本編補足 |
死術師
C1 幻影
C2 大道芸人
C3 芸
C4 復活
C5 希望
C1 幻影
ユランシア大陸テウシン領でミゼ王国の保護国ヂョルガロン王国カミジュナ、ヂョルガロン国王別邸。瓦に雨粒が当たり、下へと流れていく。回廊に立ち、カミジュナの街の中央に聳える跨道橋を見つめるヂョルガロン王国国王ギュウジュウ。
大きくなる雨音。ギュウジュウは 跨道橋を暫し見つめた後、俯く。瞬きし、顔をあげ、暫く宙を見つめ、右手を前に出すギュウジュウ。
ギュウジュウ『スリョ……。』
ギュウジュウは壁に右手を当て俯く。
ガンタマの声『…王のご様子は?』
医者『一向によくなりませぬな。』
鳴り響く大陸横断鉄道の汽笛の音。
シンタクの声『んっ、あれは!』
ゆっくりとその場に崩れ落ちていくギュウジュウ。激しい靴音。ギュウジュウに駆け寄るヂョルガロン王国大臣のシンタク、ヂョルガロン王国の武官のガンタマにヂョルガロン王国の武官でシャクノツゴーの息子のシャクノジジョー。
シンタク『王、どうなさいました?王!』
ギュウジュウはゆっくりとあるいて部屋の中へ入っていく。歩いてシンタク達の傍らによる医者。
医者『…気の病じゃ。』
ギュウジュウを見つめる一同。
C1 幻影 END
C2 大道芸人
ヂョルガロン王国カミジュナ、ヂョルガロン国王別邸。回廊に座り、扉を開けるシンタク。
シンタク『王様。』
シンタクの方をゆっくり向くギュウジュウ。
ギュウジュウ『…なんだ。シンタクか。』
シンタクの顔を見た後、俯くギュウジュウ。頭を床につけるシンタク。
シンタク『はっ、シンタクにございます。今宵は…。』
シンタクから目を背けるギュウジュウ。
ギュウジュウ『興味は…ない…。』
顔をあげるシンタク。
シンタク『ま、まだ何もいっておりませんよ。』
ギュウジュウ『俺はあの人と…あの子と…。』
シンタクはギュウジュウの正面に移動する。
シンタク『わ、分かっておりますが、珍しい大道芸人を見つけました故…。』
ギュウジュウ『大道芸人?笑えない。笑いたくも無い…。』
シンタク『いえ、それがですね…。蘇りの芸でございまして…。』
布団を撥ね飛ばすギュウジュウ。
ギュウジュウ『何っ!』
シンタク『あ、も、もちろんインチキだとは思いますが…。』
ギュウジュウ『シンタク…。』
ギュウジュウに頭を下げるシンタク。
シンタク『国王陛下を愚弄した訳ではございません。医者からは気の病と…。ですから…。な、なんならすぐに帰らせますが…。』
シンタクを見つめるギュウジュウ。
ギュウジュウ『いや、いい。…待たせておけ、こちらも準備がある。』
頭を下げ、床に当てるシンタク。
シンタク『は、はあ。』
カミジュナ、ヂョルガロン国王別邸。回廊を歩くギュウジュウとシンタク。
ギュウジュウ『…すっかりと衰えたものだ。』
シンタク『そんな事はございません。王は…。』
ギュウジュウ『世辞は良い。それよりもその芸は本当にインチキなのか?』
シンタク『それは、その大道芸人の芸でございますから何かしらのカラクリはあると思いますが…。』
立ち止まり、シンタクの方を向くギュウジュウ。
ギュウジュウ『…お前達は芸を見なかったのか?』
自身の後頭部に手を当て、頭をかくシンタク。
シンタク『いえ、私達も芸を見ましたんですがそれが正直よくわかりませんでした。芸なのでトリックは使ったと思うんですよ。』
腕組みして、顎に手を当てるシンタク。
シンタク『ああ、そうだ。呪文を唱えていたから魔法かもしれませんね。』
シンタクを見つめるギュウジュウ。
ギュウジュウ『魔法。』
頷くシンタク。
シンタク『え、ええ。ああ、陛下なら千年大陸に留学していたと聞いておりますので何か分かるかも…。』
シンタクの方を向くギュウジュウ。
ギュウジュウ『そうか?』
ギュウジュウの顔を見て笑顔になるシンタク。
シンタク『おお、そのお顔!昔が戻ってきましたね!』
シンタクから目を逸らすギュウジュウ。
ギュウジュウ『もうよい。行こう。』
C2 大道芸人 END
C3 芸
ヂョルガロン国王別邸。饗応の間。上座に座るギュウジュウにシンタク、ガンタマにシャクノジジョー。琵琶を持ち座る死術師でフードを深く被った血の気の無いマクロ。彼を取り囲むヂョルガロン王国の兵士達。ギュウジュウに一礼するマクロ。
