本編 |
悪魔騎兵伝(仮)
第14話 初任務
C1 対面
C2 魔導人型機構研究チーム
C3 パイロットスーツ
C4 操縦
C5 給金
C6 訓練
C7 任務
C8 騎士の矜持
C9 初任務完了
C10 絆
次回予告
C1 対面
シュヴィナ王国。貴族連合盟主居城シュヴィナ城。密談の間。椅子に座る貴族連合盟主でシュヴィナ王国国王エグゼナーレ。その傍らに立つ、シュヴィナ王国の三大臣で小太りのパンデモ、痩せているモーヴェに、女性のジェルンと元ロズマール元老院議員のヴォルフガング・オーイーに千年大陸連邦魔法技術博士で眼鏡をかけた女性のカトリーヌ・ラボ赤い絨毯が惹かれ、両脇に並ぶシュヴィナ王国の兵士達。扉が開き数名のシュヴィナ王国兵士達にひかれてくる。千年大陸連邦製の封魔錠を両手にはめたファウス。俯くファウスを眺める一同。ファウスの方を向くシュヴィナ王国軍兵士A。
シュヴィナ王国兵士A『陛下の御前だぞ!』
シュヴィナ王国兵士Aはファウスの頭を押さえつけて、床に押し付ける。頬杖をついて、ファウスを眺めるエグゼナーレ。ファウスの方を向くカトリーヌ・ラボ。手をはなすシュヴィナ王国兵士A。跪いて俯くファウス。
エグゼナーレ『……偽王子、こうして対面するのは久しぶりだな。』
顔を上げエ、グゼナーレの方を見るファウス。
ファウス『はい…。』
ヴォルフガング・オーイー『ヨーケイ城の論功行賞以来では…。』
頷くエグゼナーレ。
パンデモ『それから、金の為に見方を裏切り、主を殺し、揚句には聖女候補を犯すとはなんとも、いやはや…。』
エグゼナーレは立ち上がり、窓の方へ歩いていく。俯く、ファウス。ファウスを見た後、ジェルンの方を向くモーヴェ。
モーヴェ『ジェルン殿も気を付けた方がいいですよ。』
ジェルン『まあ。恐ろしい!』
エグゼナーレは立ち上がり、窓の方へ歩いていく。
エグゼナーレ『本来なら…。』
拳を震わせるエグゼナーレ。
エグゼナーレ『いや、そんな悪党は!』
ファウスを睨むエグゼナーレ。
エグゼナーレ『死罪にしなければ他の者に示しがつかない!』
頷くヴォルフガング・オーイー。ファウスは眉を歪ませ、眼を閉じる。
ヴォルフガング・オーイー『全くですな。』
エグゼナーレ『が…。』
歯ぎしりするエグゼナーレ。エグゼナーレの方を向くカトリーヌ・ラボ。
カトリーヌ・ラボ『これが試験体ですか。』
頷くエグゼナーレ。顔を上げるファウス。
カトリーヌ・ラボ『想像とはかなり違いますね。』
エグゼナーレの方を向くカトリーヌ・ラボ。
カトリーヌ・ラボ『…正直、聖女候補を犯した危険な強姦魔を使うのは我々としても本当に不本意なんですが。』
腕組みをするエグゼナーレ。俯くファウス。
エグゼナーレ『…仕方ないだろう。ラエティエのあの出土品は、もうこいつしか使えないのだからな。ユランシアで、5本の指に入る大魔導士も結局、動かせずにアヘ顔さらして倒れてしまったし。』
頷くカトリーヌ・ラボ。顔を上げ、瞬きするファウス。ファウスの方を向くエグゼナーレ。
エグゼナーレ『……こいつなら、あのラエティエの出土品を動かせるだろう。証言もとれている。』
ファウスを見つめた後、エグゼナーレの方を向くカトリーヌ・ラボ。
カトリーヌ・ラボ『分かりました。では、私は一旦アルトガイザに戻るとします。』
頷くエグゼナーレ。カトリーヌ・ラボの方を向くファウス。カトリーヌ・ラボは眉を顰めファウスを見る。
カトリーヌ・ラボ『あんまりジロジロ見ないでくれる?気持ち悪い!』
俯くファウス。密談の間から去って行くカトリーヌ・ラボ。カトリーヌ・ラボの背を見つめるエグゼナーレ。
エグゼナーレ『…こちらとて不本意だ。千年大陸連邦の意向で…お前のような奴を雇わないといけないのだからな!』
舌打ちするエグゼナーレ。ファウスは瞬きしてエグゼナーレを見つめる。
ファウス『…エグゼナーレ様。それは…。』
ファウスを見た後、椅子に座ってため息をつくエグゼナーレ。
エグゼナーレ『…偽王子。我々は不本意ながら、我が国はお前を迎え入れる。感謝するんだな……。』
ファウスから顔を背け、鼻で笑うエグゼナーレ。
ファウス『シュヴィナ王国が受け入れて下さるのですか?僕は…僕は…生きても…生きてもいいのですか?』
ファウスの方を向くエグゼナーレ。
エグゼナーレ『は?』
膝を叩いて笑い出すエグゼナーレ。
エグゼナーレ『…生きても…いいだと。はははは。まあ、お前を受け入れたから…お前は余の配下ということだな。』
眼を細め、ファウスを見下ろすエグゼナーレ。
エグゼナーレ『…偽王子、配下として私に対する忠誠を見せてもらおうか。』
エグゼナーレを見つめるファウス。
エグゼナーレ『簡単なことだ。』
ファウスの前に、足を出すエグゼナーレ。
エグゼナーレ『舐めろ。』
エグゼナーレの眼を見つめるファウス。眉を顰めるエグゼナーレ。
エグゼナーレ『どうした?できんのか?』
首を横に振るファウス。
ファウス『いえ。』
