終えた晃くんが手をヒラヒラとしながら戻ってくる。

僕はもう一度さっきの女の子の方を見た。

すると、もうその子はこっちを見ていなかった。

多分、気のせいだったんだろう。

多分…僕の見間違いなんだと思う。

 

 

 

 

 

「みつけた」

 

 

 

 

 

置き去りにした教室の中、そんな声がチャイムの音で掻き消された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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続きはサイトにてどうぞ!

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実際にこんな人はいないと思います(笑)
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