マイ「艦これ」「みほ3ん」EX回:第8話<龍田さん舞う> |
『ふうん……複雑な事情があるのね』
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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)
EX回:第8話(改2)<龍田さん舞う>
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演習とはいえ模擬戦闘は激化してきた。
もちろん通常の演習なら美保湾でもよく見る光景だが今回のように他の鎮守府が相手となると初めてのことだ。
しかもブルネイの艦娘たちが果たして、どれほどの練度か未だ見当も付かない。
藪を突くような感覚……五里霧中というのか。
(あいつら大丈夫かな)
……と、口には出さずに心の中で思った。私もドキドキしてきた。
だがここは演習相手の泊地だ。演習中は私も努めて平静を装わなきゃ。
改めて艦娘たちの演習が行われている海上を見た。美保とブルネイの龍田さんと夕立が互いに先制攻撃を仕掛けている。
「まるで鏡を見ているようだな」
私が言うと秘書艦の祥高さんも応える。
「そうですね……ちょっと変な気分ですが」
彼女の口調に私は思わず振り返った。
「え?」
……祥高さんは微笑んでいたのだ。不思議に思いつつ私も改めて通信音声に耳を傾けた。
『あらぁ? そちらの夕立ちゃん、顔色が悪いわねぇ……もしかして本調子じゃないの?』
ブルネイから借りたインカムの性能が良いから接近戦になると相手の声も断片的に入ってくる。
『……』
美保の夕立は無言だ。どうやら混乱しているようだ。
その代わりに、美保の龍田さんが答える。
『この娘(こ)、量産型の艦娘を初めて見るから、ちょっとビックリしているのよ』
『あらぁ、ご愁傷様』
『あと、ここに来る途中で酔ったみたいなの』
『ふうん……複雑な事情があるのね』
砲撃音と風切り音に混じってインカムから聞こえてくるダブル龍田さんの会話。私たちの目の前で模擬戦を繰り広げながらも実際の彼女たちは淡々としている。
落ち着き払った二人。龍田さんらしい……といえばそうだが。
この状況での落差ぶりに私の頭はクラクラしてきた。だが聞こえる音声は事実だ。
大勢の観客には分からない。恐らく大将自身も、まだ気付いていない……。
(或いは知っていながらも艦娘たちに任せているのか?)
私が考えているとブルネイの龍田さんは、さりげなく武器を収めた。
もちろん演習の進行上は自分の体勢を整える振りをして、ごく自然に動いている。
『そんな相手に勝っても、盛り上がらないわよねえ』
彼女は美保の夕立から少し距離を取って改めて様子を観察した。
『吐かれて汚れるのも嫌だしぃ』
彼女は口を塞ぐ真似をして苦笑した。夕立のゲロゲロを警戒しているのか。
他の艦娘たち……特にブルネイの彼女たちは、まだ本気ではないようだ。意図的に狙いを外しつつ『戦場』を演出していた。
普通に観覧席から見ている限り艦娘たちの間で、そんな会話が交わされているとは想像もつかない。彼女たちは砲撃と回避を繰り返しながら激しく動き回っている。砲声と砲火。そして水柱と、それだけでも見応えある。
美保の龍田さんが言う。
『私は絶好調だけど、同じ艦娘で戦っても披露するにはイマイチよね?』
するとブルネイの龍田さんは大きく頷いた。
『じゃあ……うちの夕立ちゃんとやる?』
彼女が長い武具を一回転させて海上で振り返ると、そこには美保と雰囲気の違う夕立が居た。
『強いけど大丈夫。寸止めも得意だから』
ブルネイの夕立は、お祭りモード満開で浴衣姿だった。それだけでも余裕……強さが滲み出ていた。紅(あか)い瞳の彼女は金髪をなびかせながら微笑んだ。
『夕立改2……お願いしますっぽい!』
私は冷や汗が出た。
「彼女……魚雷を素手で持っているぞ?」
「魚雷……顔」
寛代が呟く。
「なるほど魚雷なのにペイントしてあるな」
悪趣味というか。
だが美保の龍田さんも余裕だった。
『あらぁ? 浴衣姿も良いわねえ夕立ちゃん……じゃ私も、ちょっと踊ってみようかしら』
彼女は微笑むと弾幕を上手に避けるように優雅な舞いを踊り始めた。
『ウフフ、戦士の舞いよ』
それは気品すら感じさせる高貴なものだった。
もちろん観客にはポーズを決めながら激しく戦っているようにしか見えない。会場からは歓声と拍手が沸き起こる。
(役者だなあ)
私は感心した。
美保の夕立を除く2対1の軽巡と駆逐艦娘たちは互いに激しく戦っているような「舞い」を演じている。それは見事な『演武』だった。『型』の美しさと『優雅』さ。生半可な技量では出来ない。
ブルネイも美保も互いの艦娘たち(特に龍田さん)は普段から相当、鍛錬しているのだ。
私は興味深く観察していた。
(この時代には艦娘が素手で戦う白兵戦や接近戦を意識しているのか?)
