異能あふれるこの世界で 第二十六話 |
【大阪・姫松高校】
恭子「……」
洋榎「おった」
恭子「ちゃうか。そん時はこう……」
洋榎「んー?」
恭子「あかん。これ無限にいけるやつやんけ……」
洋榎「こーら! 頭抱えてなにやっとんねん。楽しい楽しい休み時間に、鉛筆握っておべんきょかぁ?」
恭子「んなわけあるかい! っと、そうとも言えんか」
洋榎「なんやそのびっみょうな返し」
恭子「集中しとったからしゃあないやろ。いきなり声かけといて、ええ返しとか求めんのやめえや」
洋榎「ほーん。ちゅうことは、考えさしたったら気の利いたこと言うてくれるんやな? 恭子のネタとかひっさしぶりやわあ。次の休み、期待しとくでぇ! ほななー」
恭子「待て待て待て待て! そういうん得意やないの知ってるやろ。帰るんなら、言いたいこと言うてからにしてくれんか?」
洋榎「おっ、さすがやな。なんや言いに来たん読み切られてもうたかあ」
恭子「毎日毎日、誰が洋榎の相手してたと思てんねん。これくらいできんとやっとられんからな」
洋榎「そうかぁ? 明るいことで有名な、みんな大好き洋榎ちゃんやで。一緒におったら楽しいやろー?」
恭子「はあ……そんな単純な奴やったら、私の眉間ももうちょい楽できてたんやろなあ」
洋榎「たまにめっちゃ深い皺できてるもんな。若い身空で」
恭子「気にしてるんやったら、深さの半分くらいは責任とってくれてもええんちゃうか?」
洋榎「百歩譲って責任あるのは認めたってもええけどなあ。それ言うなら、うちが返して貰うもんもあるんちゃうか? 日本人なんやから、お互い様の気持ちを忘れたらアカンわ」
恭子「ん……せやな。貰てるもんの方が多いまであるか」
洋榎「言うてホンマは全部込み込みでお互い様やねんけどな。ま、とりあえず置いといて。そんな借りっぱなしの噂もある恭子ちゃんに質問タイムや。なんで部活来んのん?」
恭子「その話か」
洋榎「別にええねん。引退したからには、部活に出るんも一切関わらんのもそいつの勝手。ゆーこもそんな顔出しとるわけちゃうし、うちかて引退してるんやからぎゃーぎゃー言うつもりはない。でも、さすがに恭子がまったく来んっちゅうのはおかしいわ。何があった?」
恭子「えらい決めつけやな。うちが部活行かんの、そんなおかしいか?」
洋榎「おかしいんは今のお前の態度やろ。うちって言うの、やめてたんちゃうんか」
恭子「……いま、うちって言うた?」
洋榎「言うたな。最近まったく使わんから、意識して変えてんねやろなあと思うててん。焦ったんか? 何を隠してんねん。うちにも言えんことか?」
恭子「別に隠すつもりとか、そういうんやないねん。ただな」
洋榎「煮え切らんなあ。うちらもええ歳やし、言いたないことがあるんも、隠し事があるんもしゃあないことや。けどな、真面目な話してんのにはぐらかされんのは、正直辛いわ。お前には言えんっちゅうんならはっきり言うてんか」
恭子「いや、ちゃうくて……なんて言ったらええんかな。あんま人に言ってええことやないんは確かやねん。けど、始まりはインハイの時にした相談からやから、私としては洋榎には知っといてもらいたいとは思うててん」
洋榎「ならすぐ言うてや。長うなるんやったら、休みの度に走ってきたるから。全部聞かせてえな」
恭子「やめえや危ない……けどな、言いたいねんけど」
洋榎「言いたいんやったら言うたらええやんか」
恭子「ちゃうねん。なんやもう色々ありすぎて……あほな話やけど、他の人に言うてええか聞くん忘れてもうたんや。表に漏れたらまずいこともあるから、確認するまでは何も言えん。通さなならん義理があんねん」
洋榎「なーんやそれ! 結局話せんちゅうことやんけ! うち、めっちゃ我慢してたんやで? インハイ終わってからずっと聞きたかったのに……ええ子して、話してくれるの待っててんで?」