エグゼナーレの前に跪き、エグゼナーレの靴に舌先を伸ばすファウス。頬杖をつき、椅子にもたれかかるエグゼナーレ。エグゼナーレの靴を舐めるファウス。ファウスを見つめ、眉を顰めるエグゼナーレ。
エグゼナーレ『しらじらしいわ!』
ファウスを蹴るエグゼナーレ。
ファウス『あぅ。』
倒れるファウス。エグゼナーレは立ち上がり、シュヴィナ王国兵士Aの方を向く。
エグゼナーレ『もういい、連れていけ。』
エグゼナーレを見上げるファウス。エグゼナーレはファウスから顔を背ける。
エグゼナーレ『こんな奴の顔など見たくないわ!』
ファウスを起き上がらせ、密談の間から連れ出していくシュヴィナ王国兵士達。
C1 対面 END
C2 魔導人型機構研究チーム
シュヴィナ王国シュヴィナ城。城の城壁に横付けされる千年大陸連邦の発掘された遺物を復元した小型機動城塞アルトガイザ。アルトガイザを見ながら城壁の上を進むファウスとシュヴィナ王国兵士達。彼らはアルトガイザから城壁に伸ばされたタラップを登る。タラップの上に立つカトリーヌ・ラボとほおひげを生やして、頭を掻きながらシュヴィナ王国兵士達を見た後、ファウスの方を向く機械工学者のエマートン。
エマートン『彼が偽王子?』
頷くカトリーヌ・ラボ。
カトリーヌ・ラボ『ええ。』
エマートン『随分と感じが…。』
シュヴィナ王国兵士達の方を見るエマートン。
エマートン『早い対面でしたね…。』
シュヴィナ王国兵士D『…んっ?準備はできているのか?』
肩をすくめるカトリーヌ・ラボ。
カトリーヌ・ラボ『ええ。無論です。こちらへどうぞ。』
アルトガイザ内に入って行く一同。
シュヴィナ王国兵士D『それにしても、いつ来ても不気味な艦だな。』
周りを見回すファウス。
シュヴィナ王国兵士Dの方を向くエマートン。
エマートン『ああ、そう思われていたのですか。この遺物は他の我々の世界で使われているものとは材質が全く違うんです。装甲からの計算だと、この船は大気圏航行可能。机上での計算上では宇宙航行も可能ですよ。』
鼻で笑うシュヴィナ王国兵士E。
シュヴィナ王国兵士E『宇宙…馬鹿もやすみやすみ言え。宇宙を渡ってシュヴィナにきたと?』
エマートン『いえ、そうではありません。何せまだ研究中なので。』
笑うシュヴィナ王国兵士達。ファウスはアルトガイザの廊下の壁を見つめる。進む一同。廊下の左側に連なるガラス窓から貨物室に置かれた魔導人型機構と多数の研究者達が見える。魔導人型機構を眼に映すファウス。魔導人型機構のコックピットのハッチから出て来る千年大陸連邦の考古学者のロパートソン。
ロパートソン『…この古代語は、どの地区の言語にも類似点は見当たらん。』
ロパートソンの後ろに続く助手の女性スージー。
スージー『それじゃ、どこか本当の異世界の異次元の…ということですか?』
ロパートソン『そうじゃ!つまり、神話の通り、流れ星…いや、宇宙からこの遺物がこの星に落ちて来たんじゃ!宇宙人の仕業じゃ!』
眉を顰めるスージー。
ロパートソン『わしゃな。言語っていうものはこの星に降りた宇宙の種族が現地の種族とコミュニケーションを取るために発達させていったと考えとる。だから、様々な言語に共通性が見られる。しかし、この遺物の古代語にはそれが一切ない!この遺物を作った種族は、何らかの事情…恐らくはUFOの事故でこの星に降り立てなかったんじゃろう!!』
ため息をつくスージー。
スージー『また、UFOの話ですか!』
ロパートソン『そうじゃ!古代人達は宇宙人と交信し…。』
魔導人型機構の方を見て、頭を掻くカトリーヌ・ラボ。
カトリーヌ・ラボ『…現在調査中でして。』
エマートン『古代語学の権威なんだが、オカルトマニアなのがな…。』
苦笑いするエマートン。眉を顰めるシュヴィナ王国兵士達。ファウスの方を向くカトリーヌ・ラボ。
カトリーヌ・ラボ『…見覚えあるでしょう。偽王子。これから、あなたがあれに乗るのよ。』
頷くファウス。
ファウス『は、はい。』
ファウスから目をそらすカトリーヌ・ラボ。
カトリーヌ・ラボ『では、こちらへ。』
歩き出す一同。貨物室の研究員Aが欠伸をしながらラジオをつける。
ラジオの声『…聖女を襲ったフィオラ山地の難民の死刑が執行されました。』
ファウスは立ち止まり、眼を見開いてラジオの方を向く。ファウスの背を押すシュヴィナ王国兵士D。
ファウス『あっ…。』
シュヴィナ王国兵士D『さっさと歩け!』
俯くファウス。
ファウス『はい…。』
ラジオの声『なお、シュヴィナ王国はフィオラ山地の難民キャンプに対して…。』
C2 魔導人型機構研究チーム END
C3 パイロットスーツ
シュヴィナ王国シュヴィナ城。城の城壁に横付けされるアルトガイザ内部。魔封独房前室の扉の前に立つカトリーヌ・ラボにエマートンとシュヴィナ王国兵士達に囲まれた魔封錠をはめたファウス。扉が開き、彼らは魔封独房前室に入って行く。様々な機器が並べられ、チスイビル人のスタッフ数名が椅子に座っている。魔封独房前室から超強化ガラスの仕切りを隔てて見えるベット、トイレ、シャワールームや洗濯機等があり、机や椅子等が配置された、パイロットスーツがたたんで床に置いてある魔封独房後室。周りを見回すシュヴィナ王国兵士達。ファウスは魔封独房後室を見つめる。ファウスを見つめるシュヴィナ王国兵士C。
