英雄伝説〜灰の軌跡〜 閃V篇 |
〜アルトリザス・聖堂広場〜
”要請”の一つの猫探しで町中を歩き回っていたリィン達は空港の近くまできた。
「聖堂広場の空港方面………この近辺でしょうか。」
「うーん、こっちの方に向かったって話だけど……」
リィン達はとりあえず、周囲を探したが目当ての猫は見つからなかった。
「……駄目だ、見当たらないな。」
「それらしい気配もなさそうだ。多分、移動したのかもしれない。」
「そうですわね……わたくしも猫のような小さな魔力の持ち主もある程度の距離にいたら感じられますが、今も感じませんから、この周辺にはいないでしょうね。」
「それがわかるのもどうかと思いますけど……でも、ひょっとして空港の敷地へと入っちゃったのかな?」
「だとすれば……かなり広大でしょうし、捜索は難航しそうですね。」
一通り探し終えたクルトは溜息を吐き、考え込みながら呟いたリィンとセレーネにジト目で指摘したユウナは推測を口にし、アルティナが今後の捜索状況の推測を口ににしたその時
「なに、ネコ探してるの?」
赤毛の娘が空港方面から歩いてリィン達に近づいてきた。
「ッ!」
「……………」
「あ、えっと……」
「貴女は……?」
赤毛の娘の顔を見たセレーネは息を呑み、リィンは真剣な表情で黙って娘を見つめ、二人の様子に気づいていないユウナは戸惑いの表情で娘を見つめ、クルトは娘に問いかけた。
「アハハ、ただの通りすがりだけどね。さっきそこにいたネコと遊んでたから気になってさ。」
「ホ、ホントですか?」
「ちなみにその猫の特徴は……」
娘の言葉を聞いたユウナは驚き、アルティナは娘に訊ねた。
「明るいクリーム色の子猫だったけど。ちょっと遊んであげたら満足して行っちゃったんで、空港(そっち)にはいないと思うよ。」
「そうですか……特徴もドンピシャだし。」
「……ちなみにどちらへ去っていったかはわかりますか?」
「うーん、南西の住宅街になるのかな?飼い猫みたいだし、ご主人のとこに戻ろうとしてるのかもね。でもあのくらいの子猫だとまた迷いっちゃいそうな気もするけど。」
リィンの質問に対して娘は少しの間考え込んだ後推測を答えた。
「ありがとうございます。……元の街区に戻ったみたいだな。」
「でも、まだ迷ってそうだし、こうなったら虱潰しに捜すしかないかも!」
「非効率的ですが、現状では仕方ありませんね。」
「フフ、ならお姉さんからの助言(アドバイス)。イヌと違ってネコは人見知りだし臆病だからね。また迷ったとしたら、人通りの少ない方に向かう可能性が高いよ。そういった場所を捜してみるといいんじゃない?」
猫をまだ探す様子のクルト達を見た娘はクルト達に助言をし
「そうか……はい、わかりました!」
「……色々ありがとうございます。」
「助言までして頂き、本当にありがとうございました。」
「ふふっ、それじゃあ早く見つけてあげるんだね。」
そして娘はその場から去っていった。
「うーん、このあたりじゃ珍しそうなお姉さんだったわね。格好もベルフェゴールさん程じゃないにしても、大胆で攻めてるっていうか。」
「まあ、間違いなく旅行者だろうな。帝都あたりか、もしくは外国人かもしれない。」
「「………………」」
「……教官?」
娘の事についてユウナとクルトが話し合っている中、真剣な表情で黙って去っていく娘の後ろ姿を見つめていたリィンとセレーネに気づいたアルティナは不思議そうな表情で声をかけた。
「いや、何でもない。―――それより南西の住宅街か。一度、戻ってみるか?」
「ええ、もちろん!」
「人通りの少ない場所……何とか探してみよう。」
その後リィン達は娘の助言通り人通りの少ない場所を探してみると猫が見つかり、猫は私有地内にいた為、依頼人を呼んで来て猫を呼んでもらうと猫は私有地から出てきて依頼人の元へと戻り、要請を完了したリィン達は特務活動を再開した。
