艦隊 真・恋姫無双 131話目
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【 憤怒 の件 】

 

? 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

この後、貧乏くじを引き当てた赤城が加賀達に説教される……という事はなく、その様子を黙って見ていた一刀が、微笑みながら語りかけてきた。

 

ーー

 

一刀「………そうか。 いつの間にか……仲良くなっていたんだな。 赤城と桂花は……」

 

桂花「はあっ!? 誰と誰が仲良しなのよっ!!」

 

赤城「誤解しないで下さい!! 私と桂花さんは、そんな関係じゃ────」

 

一刀「喧嘩する程……仲が良いって言う事じゃないか。 ははは………」

 

桂花「わ、笑い事なんかじゃないっ!!」

 

ーー

 

桂花と赤城が椅子に座る一刀の前にまで来て、一所懸命に否定するのだが、一刀は笑って取り合わない。 

 

それどころか急に立ち上り、ニコニコと笑いながら両手を二人の頭に優しく乗せて、ユックリと撫で始めた。

 

ーー

 

桂花「あ、あのねぇ? こんな……子供騙しみたいなものでぇ……こ、この私が……納得するとでも……思っている……のぉ?」

 

赤城「桂花さん、は、恥ずかしそうに上目遣いで見られても……説得力なんか殆ど無きにも非ず……じゃないですか……」

 

桂花「あ、アンタだって………そうじゃ───あっ!!」

 

赤城「て、提督っ!!」

 

ーー

 

また些細な事で言い争いになる二人だが、そんな時に一刀の体勢が崩れた。 端から見れば、一刀の足が弱まり二人に倒れ掛かったように見えた。

 

当然、一刀を心配した桂花達は、その倒れ込む身体を支える為に手を伸ばした。 だが、そんな二人に更なるハプニングが起こる。

 

それは………倒れ込んだ一刀が、二人を包み込むように抱きしめたからだ。

 

ーー

 

一刀「…………………」

 

桂花「にゃ、にゃにぃを!?」

 

赤城「はわぁっ!?!?」

 

ーー

 

この突然の出来事により、顔を赤らめて慌てる二人。 

 

端から見れば、一刀が体調を崩し倒れたところを、二人が受け止めたと思われるような一連の流れ。 

 

しかし、本当の目的は別にあった。

 

ーー

 

一刀「(…………………赤城、桂花………静かに聞いて欲しい……)」

 

「「 ─────!! 」」

 

ーー

 

桂花達の間に一刀の顔が割りこみと、二人へ耳打ちを始めた。 

 

その声は静かで、二人にしか聞こえない程の声量だったが、桂花と赤城にはハッキリと聞こえる。

 

ーー

 

一刀「(───それで、だ。 もし……謝罪を受け入れられなかった時……俺の後ろで心配している加賀達、各地に散らばっている艦娘達を………どうか護ってくれ)」

 

桂花「はぁ!? 何を言ってるのよ! 華琳様や皆が、そんな事───えっ!?」

 

赤城「───っ!!」

 

ーー

 

一刀の思わぬ行動、そして発言に反論しようとした桂花だが、その直後、強烈な寒風が背後より襲い掛かる。 今し方、口を開いて出した名前の人物からの覇気。

 

桂花は思わず身体を動かし、その原因を解明するために振り返り、赤城も何か感じる事があったか、尋常ではない早さで、後ろへ身を翻す。

 

このとき、振り返り原因を探り当てた二人は、思わず絶句することになろうとは、流石に予想できなかった。

 

ーー 

 

冥琳「皆、下がれぇ! 下がれぇ!!」

 

春蘭「か、華琳様ぁぁぁ!!」

 

秋蘭「姉者、危ない!!」

 

詠「何をしてるのよっ! 巻き添いを食らいたいの!? は、早く! 早く下がりなさいっ!!」

 

ーー

 

とある者の半径10b程を空白地帯にすべく、大声で避難を呼び掛ける冥琳と詠。 

 

