本編
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悪魔騎兵伝(仮)

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第15話 暴走列車

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C1 極東へ

C2 試験

C3 傍観

C4 保護国

C5 デモ

C6 進路変更

C7 洋上試験

C8 急務

C9 古代爆弾

C10 説得

次回予告

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C1 極東へ

 

朝。シュヴィナ王国フィオラ山地を進むアルトガイザ。そとの景色が見える壁に手を当て大幅に改良されたトーマ城を見つめるファウス。木々が揺れ、トーマ城下町には人が溢れる。俯くファウス。水しぶきの音。グラルタ湾の水上へ進むアルトガイザ。

 

グラルタ湾には超巨大航空戦艦で、負傷した後、大幅に改良されたアクマド改をはじめ、多数の軍艦が並ぶ。ファウスはグラルタ湾を見つめ、俯く。機械音。顔を上げるファウス。クレーンで吊るされた魔導人型機構がグラルタ湾に沈められ、暫くして引き上げられる。コックピットを空け、中に入り込む千年大陸連邦の作業員達。暫くして、出て来る彼ら。数回同じことを繰り返した後、千年大陸連邦の作業員Aが無線機を取って口を動かす。無線機をしまう千年大陸連邦の作業員A。クレーンが動き、運ばれていく魔導人型機構。

 

アルトガイザ内部。魔封独房後室。魔封独房前室からファウスを見る貴族連合盟主でシュヴィナ王国国王

エグゼナーレにシュヴィナ王国三大臣の一人で小太りのパンデモ。パンデモと千年大陸連邦魔法技術博士の女性で眼鏡をかけたカトリーヌ・ラボ、千年大陸連邦の機械工学者でほお髭を生やしているエマートンに千年大陸連邦考古学者のロパートソンとその助手のスージーをはじめとする千年大陸連邦の面々。跪くファウス。ファウスから目をそらすエグゼナーレ。

 

エグゼナーレ『イーデリアでの試験ご苦労だった。』

 

エグゼナーレはファウスを見る。

 

エグゼナーレ『…泳ぎは好きか?』

 

顔を上げるファウス。

 

ファウス『泳ぎ…。』

エグゼナーレ『シーン皇国での洋上試験が決まった。』

 

瞬きをするファウス。

 

ファウス『洋上…。海ですか?』

 

一歩前に出るカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『ええ。魔導人型機構には潜水適正もありますからね。底が知れないわ。』

エマートン『…データだけでスペックを見ると宇宙空間も航行可能、大気圏も突入化、ラエティエの伝説はあながち嘘ではないかもな。』

ロパートソン『ほらみろ、ワシの言った通りじゃろ。うちゅ…。』

 

ロパートソンの口を押えるスージー。

 

エグゼナーレを見つめるファウス。立ち上がるエグゼナーレ。彼はファウスに背を向け、ファウスにつけられた爆弾のリモート装置を見せる。

 

エグゼナーレ『洋上とはいえ、逃げ出そうとすればどうなるか分かっているだろうな。』

 

去っていくエグゼナーレとパンデモ。

 

エグゼナーレの声『パンデモ。放火の件はどうなっている?』

パンデモの声『はっ、只今調査中でして…。』

エグゼナーレの声『シーン皇国へ行くまでにかたはつくのか?』

パンデモの声『いえ、それが…。現場付近の目撃から放火であることは間違いないのですが…。』

エグゼナーレの声『分かった。民が怯えている。一刻も早く…。』

 

ファウス『シーン皇国…。』

 

ファウスはカトリーヌ・ラボの方を向く。

 

ファウス『シーン皇国と言えば、隊士隊の方々なのですか…。』

カトリーヌ・ラボ『隊士隊?隊士隊はオウト府常駐。あなた、シーン皇国で何かしでかした訳?』

 

首を横に振るファウス。

 

ファウス『いえ…。ロズマール帝国と戦っていた時、……一緒だったので。』

 

ファウスから顔を背けるカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『私達が向かうのはナント府トリシマ要塞よ。』

 

カトリーヌ・ラボの方を向くチスイビル人のスタッフB。

 