〜北アルトリザス街道〜
その後街での要請を終えたリィン達は魔獣調査をする為に報告書にあった場所の内の一か所に向かい、到着した。
「えっと、このあたりが報告書にあった場所かな?」
「北アルトリザス街道の外れ、第二都から50セルジュの地点……距離的には間違いなさそうだ。」
「………………」
「”魔獣”の気配は無さそうだが……(セレーネ、何か聞こえるか?)」
(………!ええ、聞こえま――――)
「で、何なんです?さっきから3人して。」
「どうやら謎の魔獣について心当たりがありそうですが?」
生徒達が周囲を見回している中生徒達と共に周囲を見回していたリィンはセレーネに念話を送り、リィンの念話に対して目を閉じて集中していたセレーネが答えかけたその時、ユウナとクルトがリィン達に訊ねた。
「心当たりというか蓋然性の問題ですね。」
「”歯車の音”をきしませる”金属の部品でできた魔獣”……他の可能性もあるかもしれないが、十中八九―――」
「!皆さん、構えてください!――――来ます!」
「Z組総員、戦闘準備!」
そして二人の質問にアルティナとリィンが答えたその時何かに気づいたセレーネはリィン達に警告し、警告を聞いたリィンは号令をかけて太刀を構え、ユウナ達も続くように武装を構えた。
「……!?」
「こ、これって……」
「的中、ですか。」
武装を構えた瞬間何かの音が聞こえ、音を聞いたクルトとユウナが驚いている中アルティナが静かな表情で呟いたその時、人形兵器達がリィン達の前に現れた!
「機械の魔獣……!?」
「ち、違う……!もしかしてクロスベルにも持ち込まれたっていう……!?」
「ああ――――結社”身喰らう蛇”が秘密裏に開発している自律兵器……”人形兵器”の一種だ……!」
「『ファランクスJ9』―――中量級の量産攻撃機ですね。」
(もしかしてシャーリィさんがアルトリザスにいた事と関係しているのでしょうか……?)
そしてリィン達は人形兵器達との戦闘を開始し、協力して撃破した。
「っ……はあはあ……」
「くっ……兄上から話を聞いた事はあったが……」
「戦闘終了。残敵は見当たりません。」
戦闘が終了し、ユウナとクルトが息を切らせている中アルティナは淡々とした様子で報告をし
「みんな、よく凌いだな。」
「お疲れ様です、皆さん。」
リィンとセレーネはそれぞれの武器を収めて生徒達に労いの言葉をかけた。
「って、それよりも!どうして”結社”の兵器がこんな場所にいるんですか!?」
「エレボニアの内戦でも暗躍し、メンフィルに滅ぼされたという謎の犯罪結社……まさか、その残党がこの地で再び動き始めているという事ですか?」
「可能性はある―――だが、断言はできない。開発・量産した人形兵器を闇のマーケットに流しているとも噂されているからな。」
「現にユウナさんもご存知かもしれませんが、かの”ルバーチェ”も結社が量産した人形兵器を手に入れ、警備代わりに”ルバーチェ”の拠点に人形兵器を徘徊させていたとの事ですわ。」
「以前の内戦で放たれたものが今も稼働している報告もあります。現時点での確定は難しいかと。」
「……なるほど。」
「はあ、だからクレア少佐もシリアスな顔をしてたわけね……」
「―――へえ、大したモンだな。」
リィン達が人形兵器の事をユウナとクルトに説明していると飄々とした声が聞こえ、声に気づいたリィン達が視線を向けると中年の男性がリィン達に近づいてきた。
「………?」
「あなたは……」
「おーおー、あの化物どもが完全にバラバラじゃねえか。お前さん達がやったのかい?」
男性の登場にアルティナとリィンが戸惑っている中、男性はリィン達に問いかけた。
「えっと、そうですけど……」
「手こずりましたが、何とか。」
