ポケモンDPt 時空神風伝 47
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ホウエンに、帰る

 

こうしてシンオウのジムバッジをすべて集めたクウヤ。

 

「そういえば、これからクウヤくんはどうするんだい?」

「え?」

 

リョウに突然そう問いかけられてぽかんとする。

 

「どうするって・・・」

「シンオウポケモンリーグにはいどまねぇのか?」

「・・・」

 

そういえばそうだ。

自分は今、シンオウ地方のすべてのジムバッジを持っているのだから、この四天王と、チャンピオンのシロナが待つポケモンリーグに挑むことができる。

強いトレーナーと戦えるのなら、是非挑戦したいとも思っていた。

だが、それ以前にクウヤにはやらなければならないことがあった。

 

「・・・あの、さ」

「?」

「おれ・・・実はシンオウだけじゃなくて、ホウエンのバッジも全部集めたんだ。

だけどおれがバッジを全部集めたとき、ホウエンは大変なことになってて・・・ポケモンリーグ挑戦どころじゃなくてさ。

このシンオウ地方にだって、ミクリ兄ちゃんに勧められたままきただけだし・・・この地方のリーグに挑んでチャンピオンになるとか、考えてなかった」

 

クウヤはまだ、ホウエンにすら挑んでいない。

 

「ちゃんとそれができるとか、したいとか・・・そんな気持ちがしっかりとしていないのに・・・チャンピオンの座をかけてシロナさんと戦いたくないんだ」

「・・・」

「あ、もちろんいつかはあの人とポケモンバトルはしたいけど!

だけど、チャンピオンとかそういうのじゃなくてふつうにポケモントレーナーとして戦いたいし!

チャンピオンとかそういうのになって、なにがしたいとかどうなりたいとか・・・そんなちゃんとした理由とかがないまま勝負してチャンピオンになりたくないんだ」

「・・・」

「だからシンオウのポケモンリーグには・・・悪いけど、挑めない」

 

そう言って、自分はリーグには挑まないと告げるクウヤ。

そんな彼に対し反応し、返事をしたのはキクノだった。

 

「クウヤ君は、明るくて元気でとっても腕白で、正義感が強くて前向きな子だと思ってたけれど・・・。

こんなに強い気持ちと、しっかりした考えを持った子でもあったのね」

「その気持ちと考えを大事にしながら、これからもポケモントレーナーとして精進してくださいね」

 

ゴヨウにも言われて、クウヤは顔がほころぶ。

 

「・・・ま、お前はお前のやりたいようにすりゃいいさ。

だけど、いつかはオレ達と勝負してくれよ!」

「ボクも、キミと戦いたいな」

「・・・うん、ありがとう!

いつか勝負しような!」

「おっと、オレもリベンジしたいんだがな」

 

ナギサシティで彼らとそうじゃれあっていたとき、彼らの前にシロナが現れた。

 

「元気そうね」

「シロナさん!」

「まずはクウヤくん、シンオウのジム全制覇おめでとう。

シンオウの危機を救った件もあって、私は君の実力を認めます」

「ありがとう!」

 

シロナはデンジをからかいつつ四天王に指示を出し、ポケモンリーグに戻ることを告げるとクウヤに一言残す。

 

「クウヤくん、これからもこれははっきり覚えていて。

君は世界に望まれてここにいること、君の周りのすべても世界に望まれて生まれてきたこと・・・。

だから君は今、生きてここにいる。

それは絶対に大事なことで、忘れちゃいけないの」

「・・・うん・・・!」

 

シロナの言葉をかみしめるように、クウヤは微笑んでうなずき、実はずっと気になっていたあの男の名前も出す。

 

「アカギにも、ちゃんと教えてあげなきゃな!」

「ふふ、そうね」

「おれ、アカギが面会できるようになったら会って話をするよ」

「わかったわ・・・そのときがくるといいわね」

「おう!」

 

そしていつかの勝負と再会を約束し、シロナと四天王と別れる。

 

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「・・・」

「ゴォウ」

「ああ・・・もうすぐ来ると思うぜ」

 

今彼がいるのは、リッシ湖。

あのあとでナギサシティをでたクウヤは父から連絡をもらい、このリッシ湖であおうという話になっていた。

ポケモンたちと湖を眺めながら彼を待っていると、湖にすむコイキングが、同じくこの湖で泳いでいたイーブと戯れて大きくはねる。

 