事態の異常を知り、慌てて退避する恋姫達。

 

ーー

 

菊月「……………な、なんだ? 司令官と同じく人の身で……あんな事が……起こるのか?」

 

如月「あの子って……何なの? まるで……深海棲──」

 

天津風「何をボケっとしてるのよ! 現状を把握して動くのが部屋に残留したあんた達の役目でしょ!?」

 

如月「はぅっ!」

 

菊月「す、すまない! 直ぐに警戒態勢をとる!」  

 

 

 

準鷹「んっ………お仕事ぉ〜? うぅ〜〜ん、よぉーし、任せとけ! 商船改装空母、隼鷹、今から出撃する! 

 

 

あっ……と、その前に景気付けで……あと一杯〜」

 

飛鷹「ほらっ、さっさと行きなさいよっ!!」

 

準鷹「うわぁ〜、ば、馬鹿っ! だから、笑顔で艦載機を発艦準備させんなよぉ! 洒落にならないんだってばぁ!!」

 

ーー

 

異常なる気配に唖然とするも、直ちに(?)艤装を出現させ警戒態勢をとる艦娘達。

 

皆が皆、驚き警戒するのも無理はない。

 

周りの耳目を集めし者は、腕組みしつつ一刀達を睥睨し威風堂々と佇む、警戒対象となった少女──華琳。 

 

ーー

 

 

華琳「……………」

 

 

 

桂花「あ、あ…………か、華琳様!?」

 

赤城「───な、なっ!!」

 

ーー

 

華琳の周辺では猛る風が吹きすさび、華奢な身体を中心として部屋の空気が集束。 その強大な気を誇示するように、周囲の風景が陽炎のように揺らめいた。

 

まるで、どこぞの天の覇者のような高密度な覇気(オーラ)を身に纏う。 もし、取り押さえようなどと近付けば、無数の拳撃で阻まれることに……なるのかもしれない。

 

その威圧感溢れる態度に、華琳をよく知る筈の桂花さえも身体の震えが止まらない。 何時もと違う怒りの覇王を間近にして、王佐の才といえども何も手が打てない。

 

しかも、その過剰な覇気は、冥琳達と桂花の間に流れ出て、冥琳達の警告が間に合わず、恐れで立ち竦む桂花へと迫る。

 

もし、これが歴戦の武人であり、千軍万馬の強者であれば、多少は覇気に持ち堪えよう。 

 

だが、誰が見ても武人とは程遠い文官の桂花。 華琳の覇気に対抗など出来ず、昏倒するのは時間の問題だった。

 

しかし───

 

ーー

 

赤城「桂花さん! 早く、私の後ろに!!」 

 

桂花「───うぷぅ!! あ、赤城っ!?」

 

赤城「な、何これ…………し、信じられない! 人の身で、深海棲艦並みの……えっ!? う、うそ……鬼級!? ううん、違う! この重圧は……姫級!! ど、どうしてぇっ!?」

 

ーー

 

赤城が思わず前に出て桂花を庇うが、その赤城の顔にも驚きの表情が浮かび、冷や汗が数条に別れて頬を伝う。 

 

当然、一刀達の後ろにいた加賀達も騒ぎ出し始めた。

 

ーー

 

加賀「提督、直ぐに艦隊編成を!!」

 

一刀「……………」

 

陸奥「悩んでいる暇などないわ! 被害を未然に防ぐのも私達艦娘としての役目! 早く、命令を御願い!!」

 

一刀「……………」

 

ーー

 

加賀と陸奥が一刀に艦隊編成を進言する中、華琳は改めて鋭い殺気と高圧力の覇気を一刀達へと放つ。 

 

あまりにも強烈な覇気を叩き込まれ、思わず苦痛で歪む一刀。 そんな一刀を見て、加賀達は目を吊り上げ、鎧袖一触で叩きのめさんとばかりに、華琳へ怒気を放つ。

 

そんな中、一刀は静かに命令を下す。

 

