外史に舞い降りるは紅き悪魔 8
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ダンテが護衛任務から一時的に外れて数日経った。

しかし禁中では特に目立った動きはなく、市内でも誘拐事件が鳴りを潜めたという事で以前のような活気が少しずつ戻ってきていた。

 

「楼杏さん。お兄様は今何をなさっているのですか?」

「さあ?定期的に報告しに来るだけで、どこで何をやっているのかは私含めて誰も知らないそうです」

 

流琉の質問にも楼杏ははっきりとした答えを返さない。

ダンテとここ数日会えていない流琉は傍目にも不機嫌な様子であり、日課である鍛錬の際に相手をする一般兵士の方々も戦々恐々としていた。

 

未だに新しい皇帝が立ったという情報が流れず、多くの諸侯がこれからの自分たちについて嘆いていく中、先見の明がある者たちはちゃくちゃくとその力を蓄えつつあった。

もっとも、それを禁中の者たちが一部を除いて知る由もなかったが。

しかし、歴史が動くその時は突然訪れた。

 

 

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「姉さまが呼んでいると聞いて来てみれば……。これは何の冗談ですか!?」

 

何太后が真夜中に呼び出されたのは禁中のとある部屋。

城の中でも端に位置し、普段は書簡や書物で一杯になっている物置のような部屋だった。

しかし、そこに御付の十常侍を引き連れて来てみれば、入室と同時に後ろから押し込まれ、後ろ手に縛りあげられた。

 

「いい加減、目を覚ましてもらおうと思ってな。早いところ次の帝を立てなければ、民の心はますます荒れてしまう」

「その声は姉さま?」

 

後ろからの声にもがきながらも誰何する何太后。

 

「いかにも。しかし、十常侍を引き連れているとはな。噂は本当であったか」

「何のことでしょう?」

「……貴様が張譲に唆されているという事だ!」

 

言うが早いが抜剣し、首に突きつける。

同時に、何進の部下たちも十常侍たちに剣を突きつけた。

 

「わ、私が唆された?何を言って……」

「では質問しよう。貴様が推挙している劉弁とやら。一体どこの誰の子なのだ?」

「ですから、我が夫の親戚にあたる子で……」

「具体的には?いつ、どこで生まれた子なのだ?私の手の届く範囲で調べたが、先の皇帝には存命の親戚などおらぬ。禁中では日常茶飯事である権力闘争において、先帝の父である先々帝以外は皆亡くなっているのだぞ?」

「そ、それは……」

 

と、詰問される中で何かに気付いたような表情を浮かべる何太后。

 

「あ、あれ……?あの子は一体誰の……?いや、でも確かにあの子は……」

「やはりか。いい加減目を覚ませ!」

「そこまでにしてもらいましょうか、将軍閣下」

 

何太后が自問し、何進が足を進めた瞬間、冷やりとする空気と共に男の声が割って入った。

 

「張譲!貴様……!」

 

振り返って何進が睨み付けるも、張譲は気味の悪い笑みを浮かべたまま。

 

「何太后様。このような戯言に耳を傾ける必要などございませぬ。全ては貴女様と劉弁様の為にございますれば」

「黙れ!どこの馬の骨ともわからぬ輩に」

「貴様こそ黙れ」

 

何進の激昂に対し、一言つぶやいた張譲。

その瞬間、張譲を中心に猛烈な爆風が発生し、何太后と取り押さえられていた十常侍以外が全員吹き飛ばされた。

 

「何も分かっておらぬのは貴様の方だ、肉屋の娘風情が。貴様のようなものが軽々しくこの国を語るなど、聞くに堪えぬ」

「き、貴様……!一体何をした」

 

すぐに体勢を立て直し、剣を持ち直した何進。

しかし、正体不明の攻撃により傷を負ったのか、剣の先がフラフラとしていた。

 

「ふん、所詮は人の身。やはりこの程度か」

 

それをせせら笑う張譲。

 

「ぎゃああああああ!!」

 

その瞬間に響く悲鳴。

何進が振り返ると、そこには十常侍に抜き手で体を貫かれた自身の部下達の姿。

 

「何だ……!?貴様等、一体」

「お前が知ることはない。どうせすぐに会える」

 

そう言った張譲に反応した何進が見たのは、彼の腕が急に伸び、こちらに素早く突き立とうとしたところだった。

 

「な……、舐めるなあ!!」

 

しかし、硬直した身体を強引に動かし、心臓を狙っていたその腕らしきものからぎりぎりで逃れた彼女。

背後の壁が一突きで粉々に砕け散っているあたり、もし刺さっていたらと何進に冷や汗が流れた。

 

「ふむ、さすがに将を名乗るだけはある。が、所詮はここまでよな」

 

ハッとして周りを見れば、すでに自分以外がすべて殺されており、十常侍だったものらしき、異形の者共が自分を囲んでいることに気付いた。

 

「くっ……、瑞姫!目を覚ませ!!」

「無駄なことよ。すでに、こいつは我が術中。貴様も大人しくしておれば、甘い汁だけでも吸わせてやろうかと思っていたが……。いい加減目障りだ」

 

そういって合図を送ると、周りの者たちが一斉に飛びかかってきた。

 

「ちっ……」

 

 

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ギギギンッ!バギバギッ!

