〜パンダグリュエル・パーティーホール〜

「さてと。戦闘スタイルの紹介も一通り終わったし、今後の特務部隊の予定を軽く説明してあげるわ。」

「はい、お願いします。」

レンの言葉にトワは会釈をして答えた。

「まずエレボニアの内戦を終結させる為には3つの”目的”があって、その”目的”を達成できれば内戦を確実に終結させられるわ。」

「内戦を終結させる為に必要な”3つの目的”……その目的とはどういうものだろうか？」

「一つ目は内戦勃発の元凶である貴族連合軍の”主宰”であるカイエン公―――いえ、カイエン”元公爵”の捕縛又は殺害よ。」

「まあ、当然と言えば当然ね。」

「内戦に限らず戦争でもトップがいなくなれば、戦争相手は戦う”理由”がなくなって、大抵”負け”を認めざるをえないもんね〜。」

「……レン皇女殿下。今の話を聞いて一つ気になる事が出て来たのですが。」

ガイウスの質問に答えたレンの答えを聞いたサラとミリアムは納得した様子で呟き、ある事が気になったアルゼイド子爵はレンに訊ねた。

「何かしら？」

「先程カイエン公の事を”元公爵”と仰いましたが………それはどういう事でしょうか？カイエン公爵家の現在の当主は”主宰”であるカイエン公ですが……」

「あら。アルフィン皇女達は昨日の内にメンフィル軍に降伏したオルディスに残っていたカイエン公爵家の姉妹―――ユーディット、キュア姉妹によってカイエン公爵家の現当主であるクロワール・ド・カイエンの爵位剥奪並びに当主解任された事を教えていなかったのかしら？」

「な―――――」

「カ、カイエン公の地位がカイエン公の娘達に剥奪されたって……！」

「アルフィン、今のレン君の話は本当なのかい？」

「は、はい………確かにシルヴァン陛下達との和解交渉の際にユーディットさん達によってカイエン公の地位が剥奪された事も伝えられています。昨日は他にも色々と皆さんに伝える事があった為失念しておりました……申し訳ございません……」

「まあ、それよりも色々と大変な事実をオリヴァルト皇子達に伝える事がありましたから、仕方ないと思いますよ？」

「そうね……カイエン公の爵位剥奪は世間に公表された訳でもないから、現状あまり意味はない事だし、伝えるのを後回しにしてもしかたないわ。」

アルゼイド子爵の質問に答えたレンの答えを聞いたクレア大尉は驚きのあまり絶句し、エリオットは信じられない表情をし、驚きの表情をしているオリヴァルト皇子に視線を向けられたアルフィン皇女は頷いた後謝罪し、苦笑しながらアルフィン皇女を慰めているアネラスの言葉に頷いたシェラザードは静かな表情で呟いた。

「うふふ、話には聞いていたけどユーディット、キュア姉妹―――特に姉のユーディット・カイエンってカイエン公の娘とはとても思えないくらいの”貴族”としての自覚を持っているわよね？メンフィルに降伏した後も”カイエン公爵家”を存続させる為に自らを政略結婚の”道具”にした上メンフィルが父親であるカイエン元公爵を処刑する話をした時も、”父の処罰についてはメンフィル帝国の判断に従います”と宣言した上父親の地位も剥奪―――つまり”カイエン公爵家”の未来の為に躊躇う事無く父親を”切り捨てた”のよ？」

「それは…………」

「………俺もユーディット嬢のように”非情”になれば、メンフィルとエレボニアの戦争が勃発しなかったかもしれなかったな……」

「ユーシスさん………」

小悪魔な笑みを浮かべたレンの言葉を聞いたジョルジュは複雑そうな表情をし、辛そうな表情で呟いたユーシスの様子をエマは心配そうな表情で見守っていた。

「それともう一つ。ユーディット嬢は我が軍によるオルディス襲撃を知った際救援に来た”蒼の騎士”率いるラマール領邦軍―――貴族連合軍の部隊も”蒼の騎士”を除いて降伏させたとの事です。」

「なっ！？りょ、領邦軍を降伏させただって！？」

「そ、それよりも”蒼の騎士”――――クロウが貴族連合軍を率いたってセシリア将軍閣下は仰っていたわよね！？クロウはどうなったんですか……？」

セシリアの話を聞いたマキアスは驚き、ある事に気づいたアリサは不安そうな表情でレン達に訊ねた。

「ああ、”蒼の騎士”？”蒼の騎士”なら”無謀”にもファーミシルスお姉さんと一騎打ちをして、案の定ファーミシルスお姉さんに一撃も与える事ができず戦闘不能にまで追い込まれた後撤退したそうよ。」

「”蒼の騎士”って事はあのバンダナ男は”騎神”で”空の覇者”に挑んで敗北したって事かしら？」

レンの話を聞いてある事が気になったセリーヌはレンに訊ねた。

「ええ。」

「し、信じられない……！生身で”騎神”と1対1で戦って、しかも1撃も受ける事もなく”騎神”を敗北させるなんて……！」

「”空の覇者”……あの”英雄王”に次ぐメンフィルの実力者だけあって、”空の覇者”にとっては”騎神”すらも”雑魚”なんだろうね。」

「アハハ……よりにもよって、あのファーミシルス大将軍を相手にしたのだから、運が悪いとしか言いようがないですねぇ。」

「そうね……ファーミシルス大将軍はカーリアンさんと並ぶ使い手にしてメンフィルの使い手として、ナンバー2の実力だものね……」

セリーヌの問いかけを肯定したレンの答えを聞いたアリサは信じられない表情をし、フィーは静かな表情で呟き、苦笑しているアネラスの言葉にシェラザードは疲れた表情で頷いた。

「クスクス……ちなみに実際に蒼の騎士―――”騎神”と戦ったファーミシルスお姉さんのお陰で、”騎神”に関して面白い事実が判明したわ。」

「”騎神”に関する面白い事実、ですか。それはどのような内容なのでしょうか？」

意味ありげな笑みを浮かべたレンの言葉が気になったシャロンはレンに訊ね

「ファーミシルスお姉さんの話によると”騎神”は機体が受けたダメージは操縦者にもフィードバック―――つまり、操縦者自身にもダメージが行くようになっているらしいわ。」

「機体が受けたダメージが操縦者にもフィードバックするって………エマ君、セリーヌ君、今の話は本当なのかい？」

「は、はい。”騎神”は”起動者（ライザー）”と一心同体になる事で巨体をまるで自分の身体のように動かせる反面、”機体自身が自らの身体にもなります”から、その影響で機体が受けたダメージは操縦者にも伝わるようになっているのです。」

「……ま、機体が受けたダメージはあくまで”痛み”のみだから実際に骨折したり死んだりする訳じゃないけどね。」

レンの話を聞いて驚きの表情をしたジョルジュに訊ねられたエマは頷き、セリーヌは静かな表情で答えた。

「なるほどね……じゃあ、エマお姉さんと黒猫さんに一つ質問。例えば”騎神”の”眼”を潰せば、操縦者は”失明”する訳でなく、あくまで”騎神”の眼が潰された影響によってレン達を視認し辛くなるだけなのかしら？」

