【サイバ】或る日の徳山醤油店(その3)【交流】 |
「おや、かわいいお客さんだねえ。おつかいかい?」
((利恵|としえ))は目を細めた。
「すみません。お醤油ください」
「くださいでちゅわ」
店先で手をつないで利恵を待っていたのは、幼いキツネの少女と、白ネコの少女だった。((十久川|とくがわ))なずなと((羽志葉|はしば))ぴあのである。
「はい、どうぞ。重いから気をつけてね」
利恵は、醤油の一升瓶を、なずなとぴあのにゆっくりと渡した。
「んーしょ!」
「重たいけどがんばるでちゅわー!」
自分の上半身ほどもある一升瓶を抱え、よたよたとした足取りながらも、二人の少女は家路についた。それを微笑みながら見送る利恵。
なずなとぴあのの姿が見えなくなってから、利恵は誰もいないはずの空間に声をかけた。
「……さて。いるんだろ? 出て来なさいな」
利恵の呼びかけに応えるように、空間からにじみ出るように二人の人影が現れた。三角帽をかぶったちょうちんと、茶トラ猫のぬいぐるみだ。
「(なぜ気づいた?)」
魔法ちょうちんが問う。透視魔法を応用し、周りの人間に、自分を強制的に「透視させる」ことで、透明人間のように姿を見えなくする魔法。彼は、この魔法に絶対的な自信を持っていた。
利恵はふっと鼻を鳴らした。
「この商売を長くやってるとね、気配でわかるんだよ」
「(醤油屋すげえ)」
茶トラぬい先生が思わず声を上げる。
「あんたたち、あれかい? あの子たちのおつかいが心配で、隠れてついてきたってところかな?」
「(そうだ。しっかりしてるとは言っても、まだまだ子供だからな)」
魔法ちょうちんはうなずいた。
「まあ、心配いらないんじゃないかい? ついでに言っとくと、あの子らも、あんたたちがついてきてることには気づいてたよ」
「(……あいつらにはかなわないな)」
3人は笑いあった。
「(では失礼するよ。家に帰るまでがおつかいだ)」
再び透明化魔法を使用し、魔法ちょうちんと茶トラぬい先生は姿を消した。
「ねえぴあのちゃん、帰ったらこのお醤油で何作るの?」
「肉じゃがつくりまちゅわ。魔法ちょうちんたんに食べさせてあげまちゅの!」
「そっか。わたしはチキンの照り焼きでも作ろうかな? 茶トラぬい先生が好きな味付けで!」
日が傾いて、長く伸びた影を従えて、二人の少女はそれぞれの家に歩いて帰っていく。
徳山醤油店。そこは美味しい醤油と、人々の笑顔が集まるお店。ぜひともご来店あれ。
説明 | ||
〆行かせてもらいます。 利恵 http://www.tinami.com/view/942223 ぴあの http://www.tinami.com/view/753933 なずな http://www.tinami.com/view/753776 魔法ちょうちん http://www.tinami.com/view/738956 茶トラぬい先生 http://www.tinami.com/view/758041 バトルモノでよくある「(誰もいない空間に向かって)いるんだろ? 出てこいよ!」がやりたかっただけ。 |
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コメント | ||
>ネオペディさん なずなとぴあのちゃんに関しては、この二人も保護者目線になってしまうようですw(尾岸 元) エロ要素なしの二人の優しさに涙www(ネオペディ) >Dr.Nさん 最後のぴあのちゃん&なずなのセリフ、周りに聞こえるようにちょっと大きめに言ってますw 醤油屋のタヌキすげえ。(尾岸 元) >古淵工機さん かなり難産になるかなと思ったけど筆が乗ったら割と一気に書き上げられましたw(尾岸 元) エロ目的の魔法も使い方次第でこんな優しい魔法に。しかしそれをお見通しとは、ょぅι゛ょズの方が一枚上手であった。更にこの世界の最強の種族はタヌキ説がまた実証された気が。お疲れ様でした!(Ν) お疲れ様でした!美味しいお醤油、是非ご賞味あれ!(古淵工機) |
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