 

「………?」

 

しかし、音がした割には自分の身に何も起こっておらず、不思議そうに眼を空けた何進の目の前には。

 

「こんな所でくたばるにはもったいねえ美人だ」

 

と軽い口調でいっている赤いコートの男の姿があった。

 

「……ほう、貴様が最近禁中で噂の」

「お?俺を知ってるのか」

 

部下たちが吹き飛ばされているのもかかわらず、平然とした表情で話しかける張譲。

見れば、吹き飛んだ部下たちもすでに起き上がっており、まだまだ余裕といったところか。

 

「それなら話は早い。俺もお前さんら、というかあんたしか聞けねえな」

「ほう」

 

赤い男、ダンテが逆に聞き返した。

 

「面倒くせぇから手短に聞くがな。どこで悪魔のこと知った?」

 

そして、その質問に黙り込む張譲。見れば、少しその表情に余裕がなくなっていた。

 

「貴様、なぜその言葉を知って……、いや、それは愚問だな」

「だから、手短にって言ってんだろ。お前が知ったその先の奴は、俺を知ってるだろうからよ」

 

ダンテの言葉に誰も返答しない。

 

「ちなみに、今のうちに言っておくとだな。あんたの手先が、黄と例の子供に手を出してたようだが、全部恋、おっと、呂布が倒してるからな」

「な、何!?」

 

今度こそ、張譲の表情から余裕が消えた。

 

「ずーっとあんたを見張ってたんだがな。どうにも動きが読めねえから、恋に頼んだんだよ。『あいつらのそばに同類が現れたら、問答無用で倒しておいてくれ』ってな。お蔭で、こちとら財布が薄くて仕方ねえ」

「馬鹿な。いくら飛将軍と云えど、人にやられるような……」

 

呆然と言葉を漏らす張譲。

送り込んだ手先は、彼の部下の中でも悪魔憑依との相性が特に良く、人智を超えた力を発揮しているものがほとんどだっただけに、恋が悪魔を内包していることを知らない彼が混乱するのも当然だった。

 

「さて、お話はあんたをふん縛ってから、軍師殿に任せようかね」

「ふ、ふふふ……。まだだ。行け!」

 

ダンテが一歩足を進めるより早く張譲が叫ぶと、起き上がっていた彼の部下たちが再び飛び掛かってきた。

 

「やれやれ……。おい、将軍様よ」

「な、なんだ?」

 

二人のやり取りを呆然と聞いていた何進は、我に返ったように呼び掛けに答えた。

 

「あいつらは俺が引き受ける。あんたは妹さんを引っ張って楼杏って言って分かるか?」

「あ、ああ」

「なら楼案の部屋まで走れ。あの爺さんはこっちに必死で、妹さんまで構ってる余裕なさそうだからな」

 

そういうと、ダンテも向ってくる悪魔に対抗するために走り出した。

 

「………」

 

しばらく黙り込んでいた何進だったが、

 

「……フンッ!」

 

両手で自分の頬を叩くと、ダンテとは違う方向へと走り出した。

 

 

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「まあ、引き受けるって格好つけたが、こんなもんだろ」

 

ダンテがため息と共に、張譲に声をかけた。

とはいっても、彼は周りにいた部下達と共に吹き飛ばされていたわけだが。

見れば、全員赤い剣によって床や壁に縫い付けられており、身動き一つ取れそうもない様子だった。

 

「き、貴様……!何をした!!」

「あん?同類の力ってやつだ。まあ使い方を知ってるやつと知らないやつの差だろ」

 

張譲の問に退屈そうに答えるダンテ。

張譲から見て彼がした事といえば、彼が今まさに腰かけている鞄のようなものを取り出して地面に置き、足で蹴り開けたと思ったら、閃光と共に衝撃で飛ばされたという事だけである。

訳が分からぬというのも仕方のないところではあると思う。

 

「それにしても、あんたも抜け目のないやつだな」

「……どういう意味だ」

 

ダンテの言葉に訝しげに返答する張譲。

すでに部下は全滅しており、彼も何とか抜け出そうとしていたが諦めたのか、大人しくなっていた。

 

「なあ。あんた、本体はどこにいる?」

「!!?」

 

しかし、次のダンテの言葉に驚きを隠せていなかった。

 

「な、なぜそれを……」

「俺の尾行に気付いて、動きを読ませなかったあんたが、将軍一人殺すのに出張るってのが怪しかったってのが一つ。もう一つはさっきのやり取りだな、あんただけ手応えが違いすぎる」

 

ダンテの言葉に張譲はうつむいたまま乾いた笑みを浮かべた。

 

「……流石だな。儂に力を与えたものも、貴様にだけは注意するようにと言っておったが、理由が分かった」

「観念したなら、大人しくそいつのことを教えな。ついでにあんたの居場所も教えてくれると助かるんだがね」

「はっはっは!残念だが、何一つ言ってやることはない。貴様も、貴様の仲間らも、等しく皆殺しにしてやる」

 

そういうと、突然糸が切れたかのように脱力した。

 

「……切りやがったか」

 

ダンテが軽く小突いたが反応はない。

 

「やれやれ。少しは手掛かりがつかめたかと思ったんだがな……」

 

そういうとダンテは部屋を出た。

後には、とてつもない破壊痕と、人と異形の死体の山だけが残されていた。

 

 

 

 

 

 

 

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 あとがき

 

どうも、作者です。

戦闘シーンはどうも書き辛いですね。もともとがスタイリッシュアクションゲームなだけに、できればカッコよく書いてあげたいものですが……。

さてさて、次は禁中でのゴタゴタを片づけていよいよ大きな戦いへと繋がる……といいなあ。

というわけで短いですが、次回をお楽しみに!

 

説明
最早どちらの原作をもぶち壊していく恋姫×DMCのお話です。
寛大な心で許して下さる方はぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。
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ダンテ DMC 恋姫 

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