シュヴィナ王国兵士C『良かったな。これだけ設備のいい独房で。囚人の癖に。』
白衣の両ポケットに手を入れるカトリーヌ・ラボ。
カトリーヌ・ラボ『試験体でもありますので。致し方ありませんよ。』
操作首輪を持ったチスイビル人のスタッフ数名が並ぶ。
エマートン『まあ、その魔封錠も用済みですね…。』
エマートンの方を向くシュヴィナ王国兵士A。チスイビル人のスタッフAが操作首輪をシュヴィナ王国兵士達の方へ向ける。シュヴィナ王国兵士達は頷き、ファウスを押さえつける。
ファウス『あっ…。』
チスイビル人のスタッフ達がファウスの首に操作首輪を付けた後、ファウスの両手につけられた魔封錠を外すシュヴィナ王国兵士達。ファウスは自身の首につけられた操作首輪を見つめ、両手をゆっくりと操作首輪に向かわせる。
カトリーヌ・ラボ『その首輪に触れれば…。』
ファウスの指先が操作首輪に触れる。飛び上がり、地面に倒れて痙攣するファウス。
カトリーヌ・ラボ『強力な電撃が走り、更に引き離そうとすれば…。』
カトリーヌ・ラボはファウスを見下ろす。
カトリーヌ・ラボ『爆発して木端微塵よ。』
ファウスはカトリーヌ・ラボを見つめる。
カトリーヌ・ラボ『では、後室へ。』
チスイビル人のスタッフ達に押され、魔封独房後室に押し出されるファウス。魔封独房後室の扉が閉まる。白い壁で囲まれた周りを見回すファウス。彼は、押し出された部分の方へ行き、壁を触る。
カトリーヌ・ラボの声『…こちら側からはそちらは見えるけど、そちら側からはこちらが操作しない限りこちらは見えないのよ。』
壁を見つめ、瞬きするファウス。
カトリーヌ・ラボの声『さあ、衣服を脱いでそこに折りたたんであるパイロットスーツを着なさい。』
ファウスは床に置いてあるパイロットスーツを見つめる。
ファウスはパイロットスーツの所まで歩いていき、服を脱いだ後、パイロットスーツを着始める。
ファウス『きゃあっ!』
飛び上がり、地面に倒れて暫く痙攣した後、白い壁の方を向くファウス。
カトリーヌ・ラボの声『言い忘れていましたが、もし、不審な動きをしようとすればこうなります。今のは弱い方です。強い方だと木端微塵になってしまいますからね。あなたは常に監視されていることをお忘れなく。』
白い壁を見つめるファウス。
C3 パイロットスーツ END
C4 操縦
シュヴィナ王国シュヴィナ城。城の城壁に横付けされるアルトガイザ内部。魔封独房後室。白い机の上に置かれる白いトレーにのったパンとスープを見つめるファウス。彼はパンを取り、頬張る。スープに映る自身の表情が彼の眼に映る。そして、瞳が小さくなり、小刻みに体が震えてパンを落とし、トイレに駆け、吐く。扉が開き、現れるエグゼナーレとシュヴィナ王国兵士達にカトリーヌ・ラボにエマートンとチスイビル人のスタッフ達。エグゼナーレは嘔吐するファウスを見る。
チスイビル人のスタッフA『ずっとこんな感じです。』
ファウスを一瞥し、チスイビル人のスタッフAの方を向くエグゼナーレ。
エグゼナーレ『・・・この状況であのラエティエの出土品は動かせるのか?』
エグゼナーレの方を向く、カトリーヌ・ラボ
カトリーヌ・ラボ『前の実験では被験者の魔力が枯渇してしまいましたから、…魔力が全快するまでは。』
エグゼナーレ『…全快?』
頷くカトリーヌ・ラボ。
カトリーヌ・ラボ『ええ、そうでなければ被験者は耐えられ…。』
カトリーヌ・ラボを睨み、拳を握って震わせるエグゼナーレ。
エグゼナーレ『…偽王子を。この本来なら始末しなければならない、悪逆非道を繰り返したこいつを…。』
眼を見開くファウス。
エグゼナーレ『…お前達の言い分で恥を忍んで生かさなければならなかったんだぞ。』
ファウスを睨み付けるエグゼナーレ。
エグゼナーレ『今すぐラエティエの出土品を動かせろ。』
エグゼナーレの方を向く千年大陸連邦の一同。一歩前に出るエグゼナーレ。
エグゼナーレ『聞いているのか!今すぐあれを動かせ!』
エグゼナーレの方を向くファウス。エグゼナーレは手を上げ、振り下ろす。ファウスを捕まえるシュヴィナ王国兵士達。
シュヴィナ王国シュヴィナ城。城の城壁に横付けされるアルトガイザ内部。試験室。試験室内に置かれた
魔導人型機構のコックピットに座らされるファウス。彼の目に映る試験室の窓。エグゼナーレとシュヴィナ王国兵士達に、カトリーヌ・ラボ、エマートンをはじめとする千年大陸連邦の一同。エグゼナーレに詰め寄るカトリーヌ・ラボ。エグゼナーレはカトリーヌ・ラボからリモート装置を奪い取り、高く掲げる。魔導人型機構に置かれた通信機に映るエグゼナーレとシュヴィナ王国兵士達に、カトリーヌ・ラボ、エマートンをはじめとする千年大陸連邦の一同のホログラム。それを見るファウス。