「どうやらお揃いの制服を着ているみたいだが……ひょっとしてトールズとかいう地方演習に来た学生さんたちかい?」
「知ってるんですか!?」
「どこかで情報を?」
初対面の男性が自分達の事を知っている事にユウナは驚き、アルティナは男性に自分達を知っている理由を訊ねた。
「ああ、仕事柄そういう噂は仕入れるようにしててなぁ。しかし大したモンだ。随分、優秀な学校みたいだな?」
「ま、まあ、それほどでも。」
「まだまだ修行不足です。」
男性の高評価にユウナは照れ、クルトは謙遜した様子で答えた。
「――――トールズ士官学院・第U分校、”Z組・特務科”です。自分とこちらの女性は教官で、この子達は所属する生徒たちとなります。あなたは……?」
「ああ、俺は何て言うか”狩人”みたいなもんだ。さすがに魔獣は専門外だが手配されて、倒せそうだったら仲間を集めて退治することもある。この魔獣どもも、噂を聞いて調べに来たんだが、まさか機械仕掛けとはなぁ。確か”人形兵器”ってヤツだろう?」
「ご存知でしたか……」
「一体どちらでその情報を耳にされたのですか?」
一般人と思われる男性が人形兵器を知っている事にリィンは若干驚き、セレーネは知っている理由を訊ねた。
「いや、前の内戦の時に妙な連中が放ったそうじゃねえか。俺の仲間うちじゃずいぶんと噂になってたぜ?」
「やっぱりそうなんだ………」
「……以前から各地で徘徊していたという事か……」
「ま、この辺りにはもういないみてぇだし、他を当たってみるかね。って、ひょっとしたらお前さん達も捜してるのか?」
「ええ……演習の一環としてですが。人形兵器に限らず、何かあったら演習地に連絡をいただければ。各種情報に、戦力の提供―――お手伝いできるかもしれません。」
「ハハ、そいつはご丁寧に。―――そんじゃ、俺は行くぜ。お前さん達も頑張れよ。」
「あ、はいっ!」
「そちらもお気をつけて。」
そして男性はリィン達に応援の言葉をかけた後、軽く手を振りながらその場から去っていった。
「ふふっ……面白いオジサンだったね。大きいのに飄々としてたからかあんまり強そうじゃなかったけど。」
「……少なくとも武術の使い手じゃなさそうだ。”狩人”と言ってたけど罠の使い手なのかもしれない。」
「”罠”ですか。」
「…………………」
「お兄様、どうかされたのですか?」
生徒達が去っていった男性の事について話し合っている中黙って考え込んでいるリィンが気になったセレーネは不思議そうな表情でリィンに問いかけた。
「ああ……少し、な。……念のため、近くに”残存”がいないか確認しよう。周囲1セルジュ内でいい。」
「……?まあ、別にいいですけど。」
「索敵を再開します。」
その後念の為に周囲を確認していたリィン達は行き止まりに到着した。
「行き止まり……?」
「あれ、おかしくない?さっきのオジサン、こっちから歩いてきてたよね―――!?えっ……!?」
男性が歩いてきた方向が行き止まりであった事に首を傾げたユウナはふと崖下を見ると信じられない光景があり、驚きの声を上げた。
「ユウナさん?」
「一体どうした――――」
ユウナの様子を不思議に思ったクルトとアルティナもユウナに続くように崖下を見ると、そこには先程自分達が戦った人形兵器達の残骸がいくつもあった。
「さ、さっきの人形兵器……?」
「ああ……なんて数だ。」
「……まだ微かに煙を発していますね。」
「―――やっぱりか。」
人形兵器達の残骸にユウナ達が驚いている中、リィンはユウナ達に近づいて静かな表情で呟いた。
「や、やっぱりって……あのオジサン、何者なんですか!?」
「まさか”結社”の……いや―――」
「”結社”の人間なら人形兵器を破壊するのは不自然かもしれません。」
「ああ、予断は禁物だ。いずれにせよ、あの口ぶりだとパルム方面でも遭遇する可能性もあるかもしれない。」