それは、命令は命令でも………誰にも口を挟む事が許されない、至上命令という発令だった。

 

 

 

◆◇◆

 

【 孤立 の件 】

 

? 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

 

冥琳「………ただの軍師である私が、荒れ狂うお前の傍に立てれるとは、なんとも不思議なものだな……」

 

華琳「……………」

 

ーー

 

冥琳は、被害が及ばないように素早く皆を退避させた後、自分だけは華琳の後ろに留まり、様子を窺っていた。

 

強烈な威圧、吹きすさぶ強風。 

 

前の世界で敵対していた時に、幾度も華琳の覇気を肌身へ感じていた冥琳だが、今の華琳に遠く及ばない。 あの頃に受けた覇気など、微風のような物だと感じていた。

 

現に、華琳の直臣で耐性がある筈の春蘭達さえも、華琳の覇気に苦悶を浮かべ何も対処ができないまま、断腸の思いで引き下がる術しかなかったのだ。 

 

勿論、他の将達も言うまでもない。

 

撤退を呼び掛けていた詠も、苦しげな表情をしながら最後まで居ると言っていたのだが、月の頼みで来た恋が無理矢理連れて行ってくれたので、周辺には二人しか居なかった。

 

ーー

 

冥琳「………雪蓮や祭殿さえ退いたのだがな。 ふふふ、実に興味深い事象だ」

 

華琳「………………そんな事、知らないわよ」

 

冥琳「ふっ、ただの独り言ゆえ返事は期待していなかったのだがな。 まあ、丁度いい。 一つ、聞かせてくれないか?」

 

華琳「…………」

 

冥琳「どうして………このような真似を?」

 

ーー

 

冥琳は、怒髪天を衝く華琳へと静かに語りかけた。 

 

未だに渦巻く覇気は華琳の身体に纏わり付き、少女以外の他人を寄せ付けない。 周辺にある円台や料理さえも、弾き飛ばされている始末。

 

だが、華琳の後ろに立つ冥琳には何も影響はなく、何時もと変わらない。 そんな自分に苦笑しながらも、冥琳は華琳に質問を投げていた。

 

ーー

 

華琳「………既に、理解しているんでしょ? 私へ語った一刀の謀の一部、あの話が私の中で全部の辻褄を合わさったの」

 

冥琳「………………」

 

華琳「一刀は………私達と………関わりたくない……って」

 

冥琳「………………」

 

華琳「一刀は、一刀は……………私達、ここに居る者達と関係を絶ちたがってる! 今、傍に居る……艦娘と呼んでいる子達と一緒になりたい、そう望んでいるのよっ!!」

 

ーー

 

後ろに振り向き、涙ながらに絶叫した華琳の言葉は、一刀達にも、他の者達にも聞こえなかった。 何故ならば、華琳の周囲で覇気が渦巻き、声を通さなかったからだ。

 

唯一、辛うじて聞こえていたのは……問い掛けた冥琳のみ。

 

しかし、その言葉を聞いて何度か頷いた冥琳の口にした言葉は、慰めでも叱咤でもなく───

 

ーー

 

冥琳「………ふむ、嫉妬……か? いや、寧ろ……弄り過ぎて癇癪を起こした子供……かもしれんな」

 

華琳「────!?」

 

ーー

 

なんと、戯れ言に似た感想だった。

 

その言葉を聞いて、華琳の泣き顔は唖然とした表情に変化し、少し経てから意味を理解した時は頬を膨らまし、憮然とした態度で『不愉快だ』と身体全体で示す。

 

だが、冥琳の話は続く。

 

ーー

 

冥琳「雪蓮もそうだが、上に立つ者には孤独が付きもの。 人が忙しい時に決まって、構って欲しいと駄々をこねるものだ。 全く、実に困ったことだよ」

 

華琳「あ、あのねぇ! 私の話を聞いてるの!?」

 