カトリーヌ・ラボ『…主様、それを。』
ファウスを見つめるエグゼナーレ。
エグゼナーレ『今すぐ、それを動かせ。さもなくばこれを起動する。』
エグゼナーレはボタンに指を当てる。エグゼナーレの方を向くファウス。
ファウス『えっ…。』
ファウスは魔導人型機構のコックピット内を見回す。
ファウス『…動…かす。』
ファウスを見つめるエグゼナーレ。
エグゼナーレ『どうした。動かせないのか!』
エグゼナーレの方を向いた後、コックピットを見回すファウス。
カトリーヌ・ラボ『盟主様。ですから、その爆弾は威力が…。』
カトリーヌ・ラボの方を向くエグゼナーレ。
エグゼナーレ『心配はない。魔法兵士に結界は張らせてある。』
カトリーヌ・ラボ『しかし、それは最終手段。魔導人型機構まで失って。』
エグゼナーレ『失ってもいいだろう。瓦礫から調べろ。もう譲歩はしない。』
エグゼナーレを睨むカトリーヌ・ラボ。エグゼナーレはファウスを睨む。
エグゼナーレ『動かせぬなら用は無い。』
リモート装置のボタンに軽くふれるエグゼナーレの指。ファウスは周りを見回して頭を抱える。大きな唸り声が鳴り響き、耳を押さえる一同。エグゼナーレがリモート装置を落とす。片耳を押さえながらリモート装置をスライデングキャッチするエマートン。瞬きしながら息を切らすファウス。周りを見回す一同。靴音が聞こえる。眼を徐々に閉じていくファウス。
千年大陸連邦研究員Bの声『小指の第二関節が1cm動いたぞーーーーーー!』
千年大陸連邦研究員Aの声『足の指もだ!』
気絶するファウス。
C4 操縦 END
C5 給金
シュヴィナ王国シュヴィナ城。城の城壁に横付されるアルトガイザ内部。魔封独房後室。眼を開くファウス。彼は周りを見回し、起き上がった後、自分の体を見る。体を震わし、タオルケットを抱きしめるファウス。
ファウス『…お母様。』
白い壁が透け、魔封独房前室内部が現れる。機器の前の椅子に座りデータをとるチスイビル人のスタッフ達とシュヴィナ王国軍務官のコバンザメ人でギザギザの歯を持つコモロが副官のジンベエザメ人のメルティエに小判型の吸盤を引っ付けながらファウスを見る。魔封独房前室の方を向くファウス。
コモロ『まずはおめでとうというところか…どうだろうな。』
コモロの方を向くファウス。
コモロ『あの誰も操縦できない魔導人型機構を動かしたんだから試験体として合格だそうだ。まあ、こちとらおめでたくも無いが…。重罪人の死罪を取り消したんだからな。』
コモロを見つめた後、彼から目をそらし、俯くファウス。コモロはチスイビル人のスタッフの方を向く。
コモロ『ああ、それから千年大陸連邦の規定で…』
コモロを見て頷くチスイビル人のスタッフC。コモロはファウスの方を向く。
コモロ『給金が出るそうだ。といっても…。』
魔封独房後室を見回すコモロ。瞬きするファウス。
ファウス『…お金。』
頷くコモロ。
コモロ『檻の中のお前は使う事は無いだろうがな…。』
ファウスはシーツを暫し見つめる。ファウスを見つめるコモロ。
コモロ『どうした?』
ファウスは顔を上げ、コモロを見つめる。
ファウス『…そのお金。そのお金を使う事はできますか?』
コモロは眉を顰める。
コモロ『…そりゃできるが。』
チスイビル人のスタッフBがファウスの方を向く。
チスイビル人のスタッフB『こちらに必要なものを伝えれば、購入はするが、こちらの規定やシュヴィナ王国の検閲により手に入らないものもある。』
コモロ『だ、そうだ。』
ベッドから身を乗り出すファウス。
ファウス『そのお金で…お金が貯まったら…お母様にお墓を立ててあげることはできますか。』
ファウスを見るチスイビル人のスタッフB。チスイビル人のスタッフAとチスイビル人のスタッフCが顔を合わせる。
チスイビル人のスタッフB『それは可能だ。』
ファウスはベットからおり、座って頭を下げる。
ファウス『お願いします。そのお金で
チスイビル人のスタッフB『しかし、まだ墓を建てる程貯まってはいない。』
チスイビル人のスタッフBを見るファウス。
チスイビル人のスタッフB『その時になれば言えばできる。』
ファウスはチスイビル人のスタッフBを見つめた後、頭を深々とさげる。
ファウス『ありがとうございます。』
頬をかくコモロ。
コモロ『まあ、お前の金だし好きにすればいいさ。』
チスイビル人のスタッフA『そろそろいいですか。』
頷くコモロ。
ガラスが白い壁に変わる。
C5 給金
C6 訓練
シュヴィナ王国シュヴィナ城。城の城壁に横付けされるアルトガイザ内部。試験室。試験室内をゆっくりと歩く魔導人型機構。試験室の壁の窓から実験指令室内のカトリーヌ・ラボ、エマートンをはじめとする千年大陸連邦の一同が見える。
カトリーヌ・ラボ『右に回りなさい。』
魔導人型機構のコックピットの内部に映るカトリーヌ・ラボのホログラムを見るファウス。
ファウス『はい。』
