Nursery White 〜 天使に触れる方法 3章 3節 |
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「結局、歌っていうよりは、歌声の評価で時間潰しちゃったね……お互い、歌えたのは二曲だけか」
「でも、楽しかったですよ。ゆた先輩と二人きりで一つの部屋っていうのも、よかったです」
「……なんでそう、いちいちアダルティな表現をしますかね」
「おかしかったですか?単純にドキドキしたな、って」
「ドキドキかぁ……まあ、間違ってはいないかも」
私としては、ハラハラするかと思ったけど、意外と何もなく終わってよかった。
「この後はどうしますか?」
「う、ううむ、ご飯にはまだ早いよね」
現在時刻は、おおよそ十一時半。私としてはもう食べてもいいけど、悠里は寝坊したんだし、まだお腹が大きいはずだ」
「そうですね。えっと、ゆうはよくわからないので、ゆた先輩の好きなお店とか、回りませんか?」
「それはあかんです」
即答である。
ドール系、あるいはアニメ系のショップに、このリアル美少女を連れて行けと申すか?いや、それはありえない。
「ええっ」
「私の好みよりもさ、悠里が行きたかったお店とか、ないの?ずっとこんなことに憧れてたなー、とか」
「憧れ、ですか……。ゆうは本当、音楽以外は知らなかったので、それ以外ならどこでも憧れの場所、っていう感じなんで――あっ、あのお店、なんですか?すごくカラフルで……」
「えっ、どれ?」
「あの、100って書いてる…………」
お姫様、それは百均ってやつです。確かにピンク色に彩られていて、見た目だけならガーリーな感じだけども。
「ええっと、あれは百円均一なんだけど、知らない?」
「知りません……百円で均一ということは、もしかして、全ての商品が百円の倍数で、お釣りがいらないというお店とか……?」
「倍数っていうか、全部百円だね。たまに三百円とかの商品もあるけど。後、普通に消費税はあるから、細かいのはいるね」
そうか、悠里は音楽特化であると同時に、お嬢様なんだ。私みたいに「わー、ゆたか今、おひめさまだー」とか能天気に言ってたような、格好だけのエセではなく、リアル上流階級……。百均とか行きませんわな、そりゃ。
「全部百円って、それ、労働環境的に大丈夫なんですか!?ゆう、さすがにブラック企業で買い物をするのは……!」
「う、ううん、私も詳しくは百均の仕組みとかわからないけど、まあ、百円で売るからにはそれなりの理由があって百円だから大丈夫だよ。食器とか調理器具も売ってるけど、さすがにああいう消耗品は脆いしね。ちょっと便利な道具とか、インテリア小物とか、そういうのを見るといいんじゃないかな」
「あの、百円って本当に百円ですよね?レジでいきなり、百万円だと言われたりしませんよね?」
「さすがにそのふっかけ方は、常軌を逸してるかな……本当、見てみたら、大したことないものばっかりだよ?ああ、値段相応だな、って思うって」
「そうでしょうか……」
まさか、百均を見つけただけでここまで盛り上がるとは。でも、うん、これも悠里の社会勉強だ。
まだ尻込みしているようだったので、思い切って私が悠里の手を引いて行く。
「わっ、ゆた先輩っ」
「行ってみよ?なんでも経験だよ」
自分から手をつなぐのは、ちょっと……いや、かなり恥ずかしかったけど、これも悠里のためと思って恥ずかしさを飲み込む。きっとたぶん私は、自分のために行動を起こすことは苦手でも、人のためにするのなら得意だから。
「す、すごいです……なんだか訳がわからないぐらい、色々あって……」
「まあ、初めてならちょっと異様に思えるかもね。普通のお店よりも、明らかに商品の密度が高いし、本当、色々雑多にあるから」
お店に入って、開口一番こうだった。悠里は、きょろきょろと辺りを見回して、早くも撤退を決め込みそうな及び腰になっていた。
「あ、あの、もう十分かな、って……」