チスイビル人のスタッフB『聞いた話。トリシマ要塞を管轄するシミズ藩というのはついこの間できたという話…。』

カトリーヌ・ラボ『まあ、皇国の皇室と政府に幕府の後ろ盾で独立したそうだから。』

チスイビル人のスタッフB『でも、元はただの土建屋でしょ。』

 

C1 極東へ END

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C2 試験

 

シュヴィナ王国グラルタ湾。停泊するアルトガイザ内部。潜水実験室。魔導人型機構から、潜水実験指令室のホログラムを見つめるファウス。

 

千年大陸連邦の作業員B『水を投入します。』

 

水が潜水実験室に流れ込む。周りを見回すファウス。ファウスの方を向くエマートン。

 

エマートン『問題ない。潜水してもハッチを開かなきゃ水は入ってこない。人が乗ってどれだけの時間潜水できるのかの調査だから。』

 

エマートンのホログラムを見つめるファウス。水に覆われる潜水。周りを見回し、瞬きするファウス。

 

カトリーヌ・ラボ『試験体。』

 

カトリーヌ・ラボのホログラムを見るファウス。

 

カトリーヌ・ラボ『水中での移動テストも行います。』

 

頷くファウス。

 

カトリーヌ・ラボ『指示がでるまで実験室内を周回しなさい。』

ファウス『はい。』

 

歩き出す魔導人型機構。数時間周回する魔導人型機構。

 

エマートン『驚いたな。』

 

潜水実験指令室のホログラムの方を向くファウス。

 

千年大陸連邦の作業員B『全く減りませんね。一定の推移を保っています。』

 

時計を見る千年大陸連邦の作業員B。

 

千年大陸連邦の作業員B『…この様子だと半永久的な効果があると。』

エマートン『データを見せてくれ。』

 

千年大陸連邦の作業員Bが見るモニターを覗き込んだ後、顎に手を当てるエマートン。

 

エマートン『たまげたな。理論上、こいつは単機で宇宙空間を永続的に航行し、あらゆる地形に対応できる…。』

 

立ち上がるロパートソン。

 

ロパートソン『そら見ろ。だからUFOはおるといっとるじゃろ。こないだの画家の事件じゃが…。あの画家、変貌する間際に太陽系第三惑星銀河共和国やグレイ銀河連邦といった銀河系の支配国の名を言っていたと婚約者がいっとったじゃろ。』

 

周りを見るロパートソン。

 

ロパートソン『宇宙人はな。』

 

頷くロパートソン。

 

ロパートソン『おるんじゃよ…。』

エマートン『それは、アビスの粉末を使った麻薬を使用しすぎてラリった人間の言葉じゃないですか。』

 

笑みを浮かべるロパートソン。

 

ロパートソン『さてな…。』

 

C2

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C3 傍観

 

カン大陸帝国三日月島が見える公海を航海するアクマド改とアルトガイザ。アルトガイザ内部魔封独房後室から海を眺めるファウス。暫くして、顔を下に向け、胸に手を当てた後、外の景色の映る壁に手を当てるファウス。

砲撃音。顔を上げるファウス。

 

三日月島で鄭の青い旗印を付けた数隻のニーソウ軍軍艦と?の赤色の旗印を付けた数隻のナタク軍の軍艦が砲弾を打ち合う。爆破炎上するナタク軍の軍艦。ファウスは両手を景色の映る壁に当てた後、魔封独房前室のある壁へ駆け、壁を叩く。壁透明になり、魔封独房前室を映す。ファウスの方を向くチスイビル人のスタッフ達。

 

チスイビル人のスタッフA『なんだ?』

 

ファウスは戦闘するニーソウ軍とナタク軍の方を指さす。

 

ファウス『戦争が行われています!』

 

蟀谷を人差し指で書きながら、戦闘するニーソウ軍とナタク軍の方を向くチスイビル人のスタッフ達。チスイビル人のスタッフA。

 

チスイビル人のスタッフA『ああ、やってるな。』

チスイビル人のスタッフB『赤いのが押されているな。』

ファウス『止めなければ。』

 

顔を見合わせるチスイビル人のスタッフ達。

 

チスイビル人のスタッフB『止めてどうなる。』

 