冥琳「聞いてるとも。 大事な男と………『親友』が離れたので、拗ねているのだろう? だから、北郷にかまって貰いたいと要求したい訳で───」

 

華琳「違うでしょ! 冥琳、貴女だって寂しくないの!? 一刀を取られたのよ!? あのままだと、私達は見向きもされないままで、終わる事になるのが何故わからないの!!」

 

ーー

 

華琳の覇気が、龍が天に昇天しようと蠢くように、更に強く更に激しく勢いを増した。 まるで、自分の意に反する言葉など聞きたくないとでもとれる行動である。

 

だが、それにも関わらず、空白地域内に深く入っている筈の冥琳の身体には、影響など全くない。

 

寧ろ、我が意を得たりと言わんばかりに澄ました顔で、前方を指差す。

 

ーー

 

冥琳「ならば、あの北郷の行動は……何だというのだ?」

 

華琳「───えっ?」

 

ーー

 

冥琳に指摘され、華琳は前方に目を見張る。 

 

その先には……弱った身体を鞭打ちながら毅然とした態度で艦娘達を説き伏せ、華琳に一人歩み寄る北郷一刀の姿が見えるのだった。

 

 

 

◆◇◆

 

【 懇願 の件 】

 

? 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

 

今まで泰然自若としていた華琳に、一刀が踏み締めるように一歩、また一歩と近付く。 そして、華琳の周りで旋回する風の中に入ると、腰を落として膝を付いた。

 

別に臣下の礼をとった訳ではなく、弱まった一刀の身体では倒れてしまう為に行った防衛処置である。

 

そして、一刀は不自然にならないよう口角を上げ、顔を強張らせる華琳へ語り始める。

 

ーー

 

一刀「待たせた……ね」

 

華琳「ど、どうして………」

 

一刀「……………謝りに来たんだよ。 俺達は、いや、俺は……君達を利用した。 君達の想いを知りながらも───」

 

華琳「────ふん、白々しい真似は……止めてくれない?」

 

ーー

 

一刀が謝罪の言葉を語ると、先程まで動揺していた筈の華琳から表情が消え失せた。 

 

感情が抜け落ちたと思うほど、華琳の顔には表情がなかったのだ。 無表情な顔は、西洋人形の造形を思わせるほど、美しかったが、その両目の奥には怒りの炎が宿る。

 

ーー

 

華琳「冥琳達は貴方を持ち上げているけど、私は貴方の行動に幻滅したわ。 自分勝手に行動して私達を振り回し、挙げ句の果てには失敗し、それで許しを乞うなんて………」

 

一刀「…………」

 

華琳「あまりにも虫がいい話じゃないのかしら。 天の御遣い『北郷一刀』サマ?」

 

ーー

 

新たに発生する覇気に気流が変化を生じ、華琳達の周囲の圧が強まる。 ただ一人、傍に居る冥琳は心配そうな視線を示すだけで、手助けなどせず黙って見つめるだけ。

 

華琳達より距離を置いた者達は、華琳の態度と語る話に付いてこれず、黙って静観している。

 

ーー

 

華琳「昨夜、あの戦いで貴方達は……手を抜いていた。 本来なれば、あのくらいの敵など鎧袖一触で殲滅できた筈よ。 洛陽城での戦いを顧みれば、直ぐに理解できるわ」

 

一刀「あれは……」

 

華琳「自分達の力を抑えていたのは、私達に恩を売らせる為? それとも、王允達の目を欺く為?」

 

一刀「……………」

 

華琳「どちらにしても、私達は天の御遣いを援助した者として、名声を高く得られる事になるわ。 貴方の思惑は何処にあるかは知らないけど、私達の益になる事は確かよ」

 

ーー

 

一刀が途中で口を噤む(つぐむ)の見て、予想が正解だった事を喜び一笑する。 

 

しかし、この問いは前座でしかなく、次の瞬間には喜悦の表情は直ぐに消え、華琳からの言葉は更に舌鋒鋭くなり、一刀への詰問を厳しくする。

 