右に曲がる魔導人型機構。実験指令室内部に入ってくるエグゼナーレとジェルンがホログラムに映る。
エグゼナーレ『調子はどうか?』
エグゼナーレの方を向くカトリーヌ・ラボ。ホログラムを見るファウス。
ファウス『あっ。』
ふらつくファウス。試験室の壁に魔導人型機構の肩部がすれる。火花が散り、音が鳴り響く。魔導人型機構の方を向く一同。試験室内に倒れる魔導人型機構。揺れる艦内。
ジェルン『なにをしているの!』
魔導人型機構を見つめ、眉を顰めるエグゼナーレ。
カトリ-ヌ・ラボ『試験体。』
カトリーヌ・ラボのホログラムの方を向くファウス。
ファウス『えっ。』
ファウスを見つめるカトリーヌ・ラボ。
カトリーヌ・ラボ『意識はありますか?試験体。』
ファウス『は、はい。』
カトリーヌ・ラボ『その場から動かないように。サンプルをとります。』
カトリーヌ・ラボのホログラムを見つめ、頷くファウス。
ファウス『分かりました。』
倒れた魔導人型機構の肩部に駆け寄る千年大陸連邦の研究員達。カトリーヌ・ラボを見るエグゼナーレ。
エグゼナーレ『報告ではなんなくあれを使いこなしたと聞いている。気絶も、疲労も無くな。』
ジェルン『甘やかしすぎでは?』
エグゼナーレの方を向くカトリーヌ・ラボ。
カトリーヌ・ラボ『…魔導人型機構は普通の人型機構とは機構も構造も全く異なった代物です。まだ、解明はできておりませんが…。』
ファウスの方を向くエグゼナーレ。
エグゼナーレ『手を抜いているのだろう。ファウス。』
エグゼナーレのホログラムの方を向くファウス。
エグゼナーレ『初日は気絶。今は操縦すらままならない。何処までふざけるつもりか!油断させておいて屋外試験で逃げ出す算段なんだろう。そうだろう偽王子。心配はしなくていい。クリシュナ、グリーンアイス、ロズマール両王国の軍勢が見張りにつく…。………ロズマール帝国もな。』
俯くファウス。エグゼナーレにリモート装置を見せるカトリーヌ・ラボ。
カトリーヌ・ラボ『逃げたとしても…これで対処はできます。』
駆け足の音。実験指令室内部の扉が開き、現れるシュヴィナ王国兵士A。
シュヴィナ王国兵士A『エグゼナーレ様!』
シュヴィナ王国兵士の方を向く一同。
エグゼナーレ『何か?』
シュヴィナ王国兵士A『エルド区で火災が発生しました。』
眉を顰め、舌打ちするエグゼナーレ。
エグゼナーレ『…またか。』
エグゼナーレは魔導人型機構の方を向く。
エグゼナーレ『…偽王子。馬鹿な考えを起こさない方が身のためだ。』
エグゼナーレのホログラムを見つめるファウス。
ファウス『はい…。』
一歩前に出るエマートン。
エマートン『…盟主様。一つ質問が…。』
エマートンの方を向くエグゼナーレ。
エグゼナーレ『なんだ?』
エマートン『…グリーンアイス連邦とクリシュナ王国は犬猿の仲、近隣の国と言えばロズマール帝国、アンセフィム・ロズマール、ロズマリー・ロズマールと…それぞれ対立関係にある国ばかりですが…。大丈夫なので?』
エマートンの方を向くジェルン。
ジェルン『心配はいりません。貴族連合盟主国の前でそのような馬鹿なことは誰も行わないでしょう。』
扉から出ていくエグゼナーレとジェルン。彼らの方を向く一同。
シュヴィナ王国シュヴィナ城。城の城壁に横付けされるアルトガイザ内部。魔封独房後室。壁にもたれかかって座るファウス。彼は天井を見つめた後、魔封独房前室のある方の壁を向く。
ファウス『すみません。』
チスイビル人のスタッフAの声『なんだ。』
ファウス『お金はどのくらい貯まっているのでしょうか?お母様のお墓を立てるにはあとどれくらい…。』
チスイビル人のスタッフAの声『…少し待て。うむ。』
キーボードを叩く音。
チスイビル人のスタッフAの声『うむ。…1番安い墓を建てる分にはイーデリアの実験が終了したらだな。』
ファウス『…そんなに早く。あ、ありがとうございます。』
壁に向けて深く頭を下げるファウス。
チスイビル人のスタッフB『…また、金の話か。』
チスイビル人のスタッフA『はは、がめついな。』
ファウスは壁にもたれかかり天井を見上げる。
シュヴィナ王国シュヴィナ城。城の城壁に横付けされるアルトガイザ内部。ファウスを先頭に進む千年大陸連邦のスタッフ達とシュヴィナ王国兵士達。無線機の音。千年大陸連邦のスタッフAが無線機を取る。
千年大陸連邦のスタッフA『ええ、はい。えっ!!!!?』
千年大陸連邦のスタッフAの方を向く一同。千年大陸連邦のスタッフAは無線機を耳から離して通話口を手で抑える。
千年大陸連邦のスタッフA『おい、…誰か魔導人型機構の修理したか?』
首を横に振る千年大陸連邦のスタッフ達。
千年大陸連邦のスタッフB『いえ。』
千年大陸連邦のスタッフC『そのまま放置という指示だったので…。』
千年大陸連邦のスタッフAは無線機の通話口から手を離し、耳に近づける。
千年大陸連邦のスタッフA『ええ。してないそうです。はい。はい。分かりました。』