「…………はい。」

「それと機体が耐えられないダメージを受ければ、操縦者である起動者（ライザー）も気を失うわ。勿論機体が受けたダメージが大きければ大きい程目覚めが遅くなる―――それこそ回復に数日、いえ下手したら数ヵ月かかるかもしれないわ。」

「機体が受けたダメージによっては、操縦者の回復にそれ程の時間がかかるのですか……」

「おいおい……話に聞いた感じ、欠陥だらけじゃねぇか、その”騎神”ってのは。手に入れたら本当にその”騎神”を乗り回すのか、リィン？」

「フォ、フォルデ先輩。」

「兄様……」

「お兄様………」

レンの推測にエマは複雑そうな表情で同意し、セリーヌの説明を聞いたステラは真剣な表情で考え込み、フォルデは呆れた表情で呟いた後リィンに訊ね、フォルデの質問の仕方にステラはエマとセリーヌを気にしながら冷や汗をかき、エリゼとセレーネは心配そうな表情でリィンを見つめ

「………少なくてもこの内戦では実際に動かして戦わないと思います。”騎神”どころか”機甲兵”による戦闘経験もないのに”騎神”に乗って戦うなんて無謀ですし、そもそもその”騎神”とやらに俺の得物である”太刀”がないと話になりません。……ちなみに”騎神”には何らかの得物―――武装も既にあるのか？」

「いえ………ありません。」

「……その口ぶりだと、アンタはもし”騎神”を手に入れてもあのバンダナ男が”騎神”で戦闘を仕掛けて来た時も”騎神”を使わず生身で戦うつもりなのかしら？」

フォルデの問いかけに静かな表情で答えたリィンに訊ねられたエマは複雑そうな表情で答え、ある事に気づいたセリーヌはリィンに訊ねた。

「ああ。”騎神”と言っても”機甲兵”の上位互換版だろう？生身で”機甲兵”を”斬った”事は何度もあるし、俺にはこの”太刀”もあるから、むしろこの”太刀”を使った方が”騎神”に与えるダメージも大きいと思うんだ。」

セリーヌの問いかけに頷いたリィンは鞘から”神剣アイドス”を抜いてアリサ達に見せた。

「な、何なんだろう、あの”太刀”………何だか凄い”力”を感じるけど………」

「―――”神剣アイドス”。先程紹介した”慈悲の大女神アイドス”自身が宿っている”神剣”だ。」

「ええっ！？という事はその太刀―――いえ、”神剣”に先程紹介してもらった”慈悲の女神”が宿っているのですか！？」

「その”剣”にアイドス様が……」

「なるほどね………”女神”自身が宿る”神剣”なんてゼムリアストーン製どころか、昨日エマ達が貰った異世界の武装―――オリハルコン製の武装をも遥かに超える武装だから、例えゼムリアストーンやオリハルコンの”騎神”の武装があったとしても、その”神剣”によるダメージの方が遥かに大きいでしょうね………」

「うわあ……女神自身が宿った武装まで持っているとか、”そういう所”までエステルちゃんとそっくりですね、先輩。」

「そうね……彼自身の戦闘能力も含めるとひょっとしたら、エステルと互角――いえ、それ以上の可能性もあるでしょうね。」

トワの疑問に答えたリィンの説明を聞いたエマは驚き、アルフィン皇女は目を丸くし、セリーヌは疲れた表情で溜息を吐き、苦笑しながら呟いたアネラスの言葉に頷いたシェラザードは静かな表情で推測を口にした。

「うふふ、色々と話が逸れてきたから話を目的の件に戻すわよ？二つ目の目的は貴族連合軍に幽閉されているアルノール皇家―――特にユーゲント皇帝とセドリック皇太子の奪還よ。」

「皇帝陛下達を……」

「ま、貴族連合軍の連中は皇帝陛下達を自分達の”大義名分”として利用し続けているからな。”大義名分”が奪われれば、連中は完全に”逆族”になるな。」

「はい。貴族連合軍の”主宰”であるカイエン公の制圧と皇帝陛下達の救出……この二つは内戦を終結させる為に絶対に必要な事です。」

レンの説明を聞いたアルゼイド子爵は真剣な表情をし、トヴァルとクレア大尉は納得した様子で呟いた。

「あ、あの……先程レン皇女殿下はお父様とセドリックの救出はする事を仰いしたが……まさかお母様の救出は”特務部隊”の目的に入っていないのでしょうか……？先程の話ですとお母様の名前は挙がりませんでしたし……」

「あ………っ！」

「確かに先程の話だと皇帝陛下と皇太子殿下の救出の話が絶対に必須であり、皇妃殿下の救出は必須ではないように聞こえるな……」

「……レン君。まさかプリシラ義母上（ははうえ）は私同様帝位継承権が存在しないから、特務部隊にとって内戦終結にはあまり関係ない義母上は救出対象ではないのかい？」

不安そうな表情をしたアルフィン皇女の質問を聞いたアリサは声を上げ、ユーシスは真剣な表情で考え込み、ある事に気づいたオリヴァルト皇子はレンに質問した。

「あら、オリビエお兄さんは中々わかっているわね。とは言ってもプリシラ皇妃の幽閉場所もユーゲント皇帝やセドリック皇太子と同じ場所だから、ちゃんと幽閉されているアルノール皇家の人達は全員救出してあげるから安心していいわよ。――――勿論ユーゲント皇帝達と同じ場所に幽閉されているレーグニッツ知事もね。」

「という事は知事閣下は皇帝陛下達と同じ場所に幽閉されているのですか……」

「！！父さんが皇帝陛下達と同じ場所に監禁されているというのは本当なのですか！？」

レンの説明を聞いたクレア大尉が真剣な表情で考え込んでいる中血相を変えたマキアスはレンに訊ねた。

「ええ。レーグニッツ知事やユーゲント皇帝達の救出も今後の予定にちゃんと入っていて、後で説明してあげるからちょっとだけ待っていてね？――――勿論アリサお姉さんもね？」

「！”私も”という事は……母様の救出も特務部隊は元々してくれるつもりだったのですか！？」

レンに話を振られたアリサはレンの言いたい事を察すると血相を変えてレンに訊ねた。

「当たり前よ。特にイリーナ会長の救出はヴァイスお兄さん達―――クロスベル帝国側からも頼まれている案件だから、今後の特務部隊の予定の中でもユーゲント皇帝達の救出同様特に念入りにしてあげるわよ。」

「ど、どうしてクロスベル帝国―――”六銃士”の人達がイリーナ会長の救出をメンフィルに……」

「……まさか、”六銃士”は会長の救出も今後の”ラインフォルトグループ”との”取引材料”として使う為にメンフィル―――”特務部隊”に会長の救出を依頼したのでしょうか？」

レンの答えを聞いたエリオットが戸惑っている中、ある事に気づいたシャロンは真剣な表情でレンに訊ねた。

「違うわよ。ヴァイスお兄さん達としても”ラインフォルトグループ”のトップは現状イリーナ・ラインフォルト会長の方が都合がいいからよ。」

「へ……”六銃士”にとって母様が”ラインフォルトグループ”の会長である事が都合がいいって、どういう事ですか？」

レンの答えを聞いて一瞬呆けたアリサは困惑の表情でレンに訊ねた。

「それはイリーナ会長が”仕事人間”だからよ。」

「？？どうしてイリーナ会長が”仕事人間”である事は”六銃士”にとっても都合がいいのですか？」

「うふふ、それは勿論イリーナ会長が”元祖国”であったエレボニア帝国を大切にしている訳ではなく、あくまで”ビジネスの相手”として見ているからよ。ここまで言えばどういう事かわかるでしょう？」