チスイビル人のスタッフBを見つめるファウス。

 

ファウス『えっ…。何をいっているんですか!目の前で戦争が行われているんですよ!それを…。』

 

戦闘するニーソウ軍とナタク軍の方を見るチスイビル人のスタッフA。

 

チスイビル人のスタッフA『戦争というよりも地方領主の小競り合いだな。』

ファウス『…でも、だからと言って。』

チスイビル人のスタッフB『我々は千年大陸連邦もシュヴィナ王国も中立。他国の小領主同士小競り合いに加担すれば中立を破ることになる。そして、君は我々にもシュヴィナにも口を出せる立場ではない。』

 

チスイビル人のスタッフAを暫し見つめた後、俯くファウス。

 

チスイビル人のスタッフC『まあ、最もこちらに流れ弾が当たったり、仕掛けられた機雷に接触した場合は話は違ってくるが。』

チスイビル人のスタッフA『そういえば、勇者博愛の領海も通るが大丈夫なのか。あそこもドルテェ…。』

 

白くなる壁。ファウスはそこに手を当てて海戦を行うカン大陸帝国のニーソウ軍とナタク軍を見つめる。

 

C3 傍観 END

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C4 保護国

 

シーン皇国保護国のフィフス・エレメンタスに近い海を進むアクマド改とアルトガイザ。アルトガイザ内部。魔封独房前室。椅子に座るチスイビル人のスタッフ達。立ちファウスの方を見るカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『これから、フィフス・エレメンタスのヒヌ島、暗黒大陸連邦ヒヌ基地へ行きます。』

 

カトリーヌ・ラボを見つめるファウス。

 

ファウス『暗黒大陸連邦?シーン皇国へは行かないのですか?』

カトリーヌ・ラボ『シーン皇国へは向かいます。暗黒大陸連邦から物資の支援をしてくれるそうだから。そこでシーン皇国の艦隊と合流し、トリシマ要塞へ向かいます。』

ファウス『…暗黒大陸って意外と近いんですね。』

 

ファウスを暫し見つめて瞬きするカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『はぁ??何を言ってるのあなた?』

ファウス『えっ?』

カトリーヌ・ラボ『ここは暗黒大陸ではありませんよ。』

ファウス『で、でも、暗黒大陸連邦の基地って。』

 

腕組みをするカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『土地のリース契約よ。ゴールドソン・ヨミのヨミ…何国。』

 

カトリーヌ・ラボはチスイビル人のスタッフ達の方を向く。

 

カトリーヌ・ラボ『だったかしら…。』

 

カトリーヌ・ラボの方を向くチスイビル人のスタッフ達。

 

チスビル人のスタッフA『…ヨミ大帝大国だったか』

チスビル人のスタッフB『いや、ヨミ大王帝国だと…』

チスビル人のスタッフC『いや、ヨミ人民帝国だったような…。』

 

額に手を当て、下を向くカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『もういいわ。下の名前はころころ変わりますからね…。ともかく、そのならずもの国家対策の一環として、シーン皇国と同盟を結んだ暗黒大陸連邦にも土地を貸し出しているのよ。それにカン大陸帝国はあの有様。いつ戦の火種が飛び火してもおかしくないわ。』

 

カトリーヌ・ラボを暫し見つめた後、俯くファウス。

 

カトリーヌ・ラボ『シーン皇国も、暗黒大陸連邦も他国と比べて国内の治安はいい方だから。』

 

カトリーヌ・ラボの方を向くチスイビル人のスタッフA。

 

チスイビル人のスタッフA『本当にそうですか?昨日のシーン皇国のニュースで、電車内でぶつかって携帯ゲームの操作を誤らせただけで刺してきたと…。』

チスイビル人のスタッフB『なんでも刺した奴はそのゲームに億単位の金をつぎ込んだらしい。恐ろしい国だ…。』

 

頭を抱えるカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『…どの国にも頭のいっちゃった人はいるわ。』

 

ため息をついた後、ファウスの方を向くカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『試験体。ヒヌ基地についたら、実験室でデモを行います。』

ファウス『デモ。』

 