「怖いお店じゃないよ、百均は。悠里は大勢のお客さんの前で演奏できるぐらい、メンタル強いんでしょ?」
「ゆっ、ゆうは、別にお客さんは意識してませんっ。ただ、演奏したいから演奏するってだけで。このお店には、ゆた先輩が強引に連れ込んだから……」
「でも、興味はあったんでしょ?」
「で、ですけどっ、なんか訳がわからなくて……」
そう言って戸惑う悠里を見て、改めて私と悠里がよく似ているのだと思った。
口では、フルートが演奏したいから演奏しているだけ、なんて言っているけど、本当にお客さんのことを意識していない訳がない。だって悠里は初め、自分個人を見てくれるのではなく、ただフルート奏者としてだけ自分を評価して、音色にばかり注目して自分のその時、着ている服すら覚えてくれていない聴衆に対して不満を抱いていた。そこを私が、悠里の容姿を褒めたからこそ、驚くほど簡単に。ものすごくちょろい感じで私と悠里の距離は縮まった。
だから悠里も私と一緒で、誰かを意識してでしか、動けない。自分の興味のある百均を見て回るという、傍から見ればなんでもないことが、中々できない。
独りをこじらせてしまっているからこそ、こうなるんだ。私には、この孤独なお姫様の気持ちがよくわかる。だって私は、仕えるべきお姫様をドールにしか求めることができなかった、主のいない従者だったのだから。
「悠里」
「ゆ、ゆた先輩っ……」
「私が傍にいるから。ね?」
ぎゅっ、と彼女の手を握って、歩き出す。悠里の顔を見ると、白い肌がそれはもう、わかりやすく赤く染まっていた。……私もたぶん、人のことを言えないぐらい赤面してるんだろうな。これじゃ、本当にデートみたいだ。同性同士でも、こんなに距離を詰めて密着するのは恥ずかしい。
でも、悠里のわがままを叶えるのが、今日するべきことだと思った。私のために戦ってくれた彼女のために、今度は私が恥ずかしさも何もかも受け入れて、感謝を行動で示す。私の恥ずかしさなんて、悠里の寂しさや苦しさに比べれば、なんでもないんだから。
「ゆた先輩……ありがとうございます。ゆう、やっぱりゆた先輩が大好きです」
「私もだよ、悠里」
「はいっ。大好きですっ」
あっ、ははっ、公共の場で軽く抱き合ってますヨ、私たち。悠里は完全に甘えるモードのスイッチが入ったようで、お構いなしでぐいぐい寄ってきて、好き好き言いまくってくれる。対する私は、悠里ほどなりふり構わずにはなれなくて、どんどん赤面していって、顔から火を吹くどころか、爆発する勢いなもんです。
だ、誰も見るなっ。誰も見ていてくれるなっ、特に同じ学校のやつとか!
第二手芸部潰したと思ったら、ガチ百合疑惑が報じられたりしたら、もう学校の有名人どころか、真剣にやべーやつっていうか、もう十分にやべーやつな気がするけど……。
私は、あんまり目立ちたくないんですけどね。身長でっかいけども。静かに、木のように佇んでいる人でありたい……そんな人に私はなりたい……。
「ゆた先輩っ、まずはどこ行きます?ゆう、ゆた先輩となら、どこへだって行けますっ」
「あの世、かな……」
「ゆた先輩!?もしかして、心臓に爆弾を抱えていたりしたんですか!?」
「悠里こそが私の爆弾だよ……」
「きゃっ。もっと爆発しちゃっていいんですか?」
「そしたら私はいよいよ、五臓六腑を撒き散らして爆散することになるだろうけどね……」
なんだこの会話。アホか?アホだな。アホだわ。
と、とにかく、いつまでもこんな頭ゆるそうな会話をしている訳にもいかない。悠里の手を引いて、適当な売り場へと向かう。
「ゆた先輩っ、私をどこに連れて行くつもりですか!?」
「……そういうノリには流されないからね」
「はわっ、ゆた先輩が急にノリ悪い族に!?」
「元から私はこんなもんだよ。ボケには乗っかるっていうかツッコミ入れるタイプだし」
ただ、悠里と一緒にいると、強烈な不思議ちゃんオーラによってツッコミの腕が鈍ってしまう……この癒やしともまた違う、もっとヤバイタイプの力はなんなんだ。そういう異能か?さては能力者か?
