【創作】少年と世界樹 3話 |
前回までのあらすじ
砂漠のオアシスで出会った旅人の少年と喋る樹の苗は道中、大雨の影響で土砂崩れで塞がれた城までの道を樹の苗の助言で、町の人々と協力し、土砂崩れの大きな岩を撤去することが出来たのだった。
町の人は少年に感謝し寝床や食事など感謝のしるしとして与えた。その夜、すっかり雨雲は晴れ美しい星空が広がっている。少年は星空を宿の窓から見ていた。
「今日は、色々あったね・・・たった一日しか経ってないのに・・・。今日は色々有難う。君って頭がいいんだね」
少年は机の上に置いてある樹の苗に話しかける。
「いやー、それ程でも!それに、言ったでしょ。旅に連れて行ってくれる代わりに知恵を貸すって」
樹の苗は言う。少年はクスっと笑う。
「ちょっと、なんで笑ったの?変な事言ってないよ」樹の苗が驚く。まさか、樹の苗に助けられ、何気ない会話をするなんて思ってもみなかった。それがなんだか不思議で面白かった。
そして少年と樹の苗は就寝した。翌日、町の危機を救ったとして、国王に表彰され祝いの宴を行うと町人企画してくれたが、少年は旅の準備が終わった為、逃げるように砂漠の城下町から出て行った。恥ずかしくて、そういう気分ではなかったのだ。
少年と樹の苗は旅を続けた途中で狼に襲われたり、雪山を登ったり、大河を渡るため村の人に手伝って貰い木製の小さな手漕ぎボートを作ったり、小さな村の作物を荒らす魔物討伐や氷の大地での流星群の観察を手伝ったりと、過酷な事もあったが貴重な経験が出来る事もあった、時には樹の苗の知恵で問題解決のヒントになったりと役に立っている。
そんなある夜。少年は野宿の為に焚火をしていた。
「ずっと思ってたんだけど、どうして君は旅をしてるの?」樹の苗の純粋で素朴な問いかけだった。
少年は少し俯くとそっと静かに語った。少年の父が旅人だった。母は自分が幼い頃に流行り病で亡くし、村の知り合いに引き取られて育ったという。時々旅から帰ってくる父の旅話が大好きだった。
しかし、今から4年前に突然、旅先の険しい渓谷で父が転落し行方不明になったと聞いた。少年は村のみんなの反対を押し切り父を探すために旅に出たのがきっかけだった。少年はその渓谷に行ったが父について手掛かりは無かった。
少年は世界中を旅し父を見つけようとしたのだが・・・「結局、今は旅するのが楽しくて父の事は半分諦めちゃってるんだけどね・・・酷い性格だよね・・自分は。」
少年は苦笑いしながらも初めて自分の過去を語ってくれた。それが樹の苗にとっては嬉しかった。
「じゃあ、今度は僕の番だね。」樹の苗は自分の過去を話始める。
「僕は、僕自身が何者なのかよくわからないんだ。気が付いたらあの場所にいた。いつから居たのかも分からない、僕だけが他の植物と違って自分の意志で動けるし、人間と何故か会話ができる、そしてある筈がない人間の様な自我を持っている・・・」
樹の苗は淡々と自分の過去を語る。
「それが、とても不思議で怖くてオアシスにいる植物たちと違うのに気が付いたんだ。あのオアシスには僕が知ってる中で3人ぐらい偶然辿り着いた人間がいた。
しかし、僕を見ると怖がってどこかに行ってしまった。小鳥が外の世界の事を教えてくれるんだ。それで僕もその世界を見てみたいって思って、長い間ずっと僕を連れ出してくれる人間を待ってたんだ・・・それが君だよ」
樹の苗は少年の方を向いて語る。ようやく本当に仲良くなったように思えて嬉しかった。その内心、少年はずっと気になっていた、「オアシスには神が居る」という噂を。
本当にあのオアシスに神が居たとするならば、自分の目の前にいるこの喋る樹の苗の正体は何なのだろうかとふと疑問に思った。
4話につづく
説明 | ||
更新遅れてしまってすみませんでした。これからちょくちょく作品投稿する予定です。 | ||
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