頷くカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『通常通りでいいわ。暗黒大陸連邦の基地のお偉いさんとフィフス・エレメンタスのお偉いさんが視察に来るのよ。』

 

カトリーヌ・ラボの方を向くチスイビル人のスタッフA。

 

チスイビル人のスタッフA『あの人型機構嫌いの暗連が人型機構の視察とは…。』

カトリーヌ・ラボ『ええ。』

 

C4 保護国 END

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C5 デモ

 

フィフス・エレメンタス、ヒヌ島。暗黒大陸連邦ヒヌ基地に停泊するアクマド改とアルトガイザに多数の暗黒大陸連邦の駆逐艦。アクマド改に物資を運ぶ暗黒大陸連邦のトラック。アルトガイザ内部。潜水実験室。魔導人型機構のコックピットからカトリーヌ・ラボ、エマートンをはじめとする千年大陸連邦の面々のいる潜水実験指令室の方を向くファウス。何回か扉の方を向くカトリーヌ・ラボ。扉が開き、現れるエグゼナーレにシュヴィナ王国の三大臣の一人で痩せ形のモーヴェ。後に続く、暗黒大陸連邦第7艦隊司令のペーリと新型潜水空母シュツットドーフ艦長マッシュ。彼らに向けて一礼する千年大陸連邦の面々。ホログラムが現れ、潜水実験指令室内部を映す。ファウスの方を向くペーリ。

 

ペーリ『こいつが…偽王子…。』

 

エグゼナーレの方を向くペーリ。

 

ペーリ『…あの偽王子をよく飼いならせたものですな。流石は貴族連合盟主殿。』

 

笑みを浮かべるエグゼナーレ。ペーリとマッシュは魔導人型機構の方を向く。

 

ペーリ『シーン皇国よりも早いお目見えということですかな。』

 

魔導人型機構を見て鼻で笑うペーリ。カトリーヌ・ラボの方を向くマッシュ。

 

マッシュ『話によれば潜水できるとの事ですが…。』

 

頷くカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『ええ。』

 

指示を出すカトリーヌ・ラボ。潜水実験室に水が流される。魔導人型機構の方を向く一同。潜水実験室に満たされる水。水中の魔導人型機構を向いた後、ファウスの方を見る一同。

 

カトリーヌ・ラボ『…いつものように周回しなさい。』

 

頷くファウス。動き出す魔導人型機構。魔導人型機構を見つめるペーリとマッシュ。マッシュはカトリーヌ・ラボの方を向く。

 

マッシュ『指は動かせますか?』

 

カトリーヌ・ラボはファウスの方を向く。

 

カトリーヌ・ラボ『指を動かしなさい。』

 

ファウスは頷き、魔導人型機構の指を動かす。

 

一歩前に出るマッシュと腕組みをしながら2、3回頷くペーリ。

 

マッシュ『これはすばらしい。水中でメンテナンスや修理を行う事ができる。』

ペーリ『確かに海底での作業にはうってつけだ…。だが、二足歩行の必要性は無いな…。』

 

 

フィフス・エレメンタス、ヒヌ島。暗黒大陸連邦ヒヌ基地。魔封独房後室に入るファウス。外の景色の映る壁には多数のシーン皇国の軍艦。アクマドの汽笛がなり、動き出すアクマドとアルトガイザに多数のシーン皇国の軍艦。

 

C5 デモ END

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C6 進路変更

 

シーン皇国ナント府アカツキ藩の管轄するリクハラ港に停泊するアクマド改とアルトガイザ。魔封独房前室からファウスの方を向くカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『…トリシマ要塞での洋上試験にはまだ日がかかるので指示があるまで待機よ。』

 

カトリーヌ・ラボを見つめるファウス。

 

チスイビル人のスタッフA『また進路を変えたんですか。』

 

頷くカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『ええ。なんでもアカツキ藩の領主に饗応に招かれたのだとか。シュヴィナのことだから色々とあるんでしょう。』

 

白い壁に変わる魔封独房前室。ファウスはリクハラの港町の方を見つめる。定食屋の扉が勢いよく開き、吹っ飛んで地面に落ちる

町人A。景色の映る壁に近づくファウス。顔を上げる町人A。定食屋から出て来るシーン皇国の元NPO法人の取締役ヤマアラシ。ヤマアラシを見るファウス。

 

ファウス『あれは…。』

 

景色の映る壁に駆け寄るファウス。

 

ヤマアラシ『てめえ!散々好き勝手言いやがって!!』

町人A『ああ、何度でも言ってやる!自国の子ども達すらろくに支援できねえ癖に何が慈善事業だ!他国の子どもばかり支援しやがって!