マクロ『ぴょるぴょるぴょる。これは国王陛下。お招き光栄でございます。私、旅の大道芸人…。』
弦を弾くマクロ。
マクロ『マクロでございます。』
マクロを見つめるギュウジュウ。
ギュウジュウ『では頼む。』
頷き、弦を弾くマクロ。
マクロ『今宵は、皆さまは摩訶不思議な世界をご覧になります。生と死の秘術。魔術師は蘇りの実験を…亡くしたものを取り戻す為に。』
弦を弾くマクロ。マクロを見つめるギュウジュウ。
マクロ『多くは何も返らぬ操り人形。1人は技は返って精神返らず、1人はかすかな記憶しか戻らず廃人、1人は耐えれず、自殺した…。』
シンタクはギュウジュウに耳打ちする。
シンタク『気味の悪い歌ですがこれも彼の芸風なのでどうか大目に…。』
頷くギュウジュウ。
マクロ『さて、この魔術師。多くの実験を繰り返しながら、たいていのものは蘇らせる事ができるようになりまして…。』
弦を強く弾き、琵琶から手を離すマクロは鼠を取り出すと、首を絞める。鳴き声を上げて死ぬ鼠。唾を飲み込むギュウジュウ。マクロは回りに鼠の死体を見せ、ギュウジュウに差し出す。受け取り、脈を確認するギュウジュウ。彼は鼠の死体を見つめた後、マクロへ返す。
マクロ『このようにこの鼠めは私が絞め殺しました。』
鼠の死体を床に置き、琵琶の弦を弾くマクロ。
マクロ『しかし、私が念じれば…。』
呪文をとなえるマクロ。ギュウジュウは耳をたて目を見開いてマクロを見つめる。マクロの呪文が終わり、起き上がり動き出す鼠。鼠はマクロに近く。弦を弾くマクロ。拍手が起こる。
マクロ『蘇り、しかし殺した相手も分からない。ただの脱け殻ばかり。』
弦を弾くマクロ。
マクロ『ただの脱け殻ばかり…。』
ギュウジュウはマクロを暫し見つめる。弦を弾くマクロ。
マクロ『如何ですかな?如何ですかな?』
立ち上がるギュウジュウ。手を止め、ギュウジュウを見つめるマクロ。
ソンタク『王!』
マクロ『…お気に召しませんでしたかな?』
マクロを見つめるギュウジュウ。
ギュウジュウ『いや、療養中の身の上、今宵は疲れた。』
扉を開けるギュウジュウ。頭を下げる一同。ギュウジュウを追うシンタク。
シンタク『まことに申し訳ありません。あのような。』
立ち止まるギュウジュウ。
ギュウジュウ『いや。あの大道芸人も疲れていることだろう。暫し、ここに滞在させ、休養させてやれ。』
跪き、ギュウジュウに向かい一礼するシンタク。
C3 芸 END
C4 復活
ヂョルガロン王国。カミジュナの臨時王宮。立ち上がる文官A。
文官A『ではこれより朝儀を…。』
扉が開き、現れるギュウジュウ。彼は玉座に向かい歩く。ギュウジュウを見つめる一同。
ギュウジュウは立ち止まり、文官Aの方を見つめる。
ギュウジュウ『どうした?続けよ!』
大きく頷く文官A。
文官A『はっ、はい!』
回りを見回す文官A。
文官A『これより朝儀はじめます。』
玉座に座るギュウジュウ。歓声が上がり、涙をふくシンタクをはじめとする多数の文官達。
文官B『これは王の復活を国民に知らせなくては。』
掌を前に出すギュウジュウ。
ギュウジュウ『いや、すまないがそれはまだ無理だ。体調が優れぬゆえ。今日は懇願にきたのみ。』
ギュウジュウに頭を下げる一同。
一同『なんなりとお申し付けを!』
ギュウジュウ『では…。』
立ち上がるギュウジュウ。
ギュウジュウ『早速だが、私はあのマクロという者を取り立てたいと思う。』
ざわめき。顔を見合わせる文官達。ギュウジュウは回りを見回す。
ギュウジュウ『不服か?』
首を横にふる一同。
シンタク『…いえ、そのような事は。直ちに。』
頷くギュウジュウ。
ギュウジュウ『よろしく頼む。』
ふらつくギュウジュウ。
ギュウジュウ『すまんな。まだ体の調子が…。俺が参加できるのはここまでだ。』
去っていくギュウジュウ。文官達がギュウジュウの傍らに寄る。
ギュウジュウ『よせよせ。こんな大人数で…。一人でもいける。』
文官C『し、しかし…。』
文官達の方を向くギュウジュウ。
ギュウジュウ『朝儀はどうなる。』
ギュウジュウの顔を見つめる一同。
ギュウジュウ『頼んだぞ。』
頷く一同。
C4 復活 END
C5 希望
カミジュナ、ヂョルガロン国王別邸。上座に座るギュウジュウと彼の前に座るマクロ。
マクロ『お取り立てありがとうございます。』
回りを見回すマクロ。
マクロ『しかし、来た早々お人払いとは…。』