恭子「気持ちはありがたい。ほんまにそう思うてる。せやから、ついでにもうちょっとだけ待ってくれん?」
洋榎「どのくらいや? 今日か? 明日か?」
恭子「ええと、来週?」
洋榎「待てるかいっ! 限界やから今ここにおんねん。そんくらいわかるやろ! うちだけやない。後輩連中も寂しい寂しい言うて来てる。顔出したれよ。みんなめっちゃ喜ぶで」
恭子「それは……できん」
洋榎「なんでや!」
恭子「……耳かして」
洋榎「なんや、ヤバい話か?」
恭子「止められてんねん」
洋榎「は?」
恭子「言うてええか知らんから、よそで言わんといてな」
洋榎「止められてるて、どういうことや。部活に出るんをか? うそやろ? そんなんできる奴、ほんま限られるぞ」
恭子「せやからよそで言わんといて言うてんねん」
洋榎「ちょう待てや。それ、アカンのちゃうんか。なんとかできんのか?」
恭子「もうどうにもならん。それに、これは洋榎にした相談の結果や。私が望んだもんの代償言うてもええ」
洋榎「なにがどうなったらそうなんねん。そもそも、恭子はそれでええんか? ほんまは部活行きたい思うてるんちゃうか?」
恭子「当ったり前やろ! 目えかけとる後輩もおる。まだまだ教えたいことが残っとる奴もおる。軽い気持ちで『インハイ終わったらな』言うてた約束も果たせんくなってもうた。というかな、うち参謀役の引継ぎすらやってへんねんで。なんちゅうかもう、引き際無茶苦茶やし……納得できるわけないやん…………」
洋榎「なら、行けるようにせなアカンやろ! うちも協力するから、なんとかしようや」
恭子「今の話だけ聞いたらそうなるんはわかる。けど洋榎なら、全部聞いたらしゃあないって思うはずや。せやから来週まで待ってくれんか?」
洋榎「できん。ホンマのこと言うたら、我慢できんのはうちだけとちゃうねん。ほっといたら、思い詰めた後輩らが話付けに来るんや。何人で行くつもりやって突っ込みたなるくらい集まっとったから、面倒事になる前にうちが止めたってん。『恭子のことならうちに任せとけ―』言うてな」
恭子「は? 引退した先輩が顔出さんことくらいあるやん。問題にすることちゃうやろ」
洋榎「恭子とうちだけは、来んな言うても来てくれると信じとったらしいで。ほんで、うちはめっちゃ顔出すけど恭子が全く来ん。なんかあったんちゃうかと心配になったんやって。インハイで負けた責任感じてとか、誰かに文句言われてとか、私らが何か悪いことでもしたんちゃうかーとか」
恭子「いやいや。おかしいやろ。あいつらの想像上の私、どんだけ弱いねん。止められんかったら、なに言われようがなにやられようが顔出しとったわ」
洋榎「けどなあ、部活に出るんを止められてるとか絶対わからんし。うちも色んなこと考えてもうてたから、後輩どもの気持ちもわからんことはないんや。ここで収穫なしやったら、明日にでも勘違い集団が押し寄せて来んで。賭けてもええ」
恭子「後輩どもに囲まれて、言えんことで詰められるとか勘弁してや……けど、これだけのために連絡取るんはおかしいし」
洋榎「よその人が関わってんのか」
恭子「せやから何も言えんて……あかん。もう、なに言うてもぼろが出てまうやんけ」
洋榎「そんな気にするほどなんか? けっこう上の人が関わってるんやな」
恭子「推測すんなて……もうええわかった。洋榎」
洋榎「なんか方法あるんか?」
恭子「私が困っとる言うて、監督から聞き出しいな。関わりのある人やから、いくらかは説明できるやろ。ついでに私が顔出せんことの説明もお願いしてきてや」
洋榎「そうなん? ならもう話終わってまうやんけ。簡単な話になってもうたなあ。ほなすぐ……」
恭子「なんで止まんねん。はよ行けや」
洋榎「アカン。あの人、今日は出張や言うてたわ。部活中には戻れるかもしれんけど、厄介な話やから会議が長引くかもーとかなんとか」
恭子「なんやそれ。間あ悪すぎるやろ。なら携帯鳴らすんも気が引けるし……あ、でも」