「・・・そういや・・・この湖ってギンガ団の爆弾で爆発して、水がなくなっちまってたんだよな・・・」

 

そう、ギンガ団の動きが大きくなったとき、このリッシ湖は犠牲になった。

湖の中心で爆発が起き、水が一気に引き、コイキングが何匹も打ち上げられた。

その目的はこの湖に眠るアグノムの出現とその捕獲であり、その計画通りにアグノムはギンガ団に捕まってしまった。

コイキングは弱ってしまったものの直後にマキシが駆けつけ、保護したため死んだポケモンはいなかったという。

さらに、アグノムが湖に戻ってきた瞬間、不思議なことに湖は光に包まれ、前と同じように美しい水があふれ出てそこを元の湖に戻したのだという。

 

「・・・アグノム・・・ユクシー・・・エムリット。

ディアルガとパルキア、そしてギラティナと一緒に・・・このシンオウをこれからも守ってくれよ・・・」

 

この湖をみつめて、今回出会った伝説のポケモンを思い返す。

シンオウ地方で出会った彼らのことを思いだしていた、そのときだった。

 

「クウヤ」

「・・・父ちゃん!」

 

そこに、ジンダイが現れた。

 

「クウヤ、ついにバッジを8つ集めたのだな」

「うん、ばっちりこの通り!

父ちゃんも、キッサキの調査はいいのか?」

「ああ、そこに眠る存在にも会った。

だけど、あれはしばらく、あのままにしておくことにしたんだ」

「え、いいのか?」

「構わんさ、あいつがいるというのがわかったからな・・・お」

「?」

 

ジンダイはなにかに気づき、彼とは別の方向を向く。

彼の視線の先から姿を見せたのは、長くふわりとした

 

「・・・クウヤ・・・なの・・・?」

 

その女性はクウヤをみて口に手を当てながら、自己紹介もしていないのにクウヤの名前を言い当てた。

 

「・・・なぁ、もしかして・・・あんたは・・・」

「俺の妻、美幸だ」

「!」

 

ジンダイがその女性を紹介し、クウヤはぴくっと反応した。

この女性がジンダイの妻ということはつまり、自分の母親である可能性が高い。

 

「じゃあ・・・あん、たが・・・おれの、母ちゃんなのか?」

「・・・そうなるわ・・・。

ああ・・・クウヤ・・・大きくなったわね・・・あいたかったわ!」

 

ミユキはその目に涙を浮かべながら、クウヤを抱きしめる。

 

「こんなに・・・元気な男の子に・・・立派なポケモントレーナーになって・・・よかった・・・」

「・・・」

 

抱きしめられて、クウヤは暖かさと懐かしさを感じて、理解した。

この人が、自分の母親なんだと。

 

「クウヤ、どうだ・・・ホウエン地方でアダン殿と話を終えたら、一緒に暮らすか?」

「私も、それが嬉しいわ」

 

ジンダイとミユキは自分の息子に対しそう提案を持ち込んだ。

クウヤは、そんな両親の気持ちが嬉しかった・・・だが、クウヤは首を横に振る。

 

「・・・おれも、父ちゃんと母ちゃんとまた会えて、これからも家族として思ってくれることが本当にすごく嬉しい」

「クウヤ・・・」

「でもさ、ホウエンもシンオウも、おれの知っているつもりで、まだわかっちゃいねーんだ。

それに別の地方にもっと強いトレーナーや会ったことないポケモンもいる。

ホウエンを旅したこととかも、このシンオウを旅しているときも、よくわかったよ」

 

たくさんの人とポケモン達・・・この地方以外の世界も同じなのか、どうなのか・・・。

例えどんな現実があろうとも、世界をこの目でみたい。

だから、これからもポケモンと冒険をしたい。

 

「だから、おれは旅を続けたい・・・だから一緒には暮らせない・・・ごめん・・・」

 

この願いを貫きたい気持ちはあるが、両親を悲しませるかもしれないという不安の方が大きかった。

だからその気持ちを伝えるときのクウヤは悲しそうな顔をしていた。

 

「・・・くす」

「ふっ」

「え?」

 