「はい、とりあえず生活雑貨のコーナー。なんていうか、悠里の日常生活って想像できないけど、家にお手伝いさんとかいたりするの?」
「そ、そんなお嬢様じゃないです。普通ですよ。母が家事をしています」
「悠里はお手伝いとかは?」
「…………ゆうの専門外です」
「でしょうね……」
まあ、生活能力がないっていうのは想像できていた。
温室育ちだとか言って軽蔑することはないし、むしろ彼女が生活感に溢れていた方がショックだ。でも、今まで学校生活をまともに送れていたのかが心配になる。クラスでも浮いてしまっていたり、家庭科や修学旅行など、生活能力を試される場で人に迷惑をかけてしまったりしてはいないか……。私はお母さんか、って自分でも思うけど、それぐらい彼女は危うく見えた。
「私も趣味で裁縫とかやってるだけだから、あんまり強くは言えないんだけどね。この辺のものを見て、あっ、これいいな、とか心惹かれることってない?」
実際、私は百均で買いもしないものを見て回るのが好きだ。それだけでどきどきわくわくする。
「あまり触れたことがないので、よくわからないという気持ちしか湧いてきませんね……ただ、たくさんの物があるというのは、華やかですごくいいと思います」
「そっか。じゃあ、形とか色とかだけでいいから、気になった物はない?百均って言っても、デザイン性とか、ちょっとしたところで他とは違う機能性を出してきているからね。案外、安物ってバカにできないんだよ」
「なるほど……どれも百円だから、安いということが選ばれる基準にはならない。だからこそ、違いを出すんですね」
「そういうこと。まあ、実際は見た目ばっかりで、機能性が微妙だったり、他と違う機能があるからって、それが役立つとは限らないけどね。でも、商品なんだから、気を引いた時点で勝ちなんだよ。それで損した、って感じたら、消費者的には悔しいけどね」
「そういった考え方は……商売の世界ならでは、ですね。音楽の世界では、どれだけ上手く演奏できるかが全てですから。究極、ついこの間まで評価されていた人でも、怪我をしてしまったり、別のより評価される人が出てきたりしてしまえば、もう評価されることはなくなります。その人が演奏していたことが価値なのではなく、その人がその時点でいい演奏をしていたことが価値なので。……作曲家のように、クリエイター性が評価されている人は違いますけどね」
「厳しい世界だね……」
「でも、そうじゃないと停滞してしまうのが実際なんだと思います。鎬を削り合い続けなければ、既存の曲を演奏するだけの人間は価値がない。ゆうも、そう思います」
悠里は実際に、今も戦い続けているんだろう。いや、むしろこれから、より激しい戦いを始めることになるはずだ。今はまだ演奏家の中でも、学生という枠組みの中に入っているんだろうけど、じきにそれから外れる。そうなると、鎬を削るべき相手はいくらでもいる。後ろから追いかける人もより多くなるはずだ。
世間知らずな子に見えるけど、逆に言えば、彼女は唯一自分が知っている世界では、世間の人が想像することもできないことをしている。
人のことを世間知らずだ、なんて思ってしまう時点で、私もまた世間なるものを俯瞰で見ることはできていないんだろうな。そりゃ、今までずっとドールの世界で少ない同士を見つけて騒いでいたんだ。大きな視点なんて、持てるはずもない。
「あっ、ごめんなさい……いきなり語ってしまって。でも、はい、そうですね……ゆうも、少し家のことに興味を持ちたいです。今までは家事なんて、怪我をしたらどうする、と止められてきました。でも、ゆうも高校生。いつまでも何もできないままでは、かっこ悪いですから」
「……そっか。でもさ、悠里。その、私の方から言っておいて、の話なんだけど……あんまり無理して、意識して家の方針に逆らうのも、って思うよ。そんな、いきなり何もかも自分で決めようとしても、すごく心と体に負担がかかると思うから」