洋榎「どした?」
恭子「ちょっとな。どうなんやろ。いけるか?」
洋榎「なんや、気になる言い方して。止められてないことやったら言うとけ言うとけ」
恭子「そら聞く方はええかもしれんけど……まあこっちはええか」
洋榎「おっしゃ来たでえ!」
恭子「いや、今の今まで忘れててんけどな、監督の私的な方の連絡先を手に入れてたん思い出したわ。こっちなら音切ってるやろし、メール入れたら空き時間に返信来るかもしれんなと」
洋榎「はあ? 生徒が教わるんは禁止されてるやろ。平等がどうのとか、私的な交流がどうのとかで。仕事用のやったらみんな知っとるけど、プライベートのやつは部長やったうちも含めて部員全員知らんはずやぞ」
恭子「せやから直接教わったわけちゃうねん。このスマホに登録したんも私やないし」
洋榎「ん? ん? すまん。イマイチ呑み込めてないんやけど、つまりどゆこと?」
恭子「説明したらあかん話やねんけど、まあそういうことをできる人が勝手に私のスマホいじって、『いつでも連絡してええ。私が許す』言うて」
洋榎「あの監督の、プライベートな連絡先を? 勝手にそんなんしてタダで済むわけ……済むんか?」
恭子「そのへんは問題ないやろな」
洋榎「慎重派の恭子が行ける思たくらいやもんなあ。そうかー。つまり、そういうお方がやらかしよったっちゅうことか。これホンマ聞かん方がええやつっぽいな」
恭子「せやろ? ええ勘してるで。ほな、今から文章作るわ。返信あるかわからんけど、あったらすぐ連絡入れたるから」
洋榎「いや、やっぱ今日はこっち来るようにしよ思てんねん。念のためな。後輩どもが来たら、待っとけ言うたやろーっちゅうて追い返せるし」
恭子「あ、今日来るかもしれんのか」
洋榎「わからんけど、止めても止まらん奴がおるかもしれん。まあ大した手間ちゃうから、やっといて損ないやろ?」
恭子「正直助かる。洋榎にならいくらかは話したれるけど、他のもんには聞かせられん話なんや」
洋榎「うちとしても、話せるとなったらすぐに聞きたいからな。休み時間終わるからとりあえず帰るけど、なるたけ早うメール打っといて」
恭子「わかった。そうやな、とりあえずは洋榎に事情話してええかっちゅうことと、私が部活にいかんことの説明をして欲しいっちゅう話だけでええか」
洋榎「どっちかでもやってくれたら面倒は避けられるな。後は話してええとなることを祈るだけや」
恭子「言うとくけど、返答がどうなろうが全部は話せんことは確かやで。もう話すな言われてることあるし、事情の方も来週にならんと詳しいとこは確認できん」
洋榎「なーんやそれっ! あーーーーーもーーーーこういう中途半端なん、いっちゃん嫌いやねんっ! うちに相談してどうにかなったことなんやろ? ちょびっとくらいなんか言うたれんのか!」
恭子「これでも言うてる方やで。もし他言無用っちゅう返答きたら頭抱えるわ。こんだけ話したことがばれたら、全てがおじゃんになるかもしれん」
洋榎「こらーーー監督ーーーっ! 間あ悪いんは許したるから、レスくらい早よせえやー! ええレス以外いりませんからねー!」
恭子「なんでキレながらもちょっと下手に出てんねん。そもそも出張言うたんも会議言うたんも連絡取れんかも言うたんも洋榎やんけ。無茶言いな」
洋榎「ちゅうか時間ヤバい。小ネタやっとる場合ちゃうかった。ええか恭子! 次の休みもダッシュで来るからな。そん時までに、まだ話せることないか考えといたって」
恭子「あるわけないやろ。焦らんでええからゆっくり来いや」
洋榎「それでもやーっ! なんかあるかもしれんからなー! 頼むでー!」
恭子「せやから走んなって……あ、返信来た」
洋榎「マジで?」
恭子「帰ってくんな! 先生そこ来てるっ」
洋榎「アカンてーーーーー!」
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