ーー

 

華琳「だけど、今回の宴席。 これは、祝勝の宴ではなく……別離の宴。 私達との関係を断ち切る……為の!!」

 

一刀「……………」

 

華琳「だって、そうでしょう? 私の信頼する春蘭や秋蘭達、そして私さえ……全く敵わない子達が一刀の傍に居るのに、私達と居る事は一刀にとって意味が無いもの」

 

一刀「……………」

 

華琳「───だったら、私達は必要ない! 人材としても、女としても……私達は!!」

 

ーー

 

ここまで言い切ると、華琳の顔が急に歪む。 険しかった顔から険が取れかかり、瞳は濡れていく。

 

まるで、幼子が親に置いて行かれたような表情が、一刀を見る度に現れては消える。 

 

ーー

 

華琳「だ、だか……らぁ! ぁ、だ、だぁ、だからぁ!!」

 

一刀「……………」

 

華琳「んぐぅ………ぅぅぅぅぅ!!」

 

ーー

 

言葉の続きを紡ごうと口を開くが、喉の奥より押される衝動が苦しいのか、幾度もなく唇を噛むしめ堪える。

 

横に居る冥琳は、哀しみの色を瞳に湛え、静かに佇む。 

 

後ろで華琳の様子を窺う仲間の中から、春蘭達が華琳の様子を泣きながら注視し、別の所では嗚咽の声が漏れ聞こえた。

 

ーー

 

華琳「………ん……ね……ぇ、そう意味……なんでしょう? 私達の……私のこ、と……いらないっ……て!!」

 

一刀「……………」

 

華琳「こ、答え、なさい………一刀」

 

一刀「………………」 

 

華琳「答え、なさい!!」

 

一刀「………………」

 

華琳「早く、私の問いに、答えなさいよ! お願いだから、答えてぇ!! ねぇ、早く───っ!!」

 

ーー

 

華琳の再三の命令が室内に響く。 だが、北郷一刀は答えない。 

 

ただ、静かに華琳を見つめるだけであった。

 

 

 

【 裏幕 の件 】

 

? 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

一刀『待たせた……ね』

 

華琳『ど、どうして………』

 

ーー

 

一刀に止められた艦娘達は、ハラハラしながらも二人の様子を見ていた。 暴風雨のように荒々しい華琳の周りに、衰弱した一刀が行くなど死地に赴くものだった。

 

ーー

 

瑞穂「提督、どうか御無事で。 どうか、どうか…………」

「「「…………… 」」」

 

ーー

 

『瑞穂型 1番艦 水上機母艦 瑞穂』は、自分の所属する鎮守府の提督『北郷一刀』の様子を心配していた。 

 

一刀の居る方向に向かい、胸に手を組み両膝を地に付けて、ひたすらひたすらに熱心に祈りを捧げている。 

 

それはもう、端から見て気の毒な程に。

 

ーー

 

加賀「少しは落ち着きなさい。 私達の命令は待機とは言え、周辺の警戒を蔑ろにしては、逆に提督を不測の事態へ陥らせるわ」

 

瑞穂「は、はい………すいません」

 

陸奥「心配するのは判るけどねぇ、少しは余裕を持たないと気疲れして、いざって言うときに用立てないわよ?」

 

瑞穂「あ、ありがとございます。 ですが……いつもの提督でしたら、瑞穂が心配するなど余りにも不遜だと……重々承知しているのですが……今の提督は………その……」

 

加賀「……………」

 

陸奥「……………」

 

瑞穂「……あまりにも……痛々しく……思えて」

 

ーー

 

加賀と陸奥より注意されるが、瑞穂の心配は収まらない。

 

寧ろ、あの時の提督を顧みると、言い知れない不安しか出て来ない瑞穂は、改めて溜め息を吐き沈痛な面持ちで、一刀達の様子を見守った。

 

ーーー

ーーー

 