おまけに支援したやつらはテロリストじゃねえか!!はは!聞いてあきれら!』

 

町人を睨み付け、握りこぶしをあげるヤマアラシ。

 

ヤマアラシ『なんだと!』

 

ヤマアラシは町人Aに馬乗りになり、顔面を殴り続ける。集まってくる町人達。周りを見回すファウス。口笛が鳴り響き、駆けて来るアカツキ藩の岡っ引き達。彼らは町人Aからヤマアラシを引き離す。町人Bが町人Aを起き上がらせる。

 

町人A『クソ野郎が!お前のやってることなんて自分がのし上がりたい為の自己満足じゃねえか!』

 

ヤマアラシ『うるせえ!成功してりゃ、こんなみじめな事にはならなかったんだ!俺は名声を手に入れられたんだ!金もツテも手に入った!』

 

ヤマアラシは回りながら周りの町人たちを指さす。

 

ヤマアラシ『お前も!お前も!お前も!!皆、俺の名声の前に跪いたんだ!それが…それがははははははは。』

 

岡っ引きに取り押さえられ、しょっ引かれていくヤマアラシを見つめた後、ファウスは胸に手を当てて俯く。

 

C6 進路変更 END

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C7 洋上試験

 

朝。シーン皇国シミズ藩トリシマ要塞沖に止まるアクマド改とアルトガイザにシーン皇国の軍艦。アルトガイザの甲板に乗る魔導人型機構。千年大陸の面々の映るアルトガイザ艦橋のホログラムとアクマド改の艦橋のホログラムが映る。アクマド改の艦橋のホログラムにはエグゼナーレにシュヴィナ王国産大臣の一人で女性のジェルンに、シーン皇国の剣聖エザイアにシーン皇国海軍大元帥のトーゴーとシーン皇国連合艦隊司令長官のヤマモト、

シーン皇国シミズ藩藩主ソーウン・シミズと家老のオオマツが映る。エザイアの方を向くエグゼナーレ。

 

エグゼナーレ『よもやシーンの魔剣士の中でも最高の剣士と言われる方が派遣されるとは…。』

エザイア『…まだエザイアの名を襲名しただけの不束者です。先代には遠く及びません。』

 

2、3回頷くエグゼナーレ。

 

エグゼナーレ『シーン皇国も分かっている…。』

 

アクマドの艦橋を映すホログラムを見つめるファウス。

 

カトリーヌ・ラボ『潜水試験は通過しているので、何処まで潜水ができるのかのテストとなります。』

 

頷くエグゼナーレ。ファウスの方を向くカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『では、試験体。』

 

頷くファウス。海に飛び込む魔導人型機構。水しぶきが上がる。泡が海面へと上がり、周りを見回すファウス。珊瑚が生え、魚が群れをつくり泳ぐ。海面からの光に照らされたその光景を見つめるファウス。魚の群れが崩れ、現れる魔導人型機構を取り囲むシーン皇国シミズ藩の潜水艦群。

 

ファウス『これは…。』

ソーウン・シミズ『我が藩の潜水へのお供ですよ。』

 

ファウスを見つめるエグゼナーレ。

 

エグゼナーレ『そのシーン皇国の潜水艦は常にお前をロックしている。馬鹿なことは考えないことだな。』

 

 

 

 

昼。トリシマ要塞沖。シミズ藩の潜水艦群と共に潜って行く魔導人型機構。アルトガイザ艦橋のホログラムの方を向くファウス。

 

カトリーヌ・ラボ『魚が居なくなってかなりの時間がたつわね。これは海洋学者が喜びそうだわ。』

 

笑うエグゼナーレ。

 

