ポケモンDPt 時空神風伝 32 |
ミオジムのトウガン
鋼鉄島でのトレーナー修行は終わった。
ゲンとジンダイにまたあおうといわれ、クウヤは二人と別れ鋼鉄島を離れミオシティに戻ってきた。
すべては、ジムリーダーであるトウガンに勝つために。
「また、会いたいよな・・・ゲンさんにも、ジンダイさんにも・・・。
不思議な二人だったな」
ゲンのことももちろんだが、クウヤが気になっていたのはジンダイだった。
伝説のポケモンを3体も自分のポケモンとして使いこなし、フロンティアブレーンという存在で、世界を旅する冒険家でもある男。
その存在感に、クウヤはどこか他人じゃないような感覚におそわれていた。
その気持ちの正体は今はわからない、だから次会ったときにわかりたい。
そのためにも、クウヤはここで立ち止まってなどいられない。
シンオウのジムを制覇して、さらに強くなってあの人に再会して、あの感覚や気持ちの正体を確かめるために。
その目的を果たすにはまず、目の前の関門を突破しなければならない。
鋼鉄島での修行の成果を、このジムでみせてかつ。
「・・・よし、二人に恥ずかしくないようにするぞ!」
自分の頬をたたいて気合いを入れ直すとクウヤはミオジムの扉に手をかけ、そしてその扉を勢いよくあけた。
「たのもーっ!
ポケモンジムに挑戦にきたぜー!」
「おお、待ってたぞ!」
ジムに入ってきたクウヤを、トウガンは大笑いで迎えた。
「クウヤくん、だったな?」
「うん!」
「改めて、俺がミオシティジムのリーダー、トウガンだ。
早速ジム戦のために奥のバトルフィールドへ向かうとするか!」
「おう!」
トウガンに案内され、クウヤはジムの奥にあるというバトルフィールドへ向かうため鋼鉄の廊下を歩いていた。
その途中でトウガンはクウヤと話をする。
「あのジュンって少年から聞いたぞ、君はずっと鋼鉄島で修行していたそうだな。」
「ああ、鋼鉄島でゲンさんって人に鍛えられたよ!」
「ゲンか・・・あの島にきていたのだな。
どうだ、あの男は頼りになるだろう。」
「うん、本当に色々教わった・・・おれのポケモンも強くなった。
だから・・・トウガンのおっちゃんにも負けないぜ!」
クウヤはちょっと生意気っぽく笑ってみせると、その顔を見たトウガンもやり返すかのように不適な笑みを浮かべた。
「生意気を言うな。
だがそれくらいの相手じゃないと、こちらもおもしろくはない。
・・・俺の期待、裏切るなよ?」
「おう!」
そんな話をしている間に、いつの間にかバトルフィールドに到着していた。
「さぁ、バトルフィールドについたぜ・・・始めるとしようか」
「ああ!」
そうして、二人は所定の位置に着く。
ルールは3体3の勝ち抜き戦、交代はチャレンジャーのみ許される。
「知っているとは思うが、俺のポケモンはみな鋼タイプだ!
この強靱な防御力と攻撃力、打ち破れるか!」
「破ってみせるぜ!」
試合開始、という合図とともに、クウヤもトウガンも一番手を出した。
「ドーミラー!」
「トーム!」
トウガンはドーミラー、クウヤはトームを出した。
先手をとったのは、スピードに優れたトームだった。
「トーム、ほうでん!」
「ドーミラー、まもる!」
激しいほうでんをドーミラーはまもるという技で防御し、ラスターカノンをトームに向かって放ちダメージを与える。
相性は悪かったので大したことはなかったトームは、体制を立て直してシャドーボールを放って攻撃した。
その一撃に何とか耐えたドーミラーはシャドーボールを打ち返してトームに大きなダメージを与えた後でじんつうりきを追撃で放つ。
「あやしいひかり!」
クウヤはそこでトームに、あやしいひかりを指示してドーミラーを惑わせる。
彼のねらいは的中し、ドーミラーは我を忘れて自分に対し攻撃を続ける。
「トーム、10まんボルト!」
さらに10まんボルトを打ち込んでドーミラーにダメージを与え、あやしいかぜを浴びせようとするトーム。
だが、そのあやしいかぜは、まもるによって防御された。
「まさか、混乱が解けた!?