「ゆた先輩。でも、ゆうは大丈夫です。……ゆう自身が、こうしたいので。自分にウソをつき続けるのは、初めてのことに疲れるよりも辛いことと思います」
そう言う悠里を見て……ああ、この子はこういう子なんだ。本当に一途で、頑固なほどまっすぐで。きっと、だからこその天才なんだろうと思う。天才とは、生まれついてすばらしい才能があることではなく、いくらでも努力できるという才能を持っていることなんだ、とは何かで読んだ言葉だ。でも、いざその世界では天才的な才能の持ち主と言われる悠里に会ってみると、それがよくわかる。
彼女はフルートの演奏に全てを傾けていた。だから結果として評価されるようになった。でも、今になってその心は揺らいできている。決してフルートに飽きたとか、行くところまで行ってしまったという訳ではないんだろう。ただ、もしかすると今になってようやく悠里は、“物心つく”ということを経験したのかもしれない。
普通は、三、四歳ぐらいの頃、やっと自分の世界だけではなく、外の世界のこともわかってくる頃のことを、そう言うんだろうけど、きっと今までの悠里にとってはフルートが全てだった。それだけを親の教育もあって握らされ続けて……そして今。悠里はその外のことに興味を持ち始めた。私はその頃、偶然悠里と出会って、友達になったんだろう。
「ゆた先輩。これはどういう道具なんですか?すごくカラフルで奇麗……」
そう言って悠里が興味を持ったのは、水色やピンク色となったパステルカラーの、三角のプラスチックの道具。その周囲にはお弁当箱だとか、お弁当のおかずを入れる小さなビニールのトレーなんかが並んでいる。これなら、商品説明を見なくても用途はわかった。
「おにぎりを作って、それを持ち運ぶための容器だね。ここにご飯を適量入れて、ふりかけも入れて少し振ったら、それだけでおにぎりができる。それで、このままこの容器に入れて持ち運べば、おにぎりの形が崩れなくて済むでしょ?」
「なるほど、おにぎりがぐちゃぐちゃになってしまうのは辛いですからね」
「私はちょっと神経質なところあるから、おかずに煮物とか、水分の出る野菜があって、その汁でご飯がぐずぐずになるのが許せないからね……中学の頃はよくお世話になったな。今は基本学食だけど」
ああ、あの頃が懐かしい……よく、女子は二段になってるような、あのちみっこい弁当箱を使っているものだけど、私はそれだけではとても足りなかったから、割りとしっかりとしたお弁当箱におかずを満載して、大きめの容器におにぎりを二個入れて持って来ていた。当時からもう身長は高かった訳だけど、まあ、その分お腹も減る訳ですな……あの頃から莉沙と友達で本当によかった。二人して多めにお昼食べてたから、そんなに浮かずに済んだから……。
何?オタクやってるんだから、他人の目なんて気にするな?……気にしちゃうんですよ、自分が普通じゃないと自覚しているからこそ。
「ゆた先輩、学食なんですか!?」
「そ、そうだけど、そんな珍獣見るみたいに言われても」
「学食って、戦場だと聞きますが!」
「どんな偏った考えを……割りと普通だよ?まあ、確かに日によっては場所取りに難儀したりするけど、回転率いいからね。ちょっと待てばすぐに空くし」
「でも、ゆう、あまり人の多いところでご飯を落ち着いて食べることはできないので……教室でお弁当を食べています」
「まあ、それはあるね。今はもう慣れてるから気にならないけど」
こういう過程で、ジョシリョクなるものは失われていくんだろうか、なんて思ったけど、たぶんオタク趣味の時点で女子力は死んでると思うので問題ありません。
「では、今度一緒に学食に行きませんか?」
「いいけど、基本、莉沙っていう私の友達と一緒に食べてるんだけど、知らない先輩って大丈夫?」
「ちょっと心配ですけど……ゆた先輩のお友達なら、いい人、ですよね?」
「間違いなくいいやつだと思うけど……まあ、うん、大丈夫と思う。すっごいゆるいから」
