【恋姫・単話】永久の自由 |
「まだ……やるのか?」
「黙れッ!」
「左慈……」
とある外史。いや、正確には外史だった世界。
生命の住まぬ、草木すらも枯れ果てた外史など世界とは呼べぬだろう。
そんな壊滅した世界で "青年" と "彼" は戦っていた。
「……何故だ………この俺が…ハァハァ……貴様ごときに……」
「もはや、お前に勝ち目は無い。これで最後だ。左慈、大人しく投降しろ 」
かなり疲弊している青年に対し彼は余裕がある様子だ。戦い始めて早数時間。彼は青年に対し何度も殴打を加えているが、青年は彼にたったの一撃すらも与える事が出来てはいなかった。
「卑弥呼も貂蝉もお前の投降を望んでいる。勿論、俺もだ 」
「巫山戯るなッ!誰が貴様などに……」
彼は戦いを望んでいるわけではない。投降する様に何度も促すが、青年は反抗的な態度を崩さない。青年の眼は彼に対する憎しみの色に染まっていた。
「……残念だ。……"龍絶" 」
時間切れだった。崩れゆく世界の中、彼は投降勧告を無視した青年を残念そうな目で見つめると、同時に手の中に刀身の黒い日本刀を顕現させる。青年は咄嗟に警戒態勢をとるが、彼は瞬時に青年の背後に転移し、青年の背中を切りつける。
「ぐぁッ!貴様ァ!」
青年は一瞬顔を苦痛に歪めるも、直ぐに振り向いて彼に対し殴り掛かる。しかし、彼はその拳を受け止め、続いて腹部を切り裂く。そして、そのまま青年の体を蹴飛ばす。
青年は軽く吹き飛んだ後、地面を転がる。青年は地面に爪を立て勢いを殺し、身体の至る所から血を流しながらも、立ち上がろうとする。しかし、上手く立てないのか膝を付く形になる。
「パートナーと同じ道を歩むか。本当に残念だ 」
「ぐ……ハァ… やはり、貴様が于吉を……ガハッ」
吐血し、切り裂かれた腹部を抑えながらも青年は彼を睨みつける。実質的に仲間を殺さた事を知り先程よりも憎悪の色が濃くなっていた。
そんな青年を見つめながら彼は自らの刀に気を篭める。
青年は彼が刀に気を込める一瞬の隙を見出し、最後の力を振り絞って蹴りを繰り出す。しかし、彼は片手でそれを軽く受け止めると、切り裂かれた腹部を躊躇なく蹴り飛ばす。
「 ────ッ!…… ァァァ…… 」
切り裂かれた箇所を蹴られた事で、全身に走る激痛に青年はたまらず表情を歪め、言葉にならない声を出す。
そんな青年の姿を見つつ彼は再度刀に気を込め始める。
「因みに、于吉を消したのは正確には俺じゃなく管路だ。かつての師としての責任だと言っていた。それと、于吉は最後までお前の事を案じていたそうだ」
気を込めた事により紅く発光している刃を手にジワジワと歩み寄る。青年には彼の背後に大鎌を持った死神が現れた様に見えた。
「……クソが…」
「長年付き添ったパートナーなんだろ?魂を縛ったりはしてないし、俺達がさせないからな。あっちで再会するといい 」
彼はその刃を一度鞘に戻し、動けない青年に対し、居合の構えをとる。
「クソが、クソが、クソが、クソが!」
「サヨナラだ、左慈。来世では自由になれる事を願ってるよ 」
「────────北郷一刀ォ!────」
青年は彼の名を叫ぶ。
彼は目を閉じ、刀に手を添えると
《ヒュン》
一閃した。それと同時に青年の視界の中にいた死神の様なモノも鎌を振り下ろし消える。その直後、風を切る音と共に彼の後方で何かが落ちる音がする。
彼は横たわり動かない青年を見て優しい声で問いかける。
「なぁ、左慈。これがお前の目指した "自由" なのか? 」
その言葉と共に彼は青年を残して消えていく。
それと同時に存在していた世界は崩壊し塵となっていく。
その日、一つの外史が終端を迎えた。
説明 | ||
リハビリ作品の単話。短めですが、グロ描写に近い物があります。 | ||
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コメント | ||
次の更新ゆっくり待ってるので頑張ってください(ヨシケン) | ||
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