トームもういちど・・・」
「さいみんじゅつ!」
トームがあやしいひかりを放つより早く、ドーミラーがさいみんじゅつを放ちトームを眠らせてしまった。
「と、トーム!」
「ドーミラー、シャドーボール!」
眠ってしまったトームに、ドーミラーは連続でシャドーボールを打ち込みそのままトームを戦闘不能にしてしまった。
「トームッ」
「ロトム戦闘不能、ドーミラーの勝ち!」
ドーミラーはくるくる周り、勝利の喜びを表現した。
「よくがんばったな、あとはおれ達にまかせてくれ!」
クウヤはトームを戻すと、今度は別のポケモンを出した。
「おまえの出番だ、ヒーコ!」
次にでたのは、炎タイプのヒーコ。
今回のバトルの主軸として育てていたポケモンだ。
「ドーミラー、じんつうりき!」
「かえんぐるまでかわして、そのまま攻撃!」
ドーミラーはかくとうタイプをもつヒーコに有利なエスパー技で攻撃しようとしたが、ヒーコはかえんぐるまでそれを回避し、そのままドーミラーを攻撃した。
そのスピードと攻撃力に、トウガンは驚くも、ドーミラーに指示を出し続けた。
「むっ・・・さいみんじゅつ!」
「ほのおのうずだ!」
今度は大丈夫だと、ヒーコはさいみんじゅつをほのおのうずで防ぎ、その火力を利用してドーミラーを攻撃し、かえんほうしゃの追撃を浴びせる。
「ドーミラー!」
「とどめの、マッハパン!」
最後は猛スピードで突っ込んできたマッハパンチによって、ドーミラーは壁にたたきつけられて戦闘不能になった。
「ドーミラー戦闘不能、ゴウカザルの勝ち!」
「うしっ!」
「ドーミラーご苦労、戻って休め!」
トウガンはドーミラーを戻すと、そのまま別のポケモンが入ったボールを手に取りそれを投げる。
「ハガネールいけ!」
ボールから出てきた大型のてつへびポケモンはヒーコを見下ろす。
だがヒーコは決して怯むことはなくにらみ返し、頭の炎をヒートアップさせて闘志をむき出しにする。
「ハガネール、かみくだく攻撃!」
「かわせ!」
かみくだく攻撃を回避したヒーコはかえんほうしゃでハガネールを攻撃、それを受けたハガネールはアイアンテールで反撃しさらにすなじごくにはめて攻撃を続ける。
「どうだ、すなあらしにとらわれて動けないだろう!」
「このくらいへっちゃらだよな、ヒーコ、かえんぐるま!」
クウヤの声に反応してヒーコはかえんぐるまを放ちすなじごくを振り払いそこから脱出、いわくだきでハガネールの脳天をついた。
その一撃にハガネールはなんとか耐え、ストーンエッジで反撃しヒーコを攻撃し、さらにアイアンテールで追撃した。
「かえんほうしゃ!」
「すなじごく!」
かえんほうしゃとすなじごくが衝突して弾け飛ぶ。
その直後にアイアンテールとマッハパンチが繰り出されたが、それもまた相殺しあって弾け飛んだ。
「やっぱりなかなか倒れねぇや!」
「さきほどから技の威力は互角・・・というところだな」
「でもそれも、教わってたから大丈夫だ!
ヒーコ、れんぞくでいわくだき攻撃!」
ヒーコはクウヤの指示にあわせて、ハガネールにいわくだき攻撃を次々にヒットさせていく。
ハガネールはそれを受けても耐え抜き、アイアンテールで反撃する。
だがヒーコはいわくだきで攻撃を続けた。
「ハガネールの鉄壁には、そんなちまちました攻撃は通じないぞ!
ハガネール、ストーンエッジだ!」
「よしヒーコ、かわしてかえんぐるまだ!」
ストーンエッジを回避しながらのかえんぐるまはハガネールの顎にヒットした。
そのダメージは、先ほどまでの攻撃よりずっとずっと強かった。
「そうか、いわくだきには相手の防御力をさげる効果がある!」
「その通り!
修行の成果がでたぜ!」
いわくだきの効果により、防御が下がった。
そこに突き刺さる、効果抜群の炎の物理攻撃。
これはさすがのハガネールも耐えきることができず、戦闘不能になった。
「ハガネール戦闘不能、ゴウカザルの勝ち!」
「よっしゃ、やったぜヒーコ!」
クウヤは勝利を喜ぶ。
一方トウガンはハガネールにおつかれ、と声をかけてボールに戻す。
「ここまでの連戦をかいくぐるとは、そのゴウカザルは確かに強い!
相性以上のものがあるな!」
「へ、あったりまえだよ!」
「だが・・・先程のハガネールとの戦いでも消耗しているはずだ。
このまま3体目もうまくいくと思うか?」
「・・・」
トウガンにいわれて、クウヤはヒーコをみて確認した。
「まだいけるか、ヒーコ!」
「ゴォォゥ!」
「・・・このまま、続けるぜ!」
まだ戦う気でいるヒーコをみて、クウヤは頷くとトウガンにそう返事を返す。
するとトウガンはあの不適な笑みをもう一度浮かべる。
「やる気満々か・・・なら全力で答えてやる。
いけ、トリデプス!」
トウガンが3体目として出したのは、彼のエースポケモンであるトリデプスだった。
トリデプスを倒せば、このジム戦に勝利できる。
「かえんほうしゃ、いっけー!」
ヒーコは最大火力のかえんほうしゃを放ってトリデプスを攻撃した。
炎はトリデプスを閉じこめる。
「やったぜ!」
「確かにそのかえんほうしゃは相当な火力だな。
だが、トリデプスの防御はそれではやぶれない・・・まだ隠された爪というものがあるからな!」
「!?」
トウガンはトリデプスに大声で技の指示を出した。
「トリデプス、メタルバーストだ!」
彼の声と同時に、トリデプスのその大きな顔が一気に光り出し、炎を巻き込んで強い光を放ち、その攻撃を反射した。
その攻撃に対しクウヤはいやな予感を察してげっ、となる。
「やべぇヒーコ、戻れ!」
その一撃が命中する前にクウヤはすばやくヒーコをボールに戻し、戦闘不能を回避する。
メタルバーストは空振りだったが、その力の余波がとんできて、クウヤも危うく吹っ飛ばされそうになる。
それだけでも、あの技の破壊力がわかる。
「はっはっはっはっは、いい判断だったな!」
「ふぃー、あっぶね・・・なんだよあの技、とんでもねぇパワーだぜ!」
「メタルバースト、はじめてみただろう!