ギュウジュウ『お前に聞きたい事がある。』
頷くマクロ。
マクロ『なんなりと…。』
身を乗り出すギュウジュウ。
ギュウジュウ『あの芸のカラクリは?』
首を傾げるマクロ。
マクロ『自分でタネをばらす芸人はおりませんよ。』
マクロを見つめるギュウジュウ。
ギュウジュウ『インチキか?』
マクロ『さてはて、それは見たものに委ねられるもの…。』
呪文を一節となえるギュウジュウ。ゆっくりと顔をあげるマクロ。
ギュウジュウ『父上の命で千年大陸に留学したことがあってな。これは死術の呪文の一節、お前が唱えた呪文と同じものだ。』
ギュウジュウを見つめるマクロ。
マクロ『…ほう。どこで死術をならいましたかな?』
眉をひそめるギュウジュウ。
ギュウジュウ『……そ…れは…。魔法学校の授業で…習った。ああ、習った。』
マクロ『左様ですか。失礼ですが誰に習ったのですかな?』
ギュウジュウ『…それは……エフ、エフ女史だ。』
笑いだすマクロ。
マクロ『エフ女史?はは、あの娘はアイテム魔法専攻。とても死術のレベルを駆使できる能力ではありませんよ。それに…死術というものは恐ろしいものとして禁止され、どの学校も取り扱っていません。もし、死術を得たいなら異端の魔術師に教えを乞うべきだ。』
立ち上がり、刀を抜くギュウジュウ。
ギュウジュウ『…どうしてエフ女史を詳しくしっている?』
ギュウジュウを見つめるマクロ。
ギュウジュウ『エフ女史を知っているならお前は魔法学校出身。そしてお前の芸のカラクリは魔法だ。』
笑いだすマクロ。
マクロ『ぴょるぴょるぴょる。これは一本とられた。病み上がりとして陛下を見くびっていたようだ。』
ギュウジュウの顔を覗きこむマクロ。
マクロ『…なら、私を千年大陸に売りますかな。』
マクロを見つめるギュウジュウ。
ギュウジュウ『条件がある。お前の死術で二人の者を甦らせて欲しい。』
マクロ『ほう…。』
ギュウジュウ『できなければ千年大陸に引き渡す。抵抗すればこの場で切り捨てる。』
マクロ『それでそのお二方というのは?』
ギュウジュウ『俺の妻スリョクと俺とスリョクの子のギュウジュウイチだ。』
マクロ『妻?陛下の妻は…。』
ギュウジュウ『俺にはスリョクしかいない。』
マクロ『左様ですか。できませんな。』
眉をひそめるギュウジュウ。彼はマクロを睨み付け、剣を突きつける。
ギュウジュウ『できませんとはどういうことだ!』
ゆっくりと立ち上がる。
マクロ『歌の通りでございます。 多くは何も返らぬ操り人形。1人は技は返って精神返らず、1人はかすかな記憶しか戻らず廃人、1人は耐えれず、自殺した…。数少ない成功例の事でございます。』
ギュウジュウ『なっ!』
マクロ『ただ甦らせることはできますが、それはお望みか?』
剣を下ろし、俯くギュウジュウ。
マクロ『しかし、手が無い訳ではございません。』
顔を上げるギュウジュウ。
ギュウジュウ『えっ。』
マクロ『歌の最後の一体は最後に記憶を全て取り戻しました。』
ギュウジュウ『なっ、なら。』
マクロ『しかし、残念な事に不完全故自殺を…。必要なものは分かっているのですよ。必要なものは。』
ギュウジュウ『その必要なものとは?』
頷くマクロ。
マクロ『アビス層の破片でございます。』
ギュウジュウ『アビスの…。』
マクロ『もちろん。あなたの見識ある誠実な配下はそれを許さないでしょう。』
ギュウジュウ『どうしろと?』
マクロ『ぴょるぴょるぴょる。簡単な事です。私に軍隊を持たせればいい。無論、正規兵ではなく…。表向きは陛下の支援を受けた大道芸人の部下達として…。』
マクロを見つめるギュウジュウ。
ギュウジュウ『…分かった。』
下を向くギュウジュウ。
ギュウジュウ『俺にはスリョクとギュウジュウイチだけが…。』
顔を上げ、マクロを見つめるギュウジュウ。
ギュウジュウ『希望なんだ。』
ギュウジュウを見つめるマクロ。
C5 希望 END
END
説明 | ||
・必要事項のみ記載。 ・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。 ・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。 |
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