「そ、それってもしかして……」

「なるほどね………イリーナ会長はラインフォルトグループの本社があるルーレがクロスベル帝国領になる事によって、今後のラインフォルトグループにとって最も利益があり、取引を優先しないと不味い相手は”クロスベル帝国”になるから、クロスベル帝国との取引を優先して”元祖国”であったエレボニア帝国との取引は後回しにしたり、もしクロスベル帝国にエレボニア帝国との取引を制限された場合、その指示に従う可能性が高いという事だろう？」

マキアスの質問に答えたレンの答えを聞いてある事に気づいたエリオットは不安そうな表情をし、オリヴァルト皇子は疲れた表情で推測を口にした。

「正解♪ラインフォルトグループを大きくする為に実の父親であるグエン・ラインフォルトすらも会長の座から蹴落としたイリーナ会長の性格を考えると、ラインフォルトグループに更なる利益をもたらす為にも”元祖国”であったエレボニア帝国に気遣う可能性は限りなく低いから、今後のラインフォルトグループ――――いえ、”大企業の経営者”としてのベストな選択をするイリーナ会長の冷静な性格はヴァイスお兄さん達にとっても都合がいいのよ。」

「…………………」

「お嬢様…………」

レンの答えを聞いて複雑そうな表情で黙り込んでいるアリサに気づいたシャロンは心配そうな表情で見守っていた。

「あの……という事は今後ラインフォルトグループは取引相手はクロスベル帝国を優先し、エレボニア帝国との取引は全て後回しにするという事でしょうか……？」

「うふふ、それに関してはイリーナ会長と交渉をするエレボニア帝国の交渉人の腕次第じゃないかしら？」

「エレボニアとラインフォルトグループとの取引が後回しにされる事で”商品”を渡してもらう事が遅くなったりエレボニアとの取引内容が制限されたりしたら、特に軍事面が一番不味い事になるよね〜。」

「ええ………エレボニア帝国軍の銃等の武器の量産もそうですが、何よりも兵器の量産はラインフォルトグループの独壇場でしたから、その取引内容に支障が出た場合エレボニア帝国の戦力面は大きく低下する事になるでしょうね………」

ある事が気になったアルフィン皇女の質問に小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いたミリアムとクレア大尉は真剣な表情で推測を口にした。

「話を戻すわよ？最後の目的はエレボニア帝国の帝都―――ヘイムダルの奪還よ。」

「帝都の奪還………」

「………帝都はエレボニア帝国の首都であり、皇帝陛下達が住まわれているバルヘイム宮もあるから、確かにヘイムダルの奪還も内戦を終結させる為に必要な事だな……」

レンの答えを聞いたガイウスは考え込み、トヴァルは静かな表情で呟き

「次に内戦終結までの特務部隊による作戦活動を答えるわね？作戦活動は大きく分けて5つよ。」

「ええっ！？たった、5つの活動で内戦を終結させられるんですか！？」

レンの話を聞いてある事に気づいたトワは信じられない表情でレンに訊ねた。

「ええ♪まず最初はノルド高原の監視塔に陣取っている貴族連合軍相手に必死に抵抗している”第三機甲師団”を救援、そして”第三機甲師団”と協力してノルド高原に派遣されている貴族連合軍を”殲滅”する事よ。」

「ノルドの地にいるゼクス中将達を救援して貴族連合軍を………」

「くふっ♪レン、”殲滅”って事は敵は一人残らず殺していいって事だよね？」

レンの話を聞いたガイウスが目を丸くしている中エヴリーヌは凶悪な笑みを浮かべてレンに訊ねた。

「うふふ、カイエン元公爵達―――”貴族連合軍”にアルノール皇家の”本気”を思い知らせる為に二、三人程生かしておいてね？ちなみにノルドの地にいる貴族連合軍の兵達を殲滅する理由はアルフィン皇女―――いえ、アルノール皇家が自分達に反旗を翻した”逆族”である貴族連合軍を”本気”で殺しに来ている事を思い知らせる為の”見せしめ”よ♪」

「何ですって！？」

「……確かに仲間が全員殺されたら、貴族連合軍はそれを実行したアルフィン皇女―――いえ、アルノール皇家が”本気”で自分達を殺すつもりである事を思い知らされるでしょうね。ま、そんな古臭い慣習、ゼムリア大陸ではとっくに廃れた慣習だけどね。」

「レン君………もう少し穏便なやり方はないのかい……？貴族連合軍―――領邦軍である彼らもエレボニアの民だから可能な限り生かして欲しいし、そんな強引過ぎるやり方を続けていたら、例え内戦が終結してもその強引過ぎるやり方によって生まれた怨恨で貴族勢力に新たな火種が生まれて、再び内戦が勃発する可能性も出てくるんだよ……？それに世間からすればそんな強引過ぎる方法で内戦を終結させたのは君達の”大義名分”であるリィン君に降嫁するアルフィンになるのだから、君達メンフィルが危惧していたアルフィンに対する怨恨によるテロや暴動も起きる可能性も出てくるんだよ？」

「………………」

レンの答えを聞いたサラは厳しい表情で声を上げ、セリーヌは目を細めて呟いた後呆れた表情で溜息を吐き、オリヴァルト皇子は疲れた表情でレンに問いかけ、アルフィン皇女は辛そうな表情で黙り込んでいた。

「うふふ、その点に関しての心配は無用よ。だって、内戦終結後”情報局”―――”革新派”による情報操作でレン達”特務部隊”の作戦活動によって命を奪われた貴族連合軍の兵達の家族の恨みはエレボニアの貴族勢力に向かう事になるもの。」

「ほえ？」

「何でそこで”情報局”が出てくるのよ？」

レンの推測を聞いたミリアムは呆けた声を出し、サラは真剣な表情でレンに訊ねた。

「あら、”鉄血宰相”を始めとした”革新派”は”貴族派”を”潰す”為に派閥争いをしていたのだから、内戦終結後”貴族派”に”止め”を刺す為に内戦で戦死した兵達に関する責任は全部内戦勃発の元凶である”貴族派”に押し付けるでしょう？そうする事によって”仲間”や”家族”を殺された領邦軍やその家族の恨みはエレボニアの貴族達に向けられるから、”貴族派”は勝手に内部分裂を起こす事で”自滅”へと向かうし、更にメンフィルとの戦争勃発やレン達特務部隊との戦闘で戦死した貴族連合軍の兵達に関しての怨恨もアルフィン皇女―――アルノール皇家に向けられる事無く、それらの責任も貴族勢力に向けられる事になるもの♪後はそうね……”帝国の至宝”と名高いアルフィン皇女が辛い思いを抱えて、内戦終結の為に貴族連合軍の兵士達の殲滅を命じた事にでもして”美談”にするのじゃないかしら？民達に人気があったお姫様が内戦を終結させる為に辛い思いを抱えて”悪”である貴族連合軍を殲滅―――つまり、”やっつけた”事は物語に出てくるような”お話”でしょう？」