自分が受けた技を倍の威力で弾き返す鋼の技だ!」
トリデプスのパワーを目の当たりにしたクウヤはすぅ、と一呼吸すると目をあけてトリデプスをみた。
「あのときゲンさんからはポケモンバトルの指導を受けただけじゃない・・・。
どんなものが相手でも、絶対に怯まないし、なにがあってもうろたえず受け入れて柔軟に対応しろって、教えてもらった・・・」
「・・・」
「だから、おれは目をそらさない!
いや・・・最初からそらすつもりなんて、ない!」
そう言いながらクウヤは別のモンスターボールを手に取り、それを投げて次のポケモンを出した。
「いっけ、イーブ!」
「シャアワァ!」
水タイプの力を得て進化した、イーブだった。
「水タイプのシャワーズか・・・いいだろう!
トリデプス、がんせきふうじ!」
「イーブ、でんこうせっかでかわして、めざめるパワー!」
クウヤの指示にあわせて、イーブはでんこうせっかのスピードを利用してがんせきふうじを回避し、めざめるパワーを打ち込むイーブ。
だがその攻撃はトリデプスの顔面にヒットしたため、大したダメージにはならない。
反撃で飛んできたラスターカノンに耐えたイーブは今度はシャドーボールを放ったがそれも顔面で受け止められてしまった。
「やっぱどうやっても正面から防御されちまうか・・・」
「トリデプス、もう一度がんせきふうじ!」
「おっとやべぇ!
イーブ、みずのはどうでぶっとばせ!」
みずのはどうで一部の岩石は相殺できたが、一部はイーブにヒットしてダメージを与え、そこにまたラスターカノンがヒットする。
体勢を立て直して、もう一度みずのはどうを放つが、今度はまもるで防御された。
「・・・よし、こうなったら!
イーブ、連続でみずのはどう!」
クウヤはイーブに、れんぞくでみずのはどうを放つ。
「なんのつもりかはしらんが・・・相性のいい技を放ってトリデプスを追いつめても無駄だ、あの技で打ち返す!」
トウガンはトリデプスをみて、頃合を測り、技を指示した。
「メタルバースト!」
みずのはどうの攻撃力を相乗させたメタルバーストが、巨大な光となってバトルフィールドを包み込む。
それによりバトルフィールドは、がれきに埋もれた。
そんなバトルフィールドをみてトウガンが勝利を確信したときだった。
「うずしお!」
「!?」
クウヤはそこで突然、うずしおの指示を出した。
するとトリデプスの足下が水の渦に包まれ、トリデプスの動きを封じる。
さらにその渦の中からイーブが姿を見せた。
「平然としているということは・・・メタルバーストを受けなかったのか!」
「あなをほるで回避したんだよ!
メタルバーストのときのスキを、利用したんだ!
イーブ、みずのはどう!」
至近距離で背後にみずのはどうを打ち込み、トリデプスは大きなダメージを受ける。
さらに、みずのはどうの追加効果として混乱を起こし、トリデプスは技をうまく決めることができない。
「いまだイーブ、もう一度みずのはどう!」
「シャアワァーッ!」
そこをついて、クウヤはもう一度みずのはどうをイーブに指示し、トリデプスを倒した。
「トリデプス戦闘不能、シャワーズの勝ち!
よって勝者、チャレンジャーのクウヤ!」
「いよっしゃあああああああ!
やったぜイーブ、よくやった!」
「シャワァ!」
勝利を確信したクウヤとイーブは、その勝利を喜び合う。
イーブはクウヤに勢いよく飛びつき、クウヤはイーブを抱きしめ返した。
「よくやったなトリデプス、全力で戦ったおまえこそ、俺のエースだ」
「トリ・・・」
「今はゆっくり休みといい」
そうねぎらいの言葉をかけ、トウガンはトリデプスをボールに戻し、この勝負で勝ちをとったクウヤをみた。。
「本当に、子どもの成長スピードは大人の常識でははかれんな・・・」
トウガンは今のクウヤに、幼い頃の息子の姿を重ねて、ほほえむのだった。
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