「そうですわね……パルム方面には目撃情報が2件もありますもの……」
「……そちらも人形兵器である可能性は高そうですね。」
リィンの予想を聞いたセレーネは頷いて考え込み、クルトは推測を口にした。
「―――いずれにせよ、まだ”必須”の要請が残っている。そちらを達成したら頃合いを見てパルムに向かおう。」
「……了解しました。」
「くっ、まさかこんな場所で人形兵器に出くわすなんて……」
「警戒レベルを引き上げた方が良さそうですね。」
その後リィン達は特務活動を再開し、”必須”の要請である七耀教会からの依頼―――”薬草の採取”の実行の為に薬草がある”シュタット大森林”に訪れていた。
〜シュタット大森林〜
「あっ……もしかしてあれなんじゃない!?」
「青紫の花弁……ラベンダーの特徴ですね。要請にあった『エリンの花』で間違いないかと。」
森林の奥地に到着し、薬草らしき花を見つけたユウナは声を上げ、花の特徴をよく見たアルティナは静かな表情で答えた。
「はあ、いい香り……確かにラベンダーの一種みたい。」
「ああ……ずいぶん落ち着く香りだな。」
風に乗って来た花の香りをかいだユウナとクルトは静かな笑みを浮かべた。
「目的地に到着だ。あとはこの薬草カゴに―――いや、まだだ!」
「―――来ます!」
するとその時何かの気配や音に気づいたリィンとセレーネが警告の声を上げたその時、大型の蜘蛛の魔獣の群れがリィン達を包囲した!
「ク、クモの群れ……!?」
「囲まれたか……!―――どうします、教官!?」
「問題ない。―――このまま迎撃する!各員、背後に気を付けつつ各個撃破に務めてくれ!」
「それと要請にあった薬草も含めて周囲に可燃物がある状況ですので、火属性アーツや火炎魔術の使用はできる限り控えてください!」
「りょ、了解です……!」
「迎撃を開始します……!」
そしてリィンの号令とセレーネの助言を合図にリィン達は戦闘を開始した!
「「「…………」」」
蜘蛛の魔獣達はそれぞれリィン達に脚で攻撃したり、糸を吐いて攻撃したりした。
「!」
「この……っ!」
「クラウ=ソラス。」
「―――――」
魔獣が自分に向けて吐いた糸の攻撃はリィンは側面に跳躍して回避し、脚による攻撃はユウナは自身の武装で、アルティナはクラウ=ソラスに受け止めさせて防いだ。
「二の型―――疾風!!」
「―――失礼!えいっ!!」
「風よ……!ハァァァァァ……ッ!――――斬り刻め!!」
反撃にリィンは電光石火の攻撃で敵全員を攻撃し、セレーネは全身に氷の魔力を纏って全身を回転させて足払いをして攻撃するクラフト―――アイスアラウンドで、クルトは双剣に風の魔力を纏わせて無数の斬撃と共に鎌鼬を生み出すクラフト―――エアスラッシュでそれぞれの敵を攻撃した。
「崩した!」
「頂き!」
「崩しましたわ!」
「追撃します!」
セレーネとクルトとそれぞれ戦術リンクを結んでいたユウナとアルティナはセレーネとクルトの攻撃が終わるとそれぞれ追撃を敵に叩き込んだ。
「「「……………」」」
「逃がさないわよ……!――――ヤァァァァッ!!」
「ダークアーム―――斬!!」
「―――――」
敵達は反撃をしようとしたがユウナが放った広範囲を銃撃するクラフト――――ジェミニブラストとアルティナに指示をされて放ったクラウ=ソラスに闇の魔力刃で広範囲を攻撃させるクラフト―――ダークアームを受けて怯み
「二の型―――大雪斬!!」
「そこですっ!―――スパイラルピアス!!」
「ハァァァァ……これで、沈め――――黒鷹旋!!」
リィンのクラフトを受けた敵は一刀両断され、セレーネのクラフトを受けた敵は細剣で急所を貫かれ、クルトのクラフトを受けた敵は双剣か放たれた漆黒の闘気の刃を受けた事によって上下が真っ二つになってそれぞれ消滅して、セピスを落とした!