レンの説明を聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「………………」

「フッ、前々から感じていたがレン皇女はあの”白面”と同等―――いや、下手をすればそれ以上の策略家だな。」

「洒落になっていませんよ……」

「ハア………どうしてこの娘は次から次へと、そんな悪辣な謀略を思いつけるのよ……」

アルフィン皇女が複雑そうな表情で黙り込んでいる中静かな笑みを浮かべて呟いたレーヴェの言葉を聞いたツーヤは疲れた表情で指摘し、プリネは疲れた表情で溜息を吐き

「なるほどね〜。オジサンなら間違いなくそうするだろうし、オジサンに指示されなくても”情報局”だったら”貴族派”に”追い打ち”をする為にそういう情報操作をするだろうね〜。」

「お願いしますから、例え事実だとしても、もう少し遠回しな言い方をしてください、ミリアムちゃん……」

ミリアムの推測を聞いたクレア大尉は疲れた表情で指摘し

「ったく、これじゃあどっちが悪党かわかんねぇな……」

「同感。普通に考えたら敵側にいる相当悪辣な”黒幕”だよね、”殲滅天使”は。」

「フィ、フィーちゃん。」

「クク、改めてメンフィルに所属しておいて、ホントによかったと思うよな〜。メンフィルは戦力に加えて知略も完璧だしな〜。」

「ふふっ、そうですね。レン皇女殿下やセシリア教官も相当な知略の持ち主である”参謀”ですが、更にその上をも行く”参謀”の方達もメンフィルに所属していますしね。」

「レン皇女殿下やセシリア将軍がメンフィルの”参謀”として一番上か、それに近いと思っていたが、更にその上を行く”参謀”の人物がいるのか……」

「しかも”方達”という事はそんな凄まじい存在が複数存在しているのだろうね……」

疲れた表情で溜息を吐いたトヴァルの言葉に同意してジト目で呟いたフィーの言葉を聞いたエマは冷や汗をかき、口元に笑みを浮かべているフォルデの言葉にステラは苦笑しながら同意し、フォルデとステラの会話を聞いたアリサ達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中目を丸くして呟いたガイウスの言葉に続くようにジョルジュは不安そうな表情で呟いた。

「うふふ、それでもオリビエお兄さんは怨恨を気にしているでしょうけど……―――というかそれ以前に内戦―――”戦争”を誰にも恨まれる事なく終結させることができる訳ないでしょう？ましてや貴族の中でも極めてプライドが高いカイエン元公爵が劣勢になれば、和解に応じるとオリビエお兄さんは本気で信じているのかしら？レンはむしろ逆で、劣勢になればなるほど逆転勝ちする為に手段を選ばなくなると思うわよ。」

「……………それは。」

「殿下…………」

「まあ〜、カイエン公に限らず、総じて”帝国貴族”としてのプライドが高い帝国貴族達の性格を考えたら絶対負けを認めないだろうね〜。」

「うむ……そもそもこの内戦は貴族勢力の地位を脅かしていたオズボーン宰相―――”革新派”を潰し、エレボニアを貴族勢力主体の政治にする為に勃発したからな………その件も考えると貴族連合軍は”主宰”であるカイエン公を始めとした”四大名門”の当主達を何とかしない限り、戦いを止めないだろうな……」

「加えてメンフィルとの和解条約でカイエン公はメンフィルに引き渡され、更にエレボニアの多くの領土がメンフィルに贈与される事になるからな……メンフィルに処刑される立場であるカイエン公もそうだが、貴族達は自分達の領土まで奪われるかもしれないのだから、絶対に和解に応じないだろうな。」

レンの正論に反論できず辛そうな表情で黙り込んだオリヴァルト皇子をアルゼイド子爵は心配そうな表情で見守り、静かな表情で呟いたミリアムの推測にラウラは頷き、ユーシスは重々しい様子を纏って呟いた。

「話を戻すわよ？ノルド高原の作戦の次は”第四機甲師団”と協力して双龍橋を奪還する事よ。」

「ノルドの件が終わったら第四――父さん達と協力して双龍橋を奪還するのですか……」

「……レン皇女殿下。一つ質問があるのですが、よろしいでしょうか？」

レンの説明を聞いたエリオットが驚いている中ある事が気になっていたクレア大尉はレンに問いかけた。

「何かしら？」

「先の戦争でケルディック地方はメンフィル軍に占領され、和解条約によってメンフィル帝国領と化しましたが、”第四”が帝都方面進撃の為のケルディック地方の通過並びに陣の設立は認めて頂けるのでしょうか？」

「そ、そう言えば………」

「ケルディックはメンフィル帝国領と化したから、メンフィルに無許可でケルディックを通過して帝都方面に進撃したら不味いね。」

クレア大尉の質問内容を聞いてある事に気づいたマキアスは不安そうな表情をし、フィーは静かな表情で呟いた。

「帝都方面進撃の際、ケルディック地方の通過は認めるけど、陣の設立は認めないわ――――というか現在ケルディック・トリスタの”国境”の街道はメンフィル軍が防衛陣を展開しているのだから、そこに正規軍が陣を設立したらメンフィル軍にとって迷惑だもの。現在展開しているケルディック地方のメンフィル軍の防衛陣はメンフィル軍にとっては最前線だしね。」

「ええっ！？ど、どうしてケルディック地方が最前線なんですか……？」

「……多分、ケルディック地方がメンフィル帝国領になった事でケルディックと隣接しているトリスタを占領している貴族連合軍がケルディック地方奪還の為にメンフィル軍と何度も衝突しているからだと思うよ。」

「あ…………」

「……………」

「そうか………ケルディック地方がメンフィル帝国領になった事はケルディック地方と隣接しているトリスタを結ぶ街道の中心部が”国境”になった事にもなるから、ケルディック地方はメンフィルとエレボニアの間で戦争が勃発した際、真っ先に戦火に巻き込まれる事になるね………」

レンの説明を聞いて驚いたエマの疑問に答えたトワの推測を聞いたアリサは呆けた声を出し、ユーシスは辛そうな表情で黙り込み、ジョルジュは複雑そうな表情で呟いた。

「―――だからこそ、メンフィル軍（われわれ）はケルディックの民達を戦火に巻き込ませない為にケルディック・トリスタの国境の街道にて防衛陣を展開しているのです。ケルディックもそうですがオルディスやバリアハート、そしてユミルにも貴族連合軍による襲撃を警戒し、それぞれメンフィル軍が防衛陣をを築いていつでも迎撃態勢がとれるようにしてあります。」

「そういう訳だから、トリスタ方面の貴族連合軍はケルディックに駐屯しているメンフィル軍と睨みあっている状況よ。”第四機甲師団”は双龍橋奪還後、帝都方面進撃までは奪還した双龍橋にて陣を築いて戦力の回復に集中してもらう事になるから、クレイグ中将にその件を伝えておいてね♪」

「……了解しました。貴重な情報を教えて頂き、ありがとうございます。」

ジョルジュの不安の言葉に対してサフィナが答え、レンに話を振られたクレア大尉は会釈をした。

「話を続けるわよ。双龍橋奪還後はノルティア州の中心部――――”ルーレ地方”で雌伏の時を待っているログナー侯爵の娘―――アンゼリカ・ログナーと合流する事になっているわ。」