千年大陸連邦のスタッフAを見つめるファウス。試験室の扉が開き、肩部の傷が無くなっている魔導人型機構を見上げるファウス。
C6 訓練 END
C7 任務
ロズマール帝国とグリーンアイス連邦の国境イーデリアで、クリシュナ王国、ロズマール帝国、アンセフィム・ロズマール王国、ロズマリー・ロズマール王国と接する安全地帯に並ぶグリーンアイス連邦のT_34000000級機動城塞、クリシュナ王国のクリシュナ級機動城塞、ロズマール帝国のテイガー級機動城塞、アンセフィム・ロズマール王国のダオン級機動城塞、ロズマリー・ロズマール王国のキャトラッツ級起動城塞、シュヴィナ王国のリヲンU級起動城塞にアルトガイザ。アルトガイザから出る魔導人型機構。イーデリアを取り囲む各国の軍勢。
ブースターを使い、跳躍する魔導人型機構。各々の機動城塞の艦橋から魔導人型機構を見つめる各国の指導者達。降り立つ魔導人型機構。実験指令室内のホログラムが映る。
カトリーヌ・ラボ『試験体。場所を移動します。』
カトリーヌ・ラボのホログラムの方を向くファウス。
ファウス『…え。』
カトリーヌ・ラボ『アルトガイザに戻りなさい。』
頷くファウス。カトリーヌ・ラボはスタッフ達の方を向く。
ファウス『はい…。』
アルトガイザの格納庫に入る魔導人型機構。格納庫のハッチが閉じる。
イーデリアの最危険地帯グラードゲート、通称コキュートスの関所付近の安全圏で止まる各国の機動城塞。振動が止まる。
カトリーヌ・ラボ『……着いたわね。』
カトリーヌ・ラボの方を向くファウス。
カトリーヌ・ラボ『外に出なさい。…そこからは私達の指示ではなく各国の指導者の方々の指示に従ってもらいます。』
瞬きするファウス。アルトガイザの格納庫のハッチが開く。通称コキュートスの関所付近に展開するクリシュナ王国、ロズマール帝国、アンセフィム・ロズマール王国、ロズマリー・ロズマール王国の人型機構群。周りを見回すファウス。
ファウス『これは…。』
カトリーヌ・ラボはリモート装置を掲げる。
カトリーヌ・ラボ『いいから外に出なさい!』
ファウス『は、はい。』
格納庫のハッチから外に出る魔導人型機構。それを取り囲む各国の人型機構群。ホログラムに映るエグゼナーレにクリシュナ王国国王ロト・クリシュナ、アンセフィム・ロズマール王国国王アンセフィム・ロズマール、ロズマリー・ロズマール王国大将軍ウィンダムとロズマール帝国皇帝ゼオン・ゼンゼノスにグリーンアイス連邦の書記長でグリア都市国家代表バルコフ・スターリング。
ロト・クリシュナ『こうして一同で偽王子の顔を拝むとはな。』
ロト・クリシュナの方を向くファウス。ファウスを見るエグゼナーレ。
エグゼナーレ『偽王子…。この地帯を抜けて見せろ。』
ファウス『…抜ける??』
ファウスはグラードゲートの方を向く。
ロト・クリシュナ『盟主殿。そうは言われてもこの地帯の説明がなければ分からぬでしょう。』
頷いた後、バルコフ・スターリングの方を向くエグゼナーレ。
エグゼナーレ『では、バルコフ代表。』
頷くバルコフ。
無人戦闘機プラーズリク6がT_34000000級機動城塞のカタパルトから飛び立つ。グラードゲートの関所の上空に差し掛かるプラーズリク6。轟音と共に放たれた無人砲台の弾幕の飽和がプラーズリク6を覆う。爆発音。弾幕が消え去った後に現れる快晴の空。唖然とするファウス。
ロト・クリシュナ『…通称コキュートスの関所。かつてのロズマール王国が我が国と…。』
ロト・クリシュナはバルコフ・スターリングの方を向く。
ロト・クリシュナ『あの国の侵入を防ぐ為に作り上げ、』
ウィンダムとゼオン・ゼンゼノス、アンセフィムの方を向くロト・クリシュナ。
ロト・クリシュナ『故国が滅びた後も…。』
ロト・クリシュナはファウスの方を向く。
ロト・クリシュナ『未だかつて抜けたものが一人もいない難攻不落の防衛システム…。』
ゼオン・ゼンゼノスとバルコフ・スターリングの方を向くロト・クリシュナ。
ロト・クリシュナ『まあ、もっともゼオン皇帝と、グリーンアイスは反対しましたがね…。』
首を横に振るファウス。後ずさりする魔導人型機構。魔導人型機構を取り囲む各国の人型機構が武器をファウスに向ける。ファウスを睨むエグゼナーレ。
エグゼナーレ『逃げるのか?』
ファウスの額から汗が垂れる。顔を上げグラードゲートを見るファウス。エグゼナーレはリモート装置を取り出す。
エグゼナーレ『…逃げても同じだ。』
リモート装置のボタンに指を置くエグゼナーレ。喉を鳴らすファウス。
ファウス『…あっ…あっ!うわああああああああああああ!』
七色に輝きだす魔導人型機構。振動が起こり、大きな唸りが鳴り響く。耳を押さえる一同。魔導人型機構は光の玉になりその場から消える。至る所から砲撃音が鳴り響く。
イーデリアの最危険地帯グラードゲート、ロズマール帝国方面の安全地帯付近に出るかすり傷一つ負っていない魔導人型機構。向かってくるロズマール帝国の人型機構群がファウスの眼に映る。ゆっくりとファウスの瞼が閉じていく。