「―――戦闘終了。残敵も見当たりません。」
「よし―――お疲れだ、みんな。」
「見た所怪我は誰もされていないようですわね。」
「ふう、びっくりしたぁ〜………あんな数で出てくるなんて。」
「魔獣の凶暴化……噂は確かみたいだな。この森に上位属性が働いているのと何か関係があるんでしょうか?」
戦闘が終了し、ユウナが安堵の溜息を吐いている中クルトは疑問をリィンとセレーネに訊ねた。
「いや、見たところ大昔から霊的な場所ではあるんだろう。何が原因かはわからないが……まずは用事を済ませるとするか。」
「ええ、『エリンの花』ですね!それじゃあ、手分けしてさっさと集めちゃうとしましょ!」
「了解です。」
「ふふっ、勿論周囲の警戒を怠らずに収集してくださいね。」
その後リィン達は薬草を手分けして収集した。
「―――これで目標達成だ。あまり待たせても悪いし、アルトリザスに戻るとしよう。」
「そうですわね。”任意”の要請にあった魚も手に入れましたから、この森林での用事はもうありませんね。」
「ふう……了解です。綺麗だし良い香りもするけどとっとと帰った方がいいかも……」
「ああ、さっきの魔獣もそうだが、何が起こるかわからないというか……」
「……特に何も感じませんがこれ以上の滞在は無意味かと。」
「よし、それじゃあ―――――っ……!?」
アルトリザスに戻る指示をリィンが出そうとしたその時、突如リィンの心臓がドクンと鼓動をし、リィンは思わず胸を抑えて地面に跪いた。
「……!?」
「お兄様……!?」
「え……」
「教官……!?」
リィンの突然の様子に生徒達が驚いている中セレーネとアルティナがリィンに駆け寄り
「だ、大丈夫だ―――」
自分を心配するセレーネ達にリィンが答えかけたその時、何とその場の空間が突如緋色に染まった!
「!?これは………!あ…………」
突然の出来事に驚いたリィンはセレーネ達がしゃべらない所か、全く動く事がない様子に気づき、更にいつの間にか自分の傍に現れた金髪の少女に気づいて呆けた声を出した。
「……どうやら”結界”に反応したようじゃの。」
「……君は………」
金髪の少女の言葉が静かな表情で呟いている中、リィンは戸惑いの表情で少女を見つめていた。
「フフ……聞いていた通りか。じゃが、物事には然るべき順序というものがある。見たところ、ヌシの因果はようやく再び回り始めた様子……」
リィンを見つめて妖しげな笑みを浮かべた少女がリィンに近づこうとしたその時
「―――止まりなさい!リィン様に何をするおつもりですか!?」
「―――まずは貴女が何者なのか、名乗ってもらうわよ。」
メサイアとアイドスがそれぞれ自分達から現れてそれぞれの武器を少女に向けた。
「メサイア……アイドス……二人はこの空間の影響を受けていないのか……?」
「ええ、私は自力で影響を受けないように防いだけどメサイアはリィンの身体や魔力と同化していたお陰でしょうね。」
「……まさかこのような芸当を”彼女”以外にできる人物がいるとは思いもしませんでしたわ。」
自分達の登場に驚いているリィンにアイドスは静かな表情で説明し、メサイアは警戒の表情で少女を見つめながら呟いた。
「ほう………ヌシ達が話に聞いていたクロスベルの覇王と聖女の娘とかの”オリンポス”の星女神の末妹神か。――――なるほど。慈悲の女神の持つその”真実”を見極める”十字架(けん)”はまさに”神剣”と呼ばれて当然の莫大な霊力(マナ)を宿しておるの。」
一方武器を突き付けられた少女は興味ありげな様子でメサイアとアイドスを見つめ
「え……っ!?」
「……どうやらその口ぶりだとリィンだけではなく、私達の事も”私達の事を知っている誰か”から聞いたようね。」
少女が自分達の事まで知っているような口ぶりにメサイアが驚いている中、アイドスは静かな表情で呟いて少女を見つめた。