「え……………」

「ええっ！？ア、アンちゃんと……！？という事はアンちゃんは”ルーレ”に―――いえ、もしかしてレン皇女殿下はアンちゃんと接触したんですか！？」

レンの話を聞いたジョルジュが呆けている中トワは驚きの声を上げてレンに訊ねた。

「ええ。元々アンゼリカお姉さんは内戦勃発後は内戦を終結させる為に父親であるログナー侯爵家の現当主であるゲルハルト・ログナーとの”親子喧嘩”――――お互いが操縦する”機甲兵”による一騎打ちの決着で、ノルティア州を貴族連合軍から脱退させようとしていたのよ。」

「”機甲兵”による一騎打ちが”親子喧嘩”って……」

「……理解不能です。」

「ふふっ、中々壮絶な”親子喧嘩”になりそうですわね♪」

「ハハ、アンらしいね。」

レンの説明を聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アリサとアルティナはジト目で呟き、シャロンは微笑み、ジョルジュは苦笑していた。

「ハア……大方貴女の事だから、戦争の時にそのログナー侯爵家の当主の娘のやろうとしていた事を利用しようとしていたんじゃないかしら？」

「アハハ……レンちゃんの事だから、その”親子喧嘩”の後で疲弊した両方を制圧して四大名門の”ログナー侯爵家”を制圧するみたいな”漁夫の利”とか狙っていたんじゃないの？」

一方シェラザードは疲れた表情で溜息を吐いた後推測を口にし、シェラザードに続くようにアネラスは苦笑しながらレンに訊ねた。

「クスクス、それに関してはヒ・ミ・ツよ♪――――ちなみにアンゼリカお姉さんからはルーレの件が終わった後”特務部隊”の指揮下に入って、”特務部隊”による内戦終結の方法に協力する承諾は取れているわ。」

「アンが”特務部隊”に………その、アンは場合によっては貴族連合軍の兵士達の命を自分の手で奪う事がある事も理解しているのですか……？」

レンの話を聞いたジョルジュは驚いた後不安そうな表情でレンに訊ねた。

「当然理解しているわよ。―――――というか、アンゼリカお姉さんが特務部隊の指揮下に入る事を決めた決め手は和解条約の内容を知ったからだと思うわよ？」

「！？ちょっと待って……あんたは一体いつアンゼリカと接触したの！？和解条約が結ばれたのは昨日の昼過ぎで、あたし達に和解条約の件を説明したのが夕方だから、アンゼリカと接触してアンゼリカの協力を取り付けたのは昨夜か、今朝のどちらかになるわよ！？」

「そ、そう言えば………わたくし達が和解条約に調印し、メンフィルとエレボニアの戦争状態が”和解”によって終結したのは昨日の午後3時頃ですわ……」

「アンゼリカ先輩が和解条約の内容を知っているという事は、最低でも昨日の午後3時以降にレン皇女殿下がアンゼリカ先輩と接触した事になるが……」

レンの説明を聞いてある事に気づいて血相を変えたサラの言葉を聞いたアルフィン皇女は目を丸くし、ガイウスは静かな表情で呟いた。

「うふふ、昨日�Z組のみんなに特務部隊の指揮下に入るか入らないかの相談の時間をあげた後、レン達は一端退出したでしょう？アンゼリカお姉さんと接触したのはみんなが相談している時間の間よ♪」

「ええっ！？」

「我等が今後について相談している間にアンゼリカ先輩との接触を………」

「……なるほどね。あの時アタシ達が”今後”についての話し合う時間が欲しいって話が出た時にあっさりと許したのはその件もあったからなのでしょうね。」

レンの答えを聞いたアリサは驚き、ラウラは真剣な表情で呟き、セリーヌは目を細めてレンを見つめた。

「クスクス、和解条約の内容を知ったアンゼリカお姉さんの様子からするとアンゼリカお姉さんは自分の実家―――”四大名門”や士官学院の悪友であった”C”―――クロウ・アームブラストが原因でエレボニアを衰退させてしまった事やアルフィン皇女が責任を取ってエレボニアから去ってしまう事、そして大切な”後輩”である�Z組のみんなに人の命を奪うか奪わないかの決断をさせてしまった事による責任感や罪悪感、後は後悔で、悩む事無くレン達―――特務部隊の指揮下に入る事を決めたみたいよ？」

「アンちゃん………」

「アンゼリカさん……」

「「……………」」

「………ッ………！」

レンの話を聞いたトワやアルフィン皇女はある人物の顔を思い浮かべて悲しそうな表情をし、ユーシスとジョルジュは辛そうな表情で黙り込み、ある人物に悲壮な決意をさせた張本人であるレンをサラは唇を噛みしめて睨みつけていた。

「………レン皇女殿下は正規軍と領邦軍による共闘で帝都を奪還すると仰いましたが……まさかその領邦軍とはアンゼリカさんを旗印にしたノルティア領邦軍の事でしょうか？」

「あ……っ！」

「アンゼリカはログナー侯爵の一人娘だから、ログナー侯爵の身に”何かあった場合”、”ログナー侯爵家”の当主になってノルティア領邦軍を率いる事ができるね〜。」

「あのな、ミリアム……”何かあった場合”とか、縁起でもない事を言わないでくれ……」

クレア大尉の推測を聞いたアリサは声を上げ、静かな表情で呟いたミリアムの推測を聞いたマキアスは疲れた表情で指摘した。

「あら、”白兎（ホワイトラビット）”の言っている事も強ち間違ってはいないわよ？アンゼリカお姉さんはノルティア領邦軍―――いえ、”ログナー侯爵家”が特務部隊の指揮下に入る事をログナー侯が拒否した場合、ログナー侯を特務部隊の指揮下に入るように説得するつもりらしいけど最悪自らの手でログナー侯を討ち取って、”ログナー侯爵家”の当主の座を簒奪するって言っていたもの♪」

「何だと！？」

「そ、そんな……っ！本当にアンちゃんはそんな事を……―――自分の手で父親を殺す決意までしたんですか……っ！？」

レンの話を聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中トヴァルは信じられない表情で声を上げ、トワは悲痛そうな表情でレンに訊ねた。

「ええ。―――うふふ、ユーディット・カイエンといい、アンゼリカお姉さんと言い、”四大名門”の女性達は中々賢くて度胸があるわよね？二人とも、親を”切り捨て”てて、文字通り身体を張ってまで実家の”罪”を償おうとしたり、お家断絶の危機に陥っている実家を存続させようとしているもの♪同じ”四大名門”の子供として、ユーシスお兄さんも二人を見習ったらどうかしら？」

「………はい。今の話を聞いて俺も二人を見習い、四大名門の――――”アルバレア公爵家”唯一の者として、エレボニア帝国に――――アルノール皇家に対して犯した父達の”大罪”を償う為にも、�Z組の誰よりも多くの貴族連合軍の兵達の命を奪い、この手を血で染めるべきだと思いました……」

「ユーシス………」

「………………レン皇女殿下。先程最悪の場合ログナー侯の命を奪い、ログナー侯爵家の当主の座をアンゼリカ嬢に就かせると仰いましたが、ログナー侯爵家にはアンゼリカ嬢以外にもログナー侯爵家の当主の座に就く事ができる人物がいますが、その点に関してはどういう対策を取られるのでしょうか？」