C7 任務 END
C8 騎士の矜持
ロズマール帝国とグリーンアイス連邦の国境イーデリアで、クリシュナ王国、ロズマール帝国、アンセフィム・ロズマール王国、ロズマリー・ロズマール王国と接する安全地帯。アルトガイザ内部。魔封独房後室のベットの上で眼を開くファウス。魔封独房前室からファウスの方を向くロズマール帝国軍軍人で、紫髪をウェーブさせ、赤いマスケラをつけたセラド・ロンギヌス。
セラド・ロンギヌス『おや、お目覚めのようだ。』
ファウスの方を向くチスイビル人のスタッフ達。
ファウス『…ここは…。』
起き上がり、周りを見回した後、自身の掌を見つめるファウス。
セラド・ロンギヌス『たいしたものだな。クリシュナ国王の思惑とはいえ、あの難攻不落と言われたコキュートスの関所をかすり傷一つ追わずに抜けたのだからな…。』
セラド・ロンギヌスの方を向くファウス。
ファウス『あなたは?』
セラド・ロンギヌス『私はセラド・ロンギヌスという。ロズマール帝国の軍人だ。』
瞬きした後、セラド・ロンギヌスの方を向くファウス。
ファウス『…それでは…貴方が…。』
セラド・ロンギヌスに頭を下げるファウス。
ファウス『ありがとうございます。』
セラド・ロンギヌス『…礼を言われる事でもない。任務なのだからな。』
剣撃音。
外の景色が映る壁の方を向くファウス。切り結ぶアンセフィム・ロズマール王国のアンセフィム専用ロード・ヴェルクーク級人型機構とロズマール帝国ゼオン・ゼンゼノス専用ヴェイロード級人型機構。
ファウス『あれはロズマール帝国の!!』
ベッドカバーを跳ね除け、駆け、外で切りあうアンセフィム機を映す壁に両手をつくファウス。
ファウス『止め…。』
ファウスの方を向くセラド・ロンギヌス。
セラド・ロンギヌス『心配はないよ』
セラド・ロンギヌスの方を向くファウス。数歩歩くセラド・ロンギヌス。
セラド・ロンギヌス『アンセフィム王が皇帝陛下に手合せをお願いしたのでね。』
ファウス『手合せ…。』
ファウスはアンセフィム機とゼオン機を見つめる。人型機構の装甲上で剣を交えるアンセフィム・ロズマールとゼオン・ゼンゼノス。腕を組み、彼らを見つめるセラド・ロンギヌス。アンセフィム・ロズマールの魔法を切り払うゼオン・ゼンゼノス。
セラド・ロンギヌス『このご時世に、試合とは言え一騎打ちとは。』
首を横に振るセラド・ロンギヌス。
セラド・ロンギヌス『皇帝陛下も温情からアンセフィム王の要求を受けたのだろう。騎士道精神など時代遅れの足枷だ。』
地面に倒れるアンセフィム機とゼオン機。馬上で鍔迫り合いの後、馬の背から転げ落ちるアンセフィム・ロズマールとゼオン・ゼンゼノス。彼らは息を切らして大の字になった後、起き上がり、暫し話して握手をする。
C8 騎士の矜持 END
C9 任務完了
ロズマール帝国とグリーンアイス連邦の国境イーデリアで、クリシュナ王国、ロズマール帝国、アンセフィム・ロズマール王国、ロズマリー・ロズマール王国と接する安全地帯。アルトガイザ魔封独房後室で正座して座るファウスを見る魔封独房前室のカトリーヌ・ラボとエマートンにジェルンと多数のシュヴィナ王国兵士達。
ジェルン『偽王子。これにてイーデリアでの任務は完了です。』
顔を上げるファウス。カトリーヌ・ラボはジェルンの方を向く。
カトリーヌ・ラボ『…本当に王侯貴族様方は気まぐれで…。』
ファウスの方を向いた後、ジェルンの方を向くエマートン。
エマートン『もし、彼が失敗していたら、我が国の手でコキュートスの関所を破壊して魔導人型機構を回収するしかなかったですからね。』
鼻で笑うジェルン。
ジェルン『文句はクリシュナ王国にでも言ってくださいな。ロト国王からの提案です。』
眉を顰めるカトリーヌ・ラボとエマートン。一歩前に出てファウスを見るジェルン。
ジェルン『さて、偽王子。』
ジェルンの方を向くファウス。
ファウス『はい。』
ジェルン『…バルコフ代表配下のキツネがお前の毛髪を数本所望している。』
首をかしげるファウス。魔封独房後室に入り、ファウスを取り囲むシュヴィナ王国兵士達。
シュヴィナ王国兵士Aがファウスの髪を数本掴む。
ファウス『いっ!』
ファウスから数本の髪を抜くシュヴィナ王国兵士A。その場に倒れるファウス。魔封独房後室から出ていくシュヴィナ王国兵士達。魔封独房前室でジェルンにファウスの抜かれた数本の髪を渡すシュヴィナ王国兵士A。ジェルンはファウスの抜かれた数本の髪を眺める。
ジェルン『こんな穢れた男の髪なんて何に使うのかしら。ケモノの考える事は分からないわ。それに偽王子がいるここに長居はしたくありませんしね。』
ジェルンと共に去っていくシュヴィナ王国兵士達。暫くして立ち止まるジェルン。
ジェルン『ああ、言い忘れておりましたが、エグゼナーレ様からの言伝です。外の景色位は見せてやってもいいと。』
ジェルンの方を向く一同。
ジェルン『それでは。』
