こんとん物語 12 |
テーブルごしに向かい合って座る二人、こんとんとクリス。
クリスから話し出す。
「最初から言いますが、イザベルの友人、紀子から連絡がありました。取材に応じてくれるようです。」
「イザベルの友人の紀子ですね。」
と、こんとんが復唱して確認する。
「すみませんが、今日、単独で取材に行ってきますね。」
「・・・事情があるなら仕方ないです。どうぞ。」
こんとんが渋々承知する。
クリスが向かう先は、望大学のサークルだ。
電車で望大学へと向かう。
電車で10分、望駅で降りる。
クリスは落ち合う約束をして、その場所へとたどり着く。
「お待たせしました。初めまして、太田紀子と言います。」
と、一方的に紀子と名乗る。この女は黒の長髪を持つ。
「すぐに、案内します。」
やや堅い口調で、クリスを先導する。
黙って、クリスは紀子に従う。
「はい、着きました。」
「どうぞ、お入りください。」
またも一方的に、紀子はノリノリで部屋へと案内する。
「・・・これは((丁寧|ていねい))に、どうも。」
案内が終わると、紀子は適当な椅子へと腰掛けてしまう。そして、クリスにも向かい側に、腰掛けるように((促|うなが))す。
「さっそくですが、質問してもいいでしょうか。」
適当な椅子を見つけて、腰掛けてから発言するクリス。
「いいですよ。」
「・・・では、イザベルと友人だそうですが、彼女の性格を教えてください。」
「イザベル。そうですね・・・少しのんきなところがありますね。あとは、頭が良くて日本語が好きなんだそうです。まめです。歌や詩をよく口ずさんでいます。」
「そうですか、ありがとうございます。・・・最近の付き合いはどうですかね。」
「週に一度は会って、一緒に食事をしています。」
「ああ、そうですか、もう大丈夫です。」
と、クリスは対話を取りやめる。
「では・・・ご協力ありがとうございました。また、会う事があると思いますよ。」
クリスは部屋を出る際、そう別れを告げた。
「こちらこそ。」
と、返事があった。
”収穫なし”とクリスの頭の中に表示される。
それは、期待外れの結果だったが、クリスは満足だった。
明日も取材。
明後日も取材。
こんとんも一緒にだ。
という予定がクリスの頭の中にあった。
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