レンに話を振られた後重々しい様子を纏って呟いたユーシスの様子をラウラは心配そうな表情で見守り、目を伏せて黙り込んでいたアルゼイド子爵は気を取り直してレンに問いかけた。

「へ……アンゼリカ先輩以外にログナー侯爵家の当主になれる人……？それって誰なんですか？」

「恐らく子爵閣下が仰っている人物はラインフォルトグループの第一製作所の取締役にして、ログナー侯爵の弟君であられるハイデル・ログナー取締役の事を仰っているのかと思いますわ。」

「あ……っ！」

「そ、そう言えばハイデル取締役はログナー侯爵の弟だから、アンゼリカ先輩同様”ログナー侯爵家”の当主になれる”資格”はあるな……」

エリオットの疑問に答えたシャロンの答えを聞いたアリサは声を上げ、マキアスは驚きの表情で呟いた。

「うふふ、その点に関しての心配も無用よ。元々ハイデル・ログナーはアンゼリカお姉さんと一緒にイリーナ会長を救出した後拘束する事になっているもの。」

「！！」

「ええっ！？か、母様を救出した後ハイデル取締役を！？という事は母様はルーレのどこかに幽閉されているんですか！？」

レンの説明を聞いたシャロンは目を見開き、アリサは信じられない表情で声を上げた後レンに訊ねた。

「ええ。イリーナ会長はハイデル取締役が雇った猟兵団に拘束された後”ザクセン鉄鉱山”の貨物ホームに停まっている”アイゼングラ―フ号”の中に軟禁されているわよ。」

「”アイゼングラーフ号”……ガレリア要塞に向かう最中に見たあの紅き列車か。」

「なるほど……いざとなれば”軟禁しているイリーナ会長ごと軟禁場所を移動させる事”も可能な上”アイゼングラーフ号”にはVIP用の客室もありますから、ある意味軟禁場所としては最適ですね。」

レンの話を聞いたラウラはかつての出来事を思い出し、クレア大尉は真剣な表情で呟き

「ああ、そうそう。ハイデル・ログナーの件で思い出したけど、ハイデル・ログナーはイリーナ会長を拘束した事に満足したに飽き足らず”会長代行”としてラインフォルトグループを乗っ取った上アリサお姉さんやシャロンお姉さん―――”ラインフォルト家”にとって許し難い事まで行っているのよ？」

「あ、ありえない……”会長代行”なんてデタラメじゃない！というか私達”ラインフォルト家”にとって許し難い事って、一体何をしているんですか、ハイデル取締役は！？」

「うふふ、その件に関してはアルティナ、”貴族連合軍”であった貴女が話してあげたら？」

「何故そこで私に説明するように促したのか理解不能ですが……了解しました。―――レン様が仰っている”ラインフォルト家にとって許し難い事”とは恐らくハイデル・ログナーがラインフォルトグループの本社ビルの24Fを自分の私室のように扱い、寛いでいる件についてかと思われます。」

「ラインフォルトグループの本社ビルの24F……？あれ？そこって確かアリサ達―――”ラインフォルト家”の……」

「ええ、ラインフォルト家の”居住スペース”ですわ。ふふ、ハイデル取締役の行動はある程度予想していましたがどうやら私の予想以上に随分と好き勝手をしているようですわね。」

「今の話を聞いて、本気でハイデル取締役を殴り―――いえ、Sクラフト（ジャッジメントアロー）を叩き込みたくなってきたわ……！」

「他人の家に寛ぐ等、四大名門―――いや、それ以前に”人として”あまりにも恥晒しな人物のようだな、ハイデル卿は。」

レンの代わりに説明をしたアルティナの答えを聞いたエリオットはある事に気づいてアリサやシャロンに視線を向け、エリオットの言葉に頷いたシャロンは威圧を纏った微笑みを浮かべ、アリサは怒りの表情で身体を震わせ、アリサとシャロンの様子を見たその場にいる多くの者達が冷や汗をかいている中ユーシスは呆れた表情で呟いた。

「うふふ、話を続けるわよ？ルーレでの作戦活動はさっきも軽く説明したようにアンゼリカお姉さんと合流後、イリーナ会長の救出、ラインフォルトグループを乗っ取っているハイデル・ログナーの拘束をした後、アンゼリカお姉さんがノルティア州最大用の要塞―――”黒竜関”にいる現ログナー侯爵家の当主であるゲルハルト・ログナーに一騎打ちで挑んで降した後、ゲルハルト・ログナーにログナー侯爵家―――いえ、ノルティア領邦軍はアルフィン皇女―――つまり特務部隊の指揮下に入ってもらう事を承諾してもらう事になっているわ。勿論承諾しなければ、内戦勃発並びにメンフィル・エレボニア戦争によってエレボニアが衰退する事になってしまった”元凶”にして”逆族”の一人としてゲルハルト・ログナーを処刑する事を盾にしてね♪」

「……………」

「ほとんど”脅迫”じゃねぇか……」

「しかも相手は反乱軍の上層部である事から”遊撃士協会”に所属しているあたし達もその件に介入できないと踏んで、そんな脅迫同然の事を考えたのでしょうね……」

「あ……そっか。反乱軍の上層部―――つまり世間一般からすれば”犯罪者”であるログナー侯爵は”遊撃士協会”の”保護対象”にはならないから、レンちゃんがやろうとしている事について遊撃士（わたしたち）は介入できませんね……」

「ハハ……下手をすれば宰相殿以上の強引な政策だね……」

「……それ以前にログナー侯がアンゼリカとの一騎打ちに応じるかどうかもわからないし、例え応じたとしてもアンゼリカが負けた場合、どうするつもりなのよ？」

レンの説明を聞いたアルフィン皇女は辛そうな表情で黙り込み、トヴァルは厳しい表情で呟き、疲れた表情で呟いたシェラザードの言葉を聞いてある事に気づいたアネラスは複雑そうな表情をし、オリヴァルト皇子は疲れた表情で溜息を吐き、サラは真剣な表情でレンに問いかけた。

「一騎打ちの件に関しては大丈夫よ。アンゼリカお姉さんの話だと実家を出る際、ゲルハルト・ログナーに”親子喧嘩”の宣言をした後、その宣言にゲルハルト・ログナーは応じる事を答えたそうだし、万が一アンゼリカお姉さんが負けそうになった時は狙撃や魔術による遠距離からの攻撃でログナー侯を”暗殺”するつもりだもの。」

「あ、”暗殺”って……！」

「……ま、ログナー侯を”排除”するやり方としては一番効率がいいね。ログナー侯は娘との一騎打ちに集中しているだろうから、第三者による攻撃に対する防御が遅れる確率は極めて高くなるだろうし。」