『全員、この場にて待機。 俺に……何があったとしても……専守防衛に努めてくれ。 これは……至上命令だ!』

 

『『 ───!? 』』

 

ーー

 

それを聞いた陸奥は唖然とし、加賀は何時もの泰然自若の態度を崩す程に驚き、至上命令という事を忘れ、一刀の決意に翻意を促すため言葉を尽くした。

 

ーー

 

『それは無理です! 提督を失えば、艦隊は統制を取れず各個撃破されるのは、古今東西の自明の理! せめて、誰か一隻、護衛艦を決めてお連れ下さい!』

 

『提督が良くても、残された私達はどうするの? もし、提督に万が一があれば……長門に何て言えばいいのよ!?』

 

『俺は……一人で向かう。 後事は……赤城に託してある。 何かあれば……赤城の指揮下に入れ』

 

『もし、俺に万が一があれば……《先に行く 後に残るも同じこと 連れて行けぬを別れぞと思う》……長門や皆に……そう伝えてくれ。 長門なら……理解してくれる……』

 

ーーー

ーーー

 

結局……加賀や陸奥の言葉は、一刀の決意を翻意させれなかった。 二人は悔しそうにしながらも、命令に従い警戒を行い、他の艦娘達にも知らしていた。

 

その後、様子を見ていた瑞穂の頭を優しく撫でると、『行ってくるよ』と一言だけ言い添え、向かって行ったのだ。

 

一刀が何を思って瑞穂の頭を撫でて行ったのか、その理由は判らない。 

 

だけど、瑞穂は一刀の無事を……ただ一心に祈り続けた。 

 

 

また、自分達の下へ戻って来て欲しい。

 

そして、あの優しい笑顔で『ただいま』と、再び頭を撫でて貰いたい。

 

そう、願ったのだ。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

あとがき

 

度重なり遅れての投稿、誠に申し訳ありません。

 

@ 公私に渡り時間が取れなかった。

 

A スマホを変えたらデータが消えた。

 

B 予想以上に、話の続きが難産だった。

 

───と、色々あったため、すっかり遅れてしまいました。

 

早ければ、今年の12月終わりにでも今年最後の作品を投稿したいと思いますが、どうなるか予定は未定です。

 

こんな作品でも気長に待って頂けるのなら、亀更新で頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします。

 

 

下の話は、最後の【 裏幕 の件 】の続きですが、些かキャラ崩壊しております。 

 

それでもよろしければ、どうぞ、お読み下さい。

 

ーー

 

 

 

【 暗転 の件 】

 

? 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

華琳『冥琳達は貴方を持ち上げているけど、私は貴方の行動に幻滅したわ。 自分勝手に行動して私達を振り回し、挙げ句の果てには失敗し、それで許しを乞うなんて………』

 

一刀『…………』

 

華琳『あまりにも虫がいい話じゃないのかしら。 天の御遣い《北郷一刀》サマ?』

 

ーー

 

瑞穂の祈りを継続している最中、この言葉が聞こえた。

 

挑発と言えば判りやすい言葉であり、この世界に来る前は小規模とはいえ、鎮守府を預かった一刀である。

 

このような見え透いた行為に乗るわけがなかった。

 

しかし──────この華琳の発した言葉に、艦娘達の顔色が変わる。

 

ーー

 

加賀「……頭にきました。 今度は、流石に黙殺できません」

 

瑞穂「えっ?」

 

如月「ふぅーん。 幾ら如月の司令官が寛容でもぉ、こうもオイタが過ぎる子って、キチンと躾が必要よねぇ〜?」

 

瑞穂「え、えぇっ、き、如月さん……?」

 

準鷹「ひゃっははははっ! 提督を馬鹿にされて黙って見てる奴なんてぇー艦娘が廃る(すたる)よっ! ここは皆でパーッと行ってやろうじゃないか〜! パーッとな!!」

 

瑞穂「あ、あっ…………準鷹さんまで? ど、どうしましょう? どうしましょう!?」

ーー

 

