真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 51
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「して、玄輝殿。挨拶に行かれるという事でしたが、先ほども言ったように桃香殿と主殿には後であいさつに行かれた方がよろしいかと」

「あっ、あれただの嫌がらせじゃなかったのか」

「……玄輝殿、いささかそれは傷つきますぞ」

「いや、すまん。だけど、あんな状況だったらそう考えてもおかしくはないだろう……」

「まぁ、それに関しては致し方なしとしましょう」

 

 本人も思うところはあったようなので、割とすんなり許してもらった。

 

「まぁ、夕刻まで時間はまだありましょう。鈴々と朱里が街へ視察に言っております故、そちらから済ませては?」

「つってもな……」

 

 やっぱりそこは上から順に行った方がいい気がするんだが……

 

「どうせ皆にあいさつするおつもりでしょうに。そも、この陣営に“上から順に”のような些末事、気にする者はおりますまい」

「……まぁ、それもそうか」

 

 となれば、手が空いている人間からあいさつを済ませるか……

 

「じゃあ、そうさせてもらおう。視察ってどこらへんなんだ?」

「主に子供が集まるあたりへ行くと言っていたかと。最近、馬車の前に飛び出して危うく引かれかけたという事があったようでして」

「と、そいつはシャレにならんな」

 

 確かに安全な遊びやらなにやら考えないといけないな、それは。

 

「わかった。それらしいところへ向かってみる」

「それがよろしいかと」

 

 決めたのならば行動あるのみだ。早速俺は足を町へと向けた。夕刻の出立に間に合わせるには少し急がなくてはいけない。

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「……やれやれ、鈍い鈍いとは思っていましたが、よもや恋自体を知らぬとは」

 

 玄輝が見えなくなった後、星はため息混じりにそう呟く。

 

「何というか、ずいぶんと難儀な恋になりそうだぞ、愛紗」

 

 そして今はここにいない戦友に。

 

「そして、さらに難儀なのは雛里、お主だぞ?」

「ひゃい!?」

 

 そして、中庭の木の陰でこっそり泣いていたら、あれよあれよと戦いが始まってしまい、出ようにも出られなくなってしまった知将に語り掛ける。

 

「き、気が付いていたんでしゅか?」

 

 若干噛んでしまったのは驚いたから、という事にしておこうかと心でつぶやいてから星は返答を返す。

 

「無論。ここ一週間ずっと泣いていたのは知っておったからな」

「あ、あわわ……」

 

 ちなみに、玄輝が気付かなかったのは星の闘気や殺気、そして恋の話で動揺していたからで、まぁ、要は手のひらの上で踊らされたわけだ。

 

「それで、お主はどうするのだ? 玄輝殿は完全に自分の気持ちに気が付いたわけだが」

「……気が付かせたのは星さんです」

 

 そう言って雛里は可愛らしくもしっかりと気づかせた元凶を睨みつける。

 

「ふむ、それもそうか」

「……なんで、あんなことをしたんですか?」

「色々置いたまま旅立たれるのも癪だったのでな、つい」

 

 何の悪気もなくあっけらかんと言い切ってしまうが、雛里には不快極まりない。だが、星はそれを知っていて、彼女に問いかける。

 

「……私が気づかせなかったら雛里、お主は玄輝殿に想いを伝えたのか?」

「っ!」

「その気配があればする気はなかった。だが、お主はただ泣いていた。それだけ強い想い、とも考えられるが本当は泣いている姿を見られたかったのではないか?」

「ち、ちがっ!」

「であれば、なぜ最後の日になってもお主は泣いていた? なぜその想いを、伝えようとしなかった? それほど強い想いなのに」

「わ、私はっ!」

 

 別に、星の言っていることはすべて正論ではない。世の中、彼女のように考える人間ばかりではない。

 

 だが、雛里にも思うところはあった。しようとも思った、でも……

 

「怖かったのだろう? 想いが実らぬことが」

「っ!」

 