「そ、そんな……アンちゃんはまさかその事も承知の上で、特務部隊の指揮下に入る事を承諾したのですか……！？」

レンの答えを聞いたアリサは信じられない表情をし、フィーは静かな表情で呟き、トワは悲痛そうな表情でレンに訊ねた。

「ええ。それどころか、この”誓約書”にも”ログナー侯爵家当主代理”としてサインしてくれたわよ。」

トワの問いかけに頷いたレンは懐から一枚の紙を取り出した。

「せ、”誓約書”、ですか………？」

「……その”誓約書”は一体どのような内容なのでしょうか？」

レンが取り出した紙を見たエマが戸惑っている中アルゼイド子爵は真剣な表情でレンに訊ねた。

「簡単に説明すれば、ログナー侯爵家は内戦終結まで”特務部隊”並びにアルフィン皇女を含めたアルノール皇家の”要請（オーダー）”に全て”無条件”で応える事よ。ノルティア領邦軍の指揮権をこちらに渡す事は当然として、”軍資金”としてログナー侯爵家の財産を特務部隊やアルノール皇家が”徴収”する事とかね。」

「な―――――」

「りょ、領邦軍の指揮権の委任やログナー侯爵家の財産を”徴収”するって……！」

「め、滅茶苦茶過ぎる……！」

「うわぁ………冗談抜きでオジサン以上の強引なやり方だね〜。」

「あからさまに”四大名門”の一角である”ログナー侯爵家”の力を削る為に創られたとしか思えない”誓約書”だな……」

レンの答えを聞いたクレア大尉は絶句し、エリオットとマキアスは信じられない表情をし、ミリアムは目を丸くして呟き、ユーシスは重々しい様子を纏って呟いた。

「クスクス、そういう訳だからルーレの件を終えればログナー侯爵家がレン達―――いえ、”アルフィン皇女を旗印にしたエレボニア軍”にとっての”金蔓”になる事で正規軍がメンフィル帝国から貰った補給物資の代金はログナー侯爵家に負担してもらう事も可能になるから、正規軍はメンフィル帝国に対する”エレボニア帝国の借金”を気にする事なくメンフィル帝国に補給物資を要求できるでしょう？」

「………それは…………」

「ハア……予想していた通り―――いえ、予想以上のとんでもない策略を考えているようね。」

「アハハ……2年前の”お茶会”と比べても天と地の差に思えるような策略ですよね……」

「ハハ……レン君の事だから、相当悪辣なやり方で”貴族派”を衰退させるとは思っていたけど、私の想像以上だったよ……」

「ねえ、レン。領邦軍だっけ？”機甲兵”とかいうあんな”屑鉄”を動かす事で有頂天になっていた”雑魚”を仲間にした所で役に立つの？」

レンの指摘にクレア大尉が複雑そうな表情で黙り込んでいる中シェラザードは呆れた表情で溜息を吐き、アネラスは冷や汗をかいて苦笑し、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、エヴリーヌの疑問を聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「うふふ、幸いにもノルティア領邦軍を率いるログナー侯爵は武闘派である事からノルティア領邦軍は領邦軍の中でも精鋭部隊って話だし、例え戦力にならなくても正規軍の被害を少なくする為の”囮”や”捨石”として色んな利用の仕方があるわよ♪」

「ログナー侯爵家から財産を徴収した上指揮権を奪い取った領邦軍を正規軍の”囮”や”捨石”に使うなんて………」

「しかもノルド高原にいる貴族連合軍は貴族連合軍に対する”見せしめ”として殲滅した上、彼らの犠牲によって生まれる怨恨を”貴族派”に押し付ける事を考えているなんて……」

「あ、悪魔……」

「むしろレンさんより悪魔の方がまだ可愛げがある方ですよ………」

「え、え〜と……レン皇女殿下が仰っている事は、あくまで考えている段階だから、ノルティア領邦軍をそんな扱いをする事に決まった訳ではないから、安心してくれ。」

「指揮下に置いた領邦軍をどのような扱いにするのかはレン皇女殿下やセシリア教官がお考えになりますし、私達も考えますが………和解条約の第五条にも記してあるように、皆さんから私達メンフィルとしても”使える”提案なら、採用しますので、是非遠慮なく提案をしてください。」

レンの答えを聞いたその場にいる多くの者達が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中トワとジョルジュは不安そうな表情で呟き、ジト目でレンを見つめるアリサの言葉を聞いたツーヤは疲れた表情で指摘し、リィンは苦笑しながら答え、ステラは静かな表情で呟いた。

「そうは言ってもただの士官学院生であったその子達に現役の”参謀”をやっている”殲滅天使”達を納得させるような作戦を思いつけるとはとても思えないわよ。」

「セリーヌ………」

ステラの言葉に対して呆れた表情で答えたセリーヌの答えを聞いたエマは複雑そうな表情をした。

「レン皇女殿下……アンは本当にノルティア領邦軍やログナー侯爵家がレン皇女殿下達―――特務部隊の様々な要求を請けざるを得ない状況になる事を承知の上でその誓約書にサインをしたんですか……？」

「ええ、念の為にアンゼリカお姉さんに確認した時にアンゼリカお姉さんはこう言っていたわよ？――――『貴族連合軍に加担していたログナー侯爵家も内戦勃発やメンフィルとの戦争によって皇女殿下がエレボニアから去る事になった事や領地を大きく削り取られる事になった事によってエレボニア帝国が衰退する事になった”元凶”でもあるのだから、皇女殿下達やエレボニア帝国の民達に対する償いとしてログナー侯爵家がこのくらいの要求を受ける事は当然さ』って決意の表情で答えていたわよ。」

「アンちゃん………」

「…………………」

ジョルジュの質問に対するレンの答えを聞いたトワは辛そうな表情をし、アルゼイド子爵は重々しい様子を纏って目を伏せて黙り込んでいた。

「話を続けるわよ。ログナー侯爵家並びにノルティア領邦軍がアルフィン皇女に”降伏”並びに特務部隊の指揮下に入れば、サザ―ラント領邦軍も貴族連合軍から脱退して中立勢力になるか、運が良ければ寝返って特務部隊の指揮下に入る事を申し出ると思うわよ？」

「ええっ！？サザ―ラント領邦軍が！？」

「サザ―ラント領邦軍という事はハイアームズ候が………何故レン皇女殿下はノルティア領邦軍―――ログナー侯爵家を指揮下に置けば、ハイアームズ候がそのような判断を降すと想定しているのでしょうか？」

レンの説明を聞いたエリオットが驚いている中ラウラは真剣な表情でレンに問いかけた。

「その件に関しては恐らくメンフィルの諜報部隊が手に入れた情報―――ハイアームズ候が戦火を逃れた難民達を手厚く保護し続けているとの件だと思われます。」

「ハイアームズ候が難民達の保護を………」

「……まあ、彼は”四大名門”の中で唯一の穏健派で、カイエン公やアルバレア公と違い、平民達を大切にしていたからね。」

「しかし何故難民達を保護している事が、特務部隊の指揮下に入る事へと繋がるのだ？」

エリゼの説明を聞いたアルフィン皇女が目を丸くしている中オリヴァルト皇子は僅かに安堵の表情をし、ガイウスは不思議そうな表情で訊ねた。

「あら、わからないかしら？難民達を保護する事で、万が一貴族連合軍が敗北しても、難民達を保護した事を理由にアルノール皇家や帝国政府に情状酌量の余地ありと判断してもらって、自分達への処罰を軽くする為よ♪」