エグゼナーレ『偽王子付きだがな…。』

 

エグゼナーレのホログラムを見つめた後、俯くファウス。無線機を取るソーウン・シミズ。計器を見るエマートン。

 

エマートン『うむ…。引き上げだ』

 

エマートンの方を向くファウス。

 

ファウス『…まだ潜れます。たぶん…。』

 

魔導人型機構を見つめる一同。エグゼナーレの傍らにより耳打ちするエマートン。エグゼナーレは2、3回頷いた後、ファウスの方を見つめる。

 

エグゼナーレ『偽王子…。引き上げだ。』

 

エグゼナーレを見つめ、頷くファウス。

 

ファウス『分かりました。』

 

海面へと上がって行く魔導人型機構とシミズ藩の潜水艦群。

 

エグゼナーレ『そういえば、潜ることはできるが海上を進むことはできるのか?』

カトリーヌ・ラボ『海上…。』

エグゼナーレ『ロズマールは水陸両用の航空戦艦を保有している。』

エマートン『実験したことはありませんが…。』

エグゼナーレ『では、明日の試験は海上試験だ。』

 

エグゼナーレの方を見つめる一同。

 

C7 洋上試験 END

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C8 急務

 

朝。シーン皇国トリシマ要塞沖に停泊するアクマド改にアルトガイザ、シーン皇国の軍艦。アルトガイザの甲板に立つ魔導人型機構。コックピットからアクマド改の艦橋内とアルトガイザの艦橋内のホログラムを見つめるファウス。アクマド改のホログラムの方を向くカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『盟主様は遅いわね…。』

 

アクマド改の艦橋内の扉が開き、現れるエグゼナーレにモーヴェ、ソーウン・シミズ。

 

モーヴェはカトリーヌ・ラボの映るモニターの方を向く。

 

モーヴェ『シーン皇国より依頼がある。』

 

顔を見合わせる千年大陸連邦の一同。モーヴェはソーウン・シミズの方を向く。一歩前に出るソーウン・シミズ。

 

ソーウン・シミズ『…カントウ府、不死の山にて暴走する列車を止めて頂きたい。』

 

深々と頭を下げるソーウン・シミズ。頬杖をつくエグゼナーレ。

 

エグゼナーレ『だ、そうだ。』

 

眉を顰める千年大陸連邦の一同。

 

カトリーヌ・ラボ『列車の暴走なんて我々のでる幕ではありません。』

エマートン『…列車の暴走位シーン皇国の技術力ならなんとかなる筈ですが…。』

 

カトリーヌ・ラボの方を向くエグゼナーレ。

 

エグゼナーレ『千年大陸連邦が関係ない訳はない。その列車が積載しているのは古代爆弾だ。』

 

エグゼナーレを見つめる千年大陸連邦の一同。暫し沈黙。

 

エグゼナーレ『列車が暴走して手の打ちようがないらしい…。もし、その列車が脱線でもすればカントウ府の多くの人達が亡くなるだろうな。古代兵器には古代兵器を当てるしかないだろう…。』

 

エグゼナーレの方を向くファウス。

 

カトリーヌ・ラボ『…しかし、依頼されたところでナントからカントウまでの距離は…。』

チスイビル人のスタッフA『不死山は内陸部。イーデリアとは違い起伏が激しく間に合うかどうかは…。』

 

頭を下げるソーウン・シミズ。

 

甲板を蹴る魔導人型機構。魔導人型機構の方を向く一同。

 

カトリーヌ・ラボ『試験体!何を!!』

 

カトリーヌ・ラボの方を向くファウス。

 

ファウス『行きます!』

 

海上を駆け、七色に輝いて空を飛ぶ魔導人型機構。立ち上がるエグゼナーレ。

 

エグゼナーレ『飛んだだと!!』

 

魔導人型機構を見つめる一同。エグゼナーレは首を横に振り、リモート装置を取り出す。

 

カトリーヌ・ラボ『試験体!聞いていますか?』

 

カトリーヌ・ラボの方を向くファウス。

 

ファウス『何かできると思うんです。』

エグゼナーレ『偽王子、引き返せ。そのまま貴様は逃げるつもりだろう。』

 