だがクウヤの不安は杞憂に終わった。

ジンダイもミユキもその顔に笑みを浮かべていたのだ。

 

「あなたがポケモントレーナーとして旅をしているって聞いたときから、どこかで予感がしていたのよ。

旅をしたいんじゃないかって・・・だから私は貴方を応援するわ。

だから、冒険、続けてもいいわよ」

「母ちゃん・・・」

「その冒険にすべてをかけるところ、この人と同じね。

やっぱり親子だわ、ね?」

「おいミユキ、そこは言わなくてもいい」

 

妻にそう言いつつもジンダイの様子から、彼女の言葉を否定する要素はないらしい。

くすくすと笑うミユキにたいし複雑な気持ちを抱きつつも、ジンダイは真剣な顔でクウヤに向かって言う。

 

「まぁでも、俺もミユキと同じ気持ちだし、同じことを言うつもりだった。

お前が冒険を続けたいというなら、俺は止めない。

だからとことん、自分が納得いくまで冒険を続けろ。

もちろん、ポケモンと一緒にな」

「父ちゃん」

「だがホウエンに帰るというなら、そこまで俺のこの」

 

リッシ湖の真上を、巨大なピラミッドがとおりすぎていった。

それこそが、ジンダイが管理しているバトルフロンティアのバトル施設、バトルピラミッドだ。

 

「おぉー!」

「バトルピラミッドで送っていくぜ。

そこで3人で少しの間でもすごそう」

「・・・うん!」

 

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翌日の朝、クウヤはホウエンに帰る前に、コウキ、ヒカリ、ジュン、そしてナナカマド博士に会いに行っていた。

 

「じゃあナナカマド博士、おれホウエン地方に帰るよ。

ポケモン図鑑、ありがとう・・・ヒーコはこれからも大事に育てるよ」

「うむ、このシンオウの旅が君にとってよきものであったならば、儂もヒコザルと図鑑を差し上げたかいがあったというものだ。

ほかの地方に行っても、この地方で学んだことを忘れぬようにな」

「うん!」

 

ナナカマド博士に賞賛の言葉ももらい、クウヤはへへっと笑う。

続けてコウキにも話しかけると、コウキは自分のポケモンとともにこれからのことを話し出した。

 

「ボクも、もう少し鍛えたらデンジさんに挑戦する。

そしていつかはシンオウリーグにも挑戦するよ」

「そっか、デンジさんは強いけど、きっとお前なら大丈夫だぜ」

「うん、そしてボクもほかの地方にいこうかなって思ってるんだ。

また旅先で会ったら、バトルしよう」

「ああ、もちろんだぜ!」

 

そういってクウヤとコウキはライバルの証として握手を交わした。

そこに、ジュンがちょっと待ったと叫びながら割ってはいってきた。

 

「オレだって、バッジ全部集めてやるぜ!

それでリーグにいどんで、オレは親父も越えるんだ!」

「え、お前の父ちゃんもつえぇの!?」

「もちろん、すっげー強いぜ!

・・・負けたって、また鍛えて、もう一度挑戦するんだ!

ポケモンだけじゃない、オレ自身だって強くなるって決めたからな・・・やってやるぜ!

だからお前らもまけんじゃねーぞ!」

「キミもね」

 

ジュンとも同じようにライバルの誓いをたててもりあがる。

 

「あ、クウヤくん」

「なんだ、ヒカリ?」

 

そのとき、ヒカリが袋を抱えて彼に声をかけてきた。

その袋を受け取ったクウヤはあけていいかときき、彼女がうなずいたのを確認してそれをあける。

その中にはポケモンたちへとかかれた袋とクウヤくんへとかかれた袋が入っていた。

どちらの袋も、可愛くラッピングさせれていた。

 

「この甘いにおい・・・もしかしてお菓子?」

「そっちはクッキーで、そっちはポケモン用のお菓子のポフィンだね」

 

どうやらヒカリの手作りのようだ。

ヒカリは照れ笑いをしながら、話をした。

 

「なんか、私っていつも助けてもらってたから・・・そのお礼にって思ってがんばって作ったの!