 そう、怖かった。玄輝が去ってしまうことも、彼に想いを伝えても受け入れてもらえないことも。だから、泣くしかなかった。どうすればいいか、何をすればいいのか全く分からなくて。

 

「……雛里、お主は戦う前から負けておるのだ。言うなれば死ぬかもしれないから剣を取らずになぶり殺しを受け入れているようなもの」

「そ、そこまでは、違うと思います……」

「いや、同じだな。だからこそお主に発破をかけてやろう」

 

 そう言って彼女は指を力強く雛里の眉間を指さし、その勢いに負けない声で彼女に言葉を叩きつける。

 

「実らぬならば奪ってしまえ!」

「あ、あわぁ〜〜〜〜〜〜!?」

 

 雛里は彼女にしては珍しい大声(とは言っても普段の愛紗の声ぐらい)を出して後ずさりする。

 

「み、実らぬならば、奪ってしまえ……」

「そう。つまり力づくで己が男にしてしまえ、という事よ」

「そ、そんなの」

「甘い! お主には後がないのだ! であれば他に手段があるというのか鳳士元!?」

「あ、あわぁ〜〜〜〜〜!!!」

 

 まさしく落雷の如き衝撃が幼い体を貫く。

 

「つ、つまり背水の陣……!」

「そう! であれば死に物狂いで掴む以外何がある!」

「で、でも、時間が……」

「そう、今からでは旅立ちには間に合わぬ。だが、愛紗と玄輝殿が互いの想いに気が付いたとして、戻って来次第すぐに恋仲になると思うか?」

「……っ!」

「さすが雛里。気が付いたようだな」

 

 そう、それはあり得ない。まず、玄輝は恋を知らない。となれば距離の取り方が全く分からなくなる。愛紗もそういった色恋には奥手。そこから導き出される答えは……!

 

「そこが、勝機……!」

 

 ならば、することは決まった。その時、さっきまで泣いていた少女の面影は消え去り、軍師、鳳統の顔へと変わっていた。

 

「であれば、できる限りの手札を、得ないと……!」

「そう! それこそ鳳士元!」

 

 そう言って星は満足げにうなずく。対し、雛里はいつものように思考の海へ潜って対策を思いついたのか、すぐに行動を始める。

 

「し、失礼しましゅ!」

 

 雛里はそれだけ言うとトトトッ……と可愛らしい全力疾走でいずこかへ走り去ってしまった。

 

「さて、これでよかろう」

 

 一人残された星は、そこで一度伸びをして青空を見上げる。

 

「……玄輝殿とて、自身を待ってくれる女子が3人もおれば完全な修羅道には堕ちますまい」

 

 その後に、本当に誰にも聞こえないような小さな声でこう続けた。

 

「お主とて、大切な友なのですからな。修羅道に堕ちるさまなど見たくはない」

 

 彼が、お天道の下で胸を張って歩けるように、彼女は心の中でそう祈っていた。

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はい、どうもおはこんばんにちわ。作者の風猫です。

 

いやぁ〜GWですねぇ……

 

筆者はとりあえず執筆やらアーケードゲームやらに充てる予定です。

 

期間中にあと1,2回は更新したいところです。

 

では、皆さまも良きGWを! また次回。

 

何かミス等がありましたらコメントにお願いいたします。

 

 

説明

オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話なので、大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。































大筋は同じですけど、オリジナルの話もありますよ?(´・ω・)
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コメント
はこざき(仮)さん>>鈍いといえば鈍いのですが、知識そのものがないので”わからなかった”のが近いですかね〜。(風猫)
北郷より鈍感な奴がいたとはこいつぁ驚きだぜぇ…! 雛里ちゃんとの進展は玄輝君が帰還してからになりそうですなー…GW?知らない子ですね(白目)(はこざき(仮))
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オリジナルキャラクター 鬼子 蜀√ 真・恋姫†無双 

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