「フフ……そう睨まなくてもヌシ達の愛する男に危害を加えるつもりはない。」
「……確かに敵意等は感じられないわね。――――メサイア。」
「……わかりましたわ。」
少女の言葉を聞き、少女から敵意等が一切感じられない事を悟ったアイドスはメサイアに視線を向けた後それぞれリィンの身体と神剣に戻り、アイドスとメサイアが戻ると少女はリィンに近づいてリィンの頬に口づけをした。
「…………ぁ………(何か流れ込んでくる……?)」
少女の口づけによって自身の身体に何かが流れ込んでくることを感じたリィンは呆け
「フフ、ほんの心付けじゃ。―――此れより先はまだ早い。いずれ見(まみ)えようぞ―――”灰の起動者(ライザー)”よ。」
リィンから離れた少女が意味深な言葉を残して消えた瞬間、空間は元に戻った。
「っ……!?」
「ちょ、ちょっと………………リィン教官!?」
「っ………大丈夫ですか……!?」
「えっと……その……もしかして、”あの力”を抑える為の”行為”が必要なのですか………?」
突然の出来事にリィンが驚いている中ユウナとアルティナは心配そうな表情でリィンに声をかけ、セレーネは生徒達を見まわした後頬を僅かに赤らめて気まずそうな表情でリィンに訊ねた。
「ああ、いや―――すまない、少しつまずいただけさ。それより……今、”そこに誰かいたか?”」
ユウナ達の言葉に対して苦笑しながら答えて立ち上がったリィンは少女がいた場所に視線を向けてユウナ達に訊ねた。
「へ……!?」
「それはどういう――――」
「……僕達5人以外、誰もいなかったと思いますが?」
(まさかとは思いますがミントさんのように”この周囲の空間を停止”させた何者かがお兄様に接触を……?)
リィンの質問にユウナ達が戸惑っている中ある事を察したセレーネは心配そうな表情でリィンを見つめた。
「そうか……そうだよな。まあいい、とにかくアルトリザスに戻るとしよう。この深い闇……何が現れるかわからないからな。」
「だ、だからそういう事を言わないでくださいってば!」
「ふう、とにかく森から出ましょうか。」
そして森から出る為にユウナとクルトが先に歩き始めた中、アルティナとセレーネは二人の背中を見守っているリィンに声をかけた。
(……大丈夫ですか?幼い頃のマスターの”力の暴走”のことはエリゼ様達から伺っていましたが、もしかして先程の出来事が……?)
(その……本当に性魔術で、お兄様に秘められている”力”を発散させなくても大丈夫ですか?)
(いや、本当に問題ない。”力の暴走”に関してはリウイ陛下達による特訓やエリゼやセレーネ達との性魔術で”力”の制御や発散ができるようになって以降、一度も無かった。心配させて済まない。二人とも特務活動に専念してくれ。)
(……はい。)
(……わかりましたわ。ですがもし性魔術が必要でしたら、いつでも申し出てくださいね。)
心配する二人に答えたリィンはユウナとクルトの後を追って行く二人に続くように歩き始めたが立ち止まって少女がいた場所に視線を向けた。
(……人か、魔か。確かに”何か”がいた筈だ。”記憶がないのは”ゾッとしないが嫌な感じはしていない……今は気に留めておくだけにしておくか。)
(…………メサイアだけでなく、私の正体や神剣(スティルヴァーレ)の事を知っている事………対象以外の時空間を停止させる程の高度な結界魔術の使い手……まさか先程の”彼女”はエマ達の関係者なのかしら……?)
少しの間考え込んだリィンは再び歩き始めてユウナ達の後を追い、アイドスは真剣な表情で少女の正体について考え込んでいた――――――
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第14話 | ||
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