……そんな印象を受けた。或いはブルネイ独特の方針かも知れないが。
普通に観客として見ても単なる演習よりは美しいフォームを見せる方が見栄えも良い。ショーとしても最高だ。
美保とブルネイの艦娘たちは空砲を順次、海や空へと発射していく。大きな水柱や弾幕が周囲に幾重にも張られる。その衝撃波で爆音が響き水柱が林立する。凄まじく派手だ。海から吹く風で硝煙と水しぶきの潮の香りが会場にも漂ってくる。盛り上がる観客。
漠然と見ていれば演習会場から聞こえるのは単なる砲弾の音だ。
しかし注意深く聞いていると拍子を取って一定のリズムに基づいて発射されているのが分かる。つまり海上で艦娘たちは、まさに『踊って』いるわけだ。
お陰で今も体調が優れない美保の夕立の動きが鈍くても、それは戦闘に慄(おのの)いて立ちすくんでいるように見える。押してくるブルネイと防戦一方の美保。敵地とはいえ、これは盛り上がるな。
その陰では相変わらず艦娘たちの会話が続いている。
『そろそろ、時間っぽい』
『ウフフ……いつでも良いわよ』
次の瞬間ブルネイの夕立は美保の龍田さんを見てニコリと微笑んで突っ込む。
『夕立、突撃するっぽい!』
『ふっ!』
龍田さん(美保)が翻りつつ突きを放つ。夕立(ブルネイ)は僅かに身体を捻り最小限の動きでかわしつつ、なおも懐深くに飛び込む。長い金髪が翻る。
その夕立の派手な浴衣と長髪のコントラストが南国の強い日差しに映える。まさに蝶の舞だ。
(うちの夕立もアノくらい凛々しくなれば良いなあ)
インカムを通して聞こえてくる息遣いから龍田さんが3/4拍子から、4/4、4/8……変拍子でリズムを取っているのが感じられた。まだまだ余裕だな。美保だけでなくブルネイの龍田さんや夕立も互いに美保の龍田さんに呼吸を合わせてくれている。その余裕はさすがだ。
しかし美保の龍田さんが、そんな高等な技能を持っていたのは意外だった。或いはブルネイの胸を借りて一緒に技量を上げているようにも見えた。いずれにせよ手に汗握る格闘となっていた。
龍田さんも伊達に経験を重ねている訳ではない。日向とは違うタイプの「武人」だ。だから飛行機にも酔わなかったのだろう。
(艦娘って本当に底知れないものがあるんだな)
しかし、この演習は貴重な経験になる。有り難い……私は胸のメモ帳をまさぐった。もし無事に日本に帰ることが出来たら彼女の鍛練も考えよう。
(そう言えば)
私は別の海上に目をやった。
「うちの日向は?」
水柱の向こうにブルネイの日向と向き合って……。
(あいつらナニやってるんだ?)
視線をずらすと、その近くに赤城さんペア。
(またあの二人まで何してる?)
海上では、まだブルネイVS美保の艦娘たちによる激しい一騎打ちが続く。水柱の合間から見える彼女たちの距離は半間(はんげん)もないだろう。そこから拳打を繰り出すには腰や身体を捩るように回転を使って速度と力を乗せていく必要がある。日頃の鍛錬無しに決して出来ない動きだ。
『ぐっ……!』
誰かの声が伝わる。
白熱する実況アナウンス。
<あぁっとぉ、夕立さんの拳が龍田さんの右脇腹を抉るっ、相手の龍田さんの表情が苦悶に歪むっ>
会場が盛り上がる。お客さんたちは総立ちで熱狂だ。格闘技の会場みたいだな。
だがインカムからの音声は違っていた。
『どう? この表情。痛そう?』
『最高っぽい!』
やれやれ……私はひそかに肩をすくめた。
同じ音声が聞こえる秘書艦や寛代も微笑んでいた。彼女たちも事情は分かっているな。
(普通のお客さんたちは、この音声を聞いたら落胆するかな?)
しかしプロレスも芸能界も、だいたい見物ショーの舞台裏なんて、こんなものだ。進行上に事故や間違いがあったらショー自体が成立しない。一種のビジネスだ。
(私個人としては、こういう古代ローマのコロシアム的なショーはちょっと苦手だけど)
でも一般の人が求める軍隊ってのはこういう肉体系だろう。そこは仕方が無い。演武も演習も大切なサービスだ。互いの艦娘たちも上手に演じている。
特に神秘的な香りのする龍田さんが舞うと……神社への「奉納の舞」を連想してしまう。それだけの技量と精神性はあると思えた。
(龍田さん、つくづく見直したな)
日頃の、あの余裕ある態度には、こういう背景があるのか。それはまたアダルトな魅力だ。
ふと気付くと近くに座っていた寛代が、こっちを見てた。
「ごめんね寛代」
(今の妄想は訂正だ……)
そうだよ演習中だ。不謹慎は禁止。
さらに私は青葉さんのことを思い出した。彼女がどこかで、この演習中の写真を望遠でも良いから撮っていてくれたら嬉しい。
(貴重な参考資料……期待しているぞパパラッチ)
私は妙に青葉さんに期待を込めるのだった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中〜(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。
説明 | ||
ブルネイVS美保鎮守府の艦娘たちの演習が始まった。しかし、その裏で実はこんなことが……。 |
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