エグゼナーレの方を向くファウス。

 

エグゼナーレ『引き返さねば…。』

 

エグゼナーレはリモート装置を掲げる。

 

ファウス『分かっています。でも、時間が…。』

 

眉を顰めるエグゼナーレ。

 

エグゼナーレ『分かった。しかし、妙な動きをすればお前を爆破する。』

 

エグゼナーレを見つめるファウス。ファウスの方を向くカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『それにしても、あなた…。不死山がどこか分かっているの?』

 

カトリーヌ・ラボを見つめるファウス。

 

ファウス『あっ…。』

 

額に手を当てるカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『分かりました。』

 

カトリーヌ・ラボはソーウン・シミズのホログラムの方を向く。

 

カトリーヌ・ラボ『ナビゲーションをお願いします。』

 

頷くソーウン・シミズ。

 

ソーウン・シミズ『はい。それではカントウ府のものがナビゲートします。』

 

ソーウン・シミズは無線機を取り出す。

 

アンダの声『聞こえるか?こちらカントウ府陸軍司令アンダだ。』

ファウス『はい。』

アンダの声『同じく陸軍大臣のハネヤマに参謀長官のツズキがナビゲートする。』

ファウス『よろしくお願いします。』

エマートン『…しかし、洋上を駆け、飛行するとは…。この速度ならかなりはやく不死山につくだろう。』

 

C8 急務 END

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C9 古代爆弾シーン皇国オウト府上空を七色の光を煌めかせながら飛行する魔導人型機構。

 

アンダの声『今、オウト府だ。』

 

ファウスの方を向くカトリーヌ・ラボのホログラム。

 

カトリーヌ・ラボ『試験体。今から言うことをよく聞きなさい。』

 

カトリーヌ・ラボの方を向くファウス。

 

カトリーヌ・ラボ『そこのシーン皇国を分断する湖は見えるかしら。』

 

オウト府、コダイ湖の方を向くファウス。

 

ファウス『はい。』

 

カトリーヌ・ラボ『その南北にシーン皇国を分断する湖はこの国の天下分け目の決戦で使われた古代爆弾によるものです。その為、シーン皇国は古代爆弾を持たず、作らず、持ち込ませずの方針を貫いていた筈ですが…。』

アンダの声『む…。』

カトリーヌ・ラボ『列車が脱線し、古代爆弾が起動したとすればどういう事が起こるか分かりますね。』

 

喉を鳴らすファウス。

 

ファウス『それでも、僕はできることをします。』

 

ファウスを見つめるカトリーヌ・ラボ。

 

カトリーヌ・ラボ『…そういう事ではなくて、古代爆弾の取り扱いは注意しなければいけないという事です。むやみやたらに列車を攻撃すれば、カントウ府はその湖のようになります。分かるでしょ。』

 

カトリーヌ・ラボを見つめるファウス。

 

カトリーヌ・ラボ『だから、列車を止めるためには最善の手を尽くさなければならないの。』

 

頷くファウス。

 

ファウス『はい。』

 

シーン皇国カントウ府、不死山、上空を飛ぶ魔導人型機構。

 

アンダの声『その大きく美しい山が不死山だ。』

 

不死山を見つめるファウス。

 

アンダ『その麓の路線をみればすぐに分かる。』

 

軍事用の路線を凄まじい速度で周回する貨物列車。列車の運転席で操縦するシーン皇国軍人のタカナを見つめるファウス。

 

ファウス『あの人…必死に…。人が…人が必死に止めようとしています。』

 

机を叩く音。

 

アンダの声『違う!そいつこそ!列車を暴走させた張本人だ!』

 

瞬きするファウス。

 

ファウス『でも…。』

 

ファウスは通信機を取る。

 

C9 古代爆弾 END

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C10 説得

 

シーン皇国。カントウ府。不死山。無線機をとるファウス。

 

ファウス『話してみます。』

アンダの声『おい、何をしている。そいつは無駄だ。キチガイだ!』

 

タカナの声『遅れる。会社に遅れちまう…。このままだと重要な取引に遅れちまう…。重要な取引にぃいいいい。』

 

運転席のタカナを見つめるファウス。

 