だから帰る途中でいいから、ポケモン達にはこのポフィンを、そしてクウヤくんはこのクッキーを食べてね!」

「そっか、さんきゅーな!」

 

クウヤは満面な笑顔をみせ、ヒカリははっとなる。

それでクウヤくん、と思わずヒカリは彼の名前を口に出しよび、名前を呼ばれた張本人はなんだ、と首を傾げる。

 

「・・・また会いましょ!

シンオウ地方は、いつでもあなたを待っているわ!」

「ああ、またくるぜ!」

 

その直後、クウヤはバトルミラミッドに入っていく。

彼が乗ったことを確認したバトルピラミッドは空中に浮かび飛んでいく。

 

「・・・ヒカリ」

「・・・いいの・・・これは秘密で!」

「・・・そっか・・・でも、また会ったときに言えるといいね」

「ええ!」

 

そのとき、ヒカリに気づいたコウキが彼女に声をかけるが、ヒカリはコウキに向かって笑いかけるだけだった。

 

「またなぁー、シンオウ地方!

また絶対、ぜーったいくるからなぁー!」

 

クウヤは遠くなっていくシンオウ地方に向かって、そう叫ぶ。

 

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シンオウ地方が見えなくなった頃、クウヤはバトルピラミッドのバトルフィールドでポケモンを解放していた。

ポケモン全部を出しても広いその空間でポケモン達とともに、ヒカリにもらったお菓子を食べながら旅の話をしていた。

 

「ヒーコ、ズーバ、トーム、イーブ、リーン、リーム。

お前達もホウエン地方に着いたら、あそこに残してきたおれの仲間達と会わせてやるからな」

 

ゴウカザルのヒーコ、クロバットのズーバ、ロトムのトーム、シャワーズのイーブ、キリンリキのリーン、マンムーのリーム。

シンオウ地方で新しく仲間になった、このポケモン達。

彼らも大事な仲間だから、ホウエンの仲間と一緒にさせて、うまくとけ込んで仲良くなってほしいなと思っている。

 

「クウヤくん」

「あ、ゲンさん!

・・・そっか、ゲンさんも一緒に乗ってたんだよな」

 

ゲンはホウエンにも用があるというので、せっかくだからという理由で彼らとともにここに乗っていた。

 

「ホウエン地方はまだ行ったことがないからね、どんなところか楽しみだ」

「すごくいいところだから、期待してていいぜ」

「そうか」

 

無邪気にそういうクウヤにたいし、ゲンは口を開く。

 

「ところで・・・こんな文章がシンオウの遺跡にあるのを知ってるかい」

「?」

「FRIEND。

全ての命は別の命と出会い、何かを生み出す・・・」

「・・・」

「その何かは人によって変わるけど・・・もっとも大事なのは、その何かをどうするか、どう思うか・・・だ。

キミにとってはなにかな?」

 

ゲンの問いかけに対し、クウヤはんーとうなって、自分のポケモンをみてから答えを出した。

 

「ふれんど、て友達だろ。

だったら信頼とか絆とか、そういうものだと思うんだ・・・」

「それを、大事にできるかな?」

「大丈夫!」

 

そういってクウヤは笑った。

 

「おーい、食事の用意ができたぞ!」

「クウヤ、ゲンさんと一緒にこっちきなさーい!」

「ではいこうか」

「ああ、いまいくよ!」

 

 

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大切なものは幻のようで、一瞬しかないかもしれない。

 

だけどその一瞬の中にも感じるものがあるならば、それは決して無駄なことではない。

 

感情を持ち、知識を生かし、意志のまま動く。

時間と空間を生きて歩いていくというのは、そういうことなのだろう。

 

そういう心を持ち大きい存在に見守られながら。

 

神風のように、生きる道を駆け抜ける。

 

 

 

 

時空神風伝・完。

 

説明
今回でこの長編も、完結です。
クウヤのもう一つの旅物語だった、この時空神風伝。
読んでくださった方々、ありがとうございました。
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コメント
まさかTINAMIでオリトレ小説が読めると思っていなかったので、ずっと更新楽しみにしていました。公式地方をオリトレが旅する話が好きなので、クウヤ君のシンオウ旅が読めてとても楽しかったです。完結お疲れさまでした!(菊花破矢)
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ポケモン ポケットモンスター オリトレ オリキャラ DPt 長編小説 

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