実りのシャーミ
説明
どれ、婆がお話をしてあげよう。こんな話は知っておるかな?むかしむかしのお話さ。
乾きや飢えに苦しむ土地に、どこからともなくふらりと現れるひとりの女がおったそうじゃ。
珊瑚の角にくらやみでおぼろに光を宿す瞳、一目で人外の者であると知れたという。
女は地脈を読むのに長けていた。地脈とは何かじゃと?
そうさのう、地の果てまでを巡って還る、魂のやってくるところ。
この大地をお創りになった竜神様の、体を流れる血の道筋のようなもの。
儂らの体に血が流れているのと同じように、大地にもまた血が流れておるんじゃよ。
澱めば病み傷つければ流れ出る、その流れを読むことに女は長けていた。
流れにそった実りを紡ぐ、そうすることで乾きや飢えを少しずつ癒していくすべを土地の者に教え、
気がついた時には女は去っていたという。
竜神様の遣いだとか、東の果てからやってきた異郷の精霊だとか、真実は地脈のごとく流れるまま。

祖母から聞いた昔語りの神々や精霊は、今頃どうしているのだろうか。
地脈を読み実りをもたらす、なんといったか……確か『実りのシャーミ』。
彼女もまだ、この大地に、息づいているのだろうか。それとも―――

<名も無き古びた日記帳の1ページより抜粋>
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