ユランシア大陸、リヲンU級起動城塞と共にシュヴィナ城へ向かうアルトガイザ内、魔封独房後室。リヲンU級起動城塞を見た後、壁の方を向くファウス。
ファウス『あの、すみません。お金の方は…。』
チスイビル人のスタッフA『…んっ、それはシュヴィナ城に着く頃には振り込まれる。フッシ王国ポーの街だな。』
ファウス『はい。』
頭を深々と下げるファウス。
ファウス『ありがとうございます。』
顔を上げるファウス。
ファウス『これでお母様に…。』
外の景色の映る壁に手を当て夜空の星を眺めるファウス。
ファウス『お母様…。』
C9 任務完了 END
C10 絆
シュヴィナ王国シュヴィナ城。城の城壁に横付されるアルトガイザ内部。魔封独房後室からシュヴィナ城下町を見つめるファウス。
ファウス『…今日は。』
チスイビル人スタッフAの声『お前にお客さんだ。』
瞬きするファウス。壁が透明化していき、現れる魔封独房前室。チスイビル人のスタッフ達が座り、ブレンとヘレの娘のメネラとその情夫のカウデ。
ファウス『あなたは?』
メネラ『私はあなたの姉のメネラよ。』
メネラを見つめるファウス。
ファウス『お姉様…。』
メネラ『そう。あんた、あれだけの事をしておいて、千年大陸連邦から金を貰って働いているみたいじゃない。』
俯くファウス。
メネラ『私達一家にあれだけの仕打ちをしておいて…。』
魔封独房後室を見回すメネラ。
メネラ『こんないい暮らししてさ。』
ファウスの顔を覗き込むメネラ。
メネラ『あんたはちっとも悪いと思ってない訳?』
ファウス『それは…。』
メネラ『悪いと思ってるならさ。…金あるよね。』
顔を上げ、メネラを見るて頷くファウス。
メネラ『見た所、ここでいい暮らしをしているみたいだし、こちらにお金をよこしてくれないかな。』
ファウス『でも…。』
眉を顰めるメネラ。
メネラ『でも…?』
ファウス『お願いがあります。お金はお渡します…だから、だからお母様のお墓を立ててもらいたいんです。』
ファウスを睨むメネラ。
メネラ『はぁ?何言ってんのあんた。何で私があんなクソババアの為に墓なんかたてなきゃなんないの?』
メネラを見つめるファウス。
メネラ『保険金にもならずにくたばった役立たずじゃない。そんな役立たずのゴミがくたばった後もなんでお金かけなきゃいけないの?お金はね。生きている私達の為にあるの!死んだ奴に金をかけても宗教屋が儲かるだけで私達は損するばかりじゃないの!』
ファウス『お姉様!お母様に対してそんなひどい事を言わないでください!お母様は…。』
メネラ『はぁ、何言ってんの!それに元と言えば何もかもあんたのせいじゃない!あんたさえでてこなけりゃ私達はあのままいい生活をし続けられたのよ!』
握りこぶしを震わせるメネラ。
メネラ『あんたさえいなけりゃ時間が経てばあのクソババアやクソジジイから遺産をたっぷりと貰えたのよ!今の様なみじめな暮らし…。あんたさえ…あんたさえいなけりゃね!あんたはそれを分かってんの!』
メネラの顔を見つめるファウス。ファウスの眼を見て後退りした後、尻もちをつくメネラ。メネラの方を向くカウデ。
メネラ『な…何よ。何その眼は!』
メネラはファウスを指さす。
メネラ『あああ、あんた…。わ、私も殺すつもり?…主殺したんだもんね。人殺しだもんね。』
ファウスは眼を見開いた後、俯く。チスイビル人のスタッフAはメネラの方を向く。
チスイビル人のスタッフA『落ち着いてください。この独房に閉じ込められている限りは安全ですよ。』
チスイビル人のスタッフAの方を向くメネラ。
メネラ『あ…あ…そう。』
カウデの腕に捕まり立ち上がるメネラ。彼女は俯くファウスを見つめた後、チスイビル人のスタッフ達の方を向くメネラ。
メネラ『お金はここに振り込んでちょうだい。』
頷くチスイビル人のスタッフA。メネラはカウデの腕を掴み、ファウスに背を向け、去っていく。
メネラ『あっはは。いい財布を手に入れたわ。あっははははは。』
閉まる扉の音。
チスイビル人のスタッフB『おお、怖い怖い。』
ファウスは扉の方を暫し、見つめた後俯く。
ファウスの方を向くチスイビル人のスタッフA。
チスイビル人のスタッフA『もう一人お客さんだ。』
顔を上げるファウス。扉が開き現れるブレンとヘレの娘のパリスと旦那のガナドー。
ファウス『あなたは?』
パリス『私はあなたの姉のパリスよ。』
パリスは扉の方を向く
パリス『さっきメネラ達がでていったけど…。』
ファウスの方を向くパリス。
パリス『まさか、お金をメネラに全部やった訳じゃないでしょうね。』
パリスの顔を見つめるファウス。
ファウス『それは…メネラお姉さまに渡しました。』
ファウスを睨むパリス。
パリス『はぁ?何やってんのあんた!兄弟姉妹はメネラだけだと思ってんの!』
眼を見開き、パリスを見つめるファウス。
ファウス『えっ…。』
パリス『んもぅ!何でメネラに全部やるのよ!あんた馬鹿なの!あれだけのことをしておいて、わたしの事はどうでもいい訳!!』
俯くファウス。
C10 絆 END