Oxymoron Another |
「号外!号外ーーーッ!!」
臨時で発行されたタイムス誌を道端で叩き売りしている。ゲルスは一部購入して紙面に目を走らせた。第一面はカースの脱獄のニュースが報じられている。
「デタラメばかり書きやがって!兄貴が皆殺しにしてやる≠ネんて言うわけないじゃないか…」
レンガ造りの遊歩道を一人で歩いて行くと、商店街の一角にある宝石屋のショーウィンドウの前で、クラリスが真剣な面持ちでアクセサリーを眺めていた。
「クラリス!何見てるんだ?」
「このブローチ、貝殻で出来てるのに高いなって思って」
「へぇ、貝殻を削って作った宝石か…。天然石は自然の中で時間をかけて作られたアートだけど、この貝殻は職人の手によるアート作品だと思うぜ?」
「宝石ってアート作品なの?」
「ダイヤモンドだってただの石ころさ?職人の手で削られて初めて価値が出る」
「そっか、綺麗に削る技術に価値があるんだね」
ゲルスは店に入ると、先ほどクラリスが眺めていたブローチを購入して、クラリスに渡した。
「これ、欲しかったんだろ?」
「えっ、こんな高いもの貰えないよ…」
「こないだ雑誌の読者モデルで稼いだ金だから気にするなって!」
「アカデミーの生徒でゲルス君よりお金持ちの人いないと思う…」
「俺は本当はモデルよりコーディネーターになりたいんだよ。そのブローチに合う服を選んでやるから付いて来て」
「服まで買ってもらうわけにはいかないよ」
「服はモデル料だと思えば良いだろ。俺のコーディネートの勉強に付き合ってくれよ?」
「うん、ゲルス君がそれで良いなら…」
「よし、決まり!行こうぜ?」
二人で並んで歩きながら、ゲルスが手に持っているタイムス誌にクラリスが目を留める。
「それ、カース君のニュースが載ってるよね?」
「ああ、こんなインチキな記事を書いてるような記者に兄貴の何がわかるってんだよ?」
「でも私、それ読んでちょっとホッとしちゃった。カース君が元気にしてるってことだから」
「兄貴、昨夜俺に会いに来てくれたよ。色々と話を聞かせてもらった。大人はやっぱり汚いな…」
「本当に?カース君、私にも会いに来てくれたらよかったのに…」
「夜遅かったからクラリスは寝てると思ったんじゃないか?」
「いつかカース君に会えるかな…」
「いつか会えるさ!兄貴がどこかで生きてる限りはね…」
ゲルスは服屋であれこれクラリスに試着させて、試着室では小さなファッションショーが開催される。
「本当にゲルス君はハイセンスだよね」
「俺が兄貴に唯一勝てることがこれだったからな。兄貴のダサさには本当に驚くよ」
「カース君、いつも変な服着てたよね。見てる分には面白かったけど」
「しかも兄貴は本気でそれがカッコイイと思って着てるんだよなぁ…」
「なんかお腹に文字が書いてある服好きだよね。一日一善≠ニか有言実行≠ニか…」
「あれは特注で兄貴の座右の銘らしい」
その頃、カースは派手なくしゃみを連発していた。
「風邪でもひいたかな…」
fin
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オオカミ姫の双子の兄弟の二次創作ストーリーの番外編です。 | ||
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