"予感、胡蝶の夢〜side 華琳〜"
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許昌、西側の城壁の上

 

無性に私は街を見渡したくなっていた

 

しばらくして一刀がやってくる

 

どうしたのかしら

 

どうやら直接私に見せたい書類らしい

 

私は書類を受け取ると文面に目を通す

 

内容は警備の改善案だった

 

華琳

「方向性は悪くないと思うけど…これを見せて、どうするつもりだったの?」

 

一刀に聞くとまだ草案だけだと答える

 

華琳

「そんなもの、あなたが決めればいいでしょう?この程度の改善案なら私が目を通す…までも…」

 

そう言った瞬間に気づいた

 

草案だと言った時に凪や秋蘭達と話し、良い案になるか見極めて欲しいと

 

つまりそれは…

 

華琳

「…そう。そういう事」

 

一つだけ知りたいことがあった

 

今のこの世界の流れ…一刀が知っている歴史と、どの程度変わっているのかを

 

一刀が言うには全部とのことだった

 

華琳

「そう。だから?」

 

一刀がこの世界に来た意味…それは私に天下を与えるための、天からの御遣い?

 

…その割には、随分と気が多かったように思うけど

 

でも一刀は自覚ないとか言ってるし、まったく…

 

とはいえ、赤壁での勝利で歴史は変わり私はこうして生きている

 

大陸の覇権も、もう少しで私のもの

 

一刀

「だな。警備隊の引き継ぎは、凪と真桜に任せたし…俺の役割も、そろそろ終わりなんだと思う」

 

華琳

「終わった後は、どうなるの?」

 

いきなり消えるのか、夢から覚めるだけなのか、役立たずの道化として残るのか…

 

一刀にも分からないようだった

 

道化として残ったら慰み者くらいにはしてあげようかしら

 

一刀

「出来れば、そうしたいけどなぁ」

 

しかし悪い予感は当たるもの

 

口には出さないが一刀にも分かっているのだろう

 

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華琳

「ただ、どうなったとしても…この光景だけは覚えておきなさい」

 

私が護り、一刀が警備をし平和を作った…この街を

 

華琳

「あなたが初めてここに来た時にした話、覚えている?」

 

一刀

「胡蝶の夢…か」

 

この世界が夢か現か幻か…

 

この世の誰にも分からない

 

華琳

「けれど、あなたがした事は…この街にあなたがもたらしたあなたの働きは、あなたの中に必ず残る」

 

人が成したことは本人に、そして関わったすべての者に残るもの

 

華琳

「例えあなたが私達の目の前から消えたとしても、あなたの真実として。そして、私達の現実としてね」

 

一刀

「うん」

 

華琳

「あなたは役目を果たしたの。それは…人として誇るべき事よ」

 

一刀

「そっか…そう、だよな。…でも、華琳と会えなくなるのは…正直なところ、寂しいよ」

 

その言葉に…私の中の何かが私自身に訴えてきた

 

胸の痛み…

 

しかし、私は曹孟徳として一刀に答えてしまった

 

戦場で死んだ兵達が志を半ばに倒れる事を考えれば…自らの役目を果たしきれたぶん、幸せなのでは、と

 

華琳

「昔言ったわよね。そういう世界に生きているのよ、私達…いいえ、私は」

 

一刀

「そっか…。そう、だよな」

 

消えるのなら勝手に消えてしまえばいい

 

後のことは、残った私達に任せておけばいい

 

書類には一刀の国の思想や技術も書いておいてくれたようだった

 

華琳

「そう。皆でじっくり検討して、必要なところは使わせてもらうわ」

 

一刀

「そうしてくれると嬉しいよ。じゃ、俺は警備隊の仕事が残ってるから…これで」

 

あなたはあなたの仕事を果たしなさい

 

この世界から消え去る、その一瞬まで…ね

 

私がそう言うと笑顔で去っていく一刀

 

………

 

……

 

 

一刀の背中を見送った私の胸は苦しいほどに締め付けられていた

 

本当にそうなのかな…

 

役目を果たせれば誇らしい

 

それは間違いない…だけど…

 

華琳

「…そうよ。あなたが消えても…寂しくなんか、ないんだから…」

 

誰に伝えるわけでもないその言葉は

 

澄み切った蒼天に消えていった…

説明
曹操伝ラストフェイズより

華琳達を待ち受ける運命…

一刀に返した言葉の真意は…
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コメント
素直になってくれ華琳。(ブックマン)
ほんとにファンディスクでないかなぁ・・・(キラ・リョウ)
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