「―――加えてハイアームズ侯爵は元々平民達を大切にしてきた事によって平民達にも慕われています。アルノール皇家や帝国政府がハイアームズ候を慕っている平民達やハイアームズ候に恩がある難民たちの反発を恐れて、”ハイアームズ侯爵家”に対して厳しい処罰を降す可能性は低いと考えて、そのような”慈善活動”をしているという事が我々の予想です。」

「それは…………」

「……………」

レンとセシリアの説明を聞いたオリヴァルト皇子とアルフィン皇女はそれぞれ複雑そうな表情をした。

「なるほどね………貴族連合軍が負けた時も想定して動いているハイアームズ侯爵なら貴族連合軍の旗色が悪くなれば、自分達への処罰を少しでも軽くする為に貴族連合軍から脱退して、こっちに寝返る可能性があるって事ね……」

「正解♪レンの想定では貴族連合軍から脱退して特務部隊（こっち）の指揮下に入る事を申し出る確率は非常に高いと思っているわよ。現に今朝メンフィル軍が占領しているオルディスをハイアームズ侯爵の使者が訪問して、その使者がオルディスに駐屯しているメンフィル軍の責任者との面会を希望しているという情報が入ったもの。」

「何だと！？」

「ハイアームズ候がオルディスいるメンフィル軍に使者を……」

「ハイアームズ侯爵閣下は一体何を考えているのでしょうね……？」

「まあ〜、カイエン公と違って慎重な性格をしているハイアームズ候の性格を考えれば少なくてもメンフィルに喧嘩を売るような事じゃないだろうね〜。」

「そうね……恐らくメンフィルとの戦争によって貴族連合軍―――いえ、エレボニア帝国の状況が不味い事になっている事にようやく気づいて、メンフィルに戦争になった理由等を聞いて、メンフィルと和解する為の使者をオルディスに送ったのでしょうね。」

セリーヌの推測を肯定した後更なる情報を口にしたレンの話を聞いたトヴァルは驚きの声を上げ、アルフィン皇女は信じられない表情をし、エマの疑問にミリアムとサラがそれぞれ答えた。

「ま、そういう訳だからノルティア領邦軍を指揮下に置けば、高確率でサザ―ラント領邦軍も寝返って特務部隊の指揮下に入る事を申し出るだろうし、指揮下には入らなくても貴族連合軍から脱退して”中立勢力”になる事はほぼ確実だと思うわ。それでルーレの件が終わったら正規軍、領邦軍の連合軍によるトリスタの奪還作戦を実行する予定よ。」

「ええっ！？という事はルーレの件が終わったら、トリスタの奪還を行うんですか！？」

「……トリスタを奪還する時、当然わたし達―――トールズの学院生達をトリスタ―――特にトールズ士官学院の奪還をする主体のメンバーにしてくれるんだよね？」

レンの説明を聞いた士官学院の関係者達がそれぞれ血相を変えている中アリサは驚きの声を上げ、フィーは真剣な表情でレンに確認した。

「勿論♪そしてトリスタを奪還した後は帝都ヘイムダルに正規軍、領邦軍による総攻撃を仕掛けて貴族連合軍に占領されている帝都並びにバルヘイム宮の解放をさせて、レン達特務部隊は”カレル離宮”に幽閉されているユーゲント皇帝達を救出して、追い詰められたカイエン公を捕えるか討ち取れば内戦はめでたく終結よ♪」

「え………という事はお父様達は”カレル離宮”に………」

「それに確か父さんの幽閉場所は皇帝陛下達と同じ場所だってレン皇女殿下は仰っていたから、父さんも”カレル離宮”に幽閉されているのか……」

「”カレル離宮”ですか……確かにVIPクラスの人物達を幽閉する場所として最適の場所ですね。」

レンの説明を聞いたアルフィン皇女とマキアスがそれぞれ考え込んでいる中、クレア大尉は真剣な表情で呟いた。

「あの……レン様。内戦終結まではどのくらいの期間を想定しているのですか？」

「そうねぇ……別に毎日作戦活動を行う訳じゃないから、早くて2週間……遅くても今年中に内戦を終結させられるわ。」

「ええっ！？ほ、本当にそんな短い期間で内戦を終結させられのですか……！？」

「は、早くてたった2週間で、遅くても今年中に内戦を終わらせる事ができるなんて……！」

「1ヵ月経ってもオレ達や正規軍の状況が悪くなる一方だった今の状況をそんな短期間で覆す事ができるなんて凄いな……とてもオレ達の年下とは思えない皇女だな……」

セレーネの質問に答えたレンの答えを聞いたアルフィン皇女は驚き、トワは信じられない表情をし、ガイウスは感心した様子でレンを見つめ

「ああ、そうそう。オリビエお兄さんの当初の予定通り、�Z組のみんなに内戦終結の為の活動をしつつ引き受けてもらう予定だったオリビエお兄さんが手配する”依頼”―――”特別実習”もちゃんと、�Z組のみんなが請けられる余裕もあるわよ？」

「ええっ！？オリヴァルト殿下が”特別実習”を私達に！？」

「今のレン皇女殿下の話は本当なのでしょうか、殿下？」

「ああ……各地で起きている大小様々な問題……それを解決するには、君達が適任だと思ってレン君の言う通り、元々用意するつもりだったのさ。それにしても”特別実習”の件まで君に読まれていたとはね……ハハ、君を敵に回したカイエン公達には同情するよ……下手をすればあのカシウスさんを敵に回すよりも君を敵に回した方が怖いと思うしね……」

「ア、アハハ……”お茶会”の件を考えるとそう言った相手を陥れるような真っ黒な事や人の行動を予測して自分の掌の上で踊るような事を考えるのはレンちゃんにとっては得意分野ですものね……」

「そうね……特に”謀略”に関しては多分、カシウス先生よりその娘の方が上だと思うわ。」

レンの話にアリサが驚いている中、ユーシスの問いかけに頷いたオリヴァルト皇子は疲れた表情でレンを見つめて呟き、苦笑しているアネラスの言葉にシェラザードは疲れた表情で同意し、オリヴァルト皇子達のレンに対する評価を聞いたアリサ達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「クスクス、あの”剣聖カシウス・ブライト”より上なんだから”褒め言葉”として受け取っておくわ♪ちなみに”特別実習”にはレンやリィンお兄さん達―――”特務部隊”も手伝ってあげるから、手伝って欲しいと思った時はいつでも申し出ていいわよ♪」

「レン皇女殿下達―――特務部隊の方達が我等の”特別実習”を……」

「……一体何が狙いで、この子達の”特別実習”に手を貸してくれるのよ？」

レンの申し出を聞いたラウラが驚いている中サラは警戒の表情でレンに訊ねた。

「うふふ、そんな大した理由はないわよ？理由は作戦活動以外でも一緒に活動をしていたら、自然と親しくなって”特務部隊”と”�Z組”が連携しやすくなるからよ♪」

「結局作戦活動に結びついているじゃねぇか……」

「……でも、”殲滅天使”の言っている事も一理あるね。」

「……そうね。作戦活動をしない日も無駄にしないまさに”内戦終結までの完璧な道のり”を組んでいるのでしょうね、”殲滅天使”は。」

レンの答えを聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中トヴァルは呆れた表情で呟き、静かな表情で呟いたフィーの言葉に頷いたセリーヌは呆れた表情でレンを見つめた。