「ゆるい、ですか?」
「うん、ヤバイぐらいゆるい。悠里も大概だとは思うけど、それよりもゆるいと思うから」
悠里はどっちかというと、天然系で、莉沙は掴みどころがないタイプのふわっふわ感だからなぁ。それでいて鋭い、みたいな意外性はなくて、ただひたすらにゆるい。それがいいんだけど。
「なんだかすごく楽しそうな人ですね」
「そうだね。悠里とも波長は合うと思う」
「会えるのが楽しみです……。でも、学食で食べるならこの容器はいらなそうですね。ゆうでも簡単におにぎりを作れるのなら、と思っていたのですが」
「じゃあ、今日みたいに遊びに行く時に使うっていうのはどう?外食は楽しいけど、毎回してたらお金もかかっちゃうし」
相手がお嬢様っていうことを忘れて、ついつい言ってしまった。いや、まあ、金持ちだからって過剰にそれを強調した話し方をするのも、逆にひがみっぽいし、悠里自身、人に特別扱いされるのがイヤなんだ。私ぐらいは普通に接してあげたい。
「手作りのお弁当を持ち寄って食べる、ということですか?」
「まあ、あんまり街中で食べてたら貧乏くさいから、ちょっと人目は気にしないとだけどね。でも、楽しそう。おかずを用意するのが大変なら、私が悠里の分を作ってくるから」
「ゆ、ゆた先輩、料理できるんですか!?」
「あんまり上手くはないけどね。作るって言っても、材料から作るのは卵焼きとかそんなのぐらいで、大抵は冷凍食品で間に合わせてるし」
「……以前、ゆう、冷凍食品を半分凍ったまま食べたり、たれが蒸発した状態で食べることになったりしました…………」
「うん、それはマジでヤバイから、とりあえずチンする秒数は守ろうね。絶対感覚でやってるか、解凍の設定とかでやってるでしょ」
「冷凍食品を解凍するのだから、解凍の設定ではないんですか?」
「………………」
まずい、私も昔は同じ間違いをしていたから、あんまり強くは出れない……。
「え、えっとね、あの解凍モードって、たとえば残ったお刺身を冷凍して保存してたりした時、解凍するためのものであって、冷凍食品を解凍する機能じゃないんだ。ほら、電子レンジ調理、とか言うでしょ?だから、冷凍食品は普通に加熱で決められた時間チンして食べるんだよ。解凍するだけだと、冷凍してる状態から常温に戻るだけっていうイメージっていうか」
「そ、そうだったんですか!?」
「なんです」
「奥深いですね、電子レンジ……」
「うん、一筋縄ではいかないんだよね、奴ら」
ああ、なんていうか、可愛いなぁ、この子。見た目はもちろんだけど、なんというか生き様がいちいち可愛らしい。
「うぅっ、ゆうも少しずつ成長していきたいですが、では、とりあえずおかずはゆた先輩にお任せします……じゃあ、ゆうとゆた先輩とで、二つ、買っちゃいますね」
「ごめん、私は一個じゃ足りないかな……」
「では、十個ぐらい……」
「極端過ぎない!?三個……いや、うん、四個にしておこう。お金は私が出すから……」
今の悠里へのツッコミでカロリーを消費する生活だと、おにぎり三個は食べたいと思う。いや、それでも足りるかどうか。ああ、そして悠里はやっぱり少食なんだろうな。お弁当箱も、あの女子らしい二段の、めっちゃちみっこいやつなんだろうな。どうせ私はあんなので足りるほど燃費のいい体してませんよ。
「そういえば、お腹空いたな……」
「ゆうも、慣れないお店で緊張して、ちょっとお腹が減りました。どこか入りませんか?」
「うん、そうだね」
さて、どんなお店に入ることになるのか。割りと私は戦々恐々としていた。
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この辺りからゆたかがどんどん壊れていってます ※原則として、毎週金曜日の21時以降に更新されます |
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