血走る目で華琳を怨敵と定めつつ、冷静に艤装を展開する──乙女が二隻

 

『面白そうな出来事だ、もっと煽ってやれぇ!』と表情を赤ら顔に浮かべて盛り上げる───酔っぱらいが一隻。

 

そして───

 

ーー

 

瑞穂「や、やはり、ここは合戦用意!………なんですね、皆さん。 ですが、瑞穂では足を引っ張ることに……」

 

準鷹「大丈夫ぅ! いける、いけるって!!」

 

飛鷹「なに煽ってるのよ! 早く止めなさいっ!!」

 

陸奥「提督の命令なのよ! 瑞穂も聞いちゃ駄目──」

 

瑞穂「わかりました! 皆さんに及ばすながら、この水上機母艦、瑞穂───提督のため、精一杯頑張りますっ!!」

 

「「───瑞穂!?」」

 

ーー

 

押しに弱く、流されやすい純情な子が一隻、これに加わる。

 

ーー

 

準鷹「よぉおしぃ! そうと決まれば───ひゃっはー! 者共かかれー! かかれぇー!!」

 

陸奥「止めてって言ってるでしょ! ねぇ、聞いてる!?」

 

飛鷹「誰か援軍を呼ばなきゃ──あっ、菊月! こっちよ、こっち!!」

 

菊月「な、何だこれはっ!? ────はっ? おいっ! 馬鹿な事を止めろっ!!」

 

ーー

 

この騒動に菊月が加わり止めに入るが、戦力的にも人数的にも止める側が不利。 

 

ちなみに天津風は……我関せずとして警戒に従事している。

 

このままであれば、一刀と華琳の話し合いが潰されるのは時間の問題。 いや、下手をすれば──『この物語』が強制終了される可能性もあった。

 

ーー

 

港湾棲姫「鳳翔…………コッチ! コッチ!!」

 

鳳翔「港湾棲姫さん、教えてくれてありがとございます」

 

「「「 ────!! 」」」

 

鳳翔「………………皆さん、幾ら何でも……少し大袈裟では……ないでしょうか?」ニッコリ

 

「「「 ─────!!? 」」」ガクブル ガクブル

 

ーー

 

この後、関係者達は……鳳翔に尽く襟首を掴まれ、何処かに連れて行かれたという。

 

 

説明
長々とお待たせしてしまい、ごめんなさい。
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コメント
Jack Tlam提督 コメントありがとうございます! 作者としては世界観の統一という事で行った設定なんですが、確かに難しいですね。 救いは外史の管理者が全員味方、艦娘と恋姫達に何らかの交流が芽生えている。 これらが後に双方の救いになれば……と頭を悩ましながら考えています。(いた)
記憶を持っていても、別人であることに変わりは無く。この一刀は艦娘達を指揮する提督でしかなく、記憶を持つ恋姫達が、自分達が知る一刀と勝手に同一視しているだけというのが、残念ながら現実のようですね。心の問題は理屈ではないのですが、そこに折り合いを付けない限り、争いは避けられない……答えの出ない状況、これはどうなる?(Jack Tlam)
未奈兎提督 コメントありがとうございます! 華琳様は使えませんけど、何故か無想転生を操る漢女が居るこの物語です。 それはさておき、別世界の一刀が華琳様をどのように説得するか。 非常に胃が痛む話ですね(作者的に)(いた)
最初からの失態を欠片も挽回できず最終的には嫉妬と悲しみで無想転生使えそうな感じの華琳様、そんでもってなんて答えればエエねん、肝心の「魏の北郷一刀」は居ないってのに・・・。(未奈兎)
mokiti1976-2010提督 コメントありがとうございます! 後者は《御想像にお任せ》にしたいのですが、次の話に少しだけ入れてみようと思います。(いた)
お話の続きと最後に鳳翔に連れていかれた方々がどうなったかを楽しみに待っております。でも、後者は分からずじまいか?(mokiti1976-2010)
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