不幸で不憫な子供のお話 |
昔々あるところに、小さな子供がおりました。
その子供は右も左も解らず、ふわふわとしていました。
けれど時折頭が冴えて、途端に言い知れぬ不安に陥りました。
子供は世の中を受け入れられません。子供は社会を受け入れられません。
子供は世界をうけいれられません。子供は自分を受け入れられません。
親は言います、「社会人になれ」と。親は言います、「将来を考えろ」と。
そんなもの子供には理解できません。そんなもの子供には知りたくありません。
皆と合わせるのに必死でした。皆と話そうと必死でした。皆と触れ合おうと必死でした。
皆を真似て、皆を見て、皆を聞いて、でもどうにもなりません。
勉強してもつまらない。習い事をやってもつまらない。辛いだけで何もない。
ただ親や周りに薦められたからそれをやった方が良いと思ってやった。
けどただ辛いだけ。けど他の道を知らない、分からない。
「もうやりたくない」と言うと、親は「じゃあどうすれば良い?どうしたい?」と問い詰めた。
浮かぶわけがない子供に「何もないなら文句を言うな」と、親はそう言って怒鳴る、叩く、蹴る。
子供は愛されていなかった。子供は想われていなかった。子供に味方は居なかった。
親でさえも敵だった。世間に良く見られたい為だけに子供を産んだ後、育てるフリをして自分の思い通りにさせようとした。
子供の助けの声も届かない。子供の叫びも届かない。面倒そうに「何かあったらそれは自分のせい」と適当にあしらわれた。
何もかもを自分のせいとするには理不尽すぎる事を、子供は理解していた。けれど上手く喋れない事を良い事に、親は言いたい放題だった。
事あるごとに怒鳴られ、叩かれ、蹴られ、罵られ、脅され、子供は内にも外にも恐怖と不安を覚え、仕方なく従っている内に自分の事が全く分からなくなりました。
高校の教師に虐められた時も、「高いお金払ったんだから言うこと聞きなさい」と子供の味方に回ることなく知らん振りだった。
体罰を受けた時に味方に回るフリをしました。全ては回りに良く見られたい為。
どんなに子供が酷い目に遭ったとしても、周りが理解することが無いことを知っている為。
子供が働くようになって、身体に異常が出るようになりました。
親に薦められた病院で検査を受けて良性の腫瘍が原因と解った後、「運動すれば治る」と適当な事を言いました。
先ずは姿勢を正そうと、子供は整体師を通いました。暫くしてから、また同じ異常が出ました。
これはおかしいと今度は自分で別の病院で検査を受けると、悪性だった事が解りました。
手術を受けて腫瘍を取り除いた後は、異常が出ることはありませんでした。
親に薦められた事で悪いことが起こり、自分で選んだ事で良いことが起きた事で、子供はこれまで周りのせいで苦労していたことを思い知りました。
異常を訴えてもあまり心配もしてなかった親の「早く分かってよかった」という言葉に、子供は怒りが少し湧きました。
その名の通り厚かましい親は、あたかも誇らしげに、心配していたかのように振舞っていました。
親は世間しか見ておりません。親は子供の将来を考えません。良くも知らずに正社員に拘り、就職の幅を無駄に狭めたりもします。
子供は生まれながらにして、否、生まれる前から不幸だったのです。何もかもが良く分からない時期に自分を苦しめる環境の中にあったのですから。
今でも親は、子供が思い通りの事をしないと、思い通りの言葉を言わないと、直ぐにカッとなって物を投げつけます。
きっと親が自分を改める事はないのでしょう。子に改めさせるばかりで自分は進歩するつもりなどないのでしょう。
けれど子供はもう自分を諦めません。自分から行動する事で理解者を得られるようになって、親との距離を少しでも置くようになりました。
もし社会人というのが親の思い描いていた通りのものであるならば、親や世間のようなものであるならば、子供が社会人になる事は決してないでしょう。
それは生きているとは言えません。社会の荒波というものの一部として在り続けるだけの、世間と言う牢獄というものの一柱になるだけの、完全に止まるまで動くだけの物でしかありません。
美味しい物を食べる為に、楽しいと思えるようになる為に、子供はただ生き続けていくのでしょう。社会に巻き込まれながら、懸命に生きていくのでしょう。
それが今の世の中なのです。それが今の世界なのです。それが今の人々が創り上げている物事なのです。
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血迷いました。何かもったいないのでドーン! | ||
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