アンダの声『だから言っただろう。』

 

無線機に口を近づけるファウス。

 

ファウス『聞こえますか。』

アンダの声『おい!お前、何をやっとる、んだ!』

周りを見回すタカナ。

 

タカナの声『な、何だ?誰だ!お前は!!』

ファウス『僕はファウスです。』

タカナの声『ファウス…。』

ファウス『その列車には強力な爆弾が搭載されています。すぐに列車を止めないと…。』

タカナの声『うるさい!爆弾が搭載されていようが何だろうが会社にはいかなきゃなんないんだ!』

ファウス『止めてください。その爆弾は強力すぎてあなたも、あなたの周りの人達だって吹き飛んでしまうんです。』

タカナの声『お前に何が分かる!会社にいかなければ何もかも失うんだ!金も、地位も家族も!一回の失敗で何もかも失うんだ!だから、俺は会社に間に合わなければならない!!』

 

スピードを上げる列車。

 

アンダの声『馬鹿!何をやっているんだ!!ああ、千年大陸連邦はどんな教育をしとるんだ。それが爆発したら…ああ。もとといえばお前たちが暗黒大陸連邦に接待されたから。』

ハネヤマの声『し、司令だって献金をもらい、参謀長官もおこぼれにあずかったじゃないですか。』

ツズキの声『な、なに。そういう大臣も家庭を放って暗黒大陸連邦の女に入れあげていたじゃないか!』

ファウス『止めてください。今は争っている状況ではないでしょう。』

 

暫し沈黙。

 

ハネヤマの声『…あの機体のパイロットは確か偽王子。なら…爆破した場合。』

ツズキの声『あ、ああ。それなら…。』

アンダの声『名案だ…。』

 

暴走列車と並走する魔導人型機構。

 

ファウス『間に合わなくたっていいんです。』

タカナの声『何を言っている俺の代わりなんていくらでもいるんだ。一回失敗すれば他の奴らにとって代わられ、人生は終わるんだぁあああ!!爆発が起ころうと、災害になろうと、体調を崩そうと、宇宙人が攻めてこようと、会社にはいかなければならない。会社にいかなければ…。会社に…。』

 

タカナを見つめるファウス。

 

ファウス『会社なんかよりも、あなたの命の方が大事です!』

タカナの声『…えっ。何を言っている。会社が全て、会社が、会社が…。』

ファウス『僕はあなたに死んで欲しくない。会社なんかよりもかけがえのない命の方が大事なんです!』

 

立ち尽くすタカナ。タカナは自身の両手を見つめる。

 

タカナの声『…あ。俺は…。』

ファウス『もう大丈夫ですよ。大丈夫ですから。』

タカナの声『…なんてことを…。あの時の事が蘇って…。』

ファウス『良かった…。正気に戻ったんですね。』

タカナの声『あ、ああ。』

ファウス『列車を止めましょう。その列車は危険すぎます。』

タカナの声『分かった。……駄目だ!ブレーキが効かない!…このスピードだと!!うわああああああああああ!!』

 

七色に輝き、列車を受け止める魔導人型機構。

 

タカナの声『俺は生きているのか。生きているんだ。ははははは。』

 

列車の運転席が開き、出て来るタカナ。

 

ファウス『…良かった。』

 

銃声が鳴り響き、列車から転がり落ちるタカナの体。眼を見開くファウス。

 

シーン皇国陸軍兵士達が銃を構えながら死体に近づく

 

ファウス『どうして…。』

 

タカナの死体を蹴るシーン皇国陸軍兵士A。

 

ツズキの声『いや〜終わった。終わった。』

ハネヤマの声『どうですマージャンでも。』

アンダの声『おぅ。いいなぁ。もちろん賭けるよな。で、後、誰が来る?』

ハネヤマの声『新任のヨモタを誘えば来るんじゃないですか。』

アンダの声『あ〜。ヨモタァ。いいカモになりそうだ。ワッハッハハハ。じゃあ、カントウに戻るとするか。』

 

靴音が鳴り響く。

 

C10 説得 END

-14ページ-

次回予告

 

魔物

 

説明
・必要事項のみ記載。
・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
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