yodomi
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あいつはいつも笑っていた。

それが僕にとって都合がよかった。嬉しいことも悲しいことも共有できる。幼いころからそんな存在を僕は求めていた。

でも、ただ笑うだけになってしまったあいつにいつしか嬉しい悲しい以外の感情が混ざっていった。感情の坩堝の先に僕がとった行動は競うことだった。

競う、勝ち負けを求めるだけの単純なことではない。あいつの守りたい境界線を越える、そんな行動に僕は汗や血を流して向き合った。考えてみれば、無駄だったのかもしれない。でも、奇跡的にその努力はいい方向へと向いていった。努力を惜しまなかったこともあるが一番大きかったことは僕に才能があったことが原因だと思う。

才能の壁、幼いながらに僕はあいつ以上に感じ取ることができた。

でも、そもそもは…ただ僕はこの感情の滓をきれいにしたかっただけなのに。僕はあいつに差し出した手を引くことができずに何度も何度も差し出す。自覚しながら、あいつに僕を自覚させることがやめられない。

今日も走り切った足が乳酸で軋むその感覚を味わいつつ、引くことができないこの味を何度も確かめている。

 

 

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