とあるソーシャルゲーマーの不思議体験 |
あるところに、とあるソーシャルゲームをプレイしているサラリーマンがいました。
基本無料、課金アイテムありのゲームです。
最初は、操作性が良く盛り上がっていましたが、
徐々に不具合修正のお知らせが目立ち、彼はうんざりしていました。
「不具合のないサービスを提供するのがソーシャルゲームの基本なのに、
このゲームは不具合のお知らせが多すぎる。あの運営、ちょっと怠慢してるんじゃないか?」
また、次第にキャラのインフレは加速していき、
さらには課金により手に入るアイテムを使ったくじ引きばかりが目立つようになりました。
それが原因で彼の友人は次々に引退していき、新規ユーザーの数も少なくなりました。
彼も、しばらくそのソーシャルゲームから離れ、ネットサーフィンをしていました。
「……これは?」
その時、彼は奇妙なサイトを見つけました。
それは、メールフォームに願いを入力すれば
どんな願いも妖精が1つだけ叶えてくれる、というサイトでした。
彼は最初は胡散臭く思っていましたが、
このゲームを良くしなければ不満が解消されない、と思い、彼はこう打ち込みました。
「(ソーシャルゲームのタイトル)の運営が全てのユーザーの要望を聞き入れ、反映してくれますように」
それから一週間後、彼は久々にそのソーシャルゲームをプレイしました。
すると……。
「おお! かなり操作性が良くなってる!
○○さんが言ってた事も実現してるし、僕の思いも通っているぞ!
やっぱり運営は、僕達ユーザーを利益の駒とは思ってたわけじゃなかった!」
彼の願いは叶いました。
そのソーシャルゲームの運営は、ユーザーの意見を聞き入れるようになったのです。
おかげで、彼が運営に抱く不信感は徐々になくなっていきました。
しかし、ユーザーの意見は多種多様。
全てを受け入れれば、矛盾が生じてしまいます。
ですが、願いの力により、運営はたくさんの、
しかも利益にならない要望まで対応しなければなりませんでした。
当然、予算は足りなくなっていきます。
その運営は、予算を管理するためには課金系のサービスをしなければ、と思いましたが、
それも願いの力により出来なくなりました。
そして、ついにこのお知らせが出ました。
◆サービス終了のお知らせ◆
誠に勝手ながら、(ゲームタイトル)はサービスの継続が困難だと判断し、
20XX年○月×日(△)を持ちましてサービスを終了させていただきます。
今までのご利用ありがとうございました。
「どうして、こうなったんだ……!?」
結局、そのソーシャルゲームは彼が願いを入力した日から僅か一ヶ月で、
サービス終了してしまいました。
スマートフォンを持ちながら、彼は呟きました。
「僕は、このゲームをもっと良くしたかった。
運営がユーザーの意見を聞いてくれなかったから、こうする形で願いを叶えた。
だけど、そのせいで寿命が縮んでしまった。
僕は運営の事を全く考えずに、ユーザーの意見ばかり押し付けたせいで、
好きだったゲームを殺してしまった! 僕は、どうすればいいんだ……!」
好きなゲームができなくなり、絶望する彼の前に、あの願いのサイトにいた妖精が現れました。
「君は……」
「ゲームを良くしたいという気持ちは分かった。
だけど、ユーザーの事しか考えないで、ユーザーの都合が良くなればそれでよかったのかな?」
「……あ!」
妖精の言葉で、彼は思い出しました。
ゲームをプレイするためには、運営が得るための利益も必要だと。
そして、彼が叶えた願いのせいで、運営が利益を得る事ができなくなり、
予算が底をついてしまったのだと……。
「僕は、どうすればいいんだ……」
「この教訓を生かして、もっとソーシャルゲームを良くしていこうよ! 君はユーザー出身なんだろう?
だから、ユーザーの目線に立てる君ならば、きっとどんどんサービスは良くなるはずだ!」
「……ああ! そうだね!」
そして、数年後。
彼は、別のソーシャルゲームを運営する会社に転職しました。
ユーザー出身の彼は、ユーザーの意見を聞きつつそこそこの利益も稼ぐという手法を取りました。
利益至上主義の上層部からは嫌われましたが、それでもユーザーや他の社員からの受けは良く、
彼のおかげで、そのソーシャルゲームは今もなお、続いているそうです。
「みんなも、ソーシャルゲームの運営会社に入った時は、
目先の利益の事だけを考えないで、ユーザーの事をちゃんと考えてね」
説明 | ||
およそ6ヶ月ぶりの投稿となりました。 ソーシャルゲームの運営に不満を持つ人は、これを読んでみてください。 |
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